ロシアのサラブレットが1位に!1975年からのロン=ティボー国際音楽コンクール
1975年からのロン=ティボー国際音楽コンクールは、ショパンコンクールでも1位となった話題の「ロシアのサラブレット」が1位となりました。日本でも大フィーバーとなったそのピアニスト、他にはスクリャービンの子孫に気に入られた人なども含まれています。
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1975年は世界的なピアニストを多数輩出!
出典:pixabay.com
1975年は1位にミハイル・ルディという素晴らしいピアニストが、2位には日本人の海老彰子、6位は秀才アブデル・ラーマン・エルバシャが入っています。この年は素晴らしいピアニストをたくさん生み出した年です。70年代というのはショパン、チャイコフスキー、エリザベート王妃の各コンクールも同様に優秀なピアニストが出た時代であったように感じます。
皆個性があり、世界的なピアニストであるオーラが強く出ていたのですが、だんだんそういったピアニストは減ってきたのではないでしょうか。逆に技術力が高いけれどコンクール向きではないピアニストであり、実際に出る必要がない腕前で知名度も高いラン・ランのような人もいます。今回は、コンクールで見事に受賞となった5人をご紹介いたします。
1975年 1位 ミハイル・ルディ
1975年1位のミハイル・ルディは1953年、ロシアに生まれました。モスクワ音楽院でヤコフ・フリエールのクラスで勉強したあとバッハ国際コンクールでも1位をとっています。その後フランス国籍を得てパリでデビューしていますが、巨匠アルトゥール・ルビンシュタインやフランスの音楽評論家はこぞって絶賛したということです。
レパートリーは広いことで知られますが、特に定評があるのはスクリャービンの演奏で、「特有の神秘的な世界に誘い込む」とスクリャービンの子孫にもラブコールを送られています。
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1975年 2位 海老彰子
1975年2位は日本の海老彰子です。彼女は1953年生まれで、東京藝大の後に留学しパリ音楽院を主席卒業した才女です。コンクール歴は素晴らしく、ショパンコンクール1980年には5位入賞、リーズコンクールでも7位入賞しています。切れの良い明瞭な音と確かなテクニックの持ち主です。
レパートリーはショパン、リスト、フランスの作曲家ラヴェル、ドビュッシーなどです。フランスに拠点をおいて演奏活動や審査員、後進の指導など幅広く国際的な活躍をしています。
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1975年 6位 アブデル・ラーマン・エルバシャ
1975年6位はレバノン出身のアブデル・ラーマン・エルバシャです。彼は1958年音楽家の両親の間に生まれています。パリ音楽院に留学する機会を得てピアノ科、作曲科などで主席卒業した秀才です。1978年のエリザベート王妃コンクールでは1位を取得。レパートリーの広さと技術の高さ、表現力の豊かさなどで人気が高い世界的なピアニストです。円熟した年齢になり一層演奏に磨きがかかっています。
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1981年 1位 清水和音
1981年1位の清水和音は1960年日本生まれです。桐朋高校卒業後にジュネーブ音楽院に留学してコンクール受賞となりました。受賞後はショパンの作品を中心にベートーベンソナタの全曲演奏、ラフマニノフの作品などを特に取り上げて演奏しています。日本国内だけではなく世界的に演奏活動をしている日本を代表するピアニストのひとりです。
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1983年 1位 スタニスラス・ブーニン
1983年1位のスタニスラス・ブーニンはその生い立ちや風貌と高い技術から「ブーニン・フィーバー」という一般の芸能人に対するような現象が起きました。その人気は大変なもので若い女性からの「花束」はステージやピアノ周囲にあふれました。
彼は1966年ロシア生まれ。多くのピアニストを輩出した家系です。父親はスタニスラス・ネイガウス、祖父はゲンリヒ・ネイガウス、曾祖父はグスタフ・ネイガウスという人ですがすべて優秀なピアニストであり敏腕教師でした。母方もモスクワ音楽院出身の人がいること、親戚にポーランドの作曲家カロル・シマノフスキがいるなど芸術家と音楽家の家系です。その才能はしっかりとスタニスラス・ブーニンに継がれました。
姓が違うのは、母親がスタニスラス・ネイガウスと離婚して実家の姓を名乗っていることからです。ブーニンは、ショパンコンクールでも1985年に1位を獲得。彼の演奏は、テンポが非常に速く、技術に走り情感に欠けているという批評も一部ありました。好き嫌いの分かれるところですが、モスクワ音楽院では父親の「ネイガウス・クラス」ではなくゴリデンヴェイゼルの流れを受けています。
演奏は、ショパンを中心にモーツァルトやベートーベンなど古典なども含まれます。
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コンクールの資金難と質の低下
いかがでしたでしょうか。ロン=ティボー国際音楽コンクールはまだこの先も続くのですが、同コンクールも他のコンクールと同様に資金難に苦しみ、当時好景気だった日本からのスポンサーを入れるなどしています。
その結果、1980年くらいから入賞者は圧倒的に日本人の名前が連なりました。更に近年では韓国、中国のピアニストの入賞が増えています。それが何を意味するにしても、「受賞者の質が落ちている」と嘆く声が上がっているということです。歴史あるコンクールの権威と、世界的なピアニストを生み出してきた誇りを取り戻して欲しいと願って止みません。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。