難易度最高の有名なピアノ協奏曲のおすすめ名曲15選
今回はピアノ協奏曲についてご紹介します。ピアノ協奏曲は別名ピアノコンチェルトとも呼ばれ、ピアノの独奏とオーケストラがともに演奏する演奏体系、そしてその楽曲のことです。今回はそのピアノ協奏曲の定番の名曲をご紹介いたします。
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アイキャッチ画像出典:www.digitalconcerthall.com
ピアノ協奏曲とは?
協奏曲とは、オーケストラで演奏される曲目の一種で、オーケストラと一つもしくは、複数の楽器の独奏からなる楽曲です。「コンチェルト」というのはイタリア語で協奏曲という意味です。そして、ピアノ協奏曲、ピアノコンチェルトというのは、その、独奏楽器がピアノということです。ちなみに、現代の演奏会ですと、序曲→協奏曲→交響曲という順番で演奏されることが多いですね。
今回はそんなピアノ協奏曲の名曲について15曲を選んでご紹介します。ピアノ協奏曲を15曲も知っておけば、かなり知識豊富!といって差し支えないと思います。
以下が、今回ご紹介するピアノ協奏曲の一覧です。
■モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
■モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番
■シューマン:ピアノ協奏曲
■リスト:ピアノ協奏曲第一番
■ショパン:ピアノ協奏曲第一番
■ラヴェル:ピアノ協奏曲
■ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
■ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第二番
■ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第三番
■ブラームス:ピアノ協奏曲第二番
■グリーグ:ピアノ協奏曲
■チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第一番
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』
■ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
■ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲
モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番
モーツアルト作曲ピアノ協奏曲第23番は最も有名なピアノ協奏曲の一つです。モーツアルトのピアノ協奏曲は27曲あり、その中でも特に有名なのがこの第23番です。その中でも第二楽章が特に知られており、哀愁漂う美しい曲になっています。印象的なピアノ独奏から始まり、木管楽器がそのメロディーに絡みます。この柔らかい響きはなんとも形容し難く美しく、ひっそりと終わりを告げ、弾むような第3楽章へとつながっていきます。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第27番
モーツアルトが亡くなる直前に書き上げたピアノ協奏曲です。この協奏曲を書き上げた1791年にモーツアルトはこの世をさることになります。明るく品のいい第1楽章、美しくさみしい第2楽章、長調なのにどことなく寂しさを感じさせる第3楽章の三楽章からなっています。モーツアルトっぽさが明るく弾むような曲であるとすれば、この協奏曲はどことなく雰囲気が違って聞こえます。これもモーツアルトが死期を感じていたからなのかどうかは誰にもわかりませんが。
シューマン:ピアノ協奏曲
シューマンといえばピアノの独奏曲や歌曲で有名ですが、ピアノ協奏曲はこの一曲しか書き上げていません。リストのピアノ協奏曲が作曲されたのとほぼ同時期の1838年にシューマンは「ピアノは私にとってあまりに窮屈になってきた」と語りました。その言葉通り、1838年前後に4つの交響曲を書き上げ、オーケストラの作品にも大きく力を入れるようになりました。このピアノ協奏曲は1845年に作曲されました。オーケストラを伴奏素養に用いたショパンとは異なり、ピアノがオーケストラの伴奏に回ったりするなど、ピアノを多面的に効果的に用いた曲となっています。
第一楽章:Allegro affettuoso
第二楽章: Intermezzo; Andante grazioso
第三楽章:Finale;Allegro vivace
リスト:ピアノ協奏曲第一番
この曲はピアノ協奏曲『第一番』ですが、リストはこのピアノ協奏曲を作曲する前に二つのピアノ協奏曲を作曲しています。しかし、楽譜が紛失してしまったため、この協奏曲がピアノ協奏曲第一番として知られています。このリストのピアノ協奏曲は1830年代に作曲されました。超絶技巧曲として有名です。演奏時間は約18分とあまり長くはない曲ですが、四楽章で構成されています。
第一楽章:Allegro maestoso
第二楽章:Quasi adagio
第三楽章:Allegretto vivace - Allegro animato
第四楽章:Allegro marziale animato
ショパン:ピアノ協奏曲第一番
ショパンのピアノ協奏曲はショパンが作曲した二曲のピアノ協奏曲のうちの一つです。ピアノの独奏に対して、オーケストラがあまりにも伴奏に徹しており、その点に関して批判を受けることがあります。ピアノは一台でオーケストラの役割ができるというのはよく言われることですが、この協奏曲は二つのオーケストラ的存在が絡み合うのではなく、一つが表に出て、一つは裏に徹するというイメージでしょうか。
しかしながら、最も有名なピアノ協奏曲の一つであり、ショパン自身もこの曲を自信作だとみなしていたようです。作曲された当初もこの曲は大きな人気を博していました。
第一楽章: Allegro maestoso ホ短調 3/4拍子
第二楽章: Romanze, Larghetto ホ長調 4/4拍子
第三楽章: Rondo, Vivace ホ長調 2/4拍子
ラヴェル:ピアノ協奏曲
このラヴェルのピアノ協奏曲はラヴェルの最晩年の時期に作曲されました。ラヴェルの死の六年前のことです。のだめカンタービレなどで取り上げられた曲でもあり、お聞きしたことのある方も多いのではないでしょうか。左手のためのピアノ協奏曲と同様でジャズらしい表現が散りばめられています。『左手のためのピアノ協奏曲』が重厚さを持ち合わせているのに対して、こちらの曲はユーモアと可愛らしさが前面に出ています。
第一楽章:Allegramente
第二楽章:Adagio assai
第三楽章:Presto
ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲
ラヴェルはピアノ協奏曲を二曲作曲しています。それがこの「左手のためのピアノ協奏曲」と次にご紹介する「ピアノ協奏曲」です。この曲は第一次世界大戦で右手を失ったピアニストであるパウル・ウィトゲンシュタインの依頼にって作曲されました。ラヴェルは、次に紹介するピアノ協奏曲ト長調と同時期にこの曲を作曲しています。ピアノ協奏曲と同様でジャズ的な要素も散りばめられ、可愛らしい一面も併せ持っています。複数の楽章は持っておらず、単一楽章で約18分ほどで演奏されます。
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフのピアノ協奏曲第二番は1901年に作曲されました。ラフマニノフはロシアのロマン派の作曲家で、協奏曲作家として有名です。ラフマニノフ自身も優れたピアニストであり、ピアノ曲については特に高く評価されて来ました。その中でも最も人気の高い曲の一つがこのピアノ協奏曲第二番であり、難曲としても知られています。第一楽章冒頭部の和音は一度に10度の間隔に手を広げなければならず、手の小さいピアニストでは演奏は不可能です。
第一楽章:Moderato ハ短調 2分の2拍子 自由なソナタ形式
第二楽章:Adagio sostenuto ホ長調 4分の4拍子 序奏付きの複合三部形式
第三楽章:Allegro scherzando ハ短調〜ハ長調 2分の2拍子
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番
ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、ピアノ協奏曲の中でも最難関と言われる協奏曲です。特に第一楽章のカデンツァはいわゆる「超絶技巧」と言われており、演奏可能な人物がほとんどいないために簡易版までもが用意されています。それが、大カデンツァと小カデンツァ。大カデンツァは重量感のある素晴らしいカデンツァですが、残念ながら、演奏される機会が多いのは「小カデンツァ」。あまりにも技巧的で存在あんのあるカデンツァは曲としてのバランスを壊してしまうのかもしれませんね。
ブラームス:ピアノ協奏曲第二番
ブラームスのピアノ協奏曲第二番は第一番が書かれた後22年後にかかれました。ピアノ協奏曲第一番よりもこの第二番の方が人気が高く、ブラームスの作品の中でも、交響曲第2番やヴァイオリン協奏曲と並んで有名な曲の一つです。ブラームスの曲は比較的暗い曲が多いですが、このピアノ協奏曲第二番は明るい基調で書かれています。協奏曲といえば、独奏部分であるカデンツァが目玉であったりもしますが、この曲にはそのようなカデンツァ的な部分はなく、ソリストの超絶技巧に焦点をおいたような曲ではありません。それにもかかわらず、この作品自体が難しい技巧をかなり要しており、ピアノ協奏曲というジャンルの中でもかなりの難曲として知られています。
第一楽章:Allegro non troppo、変ロ長調、ソナタ形式
第二楽章:Allegro appassionato(スケルツォ)、ニ短調、複合三部形式
第三楽章:Andante、変ロ長調、複合三部形式
第四楽章:Allegretto grazioso、変ロ長調、ロンド形式
グリーグ:ピアノ協奏曲
エドヴァルド・グリーグは優れたピアニストでもあった19世紀半ばの作曲家です。数々のピアノ作品を作っていますが、その中でも特別な位置を占めるのがこのピアノ協奏曲。冒頭のフレーズはクラシック音楽をほとんど聞かないという方でもご存知なのではないでしょうか?このフレーズはノルウェー民俗音楽に特有のものなのですが、このフレーズだけでなく、この曲のいたるところにこのような民俗的フレーズがちりばめられていますね。
第一楽章:Allegro molto moderato
ティンパニのトリルに導かれてピアノが流れ落ちていくような冒頭のフレーズ。民俗的な主題が印象的です。
第二楽章:Adagio
穏やかな旋律と柔らかな管楽器の絡まりがとても美しい楽章です。終盤ではピアノが情熱的に歌い、だんだんと静かに終わりを迎えます。
第三楽章:Allegro moderato molto e marcato
第二楽章との切れ目なく始まる、前楽章とは打って変わった軽快で力強い三楽章。中間部の叙情的なフルートがとても印象的です。
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第一番
ピョートル・チャイコフスキー作曲、ピアノ協奏曲第1番。クラシック好きならもはや興味の対象外となってしまうほどの有名曲。チャイコフスキーがこの曲を友人のルビーンシュタインに聞かせたところ、即座に酷評されたという話はよく知られているものです。彼はひどく傷つきながらもこの曲を完成させました。
この批判は、第一楽章が主調とは別の調から開始し、さらにその調には戻らないという大胆な構成からくるものなのですが、批判を受けたこの構成こそがこのコンチェルトの緊張感、不安感を高め、この曲の劇的な性格を生んだのです。
第一楽章:Allegro non troppo e molto maestoso- Allegro con spirito
この曲もよく知られたホルンのテーマから始まります。シンフォニックで壮麗です。
第二楽章:Andantino semplice -Prestissimo-Quasi Andante
簡潔な旋律の流れを特色あるロシア風の半音の諸関係で支えています。
第三楽章:Allegro con fuoco
ウクライナ民謡を第一主題としたロンド形式。ソナタ形式の応用も取り入れられています。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番『皇帝』
『皇帝』はその名の通り堂々とした曲。でも実は、この『皇帝』というタイトルはベートーヴェン自身がつけたものではありません。この曲を聞いた人たちがその壮大さに感動してこう名づけたのかもしれませんね。ベートーヴェンはナポレオンへの賛同を示して交響曲『英雄』を書いているくらいですから(完成後、ナポレオン皇帝即位に激怒して『ある英雄の思い出のために』と書き換えたのですが…)この曲も自分の思い描く皇帝を描写したものなのかもしれません。
第一楽章:Allegro
いきなりのピアノ独奏。とてもよく知られているフレーズです。ピアノソロとオーケストラの儀式風のカデンツァがとても印象的です。内省的なピアノ協奏曲第4番とは全く異なる力強さが示されています。
第二楽章:Adagio un poco mosso
穏やかな曲調の第二楽章。変奏曲形式になっており、全体は3部から構成されています。
第三楽章: Rondo Allegro - Piu allegro
第二楽章からそのままなだれ込み、快活なリズムで始まります。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番
ピアノ協奏曲第3番は、ベートーヴェンの作曲したピアノ協奏曲のなかでは、唯一短調の曲です。
この曲はハ短調で書かれていますが、ベートーヴェンのハ短調の作品は他に「交響曲第5番」があり、曲調としても交響曲第5番で表現されているような英雄的な悲壮感が受け継がれています。
ドヴォルザーク:ピアノ協奏曲
このピアノ協奏曲はドヴォルザークが唯一作曲したものですが、あまり有名ではありません。ヴァイオリン協奏曲やピアノ協奏曲よりもチェロ協奏曲が有名な作曲家というのはなかなか珍しいことですね。ある音楽評論家によると、「ピアノ・パートが効果的に書かれているとは言いかねるも、魅力的なピアノ協奏曲」ということだそう。
この協奏曲はピアノが「目立つ」作品ではないということでしょう。ピアノ協奏曲というとピアノの「超絶技巧」を見事に聞かせるという側面を持ち合わせているのが普通ですが、この協奏曲は、ピアノとオーケストラは見事に調和しています。そのような点からこの協奏曲は演奏機会が少ないのかもしれません。
ピアノ曲の中でも最も重厚で大規模なピアノ協奏曲
いかがでしたでしょうか。ピアノ曲というと様々なものがありますが、ピアノ協奏曲はその中でも、最も重厚で大規模なものです。そして、やはり名曲と言われるものは聞けば聞くほどその良さが体にしみてきますね。個人的にはラヴェルのピアノ協奏曲はジャジーな雰囲気で聞いていて楽しいですし、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は、その超絶技巧に圧倒されてしまいます。皆さんもぜひお気に入りのピアノ協奏曲を探してみてくださいね。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。