【夜の切り札】格好つけてバーに行ってちゃんと頼めるの?スタンダードカクテル⑨
知識は酒を美味しくします。目の前の一本、その一杯の香味の後ろに広がるストーリーに思いを馳せ、語ることができたら。知識は夜の切り札。今回も誰でも覚えておきたいスタンダード・カクテルを紹介します。立ち寄ったバーでメニューを見ずおもむろに好きなカクテルを頼める人生と頼めない人生、格好いいオトナはきっと前者です。
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デートでバーに行くまではいいけど、何飲むの?
想像してみて下さい。ディナーも終わり、デートの締めくくりとしてバーへ。ディナーの店と同じくらい店の様子、ロケーションなどの特徴をリサーチし、いい雰囲気のままデートを終えたらあわよくば、なんてことを考えながら歩みを進めます。
バーの重たいドアをくぐり、薄暗い店内を進んで案内された席でおしぼりを受け取り、メニューから飲み物を頼もうとしたその時!
「分かるの、ビールとカシオレしかない...」
なんていう状況になったら、格好つかないですよね。
できるならメニューを見ずに「キックの効いたマティーニを」とオーダーできる007ばりの男前になりたい、そんな最後の最後まで格好つけたい貴方に、①どんなバーでも頼め、②会話のネタとしても使えるスタンダード・カクテルを紹介します。
雪国
1959年に日本で行われた第3回サントリーノーメル賞グランプリで優勝したカクテル。考案者は、山形県酒田市で喫茶店ケルン(Kern)を経営している井山計一氏です。90歳に迫らんとするお歳ながら現役のバーテンダーとして今も腕を振るっているそうです。
ウォッカ、ホワイトキュラソー、ライムジュースをシェークし、底にミントチェリーを沈め、グラスの縁は砂糖でスノースタイルに仕上げて完成。
文豪・川端康成のノーベル文学賞受賞をきっかけに産声を上げたこの国産カクテルは、今や世界中で飲まれるクラシックカクテルに。ウォッカの白、スノースタイルに彩られたグラスは、その名が表す通りトンネルの先の雪景色を思い起こさせます。
オリンピック
フランスはホテル・リッツ・パリにて、1900年にパリで開催された第2回のオリンピックを記念して作られたと言われています。時代の流れに合わせて多くのカクテルがレシピを変えて行く中、このカクテルのレシピは変わることなく残り続けています。
コニャック、グランマニエ、オレンジジュースをシェークして出来上がり。濃厚でフルーティーな味わいは、生まれの通りスポーツを讃える時や、祭典の際に頼みたい一杯です。
バラライカ
ロシアの民族楽器バラライカになぞらえて生み出されたカクテル。スピリッツ、ホワイトキュラソー、レモンジュースといった組み合わせはサイドカーと類似しており、サイドカーのバリエーションの1つとして考えられています。(スタンダード③)
ウォッカそのものは無味無臭のため、柑橘類の風味や甘さが感じられる風味。
ただ、こちらも口当たりがいいものの度数は強いため、注意が必要です。
派生元のサイドカーにはこんなエピソードも。
サイドカーという名は、側車付き2輪車(サイドカー)が事故に遭うと、運転者よりも側車側に乗っている同乗者(女性が多い)の方が重い被害を受けやすいとされることに由来するという説。サイドカーの衝突事故などの際には運転者に自己防衛の本能が働いてしまうため、側車側を障害物にぶつけて運転者自身を保護する結果になりやすく、側車に乗っている同乗者(女性)が亡くなる例が多かったらしい。この「サイドカー=女殺し」という図式と、本カクテルの飲み心地の良さ(酒に弱い女性でも飲みやすく、結果として酔いつぶれてしまいやすい)ことをかけあわせた、一種のシャレだと言われている。
ブラック・ヴェルヴェット
シャンパンを使ったカクテルの中でも、ちょっと異色の存在。シャンパンを使う場合はフルーティーなリキュールを割ることが多いですが、ブラック・ヴェルヴェットは黒ビールを割ります。
ブラック・ヴェルヴェットの歴史は古く、19世紀末頃からヨーロッパで飲まれていたようです。ビロードを思わせるような柔らかなグラスの泡と舌触り、喉越しからその名がついたと言われています。シャンパンの爽快さと黒ビールのコクを兼ね備えた一杯は、100年以上親しまれるロングセラーとして愛飲されています。
柔らかすぎず固すぎない、ビロードのような時間に包まれたい時に頼みたい一杯。
扉の奥の非日常へ
バーの中に一歩足を踏み入れれば、そこには日常と違う時間が流れています。
ほの明るい店内でタバコの煙とオールド・ジャズが気持ち良く混ざり合い、ゆったりとたゆたう空間。日中の堅苦しいことは全て扉の外で、目の前の一杯を少しずつ味わい、いつもより言葉少なに会話する。
そんな大人の寛いだ時間がそこにはあるでしょう。
大人の時間を上質にするには、少しだけ知識も必要だと思います。飲みたい一杯が決まったら、恐れず扉の奥の非日常へ。
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この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。