名女流ピアニストの誕生!1965年からのロン=ティボー国際音楽コンクール
1943年から始まったロン=ティボーコンクールは20年を越え、1965年になっていよいよ人気が高まってきました。ロシア出身の素晴らしい女性ピアニスト3人を中心にご紹介します。いずれも名門モスクワ音楽院で学んだ人たちです。他にも現在大活躍している世界的ピアニストをどうぞご覧下さい。
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女性ピアニストが生き残れない?
1965年は、世界経済が安定してもっともピアニストが進出できた時であったと思います。その頃のコンクール受賞者たちは、受賞からすでに50年を越えて現在に至るわけです。亡くなっている可能性もありますが、あまり「世界的」なコンサートピアニストとして活躍していない人はその後がわかりません。自国で指導することに専念しているのか、1位、2位であっても一線から退いている人も多いようなのです。
特に女流ピアニストについて、数年に渡り演奏活動をしているのですが、ぱったりと演奏録音も残さずに情報がなくなっているのです。マルタ・アルゲリッチのように終生ピアニストとして、音楽家として活躍する人はほんの一握りに過ぎないといえます。現代はそうでもないかもしれません。しかし女性にとって、ピアニストとして生きることの難しさがあったのではないかと想像しますが、どうでしょうか。
今回は、現在も活躍しているエリザベート・レオンスカヤ、そして引退宣言をしたナターリャ・ガブリロワ、活躍が不明のリューボフ・ティモフェーエワをご紹介します。
1965年 3位 エリザーベト・レオンスカヤ
1965年3位のエリザーベト・レオンスカヤは1945年ロシア生まれです。モスクワ音楽院に学んでいます。重鎮の名ピアニストであるイグムノフの高弟ミリシュタインに師事しました。エリザベート王妃コンクールでは9位となりましたが、実力は素晴らしく旧ソ連でも重く置かれた存在であったようです。
ウィーンに拠点を移し広く演奏活動を行っています。ロシアの作曲家、ラフマニノフやプロコフィエフやモーツァルトなど幅広いレパートリーを持つことで知られます。曲の深い解釈と高い演奏技術はイグムノフの直系の特徴です。
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1967年 1位 エドワード・アウアー
1967年1位のエドワード・アウアーは1941年にアメリカで生まれました。1965年のショパンコンクールでも5位、1966年チャイコフスキーコンクールに5位入賞した実力派ピアニストです。受賞後は、世界中に演奏活動をしながら後進の指導も行うなど広範囲の活躍をしています。
日本へも何度も演奏に来ていることから知名度は高いようです。レパートリーはかなり広く、ショパン、ラフマニノフやチャイコフスキー、プロコフィエフなど近代からベートーベン、シューベルトなどの古典まで含まれます。
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1969年 1位 リューボフ・チモフェーワ
1969年の1位のリューボフ・ティモフェーエワは1951年ロシア生まれです。幼少時から才能がありモスクワ音楽院で、著名なピアニストであるヤコフ・ザークに学んでいます。このコンクールの優勝では彼女について伝説になっている話があります。
彼女が演奏している最中に停電になったのですが、彼女は少しも動揺せず最後まで弾き続けたというのです。そういったことがあったからなのかどうか、見事に1位を受賞しました。また、彼女が注目をひいた理由のひとつに、その美貌があるようです。
受賞後日本にも何度か来ており、ファンは多いということです。演奏は、個性的な表現でメリハリのあるものですが、一般的なものとは少し違うので好みが分かれるものであるかもしれません。
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1969年 3位 ナターリャ・ガブリロワ
1969年5位のナターリャ・ガブリロワは1950年ロシア生まれです。モスクワ音楽院で名ピアニストでショパンコンクール第一回1位受賞のオボーリンに師事しています。その後、ショパンコンクールの1970年に5位入賞しています。また、チャイコフスキーコンクールも入賞という輝かしい経歴の持ち主です。しばらく演奏活動をしたあと、現在は引退しているということです。
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1969年 5位 ジャン・フィリップ・コラール
1969年の5位はフランスのジャン・フィリップ・コラールです。彼は1948年生まれで、パリ音楽院に学んでいます。フォーレ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランクといったフランスの作曲家の作品はもちろんですが、ラフマニノフの演奏で知られているピアニストです。フランスには、ミッシェル・ベロフ、パスカル・ロジェという同年代の名ピアニストがいますが、聴き比べると興味深い発見があります。
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女流ピアニストということ
いかがでしたでしょうか。ロン=ティボーコンクールでは1965年は女性が3人、1967年は4人、1969年は3人入賞しています。約半数が女性ということですが、現在比較的に知名度が高く活躍している人はほとんどいません。それは演奏技術の問題ではなく、個別の「女性としての人生」に関わる問題なのかもしれないのですが、残念な気がします。世界的なピアニストとしてよりも、女性としての幸せを優先したということでしょうか。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。