個性派が勢ぞろい!ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールの覇者たち
ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールは1962年からアメリカのテキサスで開催されています。クライバーンはアメリカ人ピアニストで、第一回チャイコフスキーコンクールの優勝者です。このコンクールの覇者のうち個性的なピアニスト4人をご紹介いたします。
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アイキャッチ画像出典:cdn.pixabay.com
ヴァン・クライバーンコンクールの特徴
ヴァン・クライバーンコンクールはピアニストであるクライバーンが主催した「個人のコンクール」が始まりでした。彼は第一回チャイコフスキーコンクールの覇者ですが、当時は旧ソ連とアメリカの政治的な絡みがありアメリカ人の1位は国の英雄として熱狂的な支持を受けたようです。当時は宇宙開発競争があり、アメリカはソ連のスプートニク打ち上げにより「敗北」しています。
それに関してソ連側がアメリカに対してこれ以上の刺激を避けたかったのではないかと言われています。審査員に指示して無理やりにソ連のピアニストを優勝させることはしなかったなどいろいろと噂されています。
また、チャイコフスキーコンクールの審査はソ連側に付く人と、アメリカ側に付く審査員とに分かれ票の入れ方も非常に偏っていたということです。つまり本来クライバーンが1位の演奏であったかどうかは疑問視する見方もあります。
クライバーンコンクールは、残念ながら回を重ねるごとに実力派のピアニストの挑戦者は減っているようです。その理由はコンクール優勝者には一年間のコンサート演奏と指定されるレコード会社の専属契約があることがあげられます。そういったことがかなり精神的な負担になることから、ショパンやチャイコフスキーコンクールなどに将来の大物ピアニストが流れているのではないかと推察されています。
1962年 1位 ラルフ・ヴォタペック
1962年第一回開催の1位は、アメリカのラルフ・ヴォタペックです。彼は1939年アメリカ生まれで、ジュリアード音楽院などで学んだあとクライバーンコンクールで1位を獲得しました。受賞後はコンサートピアニストとして活躍していますが、後進の指導を主にしておりレコードの記録はほとんどありません。アメリカ国内に活動拠点を置いています。ガーシュインの演奏では定評があるようです。
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1966年 1位 ラドゥ・ルプー
1966年の優勝者は外見も個性的なラドゥ・ルプーです。彼は1945年ルーマニア生まれで、ブカレストの音楽院からモスクワ音楽院へ留学し、名物ピアニストのスタニスラス・ネイガウスに師事しました。彼はクライバーンコンクールの優勝後の一年間専属リサイタルを不服とし、それを破棄したことで有名です。当時のソ連とアメリカとの冷戦時代の確執を彷彿とさせる出来事でした。
彼の得意とするものは、ブラームス、シューベルト、ベートーベンなどドイツの作曲家などです。「偉大な詩人」と絶賛する人もいますが、個性的な解釈は好き嫌いの分かれるところです。
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1969年 1位 クリスティーナ・オルティーズ
1969年の優勝者はクリスティーナ・オルティーズです。1950年ブラジル生まれで、幅広いレパートリーを持つ実力派ピアニストです。得意なものは、ヴィラ・ロボスなどブラジルの音楽を中心にラフマニノフもこなす技巧的な曲も含まれます。個性の点では、他のピアニストのように強く自我を表現するものではありませんが、優美で女性らしい暖かさを感じとることができるでしょう。
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1989年 1位 アレクセイ・スルタノフ
1989年優勝者のスルタノフは、今回ご紹介するピアニストの中では個性がもっとも強い人といえます。彼は、1969年ロシア生まれでモスクワ音楽院で学んでいます。ただ、在学当時からいろいろと曲の解釈の違いから教授と論争するなど、異端児として知られていたようです。
1995年のショパンコンクールでは1位なしの2位をジュジアーノと分かち合う形になりましたが、それを不服とし受賞の場から立ち去るなどの騒ぎを起こしています。ショパンの曲を楽譜に忠実でなく、勝手な装飾などで審査員の眉をひそめさせるものだったということです。観客には大歓迎されるという「ショー的なピアニスト」という側面があることが、コンクールの主旨とは合わないことを証明しています。
その後いずれの世界的なコンクールも1位とならず、クラシック音楽奏者という枠をはずし、ポピュラー曲の編曲演奏などで活路を見出したようです。大変な技術の持ち主でありながら大成せず、惜しくも亡命先のアメリカで2005年に病死しました。
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2005年 1位 アレクサンダー・コブリン
2005年の優勝者はアレクサンダー・コブリンです。彼は1980年ロシア生まれで、名門校のモスクワ音楽院の素晴らしい教授ナウモフに師事しました。コンクール受賞歴はすばらしいもので、ショパンコンクール第三位、ブゾーニコンクールで優勝、その他証明の必要がない履歴の持ち主です。
ただ、受賞後は、コンサートピアニストというより後進の指導に力を入れる素振りがあります。CDなどの記録はまだ数枚程度しかないなど、あまり欲がないタイプのピアニストのようです。
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個性的なピアニスト歓迎!
いかかがでしたでしょうか。個性的なピアニストは段々少なくなってきました。審査員と聴衆の感想の違いもありますがあまりにも個性的な解釈をすると、審査基準からはずれてしまうことから優勝を逃すことは度々あることのようです。ただ、聴衆や歴史の記録には「どんなにすばらしい演奏をしたのかということ」は残りますし、ファンの話題提供には役立っているのです。
1位、2位にこだわることはないのではないでしょうか。コンクールで評価されなかったからといって、ピアニストとして終わりということは決してないのです。そんなことより、個性的な新しい解釈でクラシックファンを楽しませてくれる「個性的ピアニスト」を世界は大歓迎することは間違いありません。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。