ベンチプレスのやり方とフォーム|100kgの挙上プログラムをトレーナーが解説
ベンチプレスはジムで本格的に身体を鍛え始める人が最初に体験するバーベル筋トレで、それだけで公式競技があるほどの人気種目です。そして、初心者の方がベンチプレスで最初の目標にし、同時に高い壁となるのが「100kg挙上」です。そのために必要なコツ・フォームやプログラムをジムトレーナーの筆者が解説します。
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アイキャッチ画像出典:jawa-armwrestling.org
ベンチプレスの本格的トレーニング
出典:oniltd.com
本格的なベンチプレストレーニングの実施に際しては、いわゆるフィットネスジムなどではなく、下記のようなフリーウエイトトレーニング専門のジムで実施することが器材の充実度やトレーナーの専門性の観点などから推奨されます。
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ベンチプレスの平均値と体重の関係
多くの筋トレ初心者の方が、まず気にすることとして「ベンチプレスの平均的な重量」だと思います。
これまで多くの初心者メンバー~ベンチプレス全日本出場選手を見てきた感覚で述べると、かなり大雑把ではありますが、だいたい下記のような感じです。
○初心者:体重の60~70%前後
○筋トレ1~2年:体重と同重量前後
○筋トレ3年~:体重の120%前後
○県入賞選手:体重の150%前後
ベンチプレスの挙上換算表
出典:futamitc.jp
最大筋力で一回だけ挙げる重量の測定は、かなり身体的負担とリスクが大きいので、筆者のジムでは数ヵ月に一回の頻度に抑え、上図の換算表で推測値を算出しています。
ちなみにベンチプレス100kgを一回挙げるためには、上図では90kgなら6回、86kgなら8回挙げなくてはいけない計算になり、経験則としてもほぼこの通りです。
ベンチプレスの正しいフォーム・やり方・コツ
公式競技での正しいやり方
こちらが公式競技のベンチプレスの動画です。一般的に考えられているベンチプレスの動作に比べると、以下のようなやり方が公式競技では必要です。
①バーは胸につけ静止させる
②お尻は浮かせてはいけない
③肘が完全に伸びるまで挙げる
なお、さらに詳しいベンチプレスのやり方・ルールは下記の記事で解説しています。
▼参考記事
ベンチプレスの基本フォームの作り方と3つのコツ
ここまでは、公式競技としてのベンチプレス主体に解説してきましたが、ここからはウエイトトレーニングの一つとしてのベンチプレスについて解説していきます。
特に初心者の方がベンチプレスを行う場合に気をつけたい3つのコツ・ポイントをまとめました。
●手首と肘の関係
ベンチプレスの動作中は常に手首の真下に肘がくるようにしてください。これがずれているということは、前腕骨がバーベルに対して垂直に支えていないということですので、バーベルが頭方向または腹方向に傾き、効率的な挙上動作にはなりません。
●肩甲骨の寄せと三点確保
ベンチプレス台に寝たら、まず肩甲骨を寄せ左右の肩甲骨二点+おしりの合計三点で身体を支えてください。カメラの三脚と同じで、三点確保がもっとも安定します。
また、肩甲骨を寄せずにベンチプレスを行うと、肩が前方に飛び出し、肩先行で負荷がかかるため肩関節故障の原因になります。
●大胸筋と首の連動方向
初心者によくありがちな間違いが、バーベルを押し上げようと力むあまり首をベンチに押しつける動作ですが、大胸筋の収縮に連動した首関節の屈曲方向は前です。
ためしに腕を前に出しながら首を前や後ろに傾けてみてください。首を前に曲げた時のほうが、より強く大胸筋が収縮するのが体感できると思います。
ベンチプレスの呼吸方法
筋肉が収縮するときに息を吐き、弛緩するときに息を吸うのが筋トレの基本ですが、ベンチプレスに関してはこの通りでない場合もあります。つまり、息をたくさん吸い込んで止めた状態で、胸郭を少しでも膨らませたほうが胸の高さが増し、結果としてバーベルを挙上する距離が狭くなります。
ですので、ベンチプレスではバーベルを下ろす前に息を吸い込んで止め、バーベルを下ろし挙上し終わるまで止めたままで、完全にバーベルを押し上げてから息を吐いて再び吸い、次の挙上動作に移るのが一般的です。
なお、可能な限り息を多く吸い込む特殊な呼吸法にハイパーベンチレーションというものがあります。これは、素潜りなどで使われる呼吸方法ですが、ベンチプレスに応用する人も少なくありません。
▼参考記事
ベンチプレス100kg挙上のためのプログラム
ベンチプレスはただ同じセット内容を繰り返していくだけでは、なかなかその挙上重量は伸び悩みます。筆者のジムでは①筋量増大期(10週間)、②筋力強化期(8週間)、③神経強化期(6週間)の通算2ヶ月を1サイクルとしてプログラムを組み、総合的にベンチプレスの挙上重量を伸ばすプログラムを組んでいます。
これにより、100kg挙上や全国大会出場標準記録に到達した選手も少なくありません。ぜひ、一度チャレンジしてみてください。
筋量増大期(10週間)
この期間は、筋肥大に最適とされている8~10レップで限界のくる重量設定でトレーニングをしていきます。一日のトレーニングで6セット前後を週一回もしくは二回行っていきます。
筋力強化期(8週間)
この時期は、筋力向上に効果的な6レップ前後で限界のくる重めの重量設定で鍛えていきます。高重量負荷がかかるため、セット数は4セット前後とし、十分に筋肉を回復させるためにベンチプレスのトレーニングは週1回のみが一般的です。
神経強化期(6週間)
この時期は、実際にベンチプレスの試合に出場する場合の調整法である「ピーキング」を行います。ピーキングとは段階的に筋肉と神経系を「一発仕様」にしてくことで、さらに負荷が強まるのでベンチプレスは週1回3セット程度のトレーニング量になります。その具体的なやり方の一例は以下のとおりです。
第一週:6レップで限界のくる重量で3セット
第二週:5レップで限界のくる重量で3セット
第三週:4レップで限界のくる重量で3セット
第四週:3レップで限界のくる重量で3セット
第五週:2レップで限界のくる重量で3セット
第六週:Max重量への挑戦
高いブリッジに必要な柔軟性
ベンチプレスで高いブリッジを組むために必要となるのが股関節の柔軟性です。股関節の柔軟性が低いと、いくら高くブリッジを組もうとしても、足の踏ん張りが効かないため十分な体勢でベンチプレスを挙上することができません。
股関節ストレッチのなかでも、ぜひ取り入れていただきたいのがこの動画のような、開脚ストレッチです。
こちらが、ベンチプレスのブリッジのイメージ図で、肩甲骨をベンチにしっかりと接地し、下半身の押す力でブリッジを安定化させます。
ベンチプレス世界トップレベル選手の解説
ベンチプレスに取り組み始めた初心者の方にとって、大きな試練となるのが「100kg挙上の壁」です。ベンチプレス100キロの壁を越えるための、基本的なやり方=フォームやブリッジ等と、最適な負荷回数設定・メニュープログラムの組み方をパワーリフティング元全日本王者・ベンチプレス種目別世界二位&アジア一位の奥谷元哉さまに客員執筆いただきました。
ベンチプレスに必須のギア類
ベンチプレスはその挙上重量が使用するギア類によって大きく左右される種目です。数あるギアのなかでも、パワーベルト・リストラップ・シューズは特に注意して選びたいものになります。
まずは欲しいパワーベルト
「武器屋.net トレーニング用品セレクトショップ」で取り扱う商品「次期IPF公認 13mm 鬼ベルトフックバックル 超強仕様」の紹介ページ
出典:wglint.com
本格的にベンチプレスに取り組むのならば、やはりトレーニングベルトではなくこちらのような幅があり分厚いパワーベルトが必須になります。また、ベルトによっては公式競技に使用できないものもあるので、事前の確認が必要です。
なお、トレーングベルトやパワーベルトに関してさらに詳しく知りたい方は、下記の記事をご参照ください。
▼参考記事
筋トレの必需品と言えるギアがトレーニングベルト・パワーベルトですが、さまざまなものがあり、どれを使ったらよいか迷うことも少なくありません。筋トレの目的別(ダイエット・バルクアップ・競技)にそれぞれの効果を最大限に高めるおすすめの厳選品をご紹
出典:wglint.com
また、こちらは通常のパワーベルトよりも幅が細く、より高いブリッジを作るために設計されたベンチプレス専用パワーベルトで、筆者のジムに所属する全日本大会出場選手も愛用しています。
▼ベンチプレス専用ベルトを詳しく見る
ベンチプレス専用に、高いブリッジが組みやすいよう5cm幅と狭くデザインされたレバーアクションタイプのパワーベルトをご紹介します。画像提供:武器屋.net■ベンチプレスにトレーニングベルトは必要?●自重を越える重さになると必需品ベンチプレスに
手首保護と挙上補助にリストラップ
出典:bukiya.net
リストラップを手首に巻きつけることにより、手首がグラつくのを抑えることができ、その結果として安定したベンチプレスの挙上動作が確保できます。こちらも、公式競技で使用できるものとできないものがありますので、事前の確認が必要です。
なお、最新のベンチプレス競技テクニックでは、手首を寝かせて斜め方向軌道で挙上を行うのが主流になっています。この場合、リストラップの弾力で手首を補助するのが前提となっており、リストラップなしでは「斜め挙げ」はできません。
リストラップには安価なものもありますが、そのような普及品のサポート力は弱く「おしゃれリストバンド」になってしまわないよう、IPF(世界パワーリフティング協会)公認品の正規品を使用することを強くおすすめします。
また、筆者の運営するトレーニングギアショップでは、大手メーカー製リストラップと同等以上の強度を持つリストラップをオリジナル開発し、メーカー製の半額以下で提供していますので、是非ご活用ください。
北米に大きなシェアを持つ海外トレーニング用品メーカー「V-TRURT」社製のリストラップです。普及品と違い、競技用のものと遜色のない強度を持ちますが、生産工場より直接仕入れているためリーズナブルに提供できています。
リストラップの巻き方とメーカ別の比較(長時間ウエイト下垂実験報告を含む)は下記の記事で解説しています。
▼参考記事
リストラップの巻き方とメーカ別の比較(長時間ウエイト下垂実験報告を含む)は下記の記事で解説しています。
▼参考記事
出典:wglint.com
リストストラップ使用のトレーニングにおけるメリット・デメリットなどについて解説するとともに、メーカー別におすすめのリストラップをご紹介します。また、あわせて初心者向けの長さの選び方や巻き方・使い方を解説します。また、アイロテック・ゴールドジ
▼参照ページ
シューズにもこだわりたい
筆者のおすすめするベンチプレスむきシューズはハイカットタイプのレスリングシューズです。足首が軽く固定されて安定感がある上、靴底が薄くてグリップもよく、ベンチプレス選手のなかにもレスリングシューズを愛用する人は少なくありません。
本格派の方におすすめの専門品
さらに、結果を出したい方は、やはりパワーリフティング競技やベンチプレス競技の専用品を使用することを強くおすすめします。下記のパワーベルトとリストラップは筆者の友人でもあり、ベンチプレス日本記録保持者の方が厳選されたギアだけを扱っているショップのオリジナルギアです。
筆者のジムのメンバーも愛用していますが、競技用としてだけでなく普段のトレーニングにもワンランク上の使用感だと好評です。
出典:bukiya.net
「武器屋.net トレーニング用品セレクトショップ」で取り扱う商品「13mm鬼レバーベルトアクションIPF公認(バックルは別売り)」の紹介・購入ページ
「武器屋.net トレーニング用品セレクトショップ」で取り扱う商品「鬼リストラップIPF公認」の紹介・購入ページ
家庭用ベンチプレス台の種類
ナロータイプ・ワイドタイプ・スタイリッシュタイプと本格タイプ
家庭用として自宅にベンチプレス台を購入する人も少なくありません。家庭用のベンチプレス台には、大きく柿のタイプがあります。
もっともリーズナブルなものが、こちらのようなラックの外側でバーベルをグリップするナロータイプです。ラックの幅が狭いのでやや安定感にかけるのがデメリットです。
筆者のジムでベンチプレス選手が使用しているものがこちらのワイドタイプで、ラックの幅が広く安定している上、公式競技のグリップ幅もとれる家庭用ハイエンドタイプです。
※筆者のジムでは競技練習用に補強して使用しています。
競技用のグリップ幅より若干幅が狭いものの、デザイン性や強度に優れるのが、こちらのような曲線アームを導入したタイプです。同じものを筆者のジムでも使用していますが、公式競技にこだわらなければ、それ以外は全く問題がありません。
なお、家庭用ベンチプレス台については、下記の記事で各メーカー各機種を詳しく比較紹介していますので、是非ご一読ください。
▼参考記事
※家庭にベンチプレス台を設置する場合は、単独トレーニング時の事故を防ぐために必ずセーフティーラックをご使用ください。
ベンチプレスのバリエーションと補助筋トレ
ベンチプレスには、今回ご紹介したノーマルベンチプレスのほかにも、大胸筋上部に効果の高いインクラインベンチプレス、大胸筋下部に効果的なデクラインベンチプレス、上腕三頭筋を効率的に鍛えられるナローグリップベンチプレスなどのバリエーションがあります。
通常のベンチプレストレーニングに加え、これらのバリエーション種目も行って大胸筋・三角筋・上腕三頭筋を部位別に強化していくことも、100kg挙上のためには重要なプロセスです。
スミスマシンを使って効率的に大胸筋を鍛える
フリーウエイトのバーベルベンチプレスに近い感覚で行える上、マシンのレールがブレを受け止めてくれるのでバーベルベンチプレスよりも高負荷で大胸筋を鍛えることのできるのがスミスマシンベンチプレスです。
大胸筋をピンポイントで刺激したいときにおすすめです。
ただし、スミスマシンだけですとバーベルのブレを止めるための体幹インナーマッスルが鍛えられませんので、必ず補助筋トレとして行ってください。
ベンチプレス強化におすすめのダンベル補助筋トレ
また、ベンチプレスを強くしていくためには、各種のベンチプレストレーニングだけでなくダンベルを使った補助種目を行っていくのがおすすめです。下記の記事ではベンチプレスの重量向上に効果の高い、ダンベルプレス・ダンベルフライ・リアラテラルライズについて解説しています。あわせてご一読ください。
▼参考記事
世界トップレベル選手による他のBIG3解説
デッドリフトの挙上重量向上のために効果的なやり方・フォームおよびセットメニューの組み方を、スモウスタイル・ヨーロピアンスタイルの種類別に、パワーリフティング元全日本王者の奥谷元哉さまに客員執筆いただきました。
バーベルスクワットは下半身全体を鍛えるのに最適なウエイトトレーニングで、その効果の高さは「キングオブトレーニング」と呼ばれるほどです。今回は筋トレとしてのバーベルスクワットの基本知識だけでなく、パワーリフティング競技の種目として、一つの壁である200kg挙上を達成するためのフォームおよび回数・セット数などメニューの組み方を、パワーリフティング元全日本王者の奥谷元哉さまに客員執筆していただきました。
その他の大胸筋トレーニング記事
筋トレの全てがわかる完全バイブル
参照記事
筋トレBIG3と呼ばれるウエイトトレーニングの基本中の基本種目=ベンチプレス・デッドリフト・スクワットに関して解説します。あわせて、各派生種目および全身の筋肉部位別の代表的なバーベル筋トレについてもご紹介します。
参考にした公的サイト
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この記事のライター
アームレスリング元日本代表/ジムトレーナー/生物学博物館学芸員/一般社団法人JAWA日本アームレスリング連盟常任理事