【夜の切り札】もうバーに行っても格好つく!スタンダードカクテル⑤
知識は酒を美味しくします。目の前の一本、その一杯の香味の後ろに広がるストーリーに思いを馳せ、語ることができたら。知識は夜の切り札。今回は誰でも覚えておきたいスタンダード・カクテルを紹介します。立ち寄ったバーでメニューを見ずおもむろに好きなカクテルを頼める人生と頼めない人生、格好いいオトナはきっと前者です。
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デートでバーに行くまではいいけど、何飲むの?
想像してみて下さい。ディナーも終わり、デートの締めくくりとしてバーへ。ディナーの店と同じくらい店の様子、ロケーションなどの特徴をリサーチし、いい雰囲気のままデートを終えたらあわよくば、なんてことを考えながら歩みを進めます。
バーの重たいドアをくぐり、薄暗い店内を進んで案内された席でおしぼりを受け取り、メニューから飲み物を頼もうとしたその時!
「分かるの、ビールとカシオレしかない...」
なんていう状況になったら、格好つかないですよね。
できるならメニューを見ずに「キックの効いたマティーニを」とオーダーできる007ばりの男前になりたい、そんな最後の最後まで格好つけたい貴方に、①どんなバーでも頼め、②会話のネタとしても使えるスタンダード・カクテルを紹介します。
アドニス
食前酒として人気のスタンダード。1884年にブロードウェイで最初にヒットした『アドニス』というミュージカルにあやかって、ニューヨークで誕生したと言われています。アドニスとはギリシャ神話においてアフロディーテに愛された美少年の名だとか。
シェリーの風味とスイートベルモットの繊細なバランスを愉しみたい一杯。
1900年代初頭から存在していたと言われ、100年以上経った今でも世界中のカウンターで不朽の名作として親しまれています。
ソルティドッグ
潮風や波を浴びながら汗まみれで仕事をする下級船員を指すスラングに因んだカクテル。イギリスで生まれ、アメリカで現在のスタイルとして定着しました。
ウォッカとグレープフルーツジュースのさっぱりした口当たりと、グラスの縁にスノースタイルとして施された塩の味のバランスが絶妙で、暖かい季節にはぴったり。
現在ではウォッカをベースにしていますが、元々はジンを使い塩を加えてシェークしたショートカクテルだったと言われています。グラスの縁に塩をつけた「スノースタイル」に発展したのはその後のことだとか。
モヒート
モヒートの起源は1586年にまで遡るようです。
16世紀後半に海賊フランシス・ドレークの部下であるリチャード・ドレークによって「Draque(ドラケ)」という名でキューバにもたらしたのが原型とされています。スピリッツと砂糖、ライム、ミントを混ぜたドラケは、医療目的としても消費されていたようで、ベースがホワイトラムになったのは1930年のことです。
また、ハバナの旧市街のバー「ラ・ボデギータ・デル・メディオ」で文豪ヘミングウェイがモヒートに出会い、喉と心の乾きを潤したというエピソードも。
タンブラーにミントの葉、ライム、砂糖を加え、ペストルと呼ばれる擦りこぎ棒またはバースプーンで潰すレシピは、バーマンによって大きく味が変わる一杯。ライムの皮を入れずにジュースだけを入れたり、ソーダを入れなかったり、砂糖が少ないレシピもあるので、自分の好きな味を見つけるまでトライしてみましょう。
ただし、ライムと砂糖は多めに入れたほうが氷が解けても水っぽくならず、全体に厚みが出るようです。
モスコミュール
食前食後を問わず飲めるカクテルであるオールデイカクテルとして、メジャーな一杯。
モスコミュールとは「モスクワのラバ」という意味があり、元々は「ラバに蹴飛ばされたように」パンチの効いた、強いウォッカベースのカクテルだったようです。
ウォッカ、ライム、ジンジャーエールを使うのが日本では標準的なレシピですが、本来はジンジャーエールでなくジンジャービアを使うとのこと。日本では入手が難しいため、ジンジャーエールで代用し、結果的にそれが定着したようです。
本式では銅のマグカップに入れて提供されるクラシックな一杯。暑い夜のクーラーとして頼むといいでしょう。
扉の奥の非日常へ
バーの中に一歩足を踏み入れれば、そこには日常と違う時間が流れています。
ほの明るい店内でタバコの煙とオールド・ジャズが気持ち良く混ざり合い、ゆったりとたゆたう空間。日中の堅苦しいことは全て扉の外で、目の前の一杯を少しずつ味わい、いつもより言葉少なに会話する。
そんな大人の寛いだ時間がそこにはあるでしょう。
大人の時間を上質にするには、少しだけ知識も必要だと思います。飲みたい一杯が決まったら、恐れず扉の奥の非日常へ。
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この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。