映画化・漫画化された泉鏡花作品まとめ

難しそうであまり読んだことのある人がいないかもしれませんが、今ここで泉鏡花の素晴らしい文学に浸ってみませんか?映画化や漫画化を中心にご紹介します

satsuki210皐月虫
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アイキャッチ画像出典:upload.wikimedia.org

泉鏡花ってだれ?

出典:www.heibonnotomo.jp

泉鏡花は日本の作家で、石川県出身の人です。金沢市下新町に生まれ、本名は鏡太郎と言います。明治から昭和初期まで活躍し、小説が有名ではありますが、他にも戯曲や俳句もつくり、世に残しています。江戸文芸というものの影響を強く受けていて、怪奇趣味やロマンティシズムがよく見られます。そこが泉鏡花の魅力ともいえるでしょう。幻想文学の先駆者としても高く評価された方です。

映画化された作品

『滝の白糸』

 泉鏡花の同名原作を島耕二が脚色・監督したものです。
1915年版から数えて六回目の映画化ではじめてカラー映画として放映されました。
水芸人「滝の白糸」一座は、寅五郎一座からの合流の申し出を断り、金沢で公演を行い成功を収めます。夜、散歩に出かけた白糸は、川岸で馭者の村越欣弥と出会い、法律を学んでいるという欣弥の話を聞いて白糸はその費用を出すことにしました。欣弥が東京に出ても白糸は送金を続けましたが、滝の白糸一座も時代の波には勝てず、富豪の上林からの援助を受けるようになります。金沢での凱旋公演が成功した日、上林にもらった金を欣弥に送ろうとした白糸は、寅五郎に金を奪われてしまいます。金を工面してもらおうと上林を訪れる白糸でしたが、体を求める上林に抵抗し誤って殺害してしまいます。

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越中高岡たかおかより倶利伽羅下くりからじたの建場たてばなる石動いするぎまで、四里八町が間を定時発の乗り合い馬車あり。
 賃銭の廉やすきがゆえに、旅客はおおかた人力車を捨ててこれに便たよりぬ。車夫はその不景気を馬車会社に怨うらみて、人と馬との軋轢あつれきようやくはなはだしきも、わずかに顔役の調和によりて、営業上相干あいおかさざるを装えども、折に触れては紛乱を生ずることしばしばなりき。

出典:www.aozora.gr.jp

映画『瀧の白糸』の原作となった泉鏡花の小説です。泉鏡花の文章で読むと、現代人には難しく、読むのが困難なので、訳したものを読むのがオススメです。内容も頭に入ってきますし、今の日本語として訳してあるので読みやすいでしょう。泉鏡花の文章で読みたいという方はぜひ映画を観てからご覧ください。

『日本橋』

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妖しくも美しい女の恋の執念を描いた泉鏡花の名作を大映カラーにより再映画化されたものです。
日本橋元大工町、幽霊が出るという噂のある露地の細道に稲葉家は移転。女あるじお孝は雛妓お千世を始め抱妓九人を持つ日本橋の芸者で、意地と張りが身上で界隈切っての美人芸者清葉と張合い、清葉に振られたためお孝と出来た客も一人、二人ではありませんでしした。五十嵐伝吉もその一人。もとは海産物問屋でしたが、清葉に振られた処をお孝に拾われ夢中になったのも束の間、やがてお孝にも追い出され、問屋はつぶれ女房も死んでしまいます。

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泉鏡花の戯曲である『日本橋』は『婦人図』と並んで代表作となりました。これを原作として作られた映画『日本橋』は、1929年に作られたサイレント映画も貴重でオススメです。サイレントでどこまでこの作品の魅力を語れるのか、そこに注目しながら見るとより楽しめます。

『夜叉ヶ池』

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こちらは『夜叉ヶ池』の舞台です。2004年版となっていて比較的新しいものと言えます。映画やオペラも作られていて、幅広く展開している作品です。
ある村に一人の男がやってきて、彼は山沢と言い、出会った百合という女性に旅の行方について語り始めます。それはある自分の友人の学者が不思議な物語の収集に出かけてしまったまま行方が知れなくなり、それを探しているというものでした。

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三国岳みくにだけの麓ふもとの里に、暮六くれむつの鐘きこゆ。――幕を開く。
萩原晃はぎわらあきらこの時白髪しらがのつくり、鐘楼しょうろうの上に立ちて夕陽せきようを望みつつあり。鐘楼は柱に蔦つたからまり、高き石段に苔こけ蒸し、棟には草生ゆ。晃やがて徐おもむろに段を下りて、清水に米を磨とぐお百合ゆりの背後に行ゆく。
晃 水は、美しい。いつ見ても……美しいな。
百合 ええ。
その水の岸に菖蒲あやめあり二三輪小さき花咲く。
晃 綺麗きれいな水だよ。(微笑ほほえむ。)
百合 (白髪の鬢びんに手を当てて)でも、白いのでございますもの。

出典:www.aozora.gr.jp

泉鏡花の戯曲である『夜叉ヶ池』は少し小説とは違った書き方がされています。舞台のセリフやト書きをそのまま文章に起こしたようなものです。台本を読んでいる感覚ですね。小説が少し苦手、という方はこれは新鮮、と思われるかもしれません。誰がしゃべっているのか分かりやすく、訳の本も出ているので映像作品を見ながらこの本を片手に読むのもいいですね。

『陽炎座』

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鈴木清順という方が監督をし、泉鏡花の『陽炎座』を原作としたこの映画はキネマ旬報ベストテン第三位になり、有名になりました。鈴木監督はその独特な映像美を生かして、泉鏡花の世界を見事に描いたとされています。松崎という作中の劇作家は、ある品子という女と出会い、一夜をともにした後心中をそそのかされて、とうとうその場から逃げて芝居小屋である陽炎座へとたどり着きます。生と死の境目を縫った作品をぜひ映像でご覧ください。

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「ここだ、この音なんだよ。」
 帽子あたまも靴も艶々てらてらと光る、三十ばかりの、しかるべき会社か銀行で当時若手の利きけものといった風采ふう。一ツ、容子ようすは似つかわしく外国語で行こう、ヤングゼントルマンというのが、その同伴つれの、――すらりとして派手に鮮麗あざやかな中に、扱帯しごきの結んだ端、羽織の裏、褄つまはずれ、目立たないで、ちらちらと春風にちらめく処々ところどころに薄うっすりと蔭がさす、何か、もの思おもいか、悩なやみが身にありそうな、ぱっと咲いて浅く重かさなる花片はなびらに、曇くもりのある趣に似たが、風情は勝る、花の香はその隈くまから、幽かすかに、行違ゆきちがう人を誘うて時めく。

出典:www.aozora.gr.jp

セリフから始まる泉鏡花の『陽炎座』は圧倒的に映画化が人気を呼び、独特な映像美が特徴です。文章は一文が長く、その分句読点も多いので息継ぎがたくさんあって読むのが少し大変かもしれません。しかし泉鏡花独特な文章美はやはり文章でしか味わうことができません。映画化もヒットした作品なのでぜひチェックしてみてください。

『外科室』

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泉鏡花を原作とした映画で坂東玉三郎が初めて映画監督として行った作品です。
明治時代の話で、高峰医師という人間によってまさに今、伯爵夫人の手術が行われようとしていました。しかし夫人は麻酔をけして受けようとはせず、その麻酔を嗅いでしまったら今まで秘めてきたことを言ってしまうから怖い、と言うのです。彼女が秘めてきたものとは一体何なのか、泉鏡花独特の調子で続いていきます。

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 実は好奇心のゆえに、しかれども予は予が画師えしたるを利器として、ともかくも口実を設けつつ、予と兄弟もただならざる医学士高峰をしいて、某それの日東京府下の一ある病院において、渠かれが刀とうを下すべき、貴船きふね伯爵夫人の手術をば予をして見せしむることを余儀なくしたり。

出典:www.aozora.gr.jp

昔の言葉で書かれていますので読みづらさはありますが、夫人の秘密に迫っていくこの話はだんだんと引き込まれていく感じがします。しかし文章だけで雰囲気をとらえるのが難しく、一度映画で視聴をして物語を把握してから読むとしっかりとした舞台と感情を感じ取ることができるでしょう。比較的セリフも多くて、明治時代の喋り方に関心がある方には特におすすめです。

漫画化された作品

波津彬子 『鏡花夢幻』

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『鏡花夢幻』は泉鏡花の三大戯曲として名高い「天守物語」「夜叉ヶ池」「海神別荘」を幻想的な絵とともに描き出している作品になっています。美しく女を描く波津さんの絵柄とマッチして、泉鏡花の作品の妖しさが出ているものと言えます。

波津彬子選集1 鏡花夢幻[マンガ無料ためし読み]|ソノラマプラス

無料で読める「鏡花夢幻」

こちらのサイトで気軽に漫画が読めるのでぜひチェックしてみてください!<br />彼女の描く絵のタッチに魅了されるとともに、泉鏡花の世界をより分かりやすく知るチャンスです。「夜叉ヶ池」は映画化もされていますが、こうして漫画で読んでみるとまた一味違った感想を持つことができて、さらにこの漫画にはこれの他にもあと二つの作品もくっついてくるので、一つの漫画を読むだけで泉鏡花の三つの作品を知ることができます。

わたなべまさこ 『夜叉ケ池―わたなべまさこ恐怖劇場 4』

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わたなべまさこ 『夜叉ケ池―わたなべまさこ恐怖劇場 4』では、『夜叉ヶ池』『高野聖』『註文帳』が収録されています。昔風のタッチで描かれた作品ですが、漫画として非常に読みやすく分かりやすいものとなっています。コマ割りが単純なので比較的どんな人にも読みやすいでしょう。漫画があまり得意でない人にもおすすめの作品です。

http://dogtricksceo.com/rental3/rental3_1389/guide1085.html

無料でレンタルができる漫画サイト

こちらで最初の部分は無料登録なしでも読むことができます。その先は無料登録が必要となります。

◎『高野聖』

出典:4.bp.blogspot.com

この漫画に収録されている『高野聖』とは、泉鏡花の幻想小説の短編となっています。高野山の旅僧が、旅の途中で出会った若者に自分の体験を聞かせるという展開で、その体験は実に奇妙な不思議体験でした。妖艶な美女の住む家にたどり着いた僧侶が体験した不思議な体験とは一体なんだったのか、語彙力豊かな泉鏡花のリズムの良い文章でお楽しみください。

水木しげる 『水木しげるの泉鏡花伝』

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あの有名な水木しげるが、泉鏡花の人生を漫画に書き下ろした作品で、代表作である『黒猫』『高野聖』が収録されています。独特な水木しげるのタッチで泉鏡花を物語っている最高傑作なので、一度手にとっていただけると泉鏡花という人物がよく分かると思います。分かりやすい漫画形式になっているのでおすすめの作品になっています。

水木しげるの泉鏡花伝 | 小学館

異界を描いてきた二人の作家の不思議な出会い。お化け好きで妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木サンが、同じくお化け好きで金沢が生んだ美と幻想の文豪・泉鏡花の生涯とその世界を、独特のタッチで描写します。山奥で妖艶な女に出会う旅僧の不可思議な体験を描いた代表作「高野聖」、良家の令嬢に片思いした男が死後、その女性がかわいがる猫に乗り移って襲いかかるという明治28年に北國新聞に連載された「黒猫」の怪異で幻想的な2作品を劇中漫画として収録。監修は、金沢学院大学学長・泉鏡花記念館館長/秋山稔。巻末寄稿に、角田光代。

こちらで無料試し読みができます。

◎『黒猫』

『黒猫』(1895年)小説(一部を欠いている)
黒猫を寵愛する裕福な士族の娘お小夜は、出入りの座頭富の市が「お小夜の寵愛する黒猫になりたい」などと口走りお小夜への妄執を募らせていくのが疎ましくてならなかった。一方、年下の貧乏画家二上秋山に想いを寄せる髪結のお島は、秋山がお小夜に心を奪われているのを告白され、秋山をわがものとするため富の市にお小夜を襲わせた。しかし、このときお小夜も秋山に惚れていることを知ると、お島は義侠心から一転してお小夜を守るため富の市を殺害したうえで自決し、秋山とお小夜を添い遂げさせようとした。晴れて秋山とお小夜は結ばれることになったが、お小夜は今まで寵愛していた黒猫が富の市の化身のような気がして気味悪く、黒猫もお小夜に恨みをもつような素振りをみせたために終には刺殺されてしまった。

出典:ja.wikipedia.org

泉鏡花の世界

ここまで映画化、漫画化をご紹介しました。
泉鏡花は文章で読むことが難しい作品ばかりですが、現代ではこうしてたくさんの媒体で作品が紹介されています。難しいからと敬遠せずに、たくさんの泉鏡花の作品に触れあってみてはいかがでしょうか?

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皐月虫

太宰治、三島由紀夫を愛する本の虫武蔵野大学文学部所属フランス映画にハマっていますフランス語3級とるため勉強中

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太宰治、三島由紀夫を愛する本の虫 武蔵野大学文学部所属 フランス映画にハマっています フランス語3級とるため勉強中

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旅行と食べること、ファッションが好き。インドア派でアウトドア派のフリーライターです。生まれは四国、大学で東京へ行き就職で大阪へ。転々とする放浪癖を生かして様々な地域の記事を書いています。

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信州の曲者が集まるCLUB Autistaに所属する道楽者。車と酒と湯を愛し、ひと時を執筆に捧げる。

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