【夜の切り札】格好つけてバーに行ってちゃんと頼めるの?スタンダードカクテル⑦
知識は酒を美味しくします。目の前の一本、その一杯の香味の後ろに広がるストーリーに思いを馳せ、語ることができたら。知識は夜の切り札。今回も誰でも覚えておきたいスタンダード・カクテルを紹介します。立ち寄ったバーでメニューを見ずおもむろに好きなカクテルを頼める人生と頼めない人生、格好いいオトナはきっと前者です。
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デートでバーに行くまではいいけど、何飲むの?
想像してみて下さい。ディナーも終わり、デートの締めくくりとしてバーへ。ディナーの店と同じくらい店の様子、ロケーションなどの特徴をリサーチし、いい雰囲気のままデートを終えたらあわよくば、なんてことを考えながら歩みを進めます。
バーの重たいドアをくぐり、薄暗い店内を進んで案内された席でおしぼりを受け取り、メニューから飲み物を頼もうとしたその時!
「分かるの、ビールとカシオレしかない...」
なんていう状況になったら、格好つかないですよね。
できるならメニューを見ずに「キックの効いたマティーニを」とオーダーできる007ばりの男前になりたい、そんな最後の最後まで格好つけたい貴方に、①どんなバーでも頼め、②会話のネタとしても使えるスタンダード・カクテルを紹介します。
ベリーニ
1948年のイタリアはヴェネツィアにあるハリーズ・バーのオーナー、ジュゼッペ・チプリアーニが、ルネサンス期の画家であるジョヴァンニ・ベリーニの展覧会の際に作ったことが発祥と言われています。
鮮やかなピンク色はベリーニの絵画をイメージしているとか。
ベリーニの作品「聖母子像」(1510年)
ピーチネクター、スパークリングワイン、グレナデンシロップをビルドして完成。
スパークリングワインの爽快さ、桃の軟らかさがすっと喉を通り抜ける一杯です。
ブドウジュースを使うと「ティッツィアーノ」というカクテルになりますが、これはベリーニの弟子の名を関したものだとか。どちらも美術館の帰りに寄ったバーで頼みたいカクテルです。
ギムレット
ジンベースのキリッとした一杯。1890年頃のイギリス海軍で軍医だったギムレット卿が、将校たちのジンの飲み過ぎを憂い、健康維持のためにライムジュースを混ぜて飲むことを推奨したことが発祥とされています。このエピソードの元になったカクテルがジン・ビターズです。(スタンダードカクテル⑥で紹介しています)
他に、ギムレット(gimlet)が錐を意味する単語であるため、突き刺すような鋭い味からイメージされた、という説もあるようです。
ハード・ボイルド小説の名手、レイモンド・チャンドラーの代表作「The Long Goodbye」(邦題:長いお別れ)に登場することでも知られています。作中の名台詞「ギムレットには早すぎる」は男の友情を確かめ合う暗号として発せられました。
シンプルなレシピだからこそバーでの違いが生まれる一杯。余計なものを削ぎ落としたい夜に頼みたいカクテルです。
キューバ・リブレ
ラムコークでおなじみですが、キューバ独立により産声を上げたカクテルという歴史の重みがある一杯です。
時を遡って1898年。アメリカースペイン間の米西戦争においてアメリカが勝利し、キューバがスペインから独立して一国家として歩みを始め出した時代。ハバナではアメリカ兵と共にキューバへ訪れたコカ・コーラと、当時最も人気だったバカルディのゴールド・ラムをミックスして飲むことが流行しました。その際に「キューバの自由(=キューバ・リブレ)」 と乾杯したことがこのカクテルの発祥とされています。
現在も愛飲されているカクテルですが、こうした背景を知った上で自由を感じたい時に飲みたいですね。
オールド・パル
出典:gbiz.jp
アメリカでは禁酒法の施行以前から飲まれていたと言われている、歴史あるカクテル。ウイスキーの香味とカンパリ、ドライベルモットのほろ苦さがマッチした大人の風味の一杯です。透き通った赤みが特徴的で、ウイスキーよりも飲みやすいです。
オールド・パルという言葉は英語で「古くからの仲間」「懐かしい友人」を意味します。旧くからの友人と久闊を叙す夜に、静かに飲みたい一杯です。
扉の奥の非日常へ
バーの中に一歩足を踏み入れれば、そこには日常と違う時間が流れています。
ほの明るい店内でタバコの煙とオールド・ジャズが気持ち良く混ざり合い、ゆったりとたゆたう空間。日中の堅苦しいことは全て扉の外で、目の前の一杯を少しずつ味わい、いつもより言葉少なに会話する。
そんな大人の寛いだ時間がそこにはあるでしょう。
大人の時間を上質にするには、少しだけ知識も必要だと思います。飲みたい一杯が決まったら、恐れず扉の奥の非日常へ。
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この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。