「ピアノの魔術師」フランツ・リストのオススメの名曲7選
リストといえば、超絶技巧曲!?いいえ、それだけではありません。「ピアノの魔術師」たらしめた、リストの珠玉の名曲7曲をぜひご堪能ください。
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アイキャッチ画像出典:thelistenersclub.timothyjuddviolin.com
フランツ・リスト(1811~1886)
リストは19世紀にハンガリー、ドイツで活躍した音楽家、作曲家。幼少の頃からずば抜けたピアノの才能を発揮し、テクニカルなピアニストとして名を馳せました。ピアノをたしなむ方なら誰でも知っている、あのツェルニーに師事していました。ツェルニーはリストをとても大事にし、レッスン料は一切取らず、我が子のように可愛ながらも厳しいレッスンを施し続けました。そのツェルニーあってか、リストは「ピアノの魔術師」と呼ばれ、どんな曲でも初見で弾きこなせたと言われています。指が6本あるのではないかと噂されていたほど。彼の作曲した曲にも超絶技巧を必要とするものがかなり多く、現在でも多くの演奏者の重要なレパートリーとなっています。
愛の夢第3番
当初はソプラノ歌手用に作曲された曲ですが、その後作曲者本人により、ピアノ曲に編曲されました。ラ・カンパネラほどの技巧は問われませんが、それでもかなり難しく、さらにはその表現性もかなりのものを問われる曲と言えます。このフジ子・ヘミングの演奏はその両者、どちらも兼ね揃えた素晴らしい演奏と言えるでしょう。
ラ・カンパネラ
弾くのがかなり難しいとされるラ・カンパネラ。フジ子・ヘミングが演奏したことにより、一躍脚光を浴びた曲でもあります。もともとはパガニーニが作曲したヴァイオリンの曲であり、それがリストによって編曲されたものです。音の跳躍がかなり難しく、手の小さな人にはかなり弾きこなすのは難しいでしょう。
「巡礼の年」
リスト作曲『巡礼の年』<第一年;スイス><第二年;イタリア><ヴェネチアとナポリ><第三年>の4集からなる作品です。上の演奏のル・マル・デュ・ペイは<スイス>の8番目の曲で郷愁を意味します。この曲はリスト特有の技巧性はみられません。村上春樹の小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に取り上げられた曲でもあります。重く、死を感じさせながらも美しい曲であると言えるでしょう。20代から60代にかけてリストが訪れた土地などに影響を受けて作られた曲。本のタイトルにも含まれている通り、重要な曲であると言えます。
死の舞踏
この曲を聴いて何かが浮かび上がらないでしょうか。そう、ベルリオーズ「幻想交響曲」。きっとベルリオーズを聴いたことがある方ならば、誰でも思い浮かべることができるのではないかと思います。どちらの曲もグレゴリア聖歌「怒りの日」の旋律を利用しており、ありありと「死」が迫る様子を思い浮かべることができます。このようなテーマ性をはっきりとさせた作品は、リストのよく知られたレパートリーの中では珍しいのではないでしょうか。ただし、中間部ではそのようなテーマ性だけでなく、リストらしい叙情性を聞くことができます。
ハンガリー狂詩曲第2番
ハンガリー狂詩曲は19曲からなります。ハンガリー舞曲の形式の一つであるヴェルブンコシュに影響を受けており、ハンガリー古来ののテーマも取り入れられています。19曲あるハンガリー狂詩曲の中では、この第2番が最も知名度が高く、終盤のおどけるようなフレーズは多くの方が知っているのではないでしょうか。最初の短調の思いフレーズからは想像もできないような明るい終わり方を見せます。しかしその明るいフレーズには何かしらの狂気じみたものが見られ、曲に通奏低音のような怪しさを抱かせています。
3つの演奏会用練習曲より第三曲「ため息」
この3つの演奏会用練習曲も、「練習曲」という名前がついていながら、技巧性だけでない精神性を感じさせる曲です。第1曲「悲しみ」、第2曲「軽やかさ」、第3曲「ため息」からなっており、この「ため息」はこの三曲の中では最も演奏機会が多く、知名度の高い曲です。「ため息」の特徴は甘美な旋律とそれを包み込むような広範囲のアルペッジョ。華やかでドラマティックではありますが、そのタイトル「ため息」の通り、どこかしら美しさの中に哀愁が感じられます。美しさの持つ両義性。彼はそんなものを表現したかったのかもしれません。
詩的で宗教的な調べ:第三曲「孤独の中の神の祝福」
先ほどまでの技巧的な曲とは打って変わって、音の量の少ない美しい曲。リストにしてはこの曲は珍しい曲調になっています。このような曲調を持つのは、この曲の他に、村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」にあげられた「巡礼の年」くらいでしょうか。非常に美しく穏やかな曲となっています。
テクニックだけではない、数々の名曲たち
いかがでしたでしょうか。今回はリストの名曲7選ということで、非常に技巧性をとわれる、いわゆる「よく知られたリスト」から、あまり知られていない、知る人ぞ知る美しい名曲までご紹介しました。個人的な意見ですが、私はテクニックの問われるリストの曲よりも、音の量が少ない美しく悲しいリストの曲の方が好みです。彼の曲には、単純な美しさや愛や悲しみではない、様々な感情が感じ取れます。美しさからは悲しみが、悲しみからは愛が、ずっしりと心に響くのが彼の曲の醍醐味ではないでしょうか。皆さんも様々な曲を聴いて見て、お気に入りのリストの名曲を探して見てくださいね。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。