悲劇の女流ピアニスト!1953年のロン=ティボー国際音楽コンクール
1953年のロン=ティボーコンクールは世界的なピアニストを何人も送り出しています。ほとんどの人はすでに亡くなられていますが、受賞後に「これから大成していく」という時期を目前に病で演奏家として一線を去らなければならなかった女性が含まれます。その女流ピアニストとは…。
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1953年の回に世界的ピアニストが勢ぞろい
出典:pixabay.com
1943年から始まったロン=ティボーコンクールですが、1953年開催はすばらしいピアニストを多数世に送り出しました。受賞後に世界的に活躍し、後進の指導、演奏活動、審査員などピアニストとして大いに活躍した人たちです。亡くなられた人や引退した人、現役でがんばっている人も含めいずれも歴史に名をしっかりと残すピアニストといえます。
ロン=ティボーコンクールは、1953年はすでに開催から10年経ち、ショパン、チャイコフスキー、エリザベート王妃の各コンクールと肩を並べる勢いとなっています。ますます充実していくコンクールの中で、素晴らしいピアニストが勢ぞろいした1953年は特別であったようです。この回での入賞者5人をご紹介いたします。
1953年 2位 フィリップ・アントルモン
2位となったフィリップ・アントルモンは1934年フランスで生まれました。両親が2人とも指揮者、ピアニストという恵まれた環境に育ち早くから才能を発揮していたようです。マルグリット・ロンに師事し、パリ音楽院では14歳で首席で卒業しています。NHKの「スーパーピアノレッスン」モーツァルト編で2005年にテレビの公開レッスンが放映されましたが、親しみやすい人柄が人気でした。
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4位 田中希代子
4位入賞は日本の田中希代子です。彼女は1932年に生まれています。日本ではレオニード・クロイツァーなどに師事しました。戦前の時代にパリに留学するのは大変なことであったと推測しますが渡航に何とか成功し、パリ音楽院を卒業しています。1955年のショパンコンクールで10位入賞は、日本人初ということです(中村紘子の入賞はその10年後です)。
彼女は日本ではなくヨーロッパを拠点に演奏活動をしていたため、日本での知名度は低かったようです。幅広いレパートリーがあったと伝えられますが、録音はほとんどありません。ピアニストとして大成する前の30代で悲劇にも、膠原病という難病にかかります。そのためコンサートピアニストを退き、音楽大学などで後進の指導に専念したあと1996年にこの世を去っています。
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5位 バルバラ・ヘッセ・ブコウスカ
5位のバルバラ・ヘッセ=ブコフスカは1930年ポーランドに生まれました。1949年のショパンコンクールでは2位という好成績で、ポーランドではハリーナ・チェルシー・ステファンスカと共に大変有名な女流ピアニストです。
彼女は受賞後、パリでルビンシュタインに学んだあと母国で後進の指導と演奏活動をしています。ショパンコンクール、リーズコンクールなど多くのコンクールの審査員をつとめ、2013年に死去しました。レパートリーはショパンを中心にシマノフスキなどポーランドの作曲家の演奏で知られています。
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6位 セシル・ウーセ
6位という成績に終わってしまったものの、セシル・ウーセは幼い時から才能を認められています。彼女は1936年フランス出身で、パリ音楽院をたったの14歳で首席卒業しています。エリザベート王妃コンクール、ブゾーニ、ヴァン・クライバーンコンクールに入賞という記録を残した才女です。レパートリーは多岐に渡り、リストやラフマニノフなどの技巧の難しいものを得意としています。
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7位 ワルター・クリーン
7位入賞のワルター・クリーンは1928年オーストリア出身です。彼はイタリアの名ピアニストであるベネディッティ・ミケランジェリに師事しました。ブゾーニピアノコンクールでも入賞しています。彼は1991年放映のNHK「ピアノでモーツァルトを」というテレビ番組の公開講座で人気を博しました。
同年に亡くなっていますので、ご本人は放映は見ていないと思われます。演奏は、モーツァルト、ブラームス、シューベルトが特に定評があり録音が残っています。
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残り続ける栄光の演奏記録
いかがでしたでしょうか。10年経ち、ロン=ティボーコンクールはますます円熟し、各国から素晴らしいピアニストが腕を競うために集まってきました。この回は現在まで名を残す名ピアニストが多く誕生したことは、特筆に価するといってよいでしょう。特にショパンコンクールで10位入賞を始めて獲得した田中希代子は、「悲劇のピアニスト」として有名です。
病でピアノを弾くことができなくなるという、ピアニストにとって想像を絶する体験をしたことに深い同情を感じます。ピアニストの中には志半ばでピアノの世界から去らなければならない人もいます。しかし、コンクールやコンサート、録音の記録から、その栄光の演奏は彼らを直接知らない人の心にしっかりと残ることでしょう。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。