【夜の切り札】バーに行ってちゃんと頼めるの?スタンダードカクテル⑧
知識は酒を美味しくします。目の前の一本、その一杯の香味の後ろに広がるストーリーに思いを馳せ、語ることができたら。知識は夜の切り札。今回も誰でも覚えておきたいスタンダード・カクテルを紹介します。立ち寄ったバーでメニューを見ずおもむろに好きなカクテルを頼める人生と頼めない人生、格好いいオトナはきっと前者です。
- 5,402views
- B!
デートでバーに行くまではいいけど、何飲むの?
想像してみて下さい。ディナーも終わり、デートの締めくくりとしてバーへ。ディナーの店と同じくらい店の様子、ロケーションなどの特徴をリサーチし、いい雰囲気のままデートを終えたらあわよくば、なんてことを考えながら歩みを進めます。
バーの重たいドアをくぐり、薄暗い店内を進んで案内された席でおしぼりを受け取り、メニューから飲み物を頼もうとしたその時!
「分かるの、ビールとカシオレしかない...」
なんていう状況になったら、格好つかないですよね。
できるならメニューを見ずに「キックの効いたマティーニを」とオーダーできる007ばりの男前になりたい、そんな最後の最後まで格好つけたい貴方に、①どんなバーでも頼め、②会話のネタとしても使えるスタンダード・カクテルを紹介します。
シンガポール・スリング
1915年のシンガポールはラッフルズホテルで誕生したカクテル。英国の小説家であるサマセット・モーム(代表作『月と六ペンス』など)がシンガポールの夕焼けを世界一美しい東洋の神秘と賞賛し、そこから考案されました。
現在のラッフルズ・ホテルでのレシピは、ドライ・ジン、チェリー・ブランデー、パイナップルジュース、ライムジュース、ホワイト・キュラソー、ベネディクティン、グレナデン・シロップ、アンゴスチュラ・ビターズ と多くの材料を使うのに対して、それ以外の場所でのレシピではドライジン、チェリーブランデー、レモンジュース、砂糖、炭酸とシンプルになっています。ただ、どちらも発祥は同じホテルであり、どちらも由緒正しいシンガポール・スリングのレシピです。
夕日が沈むのをただ見つめるような、少しノスタルジックな気分の時に頼みたい一杯です。
ロングアイランド・アイスティー
紅茶を一滴も使うことなくアイスティーの味わいと色を表現したカクテル。ネーミングと飲みやすさとは裏腹に、ウォッカベースでアルコール度数も強いため注意が必要です。
1970年代にアメリカはニューヨーク州東部の島、ロングアイランドで誕生したことが名前の由来とされています。レシピはラム、ウォッカ 、テキーラ 、ドライ・ジン、グラン・マルニエ 、レモンジュース、砂糖、コーラ、レモン・スライスと見事に紅茶を含んでいません。コーラが多い方がより飲みやすくなります。
ジン・フィズ
ジン・フィズは、1900年手前に作られていたと言われている、歴史の長いカクテルです。フィズ (fizz) とは、ソーダの気泡がはじける音を表す擬音語。ジン以外にも、リキュールなどの酒類を砂糖、レモンを加えてシェークし、ソーダ水で割った飲物をフィズと呼びます。ウイスキー・フィズ、ブランデー・フィズ、カカオ・フィズ、バイオレット・フィズなどバリエーションは豊富です。
因みに、東京會館(有楽町・日比谷方面)やパレスホテル(皇居前)で供されるジン・フィズにはミルクが入り、よりまろやかな味わいに。
ミント・ジュレップ
1800年代の前半に飲まれていたと言う記録もある、超ロングセラーカクテル。
バーボンにミントの葉、砂糖、炭酸水をビルドしてできる一杯はモヒートと似ていますが、ラムを使うのがモヒート、バーボンを使うのがミント・ジュレップ、という違いがあります。
アメリカでは競馬のケンタッキーダービーのオフィシャルドリンクとなっており、このダービーが開催されるチャーチルダウンズ競馬場でのレース開催当日や、その前のパーティーで尋常でない量が提供されます。シーズン中はこの競馬場だけでも何万杯ものミント・ジュレップが飲まれるとの話も。
モヒート(スタンダードカクテル⑤)、スティンガー(スタンダードカクテル②)と合わせてミントの香りを楽しみたい時に頼みましょう。
扉の奥の非日常へ
バーの中に一歩足を踏み入れれば、そこには日常と違う時間が流れています。
ほの明るい店内でタバコの煙とオールド・ジャズが気持ち良く混ざり合い、ゆったりとたゆたう空間。日中の堅苦しいことは全て扉の外で、目の前の一杯を少しずつ味わい、いつもより言葉少なに会話する。
そんな大人の寛いだ時間がそこにはあるでしょう。
大人の時間を上質にするには、少しだけ知識も必要だと思います。飲みたい一杯が決まったら、恐れず扉の奥の非日常へ。
この記事のキーワード
この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。