【プロ野球2015回顧】惜別・悲運のエース!西口文也のココがすごい!
今季、秋山翔吾というスター選手が誕生したのと入れ替わるように、同じ埼玉西武ライオンズで長くエースとして君臨した西口文也が21年間の現役生活を静かに終えました。
「悲運のエース」と呼ばれた西口の現役時代を振り返ります。
(本文中、敬称は略しました)
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パ・リーグ、そしてライオンズのレジェンド! 西口、現役引退
西口は今季21年目となる43歳。1997、98年に西武がリーグ2連覇を達成した時にエースとして活躍、最多勝と最多奪三振のタイトルを2年連続で獲得、特に97年はシーズンの最優秀選手(MVP)と沢村賞を受賞し、輝かしい戦績を残しました。
積み上げた勝利数は182。通算200勝にあと18勝と迫りながら、この3年間は未勝利に終わり、西武一筋、21年間親しんだライオンズのユニフォームを脱ぐ決断をしました。
球界のレジェンドと呼ばれ、同じく今季限りで引退した中日ドラゴンズの山本昌に次ぐ現役投手2位の勝利数です。2人の現役引退によって、来季の現役通算最多勝投手は172勝のDeNA横浜ベイスターズの三浦大輔になります。
200勝を目前に引退した投手としては、古くは創成期の広島カープのエースだった長谷川良平の197勝、南海ホークスの記事でご紹介した杉浦忠の187勝、比較的近年では東京ヤクルトスワローズの記事に名前を挙げた松岡弘の191勝などがあります。
引退会見に臨む西口
西武プリンスドームのビクトリーロードでファンに別れを告げる引退セレモニーの西口
幻のノーヒットノーラン2回と完全試合
西口が悲運のエースと呼ばれるのは、2002年8月26日の千葉ロッテマリーンズ戦で1四球を与えただけで9回2死から安打を許し、05年5月13日の交流戦における読売ジャイアンツ戦でも1死球に抑えながら9回2死に本塁打を打たれて、ノーヒットノーラン(無安打無得点)の大記録を2度も逃したことによります。
さらに、同じ05年8月27日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦では9回27人の打者に一度の出塁も許さないパーフェクト投球をしながら、西武も無得点だったため0-0の延長戦に突入、10回にヒットされるという「幻の完全試合」もありました。
日本のノーヒットノーランは1リーグ時代の巨人の沢村栄治、2リーグ制以降は広島の外木場義郎の3回が最多です。外木場は1回の完全試合を含んでの記録です。西口が上記の3試合に快挙を達成していれば、外木場の記録に並ぶことができたのです。
実は西口には、1993年9月23日の近鉄バファローズ戦で、1回に2番打者の水口栄二にヒットを打たれた後、以降26人の打者を試合終了まで完全に抑え、無四球1安打という「準ノーヒットノーラン」とも呼べる試合もあります。
上記の4試合はすべてが西武の本拠地である西武ライオンズ球場(西武ドーム等の名称変遷後、現西武プリンスドーム)で開催されたものでした。地元のファンとともに大記録達成の歓喜を経験できたならば、西口にとっても、ファンにとっても生涯忘れられない記憶となって残ったはずです。
引退セレモニーでも、西口自身が語っています。
西口と同様にノーヒットノーランを9回2死まで継続しながら安打を許して大記録を2回も逃した投手が1人だけいます。オリオンズ時代のロッテに在籍した仁科時成です。
また、延長戦でのノーヒットノーランは、1973年8月30日に阪神タイガースの江夏豊が中日戦の延長11回に自らのサヨナラ本塁打で達成した1度きりです。
指名代打制を採用する現在のパ・リーグでは、西口は江夏のように自らのバットで得点することもできませんでした。
出典:mainichi.jp
ダイナミックな西口の投球フォーム
2015年9月28日、西口最後の登板
西口の引退セレモニーでの挨拶
いつか再びユニフォーム姿をファンの前に!
西口が入団した1995年以降、西武は5度のリーグ優勝と日本シリーズ進出を果たし、2回の日本一を達成していますが、西口の日本シリーズの成績は5敗で勝利はありません。
このように見てくると西口は、記録よりも記憶に残る大投手、ということができます。同時に、引退セレモニーのシーンを見ても、ファンからとても愛された選手であったことがわかります。
引退セレモニーが行われた9月28日の対戦相手であるロッテの監督は、奇しくも長年バッテリーを組み、監督としても仕えた伊東勤でした。
伊東と同じように、いつの日か西口も指導者となって再びユニフォームに袖を通してグラウンドに戻って来る日をファンは望んでいます。そして、西口の指導する選手が、自身の果たせなかった大記録や日本シリーズの大舞台で活躍をする日もまた待ち望んでいるのです。
引退セレモニーでチームメイトから胴上げをされる西口
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フリーライター。歴史・文学からビジネス、スポーツ等、幅広い分野において執筆を行う。