回旋筋腱板(ローテーターカフ)の鍛え方、ストレッチを徹底解説
回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)、別名ローテーターカフは野球などの投球種目で特に重要とされている筋肉です。でも筋肉の位置や役割、効率の良い鍛え方などはあまり広く知られていないかもしれません。今回は、ローテーターカフの基本情報から鍛えるメリット、効率の良い鍛え方からストレッチまで徹底してご紹介していきます。
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アイキャッチ画像出典:cochanq.hatenadiary.jp
回旋筋腱板(ローテーターカフ)とは
回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)、別名ローテーターカフは、肩甲骨から上腕骨の上端にかけて位置する4つの筋肉の総称です。棘下筋(きょくかきん)・棘上筋(きょくじょうきん)・肩甲下筋(けんこうかきん)・小円筋(しょうえんきん)の4つの筋肉から構成され、棘下筋以外は深層に位置するインナーマッスルです。まずは、4つの筋肉からなるローテーターカフの構成とそのはたらきをご紹介していきます。
棘下筋(きょくかきん)
棘下筋とは、回旋筋腱板の1つであり、肩関節の静的・動的安定性に関与しています。棘下筋腱は、肩甲骨から上腕骨へ付着しているため、腕を正面に伸ばした状態から横へ動かす動作に作用します。
そのため、棘下筋の機能をしっかりと維持することが、肩関節の障害を予防するために効果的とされています。
棘上筋(きょくじょうきん)
回旋筋腱板の1つで、腕を横にして羽ばたくような動作に作用します。棘上筋や腱が損傷して起こるけがも多く、丁寧にケアをしながら鍛えていく必要があります。
肩甲下筋(けんこうかきん)
回旋筋腱板の1つで、肩甲骨の裏側から上腕骨へ付着しています。肩甲下筋は、肘を曲げたまま腕を体の正面へ伸ばし、腕を内側に動かしたときに作用します。肩甲下筋は筋トレだけでなく、ストレッチによるケアが大切であるため、ストレッチも併せてしっかりと取り組んでいきましょう。
小円筋(しょうえんきん)
回旋筋腱板の1つで、棘下筋に一部分を覆われています。肩甲骨後面の外側縁部から起こり、上腕骨結節の下部に着きます。小円筋は棘下筋と共に、肩関節後方の動的安定性に作用します。
肘を曲げたまま腕を正面に伸ばして体の外側へ動かす動作や、肘を伸ばしたまま腕を肩の高さで外側へ動かす動作に作用します。
ローテーターカフの役割
では、ローテーターカフにはいったいどのような役割があるのでしょうか?筋肉が使われるタイミングを意識して、筋肉の動きを実感していきましょう。
肩関節の外旋【棘下筋・棘上筋・小円筋】
上腕を回転軸にして、肩を外側へ開く動きに作用します。
肩関節の外転【棘上筋】
腕を体の横に伸ばし、円を描きながら頭上へ挙上する動きに作用します。
肩関節の水平外転【棘下筋】
肩の高さで真横に伸ばした腕を、肩よりも後ろへ動かす動きに作用します。
肩関節の水平内転【肩甲下筋】
肩の高さで真横に伸ばした腕を、体の前に動かす動きに作用します。
肩関節の内旋【肩甲下筋】
腕を前に伸ばし、腕全体を内側にひねる動きに作用しています。
肩関節の安定【ローテーターカフ全体】
関節窩(かんせつか)とよばれる肩関節を構成するくぼみの面へ、上腕骨頭を引きつけて安定させるはたらきがあります。肩関節には他の関節のような強靭な靭帯が備わっていないため、ローテーターカフが靭帯の代わりとして肩関節を安定させるはたらきをしています。
ローテーターカフを鍛えるメリット
筋トレを行うときには、そのトレーニングがどのようなメリットを持っているかを理解することが大切です。メリットを知ることで、ターゲットとなる筋肉へフォーカスできるためトレーニング効果が発揮されやすくなります。しっかりと押さえていきましょう。
上腕骨と肩関節を安定させる
ローテーターカフを構成する筋肉は、上腕骨と肩関節をつなげるはたらきを持つものが多いのが特徴です。そのため、ローテーターカフを鍛えると上腕骨と肩関節のつながりが強化され、肩関節が安定します。肩が脱臼してしまうことの多い人は、ローテーターカフのはたらきが弱い可能性があるかもしれません。
肩関節の故障を防ぐ
肩の筋肉というと、アウターマッスルを鍛える人が多いかもしれません。しかし外側の筋肉を強くするだけでは肩関節の故障を招きやすく、インナーマッスルであるローテーターカフをバランスよく鍛えていくことが大切です。インナーマッスルを鍛えても目に見えるような変化はありませんが、体の動きや普段の姿勢などに現れてきます。しっかりと鍛えていきましょう。
運動パフォーマンスを安定させる
ローテーターカフを鍛えると運動パフォーマンスの安定性につながると言われています。残念ながらローレーターカフと運動パフォーマンスの向上は直結するわけではありません。そもそも、ローテーターカフは4つの筋肉がバランスよく力を発揮することで、肩関節を安定させます。そのため、ローテーターカフをきちんとトレーニングしていくことで、安定した運動パフォーマンスを目指すことができます。
1. ローテーターカフ徹底トレーニング
これまでご紹介してきたポイントに注意して、実際にトレーニングへチャレンジしていきましょう。ダンベルなどの器具を使ったトレーニングが多いため、負荷は軽いものから調整して取り組むようにしてください。
1-1. エクスターナルローテーション
エクスターナルローテーションの正しいやり方
1. 体の側面を床に着けて寝そべる。
2. 下側の腕の肘を床に着けて、手で頭を支える。
3. 上側の手で軽めのダンベルを持つ。
4. ダンベルを持った腕でしっかりと脇を締める。
5. 脇を締めたまま、肘から下だけを動かし、手を天井へ向ける。
6. 1秒ほど静止したら腕を下ろし、4の姿勢に戻る。
7. 4~6を繰り返す。
セット数の目安
左右交互に15~20回ずつを目安にして2~3セット取り組みましょう。
注意するポイント
・脇をしっかりと締めることで肩甲骨が固定されるため、よりピンポイントでトレーニングしていくことができます。肘を支点にして動かすように意識しましょう。
・余分な力をいれないように、呼吸は止めずに自然に行っていきましょう。
1-2. インターナルローテーション
インターナルローテーションの正しいやり方
1. 体の側面を床に着けて寝そべる。
2. 頭は床から離してキープする。
3. 下側の手で軽めのダンベルを持つ。
4. ダンベルを持った腕でしっかりと脇を締める。
5. 脇を締めたまま、肘から下だけを動かし、手を天井へ向ける。
6. 1秒ほど静止したら腕を下ろし、4の姿勢に戻る。
7. 4~6を繰り返す。
セット数の目安
左右交互に15~20回ずつを目安にして2~3セット取り組みましょう。
注意するポイント
・頭をキープする際は、首周りへ余分な力が入らないように注意してください。
・支えが少ないため、体がぶれやすくなります。軸を意識して動きを安定させながらトレーニングしていきましょう。
・手首はしっかり固定させて曲がらないように気を付けましょう。
1-3. インワードローテーション
インワードローテーションの正しいやり方
1. 床に仰向けになって寝る。
2. 片手にダンベルを持つ。
3. 脇をしっかりと締めたまま、肘から下を体に垂直な方向へ倒す。
4. 手を床から離し、前腕と床が垂直になる位置まで持ち上げる。
5. 3の位置へゆっくりと戻す。
6. 3~5を繰り返す。
セット数の目安
左右交互に15~20回ずつを目安にして2~3セット取り組みましょう。
注意するポイント
・手首を固定させて肩周りの筋肉を意識しながらトレーニングを進めていきましょう。
・ダンベルの重さは2~3kgを目安にしてください。軽めのものから無理せずに進めていきましょう。
・リラックスしてトレーニングができるように呼吸を意識してください。
1-4. ショルダーサークル
ショルダーサークルの正しいやり方
1. 足を腰幅に開いて直立する。
2. 両手に軽めのダンベルを持つ。
3. 両腕を同時に動かし半円を描きながら両手を頭上に持ち上げる。
4. ゆっくりと両手を下ろして2の姿勢に戻る。
5. 3~4を繰り返す。
セット数の目安
10~15回を1セットとして2~3セットを目安にトレーニングを進めていきましょう。
注意するポイント
・両腕の肘はしっかりと伸ばしたままトレーニングをするように意識してください。
・肩への負荷がかかりやすいトレーニングなので、ダンベルは軽めのものから使用してください。
・腕の上下運動はゆっくりと等速で動かしていきましょう。
1-5. エンプティカンエクササイズ
エンプティカンエクササイズの正しいやり方
1. 両足を腰幅に開き直立になる。
2. 片手にダンベルを持ち、手の甲を正面に向けておく。
3. ダンベルを持った腕を伸ばしたまま、肩の高さまで持ち上げる。
4. 等速で動かしながら2の姿勢に戻る。
5. 3~4を繰り返す。
セット数の目安
10~20回を1セットとして左右交互に2~3セットを目安に行いましょう。
注意するポイント
・手の向きはしっかりと固定させたまま動かしていきましょう。
・腕の動きは等速で動かすように意識してください。
・姿勢が崩れないように、頭頂部が天井から引っ張られているイメージで背筋を伸ばしていきましょう。
2. ローテーターカフストレッチ
ストレッチに取り組むだけでなく、しっかりとストレッチをして筋肉をケアすることも欠かせません。筋トレ後に限らず、1日の終わりの体のメンテナンスとしてもぜひ取り組んでみてください。肩回りがスッキリして翌朝気持ちよく目覚められますよ。
2-1. バッククロスストレッチ(棘上筋)
バッククロスストレッチの正しいやり方
1. 直立か椅子に座った状態で背筋をまっすぐ伸ばす。
2. 右手の甲を腰に当てて肘を横に張る。
3. 左手で右肘をつかみ、引き寄せる。
4. 10~20秒ほどストレッチしたら力を抜いて1の姿勢に戻る。
5. 左腕も同じように2~4を繰り返す。
セット数の目安
左右交互1回ずつを1セットとして3~5セットを目安に取り組みましょう。
注意するポイント
・肘を引き寄せる際は、若干上体を引き寄せられる方向へ向けましょう。
・痛みを感じる場合は無理をせずに力を加減して行いましょう。
・肘を張った時に肩まわりが緊張しないように注意してください。
2-2. フラッグストレッチ(棘下筋)
フラッグストレッチの正しいやり方
1. 直立か椅子に座った状態で背筋をまっすぐ伸ばす。
2. 右手の甲を腰に当てて肘を横に張る。
3. 左手で右肘をつかみ、引き寄せる。
4. 10~20秒ほどストレッチしたら力を抜いて1の姿勢に戻る。
5. 左腕も同じように2~4を繰り返す。
セット数の目安
左右交互1回ずつを1セットとして3~5セットを目安に取り組みましょう。
注意するポイント
・肘を引き寄せる際は、若干上体を引き寄せられる方向へ向けましょう。
・痛みを感じる場合は無理をせずに力を加減して行いましょう。
・肘を張った時に肩まわりが緊張しないように注意してください。
2-3. ドアを使ったストレッチ(肩甲下筋)
ドアを使ったストレッチの正しいやり方
1. ドアを開けた状態で通路に直立する。
2. 右腕から右肩までを壁に着けて伸ばす。
3. ゆっくりと体重を前に移動させて胸から肩にかけてを開く。
4. 20~30秒間キープ。
5. 重心を元の位置に戻し1の姿勢へ。
6. 左腕も同じように2~5を繰り返す。
セット数の目安
左右交互1回ずつを1セットとして5セットを目安に繰り返しましょう。
注意するポイント
・肩甲下筋をストレッチするためには小胸筋もストレッチする必要があるため、しっかりと胸の筋肉も意識してストレッチしていきましょう。
・体重移動は等速でゆっくりと行ってください。
2-4. 鋤のポーズ(棘上筋)
鋤のポーズの正しいやり方
1. マットを敷いた床の上に仰向けで寝る。
2. 両膝を胸に近づける。
3. 腰を持ち上げて両手で支える。
4. つま先を頭の先につけるように伸ばす。
5. 20秒ほどキープ。
6. 背骨を1個ずつ床につけるように脚を下ろす。
7. 1の姿勢に戻る。
セット数の目安
自分の体調に合わせて1〜3セットほどを目安に行いましょう。
注意するポイント
・腰や首を痛めている方は無理をしないで取り組みましょう。
・首を動かしてしまうと痛める恐れがあるので動かさないようにしてください。
・手で腰を支える時は肘を床につけた状態にしてください。
内側から強い肩を目指して
アウターマッスルばかりを鍛えてしまうと、思わぬけがが起こったり思うようにトレーニングの効果が出なくなったりすることがあります。そんな時こそ注目してほしいのがインナーマッスルです。
肩のインナーマッスルであるローターカフは、肩関節にとってとても重要な役割を果たしています。バランスよくしっかり鍛えていくことで、アウターマッスルの肥大にもつなげていきましょう。インナーマッスルのトレーニングは継続して行うことで効果が現れてきます。根気強く続けていきましょう!
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この記事のライター
茨城の筑波山生まれ。「いばらぎ」じゃなくて「いばらき」です。