筋肉発達のメカニズムとマッスルメモリーの謎について
ただひたすらに重りを振り回せば筋肉が増えるという事はありません。筋肉が太くなるためにはその根本的な理屈を理解しておく必要があります。筋肉を育てるための二種類の刺激とは何なのか。そして知られざるマッスルメモリーの秘密とは。
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筋肉を大きくする二種類の仕組み
筋力トレーニングによって筋肉に与えられる刺激は主に二種類に分けられます。それが「筋繊維の破壊と再生」もうひとつが「代謝性の負荷」です。
筋繊維の破壊と再生は「重量による負荷」と呼ばれることもあります。ある程度以上の重量を使ってトレーニングすることで筋繊維にダメージを与え、その回復過程においてトレーニング前よりも筋繊維が強く、大きく育つわけです。ウェイトトレーニングに対する皆さんのイメージは主にこの「筋繊維の破壊と再生」ではないでしょうか。
もう一つの代謝性の負荷は筋肉内にキープしておかなければならないタンパク質の量が筋トレによって増えることにより、筋肉が自分自身を「もっと大きくして容量を増やさなくてはならない」と感じることでおきる筋肥大です。軽い重量のトレーニングを高回数行うと筋肉がパンパンに腫れ上がります。この時が正に筋肉に対して「サイズアップしなくちゃ破裂してしまいますよ」というメッセージを伝えている瞬間なのです。
この二種類の負荷をトレーニングで上手に筋肉に与えてあげることで、筋肉が発達しようとする潜在能力を最大限引き出してあげることが出来るんですね。
マッスルメモリーの謎
筋トレをしている人や、過去に体を鍛えていた経験のある人であれば「マッスルメモリー(筋肉の記憶)という言葉を一度は耳にした事があるのではないでしょうか。
マッスルメモリーとは、一度ある程度筋トレをしておくと、年月が経って再びトレーニングを再開した時にかなりスピーディーに筋肉量が増えていく現象のことを言います。まるで筋肉が昔の記憶を取り戻したかのように増加するためそう呼ばれているわけです。
出典:smartlog.jp
このマッスルメモリー。以前は都市伝説のような扱いだったのですが最近の研究で、実在することが判明したのです。
筋繊維の中には筋肉をコントロールしたり、筋繊維を増やす役割のある「核」が存在します。そして筋肉を一定以上鍛えるとこの核そのものも増加するのですが、一旦増えたこの核はしばらくトレーニングを休み、筋繊維が細くなってしまった後でも消失することなく10年程度は筋繊維内に存在し続けるのです。
見た目に細くなっても核は残っているためトレーニングを再開した時の発達スピードが凄まじいというわけなんですね。昔取った杵柄などということわざもありますが、案外眉唾ものではなかったわけです。
マッスルメモリーは悪用可能か
10年前の記憶を筋肉は保持し続ける。残念なことに、この事実はドーピングの分野にも一つの可能性を与えてしまいました。
アナボリックステロイドやプロホルモンといった、急激に筋肉を増殖させる薬物を使用した場合でも同じように筋繊維内の核は増加します。そして一旦薬物の使用を止め、いくら検査しても薬物反応が検出されないだけの時間が経ってから再びトレーニングを再開した場合、その選手はドーピングの疑義を掛けられることなく薬物の恩恵を享受できてしまうわけです。
個人名は伏せますが、実際に数年間薬物を使用し一気に体を大きくし、その後薬物反応が消えた段階でボディビルディングのコンテストに本格参戦し始めた選手もいます。
特に若い人の場合は残された競技人生も長いため、このようなダーティーな戦略をとる時間が残されています。しかし、いずれにせよ違法薬物で仕上げた体に本質的な魅力はありません。そして肝臓など様々な臓器に負担を掛けることも間違いないのです。
マッスルメモリーの存在は人間の肉体に新たな可能性を示してくれるものであり、トレーニングに対するモチベーションを向上させてくれるものです。決してドーピング逃れのためにあるわけではない事を全てのトレーニーに理解して頂きたいと強く願います。
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この記事のライター
コンテストフィジーカーとして日々鍛錬しております。ボディメイク・筋トレ・フィットネス関連を中心に執筆致します。筋トレノウハウやサプリメントに関しても全て自分で実践している物。使用した経験がある物に限定しております。ネットに溢れるウソの情報や質の悪い情報を淘汰するため戦い続けます!