夏目漱石のおすすめの10作品から漱石の魅力を語る

日本の人なら顔まで知っている!という方が多いのではないでしょうか?そのぐらい有名な夏目漱石は、数多くの名作を書き上げています。その中から10作品を選り抜いてご紹介していきます。

satsuki210皐月虫
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夏目漱石ってだれ?

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夏目漱石は日本の小説家、評論家、英文学者であり、本名を夏目金之助と言います。かなりダンディーな方ですよね。帝国大学にも進んでいる(今でいう東京大学)かなりエリートな方で、日本の学校で教授を務めたあと、イギリスへ留学もしています。帰国した後は、東京帝国大学講師として英文学を教えながら、「吾輩は猫である」を『ホトトギス』という雑誌に発表しました。これが評判となって、彼は「坊ちゃん」などを書き上げていきます。朝日新聞社にも入社をして、「三四郎」なども連載しました。しかし晩年は胃潰瘍に悩まされて「明暗」が絶筆となりました。
小説家としてだけでなく、たくさんの事を経験してきた人でもあるので、その経験から夏目漱石の作品には魅力がたくさん詰まっています。10作の名作と共に、彼の魅力を突き詰めてみませんか?

「吾輩は猫である」

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「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」
有名なセリフですよね。この一文だけで読者を物語の中へ引き込んでしまうような感じがします。猫の視点から話が始まる、という異例の作品ですがこれはホフマンの小説『牡猫ムルの人生観』から着想を得ていると考えられています。猫がしゃべっている、猫が何かを考えている、という不思議な感覚のするこの作品。ここに夏目漱石の魅力は隠れています。

あらすじ

ある一匹の猫は珍野家にたどり着きました。猫に名前はなく、猫は自分の事を「吾輩」と呼んでいました。猫は人間観察が大好きです。人間たちを観察している時、猫はふと考えます。この地球は人間のものではないのに、彼らはこの地球をわが物顔で所有地と思っている、いろいろなことを気に掛ける、足が四本もあるのに二本しか使わない、しかし猫は自分を拾ってくれたこの珍野家に感謝すらしていました。
猫は主人の晩年を考えました。早くあの世へ行く方が賢いのではないかとも考えました。悟りに浸っていた猫はビールを飲んで酔っ払います。そして水瓶で溺れてしまい、だんだんと自分の体が軽くなっていくのを覚えると、猫はすべてを自然に任せることに決めました。猫はそのまま、溺れていきました。

猫にスポットを当てた魅力

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「吾輩は猫である」は二度映画化されていて、一度目は1936年、二度目は1975年です。市川監督が担当したのは1975年版の方で、やはりリアルな猫が全面に押し出されたものとなっています。この作品は猫が主体となっていることで人間が主体のものよりも映画化する難しさが濃くなっているように感じます。夏目漱石の魅力の一つとして、この猫にスポットを当てたというところが上がりますが、やはりこの作品が名作となったポイントとしては、「猫からみた人間」の姿をよりリアルに書き上げたことにあるのではないでしょうか?この映画はこのポイントをしっかりと抑え、そして私達が普段目にしている猫をリアルに使って撮影しているところが、さらに私達に「猫が考えている」ということを想像させます。
自分が猫になって人間を観察しているつもりで、ぜひご覧ください!

「坊ちゃん」

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こちらも比較的有名な一作なのではないでしょうか?漱石の学校の先生になった時の経験から書かれたものですが、漱石の体験からきているからか、よりリアルにその情景が描かれています。人物の個性豊かな描写がとても印象的です。大衆向けに作られた作品ですので、普段本を読まないという方にも読みやすい一冊となっています。

あらすじ

子供の頃、坊ちゃんは家族から疎まれていましたが下女の清だけはそんな彼をかわいがってくれました。父親と死別後、彼は物理学校へ入学し、卒業後は四国の数学教師となります。ですが、彼は宿直の日生徒から手ひどい嫌がらせを受けます。彼らへの処分を訴えた坊ちゃんでしたが教師たちは彼らの責任を坊ちゃんへと転嫁させようとしました。ですが山嵐によってこの場は収まります。赤シャツという教師の陰謀により山嵐が辞職に追い込まれそうになったり、坊ちゃんと山嵐はそんな赤シャツの不祥事を暴こうと奮闘したり、坊ちゃんの教師生活は波瀾万丈であるかのように見えますが、彼が教師として生活したのはわずか一か月のことでした。

自身の経験から飛び出た物語

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これまでに「坊ちゃん」は5度も映画化がされています。1935年、1953年、1958年、1966年、1977年です。定期的に間を空けて映画化がされていることからも分かる通り、何度も改善を重ねて撮影しています。坊ちゃんの奮闘したたった1か月の教師生活を映画一本に色濃くまとめあげ、夏目漱石の文章をうまく映像化しています。夏目漱石の経験から飛び出したこの坊ちゃんというキャラクターを動かしているのは、やはり夏目漱石ですが、彼の文章から夏目漱石の作り出したフィクションな部分もより強く伝わります。夏目漱石はこの実際にはいない人物に自分の記憶をうまく落とし込んで作品を作っているのです。より多くの読者に支えられている、少し面白さも備わったこの作品、ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか?

「草枕」

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これは「非人情」を描いた作品だと夏目漱石は言っています。
「とかくに人の世は住みにくい。」
これが有名な冒頭部分の一部ですが、この一文だけでも読者の共感を得てしまいそうです。現代ではこう思っている若者も多いのではないでしょうか?夏目漱石はこの頃から世の中のことをよくわかっていたのかもしれません。これからの社会を生きていく若者に送る、そんな作品になっています。

あらすじ

日露戦争のころに、30歳の洋画家である主人公はある山中の温泉宿に宿泊します。そこで那美と知り合いますが、彼女は主人公に「自分の画をかいてほしい」と頼み込みます。しかし彼は「足りないところがある」と彼女に言って、なかなか描きませんでした。ある日、駅で那美は別れた夫と再会します。その彼女の横顔は「憐れ」という文字がお似合いで、主人公はそれを見て「それだ、それだ」と那美に言います。
漱石自身の思う芸術論や戦争という現実、そのメリット、文化、それらを主人公の独白や田舎の人々との会話と織り交ぜて綴られています。

夏目漱石の思いを織り交ぜた作品

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この作品は、物語として成立をしながらも、主人公の独白などを利用して夏目漱石自身がひょっこりと顔を出します。彼はこの小説を通して自分の意見を社会へと伝えようとしているのです。この一冊を通して彼が世の中に生きるすべての人に伝えたい思いがすべて語られています。戦争の話なども、物語中が日露戦争であったり、那美のいとこが満州の戦線へ徴集されたりと、夏目漱石の言いたいことと織り交ぜて書かれています。会話の中で彼の意見が語られ、それをより自然に私達へ届ける方法を彼は取っているのです。私達にも参考書などかたい本を読むよりも、このような物語を読んで自然と夏目漱石の意見を知れるというメリットがあるので、ぜひ、これからの緊迫した社会を生き抜く人たちには手に取っていただきたい一冊です。

「三四郎」

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「三四郎」は「それから」や「門」に続く作品の一つで、「毎日新聞」に連載をしていた長編小説です。当時の日本が批判されていたりと、ここにも夏目漱石の心の部分が現れています。女にまったく免疫のない初心な主人公の堅物さがどこか癖になり、彼を応援してやりたくなる気持ちがむくむくと沸いてきたりもします。三人称ですが三四郎の目線に沿ったかたちになっていて時には三四郎の内面にも入り込むので、するりと入り込みやすい作品になっています。

あらすじ

九州から上京をしてきた三四郎は、堅物で女性の扱いも分からない初心な青年でした。ある日彼は若くて美しい女性里見 美穪子を目にして、彼女に一目ぼれをします。ですが教師の野々宮宗八の妹よし子という存在があり、彼女の相手を任されます。そんな中、宗八が先生と慕う人物の新居へと手伝いに向かうとそこには里見 美穪子がおり、二人は二人で先生の新居の手伝いをすることになります。里見 美穪子の様々な行動にますますほれ込んでいく三四郎。宗八もまた、彼女に恋をしていました。しかし彼女が近々嫁ぐのだと知り、三四郎は愕然とします。相手は宗八ではなく、知らぬ男でした。三四郎と宗八は見事に失恋をしたのです。

初心な心が引き付ける

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二人の男が一人の女を好きになる、今の少女漫画のような作品です。
三四郎のなんとも女慣れのしていない初心さが読者の心をくすぐっていくのが、この作品にある夏目漱石の魅力の一つです。女慣れのしている男が文学の中には多いようにも思われますが、その中でやはり三四郎は際立ちます。女性との慣れない交友に奮闘していく三四郎ですがそこにはライバルもあり、なかなかに厳しい道でした。その奮闘さを私達読者は知っているからこそ、最後の失恋をするシーンでは同じように胸を痛めて三四郎の気持ちになって涙をこぼします。三人称でここまで書ける夏目漱石の魅力があるからこそでしょう。

「それから」

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定職に就かずに、本家のお金で暮らす裕福な男である長井が友人の妻である女と生きる覚悟を決めるまでを描いた作品です。世間と距離を置いたこの男がどのようにしてその波に飲み込まれていくのか、そこにはやっぱり女というキーワードが存在しています。夏目漱石の社会への意見が再び盛り込まれた作品です。

あらすじ

主人公の長井代助は卒業しても働かずに家の金で生きていました。そんな中母親と知人の菅沼がチフスによって亡くなり、後には父親と三千代だけが残ります。そこで三千代と平岡という男を夫婦にしたのでした。平岡になら安心して預けられる、この女を幸せにしてくれると信じていた代助でしたが、それは見事に裏切られ、代助はとうとう就職をいう文字に追われることになります。愛する三千代のために平岡に三千代を渡してくれないか、と言い、そのことで家族や恵まれた生活を捨てることになった代助ですが、三千代のために世間と対峙することに決める一人の男の話です。

社会への歩み

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映画「それから」は1985年に全国公開され、1986年に数多くの賞を受賞しています。舞台や漫画などでも幅広く派生され、たくさんの人たちから愛された作品となっています。主人公が所謂ニートであり、そこから社会という中に復帰していく、というところにも一つの魅力がありますね。その原因となったのが一人の女性で、その女性のために仕事をしなくても裕福であった自分の立場や家族をなくしても構わない、という姿勢がより読者の心をひきつけていきます。ここまで必死な男性の姿を追う、というところにやはり夏目漱石の魅力がまた隠されているのでしょう。ぜひ映像化とともにご覧ください!

「こころ」

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教科書にも載るほど有名な作品ですね。夏目漱石といえばこれ!という方が多いのではないでしょうか?
連載された当初は「心 先生の遺書」として連載されていました。
とても有名な作品ですが、最後まで読めていないという方やなんだか内容が分からなかった……という方が多くはないでしょうか?「こころ」を読むうえで抑えておくべきポイントをここでご紹介します!

あらすじ

「こころ」は全部で三部構成となっていて上・中・下に分かれます。上では「先生と私」というタイトルがつき、ここでは主人公である「私」と物語の中心となっていく先生が出会います。中では「両親と私」というタイトルがつき、これは比較的読者の中で印象が薄い部分ではないでしょうか?病気をしていた父親を見ていて東京に帰る日を延ばした私の元へ先生からの手紙が届き、私は慌てて東京行きの汽車へ乗ったところで中は幕を閉じます。そして一番有名な下は「先生と遺書」というタイトルです。これは届いた先生の手紙の中身を語ったものです。比率としてはこれが一番長い部分となります。先生とKという友人との間に起きた出来事や、今の奥さんになっているお嬢さんを巻き込んだKと私の関係の行方などが綴られています。どうしてこれが遺書なのか、私は手紙を汽車の中で読み進めていくのです。

K側の気持ちと繰り返す三角関係

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「こころ」は青い文学シリーズというアニメ化がされていて、ここでは本編にはなかった「Kの視点」というものがあります。最後なぜKは自殺という最悪の方法をとったのか、このアニメでは語られています。これを見てみると、最後の章「先生と遺書」という長い話を読み取ることが少し楽になるかもしれません。そしてもう一つのポイントとしては、この話では三角関係が二つ用意されているという点です。下の章で明らかになって現れているKと私とお嬢さんというものと、もう一つは少しわかりにくい先生と奥さんと私というものです。そして過去の方では犠牲者はKですが、現在の方では犠牲者が先生になっている点もポイントです。それを踏まえて再び手にとって最後まで読んでみてはいかがでしょうか?

「門」

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この作品は「三四郎」「それから」に続く作品となっているので、ぜひこの二作品を読んだ後にご覧いただけるといいと思います。「それから」で職を探しに出た主人公のそれからをこの作品で描いています。シリーズものだと思って読んでみると面白いと思います!

あらすじ

主人公宗助は、かつての親友であった安井の妻である女を得たことに罪を感じて、ひっそりと暮らすことに決めていた。弟の小六に関する父の遺産についてもあまり関心を示すことなく、小六を引き取って共に暮らすこととなります。ですが、この小六を引き取ったことで、気苦労の多さに安井の妻であった御米は寝込んでしまいます。
宗助は助けを求めて鎌倉へと向かいます。参禅をしても結局悟ることはできずに帰宅すると、消息の分かった安井はすでに満州へ戻っていて、小六は書生になることが決まっていました。
御米は春が来た、と喜びますが宗助は「じきに冬になるよ」と答えるのでした。

インパクトの薄さと夏目漱石の関係

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この三部作はかなり関係がややこしく、よくわからなくなってしまうのですが、前の小説をあまり引きずりすぎずに読むことをお勧めします。簡単な関係性を分かっていれば読めるものになっているのであまり気負いせず読んでいただければと思います。
そしてここで気になるのがこの「門」という作品が前の「それから」に比べてあまり大きな動きをもたずに物語を終わらせてしまったことです。これは夏目漱石の体の状態ともかかわっていきます。この時、夏目漱石の病状は丁度悪化していて、それが原因であると言えます。ですが見事書ききり、これが終わった後彼は胃潰瘍により入院しています。自分の身を削って書かれた命の作品とも言えるでしょう。

「彼岸過迄」

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この作品は短編を集めて一つの長編にする、という少し変わった構成になっています。夏目漱石は今までしっかりとした長編を書いてきた人だったので、ここでどうしたんだろう?と思いますが、この作品が書かれたのは「修善寺の大患」後のことで、何か夏目漱石の創作の意識を変えるような事があったのかもしれません。

あらすじ

いくつかの短編を書いて長編にしていますが、それぞれ視点と文体が変化しています。
それぞれ「風呂の後」「停留所」「報告」「雨の降る日」「須永の話」「松本の話」と六つの話が続きます。話者もそれぞれ変わるので、チェックをしながら読んでいく必要があります。
ここでは一番初めの「風呂の後」のあとがきを載せます。
大学を卒業してから仕事に就けないでいる田川という男がいます。この男はある下宿に住んでいるのですが、そこの住人である森本という男に色々と比較をされながら描かれていきます。この森本という男は様々な仕事を経験したことのある男なので、その比較を十分に楽しめます。

整理しながら読む文学


                ┏━━━━━━━┳━━━━━━━━━━┓ 
     父(死去)┳ 母 妹 ┳ 田口    弟(松本)┳ 御仙
           ┃  ┃         ┃
   ┏━━━┻━┓ ┏━━━┻┳━━━┓      ┏━━┻━━━┓
 (主人公)    ┃   ┃  ┃    ┃   ┃      ┃      ┃
 田川敬太郎───須永市蔵  妹(夭折) 千代子  百代子  吾一    兄2姉2    宵子(夭折)
   │  (友人)                │        
   │                      │
   │                      │   
   森本                     高木
 (同じ下宿)               (百代子の友人の兄)

この関係図を見るだけで分かる通り、この一冊はすべての話を読み込んで自分の中で関係図を構成していく必要があるものです。夏目漱石といえばなんだか頭の良さそう、という印象ですが、この一冊がかなり試されているような気がします。ここが夏目漱石の魅力の一つでもあります。彼はどこか「構成」ということを作品の中でやりたがります。この「彼岸過迄」ではそれがよく出ていますね。今までは密かに盛り込んでいたものがここにきてすべてを大げさに出すようになったのかもしれません。
ですが、一つ一つが短編で、話し手も変わってゆくので読みやすさで言えば一番です!

「行人」

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「行人」夏目漱石の長編小説の一つで、朝日新聞で連載されていました。しかし、夏目漱石が胃潰瘍になったことが原因で、四月から九月まで五か月中断していたという事実もあります。
こちらは後期三部作の一つとなっていて「彼岸過迄」に続くものとなっていますので、どうぞ合わせてお読みください!

あらすじ

「行人」は全部で「友達」「兄」「帰ってから」「塵労」の細かな章にわかれています。
「友達」では二郎という男が三沢という友人と会う約束をして大阪を訪れた話が書かれています。病院にいた女に心惹かれ、三沢は突然二郎に同じ家に住んでいたという「娘さん」の話を始めます……。
次の「兄」は二郎の母、兄、兄の嫁が大阪にやってくる話です。兄が突然自分の嫁を試すために二郎に二人きりで嫁と一晩泊まってくれと言い出します。二人は嵐の中で一晩を過ごします。
「帰ってから」では東京に帰り、兄はあの嵐の晩の事を聞き出そうとしてきます。居心地の悪くなった二郎は下宿で暮らすことに決め、家を出ました。
「塵労」ではおかしくなっていった兄をHという人物に頼んで旅行に連れていってもらう話が書かれていて、旅行中の兄の苦悩が、Hを通して手紙に綴られていきます。

一郎の苦悩を他者から語る

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これは所謂兄の一郎の苦悩の話なのですが、この一郎は自我に閉じこもって妻を疑ってしまう懐疑の心と孤独に苦しんでいきます。それを弟である二郎が語り、旅行中はHという親友が手紙に書き連ねていきます。ここには夏目漱石自身の苦しみも語られています。一郎が感じている、人間の宿命的なこの心の困難さは、すべて鏡のようになって夏目漱石の心を表しています。「死ぬか、気を遣うか、宗教に入るか」人間にはこれしか方法が残されてはいないのだと言います。夏目漱石の心の考え方が一面に飛び出している作品になっています。

「明暗」

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「明暗」は朝日新聞で連載された夏目漱石最後の作品です。作者病没のために188回までで未完となっています。人間のエゴ、という究極なテーマについて書かれた作品です。夏目漱石はほとんど長編を書いていますが、その中でも一番長いものがこの「明暗」になります。
夏目漱石の最後の作品を、このテーマの最後に紐解いてみましょう。

あらすじ

会社員である津田は、持病である痔の治療のための手術費に困っていました。
津田には勤め先の仲立ちで結婚をしたお延という妻がおり、妹のお秀は嫌っていました。お延は津田に愛されようと努力を重ねますが、二人の関係はぎくしゃくとしたままで、実は津田にはかつて清子という女がいてこの人にはあっさりとふられて今は人妻なのですが、津田はこのことをお延には隠していました。
お延の叔父の好意によって、入院費を工面してもらうこととなり、津田の入院先にかつて清子を紹介した吉川夫人が現れます。夫人は津田に清子は流産をし湯治しているから会いに行ってくれと勧めてきます。
津田は温泉の宿で清子と再会をはたします。清子は津田を自分の部屋へと招くのでした。

続明暗

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未完で終わった「明暗」を「続明暗」という形で繋げた人が水村美苗さんです。彼女は、夏目漱石の文体をそのままに続きを書いた小説家で、この作品で1990年芸術選奨新人賞を受賞しています。これから「明暗」を読む方が「最後がないからなあ」と凹む必要もありません!しっかり続編がここにあります!まるで夏目漱石がそのまま筆をとったかのような完璧なつくりになっていますので、ぜひ「明暗」「続明暗」を合わせてお手にとってご覧ください。

夏目漱石の魅力

ここまで10作品をご紹介しました。いかがだったでしょうか?
夏目漱石の魅力が伝わっていれば幸いです。
夏目漱石の作品には長編が多く、途中でやめてしまった、という人もいるかもしれません。そんな人も、この10作品のどれか一つでも読み切って、夏目漱石の魅力に触れてくれればと思います。どの作品の中にも夏目漱石の伝えたかったメッセージが乗っかっています。ぜひそのメッセージを読み取ってみてください。

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太宰治、三島由紀夫を愛する本の虫武蔵野大学文学部所属フランス映画にハマっていますフランス語3級とるため勉強中

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信州の曲者が集まるCLUB Autistaに所属する道楽者。車と酒と湯を愛し、ひと時を執筆に捧げる。

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