1度は飲んでみたい!本当に美味しい純米大吟醸10選
日本酒が苦手な人の理由は、鼻につんと来るアルコールが嫌とか、甘ったるい味が嫌い、ということが多いです。そういう人はぜひ「純米大吟醸」とラベルにあるお酒を飲んでみてください。その嫌なイメージがおそらく変わるはずです。ここでは、その純米大吟醸の中でも、本当に美味しいと思えるものを厳選して10品目ご紹介します。
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「純米大吟醸」とは原料と作り方を示したもの
日本酒はおおむね6種類に分けられる
日本酒を買いに行くと、ラベルに「純米」とか「吟醸」とかの表記があり、よくわからないかもしれません。日本酒は非常に大まかに言うと「原料」と「作り方」によって6種類に分かれ、この表記はそれを示したものなのです。具体的には、
・純米酒
・本醸造酒(この場合は何も表記しない場合もある)
・純米吟醸酒
・吟醸酒
・純米大吟醸酒
・大吟醸酒
の6種類になっていて、これを見るだけで一応の原料と作り方がわかるのです。さらに製法や原料の特徴をここに「山廃」とか「槽搾り」などと記載する場合もありますが、法律上決められているものは以上の6つになります。
原料は「純米」か「本醸造」かで区分される
まず原料ですが、純米という表記は「米」と「米こうじ」だけで作った日本酒だということを示しています。これに対して「本醸造」あるいは何も書いていない場合は、米と米こうじに、醸造アルコールを添加している、ということを示しています。本醸造酒には添加物が入っているということでネガティブなイメージがあるかもしれません。しかし、添加の上限は白米に対し10%以下の重さと非常に低いこと、添加するアルコールはちゃんとした蔵元では「米焼酎」であり化学合成のものではないこと(ただしコストを抑えようとしてそういうものを使っているメーカーもあります)、そして添加する目的は味を安定させ、味わいに切れ味をだすことであること、などから一概に悪いことだとは言えません。
上の6種類のうち、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒は、米と米こうじだけで作られていて、それ以外は醸造アルコールが添加されているということです。
味わい的には大まかに言うと、
・純米酒=濃醇(濃い)で甘口
・本醸造酒=端麗(薄い)で辛口
という傾向になることが多いです。筆者の個人的な好みでは、本醸造酒は味が強くなりすぎて米のうま味を消してしまっているような印象があるので、基本的には飲みませんし、このような記事の中でもご紹介しません。
「吟醸」「大吟醸」などは作り方の表示
次は作り方による区分です。日本酒を仕込むときは、米を精米、ほかの言い方ですと精白します。具体的には米の外側を削ることで、日本酒の用語では「磨く」と言ったりします。この目的は、米のタンパク質は芯に近いほど純度が上がるので、できるだけ味わいの透明な日本酒にするためです。したがって磨けば磨くほど味から雑味が減っていきます。どれだけ磨くかの割合を精米歩合と言いますが、それが70%という時には、30%を磨いている、ということです。ちなみにその30%は廃棄などはせずに、煎餅の原料などに再利用されます。この精米する割合によって、吟醸、大吟醸などの表記が変わるのです。具体的には、
・精米歩合70%まで=通常の日本酒(表記無し)。
・精米歩合60~50%=吟醸
・精米歩合50%以下=大吟醸
となります。60~70%の場合は特別純米酒というように「特別」という言葉をつける場合もあります。大吟醸の場合は、25%などの精米割合で、つまり85%は磨いてしまう、というものもあり、そういう日本酒は本当にすっとした透明感のある味わいですが、同時に原料費も上がるので、かなり高額になります。
ここまででお分かりいただけたと思いますが、日本酒はこのように原料と作り方の2つの要素で区分されているのです。したがって、今回取り上げる「純米大吟醸酒」とは「米と米こうじだけを原料にして」「精米を50%以下まで行った」日本酒、ということになります。ですので、どれも基本的には非常に米の純度の高いうま味と、比較的濃くて甘い味わいのものです。ただし、甘いと言っても砂糖の甘さではなく、やさしい味、という表現のほうがいいかもしれません。
以上をお分かりいただいたうえで、ぜひその純米大吟醸の選りすぐりの10品をご覧ください。
第1選 勢起 純米大吟醸 槽搾り(大澤酒造)
お酒の特徴
大澤酒造という蔵元は非常に歴史が古く、蔵から「日本最古の酒が発見された」というニュースが飛び込んでくるくらいです。その伝統の技を注ぎ込んで醸したお酒です。槽搾りとは、もろみを搾って生酒を取り出す校庭の中の1つの方法です。今は多くの蔵元が自動圧搾機や遠心分離機機械で行いますが、それに対し槽搾りは袋にもろみをつめて重しを載せ自然に生酒が搾られるのを数日かけて行う、江戸時代の方法です。この方が、もろみが空気に触れる時間が長いので、でき上った日本酒の味がよりマイルドになります。コストも時間もかかる方法ですが、味にこだわっている蔵元はいまだにこの方法を採用している場合があります。
精米歩合
45%
味わい
端麗中口。45%まで精米している割には、米の味わいがふくよかに感じられます。一瞬甘口の酒とも感じられますが、酸がしっかりとしているのですっきりしたのど越しです。
第2選 玉川 自然仕込 純米大吟醸 玉龍 無濾過生原酒(木下酒造)
お酒の特徴
最近女性の杜氏が話題になったりしますが、この木下酒造の杜氏はフィリップ・ハーパーさんというイギリス人です。イギリス人でありながら、というのは偏見ですが、日本酒業界では非常に優れた酒を醸すと注目されています。自然仕込みというのは、お酒を醸すときに通常は発酵を促す酵母を添加するのですが、それを「蔵の中に住んでる自然の菌が発酵させてくれるのを待って」行う方法で、「山廃」とも言われています。生原酒とは、「生」という情報と「原酒」という情報が入っています。「生」とは、通常は搾った生酒を、殺菌と発酵を止めるために加熱するのですが、それをしないことです。「原酒」とは、通常はでき上った日本酒のアルコール度が高いので、水を加えるのですが、それをしないことです。つまり、このお酒はどこまでも自然な状態で作られている、ということです。
精米歩合
50%
味わい
濃醇中口。日本酒には五味というものがあり、甘味・酸味・渋み・苦味・辛味ですが、それが非常に調和しているお酒です。口に含むと米のうま味がやさしく押し寄せ、しかしそれがいつまでも残らずに、飲んでしまうとあとはすっきり爽やか、といういつまでも飲み続けられるできあがりです。
第3選 竹泉 純米大吟醸 山田錦 無濾過 生(田治米)
お酒の特徴
蔵元の田治米のポリシーは「一粒の米にも無限の力あり」です。つまり米のうま味を最大限に引き出すということです。そのため今もほとんどの作業を手で行っています。この純米大吟醸はその特徴が存分に発揮されています。これはラベルには記載はされていませんが、蔵内の自然の酵母を使った「山廃仕込み」です。
精米歩合
50%
味わい
濃醇中口。穏やかな吟醸香と、しっかりした米のうま味が特徴です。飲んだ後にいつまでも余韻が残る感じです。純米大吟醸は基本的に、10℃程度に冷やして飲むのがよいのですが、これは35℃くらいのぬる燗にしても、その美味しさがまた違った角度で堪能できます。
第4選 庭のうぐいす 初代利助 斗瓶取り純米大吟醸(山口酒造場)
お酒の特徴
「庭のうぐいす」というのは日本酒にしては変わった名前ですが、同じくこのお酒の名前になっている、山口酒造場の初代の利助さんという人が、庭に来て湧水を飲んでいるうぐいすを見て、その清らかな湧水で日本酒を造ることを思いついたことが由来です。そして初代の名前を付けているのは、その初代に恥じないお酒になったという自信の現れでしょう。
精米歩合
40%
味わい
端麗中口。精米歩合を40%まで磨いているので、非常に澄んだ米のうま味を感じさせてくれるお酒です。したがって口当たりは優しく、吟醸香はフルーティです。このお酒も冷やしてもいいですし、ぬる燗でもうま味がじっくり味わえます。
第5選 雁木 純米大吟醸 鶺鴒 (せきれい) (八尾新酒造)
お酒の特徴
山口県の酒というと、今は「獺祭」が大ブームですが、この「雁木」もそれに負けないクオリティのお酒です。これも書いていませんが、無濾過生原酒なので、より米の自然なうま味を味わうことができます。鶺鴒という名前は、やさしい香りの後に続く余韻の心地よさを、蔵の前を流れる錦川の水面すれすれに滑るように飛ぶ鶺鴒になぞらえてつけられました。
精米歩合
35%
味わい
端麗中口。やさしく穏やかな吟醸香と、嘘くささがない深みのある米の味わいが感じられます。すいす飲めてしまうお酒です。これは冷やがいいですね。
第6選 雪月花 純米大吟醸(両関酒造)
お酒の特徴
IWSCという世界で最も歴史と権威のある、アルコール飲料の国際コンクールがあります。この雪月花はそこで2006年に金賞を、2007年に最高金賞を獲得した「至高」ともいえる日本酒です。
精米歩合
40%
味わい
端麗やや辛口。非常に薫り高い吟醸香と、クリアでするっと飲めてしまう味わいです。
第7選 太平山 天巧(てんこう)純米大吟醸 (小玉醸造)
お酒の特徴
水と米と米麹からアルコールを作る「酒母」を育てる作業が日本酒製造の工程にはあるのですが、それを手作業で行うのが「生もと造り」です。この「天巧」はその生もと造りで醸されました。その味わいは海外でも高く評価され、モンドセレクション通算8度の金賞受賞など、数々の賞を受けています。最近ではANAの国内線ファーストクラスの機内酒にも採用されています。
精米歩合
40%
味わい
端麗中口。吟醸香はリンゴのようなすがすがしさがあり、のど越しはすっと消える抜群のキレ味です。冷やでぜひ飲みたいお酒です。
第8選 天寿 純米大吟醸 鳥海山(天寿酒造)
お酒の特徴
これも世界の最高のコンクールであるIWCで2014年度に銀賞を受賞しています。また国内の日本酒から選ばれる、「ワイングラスで美味しい日本酒アワード」でも最高金賞を受賞しています。 料理を邪魔しない食中酒として非常に優れている、という証です。また米は、山田錦よりも実は美味しいと言われている美山錦を、契約農家に依頼して育ててもらい、使用しています。
精米歩合
50%
味わい
端麗中口。美山錦らしい華やかな吟醸香でありつつも、飲み口はゆったり穏やかな味わいです。
第9選 梵(ぼん)GOLD 無濾過純米大吟醸(加藤吉平商店)
お酒の特徴
このお酒は、政府が国賓を招いて晩餐会を開く時に饗されるものです。また首相などが海外に行くときに載る、政府専用機の公式日本酒にもなっています。それだけ、どこに出しても恥ずかしくない、という評価を得ているわけです。
精米歩合
50%
味わい
端麗中口。味わいはほんのりと甘みを感じさせながら、米のうま味と、やさしいの口あたり日本酒です。甘み、フレッシュ感、うま味と3つの味わいが順に楽しめて、それがまた調和している、という味わいです。
第10選 篠峯 雄町 純米大吟醸 中取り生酒 (千代酒造)
お酒の特徴
千代酒造は年間生産数450石という小規模な蔵ですが、醸す日本酒はどれも非常にクオリティが高く、全国の目利きの地酒屋さんが扱いたがります。その千代酒造が自社の最高ランクのお酒として醸したのが、この篠峯の純米大吟醸で、もろみをしぼっている時の、味わいが1番安定する中間部分の酒だけを詰めたものです。雄町というのは酒米の名前で、味わいに幅広いニュアンスが出るのが特徴です。
精米歩合
50%
味わい
濃醇中口。ライチやバナナのようなトロピカルフルーツを思わせる香りが特徴です。さらに口に含むと、米のうま味が押し寄せ、同時に適度な酸味があるのでそれが嫌味にならず、後口の切れ味が増している、といった味わいです。
日本酒の最高峰「純米大吟醸」をお楽しみください
純米大吟醸は、原料費も手間もかかる日本酒なので、基本的には高額になることが多いです。しかし、一口飲むと「日本酒ってこんなフルーティでうま味がある飲みやすいお酒だったのか」と驚くことがほとんどなので、購入しても損をしたという思いをすることはほぼありません。ここで挙げた10選は、その中でも特に美味しいものですので、ぜひ味わってみてください。