「管弦楽の魔術師」と呼ばれたモーリス・ラヴェルの名曲10選!ボレロなど管弦楽曲から水の戯れなどピアノ曲まで
日本で特に人気の作曲家、モーリス・ラヴェルの名曲を10曲ご紹介します。「亡き王女のためのパヴァーヌ」や「水の戯れ」などピアノ曲から「ダフニスとクロエ」などバレエ音楽、管弦楽曲まで、オススメの10曲をご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:www.realizedsound.net
モーリス・ラヴェル(1875~1937)
ラヴェルはフランス人の作曲家。ドビュッシーとともにフランス印象主義派の音楽家に分類されますが、古典的な曲形式に立脚した曲が多く、ドビュッシーとは少し色の違う作曲家と言えるでしょう。彼の音楽はジャズにも大きく影響を受けており、「ピアノ協奏曲」や「左手のためのピアノ協奏曲」には、それが色濃く見えます。晩年は記憶障害が進行してしまい、ある日、とある場所で「亡き王女のためのパヴァーヌ」が演奏されているのを聴き「美しい曲だ。一体誰が書いたんだろう。」と言ったそうです。1937年、62歳で彼はこの世をさります。
ボレロ
誰もが知っているこの曲、ボレロ。バレエ曲として作曲されました。スネアドラムの同一のリズムのもと、二つのメロディーが繰り返し奏でられるという形をとっています。初めのフルートソロから始まり、最後には大迫力のフィナーレを迎えます。のだめカンタービレなど様々な番組などで取り上げられています。単純な構成にはなっていますが、この曲には様々な意趣が加えられています。和音も特徴的で、協和音から不協和音まで様々使われています。
亡き王女のためのパヴァーヌ
パヴァーヌとは宮廷舞踏のこと。「亡き王女のための」とは、「死んだ王女のための」という意味ではなく、「その昔の」という意味。「いにしえの王女のためのパヴァーヌ」と表現した方が正しいかもしれません。この曲はラヴェルがパリ音楽院に在籍していた時代、ピアノ曲として書かれました。「大胆さにかける」「貧弱だ」などと当初は批判されたようです。上の動画のオーケストラ版の演奏では、そのような貧弱さは全く感じられません。むしろ、その宮廷を思わせる荘厳さ、それがなくなってしまった悲しみ、様々な感情が感じられます。
ラ・ヴァルス
ヴァルスとは、フランス語でワルツのこと。「スペイン狂詩曲」などラヴェルはオーケストラのためのワルツを多く書いていますね。ただ、この「ラ・ヴァルス」は舞踏会のような華々しさ、軽やかさというよりは怪しさを感じさせるワルツです。冒頭の部分から混沌とした雰囲気が漂いますが、その影からだんだんとワルツらしい主題が現れてきます。ただし、単純に優雅なワルツではありません。その背後には怪しいトレモロが流れ、だんだんとテンポが崩れ、リズムが破壊され、最後は無理やりとでも言えるような終わり方を見せます。
左手のためのピアノ協奏曲
「左手のためのピアノ協奏曲」はラヴェルにとって初めてのピアノ協奏曲であり、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインのために書かれました。しかしウィトゲンシュタインはそのあまりの難しさに弾ききることができず、楽譜に手を加えて演奏し、さらには音楽性がないとしてラヴェルを批判したため、それ以降険悪となってしまいました。この曲は非常に力強く、その強さに負けない美しさを兼ね備えたところが聴きどころですね。
ピアノ協奏曲
彼の晩年の作品であるこのピアノ協奏曲。この曲にはジャズの要素がふんだんに使われており、とにかく飽きることのない曲です。冒頭部分だけでもたくさんの遊びが詰め込まれています。ピシャリ!と叩かれる鞭に捉えどころのないピアノの動き、跳ねるようなピッコロのソロ。「お、なんだなんだ。ここからどうやって展開するんだ。」と聴衆の心を鷲掴みにしたのもつかの間、今度は突然哀愁を帯びた、ブルースを思わせるようなフレーズに…と、これだけ様々な意趣を凝らして一つのまとまりある曲に仕上げたラヴェルは、天才、というほかありません。
弦楽四重奏
弦楽四重奏曲ヘ長調。この曲はドビュッシー作曲の弦楽四重奏曲に大きな影響を受けています。ドビュッシーの弦楽四重奏曲の作曲後十年で作られた楽曲です。まさに印象派!と言った音楽。ドビュッシーに影響を受けているだけあって、第二楽章には特徴的なピッチカートが使われていますね。和音の使い方もとても素晴らしいものです。ドビュッシーの弦楽四重奏と一緒に聞くとより深く味わえるかもしれませんね。
水の戯れ
技巧的ですが穏やかな曲調で、このアルゲリッチの演奏はその技巧的ながら美しい音楽を表現しきっていると言えます。アルゲリッチと言えば表現性を兼ね揃えたテクニック。しばしば通常の演奏よりも少し早めに演奏されますが、この曲についてもそうなっています。美しい和音が波紋のように重なり合っていますね。ただし、なんとなく捉えどころがない。この捉えどころのなさが雰囲気を大事にする印象派の特徴でもあり、「水の戯れ」というタイトルを生み出したのかもしれません。
クープランの墓
オーケストラ、木管五重奏、吹奏楽など様々に編曲されるラヴェルの中でも最も人気の高い曲である、「クープランの墓」。「プレリュード(前奏曲)」、「フーガ」、「フォルラーヌ」、「リゴドン」、「メヌエット」、「トッカータ」の6つの曲からなっています。第一次世界大戦で亡くなった人たちへ捧げるための曲として書かれました。ラヴェル最後のピアノ独奏曲になっています。
ピアノのためのソナチネ
古典的な形式に則って作られた曲。第一楽章「中庸の速さで」第二楽章「メヌエット」第三楽章「生き生きと」からなる曲です。繊細なメロディーながらもうまく古典的形式にはまった曲です。音楽雑誌作曲コンクールのために書かれた曲で、その完成度が光ります。上の演奏では第一楽章が演奏されています。第一楽章はソナタ形式であり、ここからも古典的と言えるでしょう。ただし、やはりラヴェルらしい和音の使い方がされており、形式と対照的になっていることもあいまって、より印象派的要素が際立って見えます。
ダフニスとクロエ
ダフニスとクロエはラヴェルが作曲したバレエ音楽の中では最も有名なものであり、管弦楽曲としても演奏機会の非常に多い曲です。「ダフニスとクロエ」は森の中でヤギに育てられた少年ダフニスと洞窟の中で羊に育てられたクロエの神話的物語です。二人は捨て子として捨てられているのを夫婦に拾われ、成長し、エーゲ海の島にて物語を繰り広げます。第二組曲の「夜明け」が最も知られており、吹奏楽などにも編曲され、日本でも馴染みの深い曲となっています。曲の醸し出す幻想的な雰囲気は、神話的な物語に絶妙にマッチしています。
最後に
いかがでしたでしょうか。ラヴェルの独特な曲調、雰囲気などなどをご堪能いただけたと思います。彼は「管弦楽の魔術師」と呼ばれていただけではなく、「スイスの時計職人」としても呼ばれていました。これは彼の作曲した曲が精緻に作られていたことに由来します。ぜひ、ラヴェルの曲を色々聞いてみてお気に入りの曲を探してみてくださいね。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。