思わず吹き出すユーモアたっぷりのクラシック6選をお届け
クラシック音楽は、まじめすぎて堅苦しいと思っていたのは、現代人だけではなかったようです。作曲家本人も時にはふざけたり、パロディを取り入れていました。吹き出してしまう面白いものを6曲ご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:jp.yamaha.com
クラシック音楽だってふざけることもある
出典:president.jp
クラシック音楽のおふざけは、中にはちょっと聴くためのテクニックが必要なものもありますが、わかりやすいものをあげてみました。クラシックに馴染みのない人でも楽しむことはできます。作曲家も人間ですから、「自分も楽しく、人をも楽しませたい」という気持ちは昔でも変わりはなかったのですね。6曲ですが、最期の「ホフヌング音楽祭」は4曲含まれています。どうぞお楽しみください。
1. サティ 官僚的なソナチネ
エリック・サティは皮肉屋で一風変わった人だったようです。、音楽を背景のために書いた最初の人といわれます。つまり、今でいうところのBGM音楽ですね。題名も変なものが多く、「ひからびた胎児」「犬のためのぶよぶよした前奏曲」などがあります。この官僚的なソナチネは、ピアノの比較的初心者が習うソナチネ(小さなソナタ)の中のクレメンティのソナチネをパロディ化した曲です。ピアノを習ったことがある人は、すぐに気がつくと思いますが、そうでない人も楽しめると思います。楽譜の所々にはこんな「せりふ」が書かれています。
ざっとご紹介しますと、「1楽章「男が、楽しそうに気分良く職場に向かって出かけていく。頭の中では今日の朝食の時のことを思い浮かべる。自分はある上品な美人を愛している。自分はペンも中国製の帽子も愛している。大股で歩き階段から落っこちる。なんてすごい突風なんだ。自分の机の椅子に座り幸せな気分になる。」
2楽章「昇進について考える。仮に昇進しなくとも給料は上がるだろう。その前に引越しをしよう。あるアパートについて目星をつけている。でも昇進か昇給しなかったらどうしよう。」
3楽章「古臭い歌を鼻歌で歌う。ピアノの音が隣の家から聴こえてくる。なんて悲しい音色だろう。踊ってみよう。ピアノがまだ続いている。この役所を辞めなければならない。そうだ、辞めてしまおう、この居心地のよい職場を」という、隣から聴こえるソナチネの練習を聞きながら、なんと職場を辞めようと決断してしまう男の心の動きを表しているというユニークな曲です。
2. ロッシーニ 二匹の猫のふざけた二重唱
ロッシーニの、おふざけで作った曲がこちらです。二重唱ですが、最初から最期まで「ニャーオ」「ニャーオ」の猫の鳴き声で掛け合いになっています。短い曲ですので、おそらく「生真面目で難しい曲の合間用」に作られたのではないかと予想されます。猫の発情期を連想しますね。現代も人気があり、いろいろな編成で演奏されています。
3. モーツァルト 音楽の冗談
モーツァルトは、映画「アマデウス」などで少し誇張されてはいますが「おふざけ大好き」な性格をよく表現していたと思います。ピアノを後ろ向き、舌で弾いてみせるなどの曲芸もしていたと伝えられます。この「音楽の冗談」は、かなり高度な「おふざけ」なので、この時代の「古典派」を聴きなれた人でなければわかりづらいかもしれません。例えば、ありえない楽器編成、変な和声、楽器の奏法、しつこい繰り返しやヴァイオリンの演奏ミスを感じさせる部分など、当時の凡庸な作曲家を皮肉ったものとなっています。
冗談を感じ取ってみてくださいね。
4. ソラブジ ショパンによる一分間ワルツ
ソラブジという作曲家は、あまり知らせていませんがとても変わった人ということで有名です。ピアノの大変な名手ですが、死後自分の作品をすべて破棄して演奏をしてはならないと遺言したそうです。しかし、それをきちんと「守らなかった」おかげで現在作品を聴くことができます。パロディというよりは、「主題にして」という方が正しいかもしれません。
ピアノ演奏に結構腕に自信がある人でも、彼の楽譜を一瞬見ただけで閉じたくなるような超絶技巧を必要とする作品がほとんどです。この「ショパンによる一分間ワルツ」は「子犬のワルツ」を指しています。誰でもよく知っている曲なので、すぐに気がつきますが曲はだんだんと「ありえない」ほどにデフォルメされていきます。演奏時間は1分ではなく、4分ほどです。
5. ライゼンシュタイン 人気協奏曲
ライゼンシュタインについては、あまりよくわかっていませんが、この「人気協奏曲」というのは有名作曲家のいろいろな協奏曲を混ぜこぜにして「盛りだくさん」聴くことができる「お得感満載」の曲です。クラシックのピアノ協奏曲に馴染みがない人は、途中で変わっていくのに気がつかないかもしれませんが、「目で」楽しむこともできます。というのは、演出がなかなか面白く、なんとピアニストが途中で席を立っていなくなったり、自分の出番がないので暇そうにしていて、うっかりしてあわてるというような場面、その他があるからなのです。最期までぜひ「見て」ください。技巧の素晴らしさと裏腹なパロディは、音楽の持つ本来の意味である「人を楽しませる」ということを思い出させてくれます。協奏曲は、グリーグ、ラフマニノフ、チャイコフスキーなどです。
6. その他 ホフヌング音楽祭より
「人気協奏曲」もホフヌング音楽祭で「大人気」となりましたが、1950年代から好評だった同音楽祭の模様をご覧下さい。ご紹介するのは、1992年のもので「水道ホースと管弦楽のための協奏曲」や「愛の協奏曲」などがあります。オープニングから「おふざけ」の連続です。音楽ホールにいてはわからない演出もありますので、「見て」楽しめると思います。ちょっと触れますと、オートバイをすっ飛ばしてくる男が出てきます。その後を交通課の警官が追ってきて、なんと男はオーケストラの舞台に…。この後はご覧下さいね。
「愛の協奏曲」では、ダブルブッキングで二人のヴァイオリニストが繰り広げる確執が、最後にはなんと…。
とっておきの品のよい冗談
いかがでしたでしょうか。クラシック音楽のユーモアは、モーツァルトの作品のようにちょっと敷居が高いものもありますが、品の良い冗談でありどんな人でも楽しむことができると思います。普段気難しい人が実は結構「天然」だったりすると、一層面白く感じるのと同じかもしれません。ちょっと笑っていただければ幸いです。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。