【プロ野球の歴史】読売ジャイアンツの誕生とV9

日本のプロ野球の歴史は1934(昭和9)年の大日本東京野球倶楽部の誕生とともに始まります。
そのプロ野球チームこそ、現在に至るまで球界の中心にあり、最も人気のあるチームの読売ジャイアンツの誕生時の姿でした。
読売ジャイアンツの歴史は、そのまま日本プロ野球の歴史でもあります。
(本文中、敬称は略しました)

yuuki_kazuma結城数馬
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オー! 長過ギマスネ! DAINIPPON TOKYO BASEBALL CLUB

出典:日本経済新聞(野球殿堂博物館提供)

1936年、渡米時の沢村栄治

日本で2番目に誕生した球団は、1935年12月に誕生した大阪タイガース、現在の阪神タイガースです。
大日本東京野球倶楽部とは誕生時期がちょうど1年ずれています。
実は、1935年2月から大日本東京野球倶楽部は4カ月を超えるアメリカ遠征を行っていたのです。

遠征途上でアメリカの関係者から、大日本東京野球倶楽部という名称は現地の人にわからない上に、長すぎるという指摘を受けました。
確かに漢字で書いても10文字もあるのに、アメリカで試合をするのに漢字という訳にはいきません。ローマ字にすると……、数えるのが面倒なくらいの長さです。
ユニフォームにチーム名を入れると胸回りを一周してしまいそうですね。

そこで当時、強豪で人気のあったニューヨーク・ジャイアンツにあやかって「トーキョー・ジャイアンツ」と命名しました。
この渡米した選手の中には、沢村賞に名を残す伝説の投手・沢村栄治も含まれていました。

翌年球団名を「東京巨人軍」と改称し、現在まで呼ばれる「巨人」という呼称が定着することになります。

不滅のV9と王・長嶋らスター選手の活躍

出典:毎日新聞

ホームランを打った長嶋をホームベースで迎える王(1974年)

多くの名選手を輩出し、球史に残る試合を戦い、幾度もの黄金時代を築いた巨人ですが、その中でも最盛期は1965年から始まったセ・リーグと日本シリーズの9年連続優勝、所謂V9の時代です。

常勝巨人軍を率いたのは、現役時代に打撃の神様と呼ばれた川上哲治監督です。
世界の本塁打王・王貞治と、ミスター・ジャイアンツ・長嶋茂雄のコンビはON砲と呼ばれ、最強打線を形成しました。
なにしろ、V9の9年間、本塁打王は王が9年連続、打点王も王・長嶋の2人で独占したのですから、それだけでもこの2人の成績がいかに抜きんでていたものであるかがわかります。

ONに加えて、藤田元司、堀内恒夫らの強力投手陣が揃い、捕手に森昌彦(現在は祇晶)、内外野には土井正三、高田繁といった好選手が揃います。
ここに名前を挙げた選手は、引退後に巨人や他球団の監督を務めています。

人気、実力ともに史上最高と呼ぶにふさわしいチームです。時代は高度経済成長時代真っ只中。テレビが家庭に普及し、ナイターは高い視聴率をあげました。

「巨人・大鵬・卵焼き」と「巨人の星」

出典:昭和ガイド

「昭和の大横綱」第48代横綱・大鵬幸喜

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この時代を象徴する流行語として、子どもたちの人気を集めた「巨人・大鵬・卵焼き」という言葉があります。

大鵬とは、昭和の大横綱・大鵬幸喜のことです。もっとも大鵬は、自分は一人で相撲を取っているが、巨人は団体競技だからと比較されることを好まなかったとも言われています。

子どもたちの好きなものが「卵焼き」だった、というところも時代を反映していますね。

スポーツマンガやアニメの世界でも、中心は巨人でした。「黒の秘密兵器」「侍ジャイアンツ」など、主人公は巨人に入団し、王や長嶋に励まされながら活躍するというものがほとんどです。

その頂点に位置するのが「巨人の星」ですね。主人公・星飛雄馬は貧しい家庭に育ち、幼少期から元野球選手の父の厳しい指導で才能を開花させ、巨人に入団、永久欠番となっている川上の現役時代の背番号16を背に、ライバル・花形満や左門豊作などと対決します。

近年インドで「巨人の星」を元にしたアニメが放映され話題になりました。

まるでジェットコースターのようなV9後の4年間 2位→最下位→優勝→優勝

出典:東京ドームシティ

1976年 優勝して胴上げされる長嶋監督

常勝球団の巨人ですが、球団史上唯一最下位を経験したことがあります。
長嶋が現役を引退して監督に就任した1975年です。この年は巨人にとっても大きな転換点となる年でした。
前年まで2年連続三冠王の王も、この年は打点王の一冠のみ。13年間譲らなかった本塁打王は阪神の田淵幸一が獲得しました。

さらに、戦後球団初となる外国人選手・ジョンソンが入団しました。1リーグ時代の巨人は大投手・スタルヒンに代表されるように外国人選手が在籍していました。しかし、第二次大戦が始まると、在籍していた選手の母国と戦うことになります。こうした悲しみを二度と経験しないために日系の選手を除き、所謂カタカナ名の外国人選手は在籍していなかったのです。

最下位の翌年、日本ハム・ファイターズから張本勲を獲得するなど、大補強をした巨人は前年の鬱憤を晴らすかのように勝ちまくり、全球団から勝ち越して面目躍如します。
前年の勝敗が47勝76敗7分け、勝率.382に対し、この年は76勝45敗9分け、勝率.628ですから勝敗数が逆転しています。
この年と翌年優勝しますが、日本シリーズでは2年連続して上田利治監督率いる阪急ブレーブスに敗れました。

巨人軍は常に紳士たれ!

出典:デイリースポーツ

大洋ホエールズ時代のシピン

出典:雀坊堂

巨人時代のシピン

2014年オフ、工藤公康が福岡ソフトバンクホークスの監督に就任する際に、プレー中にガムを噛むこと、グラウンドに唾を吐くこと、消極的な言葉を使うことを禁じると発言し、話題になりました。

巨人軍は常に紳士たれ、という言葉があります。身だしなみなどにも気を付けるということで、ヒゲを生やすことを禁じています。ヒゲがトレードマークのようになっていた選手でもFA移籍して巨人に入団するとヒゲを剃っています。ラミレス、小笠原道大(現中日ドラゴンズ)が記憶に新しいところですが、1978年から3年間在籍したシピンもそうでした。前年までの6年間、大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)在籍時は、長く伸ばした髪とヒゲから「ライオン丸」というニックネームがありましたが、巨人在籍中は短髪でヒゲを落としていました。

ニューヨーク・ヤンキースにも同様の服飾規定が存在するように、他チームとは違う、という意識を選手に植え付けることによって一体感をつくり、プライドを持たせる役割を果たしています。
こうした伝統の積み重ねこそが、GIANTS SPIRITであり、GIANTS PRIDEなのです。

巨人の資金力はどこから?

出典:東京ドームシティ

東京ドーム

豊富な資金力を背景に、毎年のように他球団から看板選手をFAなどで獲得し、常勝を目指している巨人ですが、その収益は放映権収入と入場料収入の2本の柱から成り立っています。

放映権料収入は、かつて読売グループのテレビ事業拡大を強力に推進した優良コンテンツであった巨人戦ですが、2011年に大きく減少しました。地上波での試合中継も大きく減り、BSやCSの放送に軸足を移しています。

一方、巨人の本拠地である東京ドームは、株式会社東京ドームが運営し、営業権を保持しています。巨人に入るのは基本的には入場料のみです。
2011年度は271万余まで落ち込んだ主催ゲームの観客動員数ですが、12年度以降は観客増に転じ、13年度以降は12球団で唯一の300万を超えるまでに回復しました。
2012年から巨人は3連覇。やはり巨人は強くなければ、ということですね。

読売巨人軍公式サイト

読売ジャイアンツの公式サイト

東京ドームシティ公式サイト

東京駅から電車で約10分の水道橋、後楽園両駅からすぐ!東京ドームやラクーア、ホテルなど、「観て」「遊んで」「くつろげる」施設に加え、バラエティに富んだ飲食店も備えた都市型エンターテインメントゾーン。

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結城数馬

フリーライター。歴史・文学からビジネス、スポーツ等、幅広い分野において執筆を行う。

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