腸腰筋の鍛え方。効果的な筋トレメニューからストレッチ方法まで徹底解説
腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉を知っていますか?インナーマッスルである腸腰筋は、筋トレをしてもあまり効果が見えないためトレーニングを怠ってしまいがちです。でも実はスポーツをしたりトレーニングをしたりするときに股関節まわりを支えるとても重要な筋肉なのです。今回は効果的なトレーニングからストレッチまでご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:www.boxrox.com
腸腰筋(ちょうようきん)とは
腸腰筋は股関節前面の深層部に位置する筋肉で、インナーマッスルの1つです。
単一の筋肉と思われがちな腸腰筋ですが、複数の筋肉からなる筋肉群であることはあまり知られていません。「大腰筋」「小腰筋」「腸骨筋」の3つの筋肉で構成される腸腰筋ですが、「小腰筋」は半数以下の人にしか存在しない筋肉と言われています。そのためほとんどの人は「大腰筋」と「腸骨筋」で成り立っていると考えてよいでしょう。
腸腰筋のはたらき
日常生活におけるはたらき
日常生活において腸腰筋は歩く時に脚を前にだす動作に貢献しています。
腸腰筋は脚を前に振りだすはたらきがあり、姿勢を維持するためにも大切な筋肉です。腸腰筋が弱ってくると姿勢が崩れ始めて老化が進み、背骨や股関節に負荷がかかります。老化に伴う故障を防ぎ、長く健康的な生活を送るべくしっかりとトレーニングしていきましょう。
スポーツをするときのはたらき
スポーツをするときにおいて、腸腰筋は股関節の屈曲に大きな影響を及ぼします。
具体的にはウエイトリフティングをする際のウエイトを上に持ち上げる姿勢を支える役割をしています。そのため腸腰筋が弱くなると一般的なウエイトを使った筋トレ時に期待する効果が得られなくなってしまいます。またバスケットで中腰になる動作やサッカーでボールを蹴る動作など、様々な場面で腸腰筋は欠かせない存在です。
腸腰筋を鍛えるメリット
姿勢が良くなる
腸腰筋は背筋を安定させてくれるので、姿勢が良くなります。ただ姿勢が良くなるだけではなく、日常生活やスポーツの際にも背筋が安定していることはパフォーマンスの向上に必要です。足を踏ん張る動作の時には腸腰筋が働いていて、足から伝わる揺れを腸腰筋が受け取って衝撃を緩和し、上体を安定させます。正しい姿勢を保ち、上体を安定させるためにも腸腰筋を鍛えていきましょう。
ぽっこりお腹を防げる
下腹がだらしなく出てしまう、そんなぽっこりお腹の原因も腸腰筋かもしれません。腹筋トレーニングをしていても最後までしつこく脂肪が残ってしまうのがこの下腹ですよね。腸腰筋が緩んでいると内臓が下の方に落ちていってしまい、結果としてお腹が出てしまうことがあるのです。どうしても下腹が出てしまうということで、悩みを持っている方はこの腸腰筋を鍛えてみると良いでしょう。
インナーマッスルを鍛える5つのコツ
先述した通り腸腰筋はインナーマッスルの1つです。インナーマッスルはアウターマッスルとは違い、じっくりゆっくりと負荷をかけながら鍛えていくのが特徴です。ここではインナーマッスルを鍛える前に知っておきたいポイントを5つ紹介したいと思います。
1. 急がずゆっくり動かす
体幹周りのインナーマッスルを鍛えるためには狙った部位に注意を向け、ゆっくり動かして確実に効かせることが大切です。アウターマッスルに比べて目で見ることができないインナーマッスルは意識をし続けることが困難。だからこそゆっくりと動かして筋肉の動きを感じながらトレーニングをすることが不可欠です。
2. 呼吸を止めない
運動中はもちろんのこと普段から呼吸を深くするように意識しましょう。深い呼吸をすることで呼吸を支える胸部のインナーマッスルを鍛えられます。息を大きく吸うときには胸郭が広がりやすいように腹腔が緩み、息をたくさん吐くときには腹腔が力んで胸郭を押し上げます。無意識になると浅くなりがちな呼吸もトレーニングの1つとしてしっかりと意識的に取り組みましょう。
3. ポジションを定める
トレーニングの際に気を付けなければならないのが骨と関節の位置関係です。中でも脊柱や骨盤、肩甲骨などの姿勢を支える骨格はしっかり整えましょう。鏡の前でトレーニングをするのがおすすめです。フォームが崩れたままトレーニングをすると効果が得られないのがインナーマッスルの特徴。しっかりと脊柱が自然なS字カーブを描いてその延長線上に頭が来るようなアライメントになっているかを意識しましょう。
4. 回数制限を守る
インナーマッスルはアウターマッスルとは違い筋肥大を目標とはしていません。そのため1セッションで反復回数をやみくもに増やすとフォームも崩れ、トレーニングの意味を成しません。インナートレーニングの目的は運動神経との連携を高めて思い通りに動かせるようにすることです。そのためにも1セッションの回数を増やすのではなく、トレーニング頻度を増やして1週間あたりのトータル回数を増やすようにしましょう。
5. 高い負荷は禁止
インナーマッスルを鍛える際には重たいダンベルやバーベルなどの大きな負荷は必要ありません。逆に高負荷をかけてしまうと反射的にアウターマッスルが鍛えられてしまい、狙ったトレーニング効果が期待できません。インナーマッスルには自重が効果的で道具なしで手軽に始められるのもインナートレーニングの利点です。
1. 自宅でできる腸腰筋トレーニングメニュー
自宅でできる腸腰筋メニューは道具を使わないため、すぐにでも始められるのが嬉しいポイント。力み過ぎずに長くゆっくりとした呼吸を忘れずに。ヨガマットなどを床に敷くととてもやりやすくなるのでおすすめです。またフォームを確認するための鏡もマストアイテムといえるでしょう。
1-1 レッグレイズ
レッグレイズは股関節の屈曲運動を行う、まさに腸腰筋のための筋トレです。腰に負荷がかかり過ぎないようにフォームをしっかり意識して行いましょう。
正しいレッグレイズのやり方
1. 両脚を伸ばして仰向けに寝る。
2. 両脚を伸ばしたまま両脚を床から離し、90度以上まで上げる。
3. ゆっくりと息を吐きながら床へ下ろす。
4. 1~3をゆっくりと繰り返す。
セット数の目安
1セットで8回~15回を目安に繰り返しましょう。一度にこなす回数は増やさずに、頻度を増やすように心がけてください。
注意するポイント
・仰向けのときに腕は体側にしておきましょう。スタートポジションを忘れずに。
・脚を持ち上げるときには反動をつけずにゆっくりと上げましょう。
・脚を持ち上げるときに柔軟性の関係で膝が曲がってしまう場合があります。そのときは無理せず少し膝を曲げてトレーニングしましょう。
・腰への負荷が心配な時はお尻の下に手を入れて腰の反りを抑えて負荷を軽減してください。
・より負荷を加えたいときには床に足を完全につけずに直前で浮かせてみるのがおすすめです。
1-2 ニーレイズ
ニーレイズもレッグレイズに次いで腸腰筋に効果的な筋トレです。フォームが崩れてしまわないように姿勢を気にしながらしっかりと負荷をかけていきましょう。
ニーレイズの正しいやり方
1. 両脚を伸ばして仰向けに寝る。
2. 頭を軽く上げる。
3. 腕を45度に開いて腰が浮かないように支える。
4. 脚を少しだけ床から浮かせる。
5. 膝をお腹に向かってゆっくりと引き寄せる。
6. 直前まで近づけて静止。
7. ゆっくりと膝をのばす。
8. 5のポジションに戻る。
9. 5~8を繰り返す。
セット数の目安
1セット15回~20回を目安に取り組みましょう。慣れてきたら1セット後に1分間のインターバルを挟みもう1セット繰り返してみるのがおすすめです。
注意するポイント
・頭を上げるときにはへそを見るイメージで行うと感覚を掴みやすいです。
・お腹へ膝を近づけるときに腸腰筋を使って近づけていることを意識しましょう。
・反動をつけて脚を持ち上げないようにしてください。
・長くゆっくりとした呼吸を忘れずに。
1-3 レッグレイズキープ
レッグレイズの応用バージョンでインナーマッスルを意識するためにはもってこいなトレーニングです。静かにできるトレーニングなので腸腰筋へじっくり意識を向けてみてください。
レッグレイズキープの正しいやり方
1. 両脚を伸ばして仰向けに寝る。
2. 両脚を伸ばして床から浮かせる。
3. 30度~45度程度の高さで止める。
4. 30秒を目安にキープ。
セット数の目安
30秒のキープをしてインターバルを挟みながら10セットを目安にトレーニングしていきましょう。あまり長時間のキープはフォームの乱れにもつながるため行わないようにしてください。
注意するポイント
・手でしっかりと上半身を固定させてぶれないようにする。
・長い呼吸を忘れずに酸素を体中へ行き渡らせるイメージで。
・上げるときに息を吐きだして、下ろすときにゆっくりと息を吸い込みましょう。
・フォームが崩れないように確認することを忘れないこと。
1-4 Vシットキープ
Vシットキープはレッグレイズキープの難易度を高めたトレーニング。上半身をしっかりと立てることで腸腰筋への負荷もしっかりかけていきましょう。
Vシットキープの正しいやり方
1. 床に両腕はバンザイの状態で仰向けに寝る。
2. 上体を起こして両脚も持ち上げてV字をつくる。
3. 両腕と両脚が平行になる姿勢をキープ。
4. 10~15秒程度姿勢を保つ。
5. ゆっくりと1の状態に戻る。
セット数の目安
20回を1セットとして3回を上限に繰り返すと効果的です。腰痛を患っている人や腰に違和感を感じた場合はトレーニングを中止してください。
注意するポイント
・V字でキープする際はフォームが崩れないようにバランスを保ちましょう。
・体が傾かないようにお尻の下にある座骨が床に着いているか確認してください。
・バランスをとるときに息を止めてしまわないようにすること。
1-5 エア自転車こぎ
名前の通り自転車をこぐように取り組むトレーニングです。固い床で行うとお尻や背中を痛めてしまう可能性があるので、床にヨガマットやクッションを敷くのがおすすめです。
エア自転車こぎの正しいやり方
1. 床に仰向けになって寝る。
2. 両脚を床から少し持ち上げる。
3. 上体もへそを見るように起こし、肘と前腕を上体の後ろへついて支える。
4. 自転車をこぐように足を回転させる。
セット数の目安
初めは50回を目安に呼吸を吐き出しながら行うと効果的です。慣れてきたら100回を上限に少しずつ回数を増やしていくのもおすすめです。
注意するポイント
・1回こぎ出すごとに息を吐き出し切るように意識してください。
・一度に多くの回数をこなそうとすると腰を痛める恐れがあるので自分の体調に合わせて調整しましょう。
・こぎ出すときのフォームが乱れそうになったら動きを止めて、きちんと整えてから再開させましょう。
1-6 徒手レッグレイズ
腸腰筋トレーニングの最後に紹介するのはパートナーの力を借りて取り組むタイプの筋トレです。2人1組で協力しながら鍛えていきましょう。
徒手レッグレイズの正しいやり方
1. 床に仰向けになって寝て、パートナーに片脚の膝を抑えてもらう。
2. 抑えられた負荷に抵抗しながら、抑えられている脚をゆっくりと上げる。
3. 90度程度まで上がり切ったら、抵抗しながら脚をゆっくりと床に下ろしていく。
4. 抑える脚を入れ替えて1~3を繰り返す。
セット数の目安
1セットで8回~15回を目安に繰り返しましょう。急がずにゆっくり1回1回をこなすようにしてください。
注意するポイント
・抑える負荷はかけ過ぎないよう丁度良い強さに調整してください。
・負荷に抵抗するときには体が傾かないようにしましょう。
・呼吸は長くゆっくり続けることを忘れないこと。
2. 合わせて取り入れたい腸腰筋ストレッチ
筋トレに夢中になると忘れてしまいがちなのがストレッチ。筋肉を収縮させた後にはしっかりと休ませたり伸ばしたりすることが大切です。筋肉は日々のトレーニングによって筋繊維が切れてしまっている状態かもしれません。1週間のメニューの中に休息日とストレッチを念入りする日を取り入れるのがおすすめです。また、腸腰筋をストレッチすることで脚のだるさを軽減する効果も期待できます。ぜひ取り入れてみてください。
2-1 重心移動ストレッチ
このストレッチをする際には膝の下にバスタオルを敷いたり、ヨガマットを敷いたりするのがおすすめです。膝立ち中心の動作が多いため、膝を痛めないようにしっかりサポートしながら行いましょう。
重心移動ストレッチの正しいやり方
1. 膝立ちの状態から右脚を身体の前に出す。
2. 膝が90度に曲がる位置に足をつけ、膝に両手を添える。
3. 右膝を曲げて重心を前へずらす。
4. 20秒ほどキープしたら元の姿勢に戻る。
5. 脚を入れ替えて1~4を繰り返す。
セット数の目安
左右交互に5セットを目安に繰り返しましょう。慣れてきたら10セットを上限としてゆっくりと取り組むようにしてください。
注意するポイント
・重心を移動するときには頭から地面へ1本の棒が突き刺さっているような姿勢を意識しましょう。
・呼吸をゆっくりと吐き出しながら重心を移動させてください。
・目線を定めるとバランスが取りやすくなります。
・骨盤が傾かないように逐一チェックするようにしましょう。
2-2 膝抱えストレッチ
じんわりと腸腰筋をほぐしながら太ももの裏側もストレッチができます。脚がだるいと感じたり股関節の動きがいまいちなときにおすすめです。
正しい膝抱えストレッチのやり方
1. 床やマットの上に手足を伸ばして仰向けに寝る。
2. 右膝を曲げて膝を両手で抱える。
3. ゆっくりと腕の力を加えながら膝を胸に近づける。
4. 呼吸を自然に続けながら10秒間キープする。
5. 1の状態へ戻り脚を入れ替えて2~4を繰り返す。
セット数の目安
左右交互に5セットを目安にストレッチしていきましょう。ストレッチが物足りない時には10セットを上限に取り組んでください。
注意するポイント
・膝を胸に近づけるときには反動をつけて無理やり近づけないようにしましょう。
・ゆっくりと呼吸を吐き出しながらじんわりと腸腰筋をのばすイメージで取り組みましょう。
・膝を胸に近づけるときと床へ下ろすときには等速で動かすように意識してください。
2-3 骨盤まわりストレッチ
あまり普段は意識してほぐさない骨盤まわりのストレッチです。腸腰筋の筋トレをする際にはお尻に力が入りがち。柔軟を高めるためにも効果があるストレッチなのでぜひ積極的に取り組んでみてください。
骨盤まわりストレッチの正しいやり方
1. あぐらをかいた状態で座る。
2. 左膝を両腕で抱えて右肩に近づける。
3. 抱えた膝を右斜め上に引き上げるイメージでゆっくりと持ち上げる。
4. この姿勢を30秒間キープ。
5. 姿勢を解放して1に戻り、脚を入れ替えて2~4を繰り返す。
セット数の目安
左右交互に5セットを目安に行いましょう。あまり回数をこなすと筋肉を傷める恐れがあるため注意してください。
注意するポイント
・膝を肩に引き寄せるときには無理のない範囲でゆっくりと近づけてください。
・常に自然な呼吸を続けるのを忘れないようにしましょう。
・ストレッチをしながらお尻の筋肉がしっかりと伸びていることを実感しましょう。
2-4 テニスボールを使った腸腰筋ほぐし
最後に紹介する腸腰筋ほぐしはテニスボールを使ったストレッチです。なかなかマッサージすることが難しい腸腰筋ですがボールを使って気持ちよくほぐしていきましょう。
1. 床にうつ伏せになって寝る。
2. へその3cmくらい右で腰骨の内側の部分にテニスボールを当てる。
3. 加減を調節しながらゆっくりと体重をかける。
4. 30秒くらい圧をかけたら左側も同じように繰り返す。
セット数の目安
セット数は左右交互に3セット程度が目安です。あまりやり過ぎると筋繊維を痛める恐れがあるので気持ち良いところでやめるようにしてください。
注意するポイント
・負荷をかける際には局部的に押すのではなくボールの球面を使って優しく転がすようにしてください。
・体重をかけ過ぎないように程よい圧力を調整しましょう。
・テニスボールを長い靴下の中へ2つ入れてオリジナルのマッサージ器具で試すのもおすすめです。
インナーマッスルを鍛えてより効果的な筋トレを
普段は意識することのないインナーマッスル。見落としがちなのがアウターマッスルと同時にインナーマッスルを鍛えることがとても大切だということです。インナーマッスルが備わっていないとフォームが定まらず、正しい筋トレができていない状態になってしまうかもしれません。間違ったフォームを続けていると筋肉がつきにくくなる上に筋肉を傷める原因にもなります。しっかりとしたフォームを確認しながらインナーマッスルも欠かさず鍛えていくようにしましょう。
インナーマッスルという言葉を知っていても鍛え方を知っている人は意外と少ないもの。この記事ではインナーマッスルの鍛え方から、そのポイントまでを解説。姿勢維持に大切なお腹のインナーマッスルから、日常動作の多くに関わる肩のインナーマッスルを押さえた決定版ともいえる内容になっています。
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この記事のライター
茨城の筑波山生まれ。「いばらぎ」じゃなくて「いばらき」です。