【夜の切り札】王道こそ夜の正道・スタンダードカクテル③
知識は酒を美味しくします。目の前の一本、その一杯の香味の後ろに広がるストーリーに思いを馳せ、語ることができたら。知識は夜の切り札。今回も誰でも覚えておきたいスタンダード・カクテルを紹介します。立ち寄ったバーでメニューを見ずおもむろに好きなカクテルを頼める人生と頼めない人生、格好いいオトナはきっと前者です。
- 7,782views
- B!
ファッションのクラシックスタイルを押さえるように、カクテルも
ファッションに、音楽に、文化の香りがするものにはあまねくクラシックスタイルがあるように、カクテルにもクラシックスタイルがあります。時代を超えて親しまれ続けたスタンダード・カクテルを知っていることは、カクテルの歴史にも通ずるということ。スタンダードを知っていれば、どこのバーでも頼むことができ、その場で語ることができます。
身に着けるものだけでなく、バーで飲む物も知識とこだわりを持って選ぶのがスマートな大人というものでしょう。
サイドカー
ブランデーの定番の一杯です。ブランデーにホワイトキュラソー、レモンジュースを加えてシェーク。
ベースのブランデーには何を使うか、キュラソーはグランマニエかコアントローか、シェークはソフトかハードか、などバーによって個性が生まれるカクテルと言えるでしょう。ブランデーをカルバドスに替えた「アップルカー」なども有名です。
口当たりが優しく、さっぱりした味わいはブランデーベースでも飲みやすいため、女殺し」という不名誉な名前も。
サイドカーという名は、側車付き2輪車(サイドカー)が事故に遭うと、運転者よりも側車側に乗っている同乗者(女性が多い)の方が重い被害を受けやすいとされることに由来するという説。サイドカーの衝突事故などの際には運転者に自己防衛の本能が働いてしまうため、側車側を障害物にぶつけて運転者自身を保護する結果になりやすく、側車に乗っている同乗者(女性)が亡くなる例が多かったらしい。この「サイドカー=女殺し」という図式と、本カクテルの飲み心地の良さ(酒に弱い女性でも飲みやすく、結果として酔いつぶれてしまいやすい)ことをかけあわせた、一種のシャレだと言われている。
ブラック・ルシアン
材料のロシアンウォッカに由来するシンプルなネーミングの一杯。
ロシア、アメリカ冷戦時代にあった1950年代のブリュッセルで、ホテル・メトロポールのバーテンダー、ギュスターヴ・トップ氏が考案したものと言われています。
甘い香りと口当たりとは裏腹に度数が強いため、飲み過ぎにはご注意を。
因みに、生クリームを浮かべたら「ホワイト・ルシアン」になります。
ビトゥイーン・ザ・シーツ
出典:bluelive.jp
1930年代に考案された“ベッドに入って”という名の意味深なカクテル。
レシピはブランデー、ホワイト・ラム、キュラソーとレモンジュースをシェークと、上述の「サイドカー」にホワイト・ラムが加わりほとんどが蒸留酒の、パンチの効いたカクテルです。
口当たりの良いカクテルですが、アルコール度数は高いので引き続き飲み過ぎにはご注意を。
寝酒として飲まれる「ナイトキャップ」としても有名。この1杯で心地よい眠りに誘ってくれるため、デートの終わりに頼むのもアリでしょう。二人がビトゥイーン・ザ・シーツとなるかはその前のトーク次第?
ネグローニ
アペリティフとして親しまれているカクテル。イタリアはフィレンツェのレストラン「カソーニ」の常連客であるネグローニ伯爵が愛飲していたと言われています。伯爵の許可を得て、バーテンダーのフォスコ・スカルセリ氏が発表したのが発祥とされています。
ドライジンにカンパリ、スイートヴェルモットを加えたほろ苦い味わいは、優雅な夜の食前酒として頼みたい一杯です。ソーダ割りにして飲みやすくするのもアリです。
知識は夜のひとときを豊かに...
こうした知識を持つことで、お酒の味わいも格段と幅が広がることでしょう。
カクテルの上等な愉しみ方を覚えれば、夜のひとときもまた奥深くなるというもの。
気分にあったカクテルを見つけて、素敵な夜を更かしてください。
この記事のキーワード
この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。