【邦画】心を揺さぶる、切ない夏の名作映画おすすめ10選
うだるような暑さ。ぼやける景色。耳から離れない蝉の鳴き声。まるで蜃気楼のように一瞬で過ぎ去る夏。そんな儚く切ない夏の名作映画を紹介します。日本にいるからこそ感じることができるその魅力を堪能しましょう。
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時をかける少女
高校生の紺野真琴は、自転車事故をきっかけに、時間を跳躍(タイムリープ)する能力を手に入れてしまうという内容。
「サマーウォーズ」、「おおかみこどもの雨と雪」など、ポスト宮崎アニメの呼び声高い細田守監督の2006年公開作品です。原作は筒井康隆の名著。原作とは時代設定が異なりながらも、しっかりと原作の根幹を引き継いでいる点が見所です。ひと夏の喪失を受け入れ、力強く前を向く主人公がとても魅力的です。
茄子 アンダルシアの夏
舞台はスペイン、アンダルシア地方。そこでは世界3大自転車レースの1つ「ブエルタ・ア・エスパーニャ」が行われてます。チームの一員としてレースに参加していたぺぺは、その最中にスポンサーから解雇通告を受けてしまいました。やがてレースは彼が生まれ育った村にさしかかかります。村ではペペの兄とぺぺのかつての恋人の結婚式が行われていました。
宮崎駿作品の多くで原画監督を務めた経験のある高坂希太郎監督による2003年公開の作品。最近弱虫ペダルのおかけで競輪人気に火がついています。しかし私には、競輪映画といえばこの「茄子 アンダルシアの夏」しか思い浮かびません。それほどに、素晴らしい映画です。愛を失ったぺぺは夢というペダルを漕ぎ続けるしかありません。後悔という錆のついた重たいペダルを。そんな彼が夢も失いつつあります。瞬きを忘れる47分です。
菊次郎の夏
祖母と2人で暮らしている小学生の正男は遠くの町にいる母に会いに行く決心をします。そんな彼を心配した近所のおばさんが、自身の夫で遊び人の菊次郎を同行させることにしました。2人はひと夏の冒険に出かけます。
いまや「世界のキタノ」とまで称される、北野武監督の作品。いつまでも遊びほうけているダメなおっさんの菊次郎とまっすぐに希望を持ち続ける少年正男。見た目も中身も全くアンバランスな少年とおっさんのつかの間のロードムービー。直向きな少年が直面する絶望を菊次郎は素敵な夢へと変えようとします。そうして菊次郎は失った何かを取り戻し、救われるのです。それがたとえつかの間の夢だとしても。
百万円と苦虫女
とある事件をきっかけに家に居づらくなった鈴子は家を出ます。そして1か所で100万円貯まったら次の場所に引っ越す、という生活を始めます。
タナダユキ監督による2008年公開作品。その演技力は、同年代の他の女優を圧倒しています。それだけに蒼井優は素晴らしい。「リリイ・シュシュのすべて」で始めて彼女と出会ったときの衝撃を今でも覚えています。今作でも本心とは裏腹に人と距離を置き続ける主人公を好演しています。なかなか相手に心を許せなかったり、コミュニティの中で疎外感を感じてしまったり、という経験は多くの人が味わったことがあるでしょう。人一倍その感性の強い、繊細な人は、人一倍他人のことを気遣える優しさの持ち主なんです。
メゾン・ド・ヒミコ
沙織のもとに、絶縁状態だった父が余命いくばくもないという知らせが届きます。それを伝えにきた青年は、沙織の父が営むゲイのための老人ホームで働く父親の恋人でした。
「ジョゼと虎と魚たち」を手掛けた犬童一心監督作品。始めは体に支配されていた心も、いづれ体と乖離していく。頭では分かっていても体がいうことを聞かない。そんな絶望を前にした、彼と彼女の涙はとてもきれいでした。
アヒルと鴨のコインロッカー
「ディラン?」
椎名の鼻歌にそう反応した隣人の河崎。初対面だというのに彼は、同じアパートに住むブータン人留学生に広辞苑を贈るため、本屋を襲おうと計画を持ちかけてきました。
伊坂幸太郎の原作で描かれている複雑かつ巧みな構成を、見事に映像化しています。監督である中村義洋は「ゴールデンスランバー」「フィッシュストーリー」など他にも伊坂作品を多く映像化しています。行き場のない憎しみのその先に残るのは喪失です。全てを終えた”彼”の、最後の笑顔はいつまでも脳裏を離れません。
めがね
海辺の小さな町にやって来たタエコは、小さな宿、ハマダにたどり着きます。
「バーバー吉野」や「かもめ食堂」といったゆるーい雰囲気を作るのがとても巧みな荻上直子監督の作品。考えないでください。感じてください。そのかけているめがねを外して。あなたのかけているメガネは世の中を正しく写してるとは限りませんから。
ピンポン
卓球で”この星で一等賞になりたい”自信家で天真爛漫なペコと、“卓球は暇つぶし”と考えるクールなスマイル。幼なじみの2人は同じ高校へ進学し、自由気ままに卓球を楽しみます。気づけば夏の県大会はすぐそこまで来ていました。
日本が世界に誇るCGクリエイター、曽利文彦監督の作品。一切恋愛要素のない、青春という言葉が少し似合わないスポーツ映画。努力、才能、情熱、この全てを持つ男がヒーローになるまでの復活劇。何かに夢中になることから遠ざかってしまった自分には、彼がただただ眩しい。
また音楽が映画をとても引き立てています。いまは解散してしまった「SUPERCAR」が手がける「YUMEGIWA LAST BOY」は今でもふと聞きたくなる名曲です。
解夏
東京で教鞭をとる隆之は体の異常を感じ、検査を受けます。診断結果は視力を徐々に失うベーチェット病。彼は婚約者である陽子の負担になりたくないと、一人長崎に帰郷します。
磯村一路監督の作品。景色が美しい。そして何よりも2人の愛が美しい。お互いに愛しているからこそ出した異なる答え。愛の形の多様性に胸打たれます。同じく身体的なハンディギャップを背負う人物の恋愛を描いた「ジョゼと虎と魚たち」もオススメ。どんな答えでもそれを間違っているとは言えません。
あの夏、いちばん静かな海。
ゴミ収集のアルバイトをする茂は聴覚障害者。ひょんなことからサーフィンを始め、のめり込んでいきます。そんな茂を優しく見守る恋人の貴子。そして茂は上達していき、大会に出場するまでに。
まるで1つの詩を聴いているように、とても静かに映画は流れていきます。目を閉じて流れに身をまかせましょう。気づいたらあなた1人、とても静かな海に辿り着いています。それはとても切なく、そこはとても美しいのです。
日本ならではの魅力
日本映画ならではの静かな力強さを感じてください。夏はすぐそこまで来ています。
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この記事のライター
新しい物好きなうざかわ系アラサー男子。男子校で男に囲まれてきた反動から、大学以降は女性にモテることのみを考えてます。でも基本シャイなんでうまくアプローチできません。外資系メーカー→MBA→国内インフラ企業と経験。英語も話せる真面目な人間。