ワーグナーのおすすめ名曲15選【彼の生涯や逸話と合わせてご紹介】

19世紀のドイツの音楽家で「歌劇王」とも呼ばれるワーグナーは、台本からほぼ全てを一人で手がけ、沢山の歌劇作品を生み出しました。彼は音楽以外にも哲学や思想に精通しており、理論家としても知られた多彩な人物です。今回はワーグナーが作った楽曲のうち、特におすすめしたい15選を、彼の生涯と合わせてご紹介します。

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ワーグナーの生涯

幼少期

出典:tavitt.jp

リヒャルト・ワーグナー祝祭歌劇場

ワーグナーは1813年、ドイツの音楽好きな下級官吏の元に生まれます。
ワーグナ一家は彼が生まれる以前から音楽に親しみのある家族で、よく家で演奏会が開かれていたことから彼自身も音楽と触れ合う機会が多かったようです。また一家で社会学者マックス・ヴェーバーと親交があり、ワーグナーに物心ついたころから一生尊敬し続けることとなった数少ない人物となりました。
もう一人彼の思想を大きく左右する人物がいました。ベートーヴェンです。15歳の頃、ベートーヴェンの音楽と出会い強烈な憧れを抱きます。そのきっかけから、音楽好きな親の意思ではなく自らの意思で音楽家を志します。ただ、次第にドイツオペラの巨匠であるカール・マリア・フォン・ウェーバーに憧れが移り変わり、劇作にも興味を持ち始めました。これがのちに19世紀のヨーロッパに影響を及ぼすことになる、ワーグナー歌劇作品の大きな原動力となるのです。

音楽家、そして思想家の青年期

出典:tagebuch-von-s.blogspot.com

現 ライプツィヒ大学

1831年、彼が18歳の時にライプツィヒ大学に入学します。そこでは音楽・哲学などリベラルアーツを始めとする多種多様な学問を学びます。1832年以降、今度は多くの歌劇曲を作りますが最初は生計を立てられず貧困に苦しむ生活を送るようになります。彼の最初の歌劇「婚礼」を作曲したのが19歳の時であり、若くから音楽・脚本・思想と言った表現活動に才覚を示していました。しかしそんな時期、彼は大学をさしたる理由もなく中退してしまいます。彼の生涯を通して飽きやすい性格であることが伺えるエピソードは他にもいくつかあります。例えば彼が20歳の頃、才能の片鱗を認められドイツのヴュルツブルグの市立歌劇場の指揮者に就任しますがすぐに飽きてやめてしまいます。彼の20代は貧困にあえぐ生活が続きますが、そのわけは収入が極端に少ないというよりも浪費癖が離れなかったことにあるようです。

亡命時代

出典:www.asahi-net.or.jp

スイス チューリッヒのヴェーゼンドンク邸

1849年ワーグナーはドレスデンで起こったドイツ三月革命の革命運動に参加しました。しかし結果的にこの運動は失敗。全国で指名手配されたためフランツ・リストの助けによりスイスのチューリッヒに逃れました。
ここから8年間の亡命生活が始まります。難を逃れてスイスにやってきたワーグナーですが、この亡命生活は彼にとって運命だったのではないかと思えるほど芸術を生み出すことに専念できて現在にも語り継がれる作品が生まれます。初めの3年間は思想家として数々の論文を発表すると同時に、音楽家として1850年にヴァイマルでローエングリンの初演を行いました。2年後の1852年、スイスにてこの後の人生を左右することになるヴェーゼンドンク夫妻と知り合います。1857年、以前より音楽家ワーグナーの支持者であるヴェーゼンドンク夫妻は「彼が作曲に打ち込めるように」と自宅の隣の屋敷を提供します。彼らの好意により居心地の良い住処を手にいれたワーグナーですが、彼を神のように信奉していた美しい夫人マチルデ・ヴェーゼンドンクと恋に落ちてしまいます。人目をはばかるこの恋愛は彼の芸術的感性に大きな影響を与え後に「トリスタンとイゾルデ」を書くきっかけになりました。

晩年期

出典:1000ya.isis.ne.jp

コジマ・ワーグナーとリヒャルト・ワーグナー

1864年ついに追放令が解除されたことにより、ワーグナーは晴れてドイツ帰国に成功しました。彼の帰国に関してドイツ国内では賛否両論ありましたが、亡命期にたくさんの芸術作品を生み出していることから音楽界では彼の帰国は喜ばれました。しかしその翌年、政治的なスキャンダルと愛人コジマとのスキャンダルのダブルパンチによりミュンヘンに居られなくなり、ルンツェン郊外のトリープシェンに移住します。そこではコジマと同居しました。その後ミュンヘンでマイスタージンガー初演を果たすなど、音楽活動において順調に活躍を続けます。
1883年2月13日、心臓発作で亡くなります。ワーグナーの69年はここで幕を閉じました。ロマン派音楽終焉のきっかけを作り出し、クラシック音楽の方向性を大きく変えた人物として知られる音楽界の偉人となりました。

ワーグナーのおすすめ名曲15選

さてここからは、ワーグナーの名曲を15選に絞ってご紹介していきます。
歌劇王と呼ばれたワーグナー。その作品の多くは世論を動かすほど物語性のある大作であり、思想家でもあり脚本家でもあったオールマイティな彼の聡明さを垣間見ることができます。オペラの中で登場する音楽はどれも特別な想いが込められておりそれぞれに色の異なる美しさを持った曲ばかりです。

オペラ『妖精』(1833)

ライプツィヒで音楽を学ぶ修行期間に完成させた彼にとって初期の作品です。また、ワーグナーが完成させた最初のオペラ作品でもあります。ハッピーエンドのこの曲を完成させるモチベーションとして、ワーグナーが書いた自身の伝記「我が生涯」という本によると、10年離れた姉の影響が大きかったようです。その書籍によると「私のことを見捨てたかと思っていたこの姉が、やっと私の仕事に注目し、大きな期待を示すようになったことは、私の功名心を強く刺激した。こうして、ロザーリエへの甘く熱狂的なまでの愛情が私の心に広がっていった。その清純さと純粋な情熱は、男女間のもっとも高貴な関係にも比較しうるものだった」と書き記されています。

『ジークフリート牧歌』(1870)

この曲はワーグナーの妻コジマのために作られた器楽曲です。1870年12月25日の初演はなんと「非公開上演」であり、妻の誕生日に上演されました。この曲は室内オーケストラのための楽曲であり、ワーグナーは妻の誕生日を祝うために仲間とサプライズ上演を遂行しました。この曲の原題は『ジークフリートの鳥の歌とオレンジ色の日の出をともなうトリープシェン牧歌』であり、これはワーグナー夫妻の私的なエピソードに関連する原題だそうです。

『ファウスト序曲』(1840)

この曲が作られたきっかけは1839年パリの演奏会にてベートーヴェンの交響曲第9番を聴いたことでした。ワーグナーはこの時、交響曲第9番を聴いて感銘を受け、ゲーテの代表作「ファウスト」に基づいて曲の構想を練りはじめました。曲調としては重く暗い部分と柔らかく優しいメロディーがわずか13分の演奏時間の中で交差します。これは着想を得た元であるベートーヴェン交響曲第9番にも共通するところでもあります。
パリ音楽院管弦楽団に初演してもらうつもりで楽譜を用意しましたが結局実現することはありませんでした。初演は1844年彼自身の指揮により開催されました。

オペラ『さまよえるオランダ人』(1842)

こちらは3部構成のオペラ作品です。ワーグナーは一度船旅の途中に嵐に遭う経験をしており、その経験が元になっているとも言われています。内容としては「船に乗っている呪われたオランダ人の船長が永遠に彷徨い続ける」というストーリーです。ドイツの詩人ハインリヒ・ハイネの「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想記」という作品に着想を得て完成されたこの作品。この元になったハインリヒの作品も、ある有名な伝説から着想を得ています。それは、神罰を受けてこの世と煉獄(カトリック教会の教義)との間を行き来し続ける幽霊船の伝説です。ワーグナー自身の実体験とも共通する部分があります。

オペラ『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』(1845)

タンホイザー序曲

初演はドイツのドレスデンにある宮廷歌劇場で行われましたが、その指揮はワーグナー本人でした。この曲は3部作で構成されるオペラの序曲です。舞台は13世紀のヴァルトブルク城。官能と快楽に溺れた中世の騎士、タンホイザーの人生がテーマになっています。タンホイザーとは騎士であり抒情詩人でもある13世紀の人物であり、十字軍にも参加していたことで知られています。この歌劇では、タンホイザーとエリザベト姫の恋愛を描いています。

巡礼の合唱

この曲のテーマは「愛」。ヴァルトブルクの歌合戦が行われ、ヴォルフラムは純愛の歌を歌ったのに対しタンホイザーは快楽を讃える歌を歌ったため反感を買ってしまいます。この歌合戦は1207年にヴォルフラム・フォン・アッシェンバッハの後援者であったテューレンゲン方伯ヘルマン1世の宮殿で行われた歌合戦です。この戦いは負けた方が命を落とすという残忍なものでした。
この曲には伴奏がなく男声のみで歌われている合唱曲です。曲が始まると声が段々と近づいて来て、曲の終盤にかけて遠ざかっていくイメージがあります。

歌劇『ローエングリン』(1850)

こちらはワーグナーのオペラ曲です。10世紀前半のベルギーのアントウェルペンを舞台にしています。1850年8月28日の初演はフランツ・リストの指揮で行われました。これ以降に作曲された楽劇とは異なりロマンティックオペラと呼ばれる部類に属します。特に有名なのは結婚行進曲「婚礼の合唱」です。

楽劇4部作『ニーベルングの指環』

ラインの黄金(1854)

ニーベルングの指環の「序夜」に当たるこの曲。それぞれが独立したストーリーを持っている4部作あるうちの、1番初めの曲です。ニーベルングの指環は4部作合わせて15時間にもなる大作なのですがこちらは2時間30分と最も短い作品です。「ラインの黄金」で作られた指輪がテーマになっているこの曲。その指輪を手にした者は、限りない力を手にするといったストーリーです。

ワルキューレの騎行(1856)

この曲は「ニーベルングの指環」の第1夜、楽劇「ワルキューレ」の第三幕の前奏曲です。ところでワルキューレとは、一体何なのでしょうか。ワルキューレとは、北欧神話に登場する半神のことを指します。意味は「戦死者を選ぶ者」です。また見た目はペガサスに乗る美しい戦乙女です。この曲はワルキューレたちが戦死した兵士の死体を山へ持ち帰る場面を描いています。

ジークフリート(1871)

少し疑問に思った方もいるかも知れませんが、作曲時期が前の曲と数年間ズレています。これは10年ほど中断していた期間があったからなのですが、1856年に着手したにも関わらず10年もの中断期間があったのは何故でしょうか。理由としては、1850年に上演された『ローエングリン』の後、作品を発表できておらず音楽界から忘れられるのではないかと言う危機感があったことや、この4部作の構想拡大による方針変更などが考えられます。

神々の黄昏(1874)

このニーベルングの指環の最終曲です。
4部作とも独立したストーリーを持ちながらタイトルの「指環」をテーマに物語が繰り広げられるという共通点があります。こちらは最終幕なのでエンディングを迎える訳ですが、指環はラインの底に戻り、呪いは解けて終わりを迎えます。

歌劇『トリスタンとイゾルデ』(1859)

こちらは全3幕の楽劇です。タイトルから予想できるように主な登場人物はトリスタンとイゾルデの2人です。王に嫁ぐために航海しているアイルランドの姫、イゾルデとその舵を切るトリスタン。2人が死の薬を飲みますが、それは「愛の薬」でした。2人はその誤りによって激しく愛し合います。しかし、当初の目的であった王に2人が愛し合っているところが見つかってしまいます。激しい剣闘の末、トリスタンは息絶え、イゾルデも息絶えてしまうという悲愴な結末を迎えてしまいます。

ヴェーゼンドンク歌曲集(1857)

こちらはワーグナーには珍しく、連作曲歌です。5曲編成であり 1.天使 2.とまれ 3.温室にて 4.悩み 5.夢 というタイトルが付いていますが最後2曲は「トリスタンとイゾルデのための習作」というサブタイトルが付いています。動画は1.天使です。こちらは連作曲の導入部であり、生と死や天国の喜び、天使との対話を描いたものです。

歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(1867)

1845年に完成・初演された「タンホイザー」と対をなす喜劇的作品として作られた作品です。そもそもマイスタージンガーとはどのような意味なのか、それは、職人の親方が音楽を作ったり演奏したりすることを指し「親方歌手」とも呼ばれます。簡単にあらすじを説明します。
フランケン地方出身の若い貴族ヴァルターが金細工師の娘、エファに恋をします。彼女に求婚するためには歌合戦で優勝しなければなりません。
全体観としては喜劇であり、芸術の素晴らしさを表現しています。またこの曲は「グランブルーファンタジー」のCMにも用いられておりRPGを連想させられます。

楽劇『パルジファル』(1882)

1850年代に「パルツィバル」の「聖金曜日」(復活祭に先立つ金曜日で十字架にかけられたイエスを記念する日)の音楽に感動し、自身の楽曲「パルジファル」第3幕の着想を得たとされています。さてこの曲が完成したのが1882年なので、曲のイメージを持ってから約30年の間未完成の状態だったことがわかります。この30年強の間には、他曲の上演に忙殺されていたり、作った構想を大幅に書き換えたりといずれも音楽活動に勤しんでいたことが理由です。この曲が彼の最期の曲となるのですが、これを完成させた1年後に亡くなってしまいます。この最期の曲はワーグナーの神髄とも言われています。

最後に

ドイツの音楽家リヒャルト・ワーグナーの音楽は壮大であり荘厳で、少しドイツの音楽家らしさも感じられたのではないでしょうか。偉大な人物に常に憧れを抱き、彼自身もその一人となった才能ある芸術家は現在でも歌劇王として尊ばれています。その時代、その人物にしか作り得なかった唯一無二の音楽を味わい、ワーグナーの歌劇や音楽を通じてその世界観を楽しんでいただきたいです。

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花火

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