【夜の切り札】格好付けてバーに行ってちゃんと頼めるの?スタンダードカクテル⑩
知識は酒を美味しくします。目の前の一本、その一杯の香味の後ろに広がるストーリーに思いを馳せ、語ることができたら。知識は夜の切り札。今回も誰でも覚えておきたいスタンダード・カクテルを紹介します。立ち寄ったバーでメニューを見ずおもむろに好きなカクテルを頼める人生と頼めない人生、格好いいオトナはきっと前者です。
- 6,674views
- B!
デートでバーに行くまではいいけど、何飲むの?
想像してみて下さい。ディナーも終わり、デートの締めくくりとしてバーへ。ディナーの店と同じくらい店の様子、ロケーションなどの特徴をリサーチし、いい雰囲気のままデートを終えたらあわよくば、なんてことを考えながら歩みを進めます。
バーの重たいドアをくぐり、薄暗い店内を進んで案内された席でおしぼりを受け取り、メニューから飲み物を頼もうとしたその時!
「分かるの、ビールとカシオレしかない...」
なんていう状況になったら、格好つかないですよね。
できるならメニューを見ずに「キックの効いたマティーニを」とオーダーできる007ばりの男前になりたい、そんな最後の最後まで格好つけたい貴方に、①どんなバーでも頼め、②会話のネタとしても使えるスタンダード・カクテルを紹介します。
サヴォイ・タンゴ
リンゴとスモモの香りが豊かなカクテル。
数々の名作カクテルを世に送り出したロンドンはサヴォイ・ホテルのハリー・クラドック氏により考案されました。リンゴのブランデーであるカルヴァドスと、スモモの香りがするスロー・ジンを半分ずつ、というシンプルなレシピだけに、素材の香りが際立ちます。
スロー・ジンとは、蒸留酒にスモモの仲間である「スローベリー」を浸けることによって作られます。スロー・ジンのスローとは、スローベリーのことを指すスロー(Sloe)であって、遅いという意味のスロー(slow)ではないことは知っておきましょう。
なお、考案者のハリー・クラドックは「サヴォイ・カクテルブック」というカクテルのレシピ本を1930年に編集しています。「カクテル・ブックの古典中の古典」などと言われる名著だとか。
ロバート・バーンズ
18世紀のスコットランドの詩人、ロバート・バーンズの名前に由来していると言われています。
彼はウイスキーに関する詩を複数作っており、中でも『Scotch Drink』などが代表作のようです。
スコッチウイスキー、スイートヴェルモット、アブサンやドランブイを加えてシェークする一杯は、ウイスキーベースのカクテルの最高峰とも言われる誉れ高い味わい。
ウイスキー好きなら知っておきたいカクテルです。
ロブロイ
こちらもロンドンはサヴォイホテルのハリー・クラドック氏が生み出した名作の一つ。
18世紀スコットランドの義賊"赤毛のロバート"ことロバート・ロイ・マグレガー(愛称ロブ・ロイ)に由来しています。別名は「スコッチ・マンハッタン」「パーフェクト・マンハッタン」とスコッチベースのマンハッタンとして呼ばれています。(スタンダードカクテル①)
スコッチウイスキー、スイートベルモット、アンゴスチュラビターズをステアしたら、マンハッタンと同様にピックに刺したチェリーをグラスに沈め、レモンピールを振り掛けて完成。ロバート・バーンズと同様ウイスキー好きなら知っておきたい一杯です。
アフィニティ
こちらもスコッチベースのカクテル。
affinityは英語で親近感、密接な関係を意味し、法律やキリスト教においての婚姻関係を表す場合にも使われます。カクテルでは3カ国を代表する酒をバランスよく配合することでそれを表現します。
イギリス代表のスコッチ、フランス代表のドライベルモット、イタリア代表のスイートベルモットをステアしてレモンピールを振りかけて完成。
3カ国の友情の証は意外とあっさりしていて飲みやすい味。ギムレットと同様に、友情を確かめたい時に頼むといいかもしれません。
扉の奥の非日常へ
バーの中に一歩足を踏み入れれば、そこには日常と違う時間が流れています。
ほの明るい店内でタバコの煙とオールド・ジャズが気持ち良く混ざり合い、ゆったりとたゆたう空間。日中の堅苦しいことは全て扉の外で、目の前の一杯を少しずつ味わい、いつもより言葉少なに会話する。
そんな大人の寛いだ時間がそこにはあるでしょう。
大人の時間を上質にするには、少しだけ知識も必要だと思います。飲みたい一杯が決まったら、恐れず扉の奥の非日常へ。
この記事のキーワード
この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。