初心者のためのオペラ鑑賞の基礎知識や服装・マナーからおすすめ作品まで徹底解説
初心者でも気軽にオペラを楽しめるように基礎知識や服装・マナーからおすすめ作品を解説します。是非これを機にオペラにふれ、その魅力を味わってください。
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アイキャッチ画像出典:www.jof.or.jp
オペラとは
オペラはルネサンス後期の16世紀末、イタリアのフィレンツェで生まれました。現在に至るまで400年もの間、世界中の人々を魅了し続けてきました。
歌(ソリストと合唱)と楽器の演奏(オーケストラ)で物語りが進行します。そして全体を合わせて指揮者が指揮します。歌劇とも呼ばれますが、演劇と音楽によって構成される舞台芸術です。
歌詞がイタリア語であったり、ドイツ語であったり、外国語で歌われることが多いのですが、これにはちゃんと字幕がつきます。舞台の袖や上部に電光掲示できるパネルを置いて、まるで映画のように字幕を読みながらオペラを鑑賞することができるのです。
普段オペラに馴染みがなくとも、実際に鑑賞してみれば容易にストーリーを理解することができ、楽しむことができると思います。
オペラの種類
オペラ・セリア:Seria(セリア)はイタリア語で「まじめな」という意味ですが、元来は神話や神聖な物語あるいは悲劇を台本にした古典的なオペラです。
オペラ・ブッファ:オペラ・ブッファは「喜歌劇」と訳され、喜劇的要素を含んでいます。オペラ・セリアが貴族のために作られたのに対し、オペラ・ブッファは大衆的な興味を惹くオペラで、オペラセリアの幕間の気分直しのような役割から発達しました。
イタリアオペラ:オペラ発祥の地であり、その特徴でもある、美しく響く声(ベルカント唱法)や、一度聞いたら覚えてしまえるストーリーや人物表現で進行するオペラが特徴です。歌が中心ともいえます。
ドイツオペラ:イタリア全盛時代の作品に対抗し、登場人物の心理描写や複雑な心境を音楽で表そうとするオペラが多いです。芝居が中心とも言えます。
オペラ歌手(ソリスト)
オペラ歌手には高度の歌唱力と演技力が要求されます。オペラ歌手はマイクなしで、客席の隅から隅まで声を届かせなくてはなりません。もちろんただの大きな声ではありません。すばらしい声で美しいメロディーを歌います。これは鍛錬のたまものであり、声帯を振動させて出した声を口や喉、鼻などの体内空間に共鳴させ、歌い続けることができます。言うなればオペラ歌手は体そのものが楽器なのです。
オペラ歌手の声域
オペラ歌手、および歌手の演ずる役柄はそれぞれの音高(声域)で分類されます。さらに、歌手の声域の他に声の特性、音色に関係して詳細な区分もされます。また、歌手の声の質も役柄との関係が深く、声質によってできる役柄が決まります。女性歌手(女声)は声域が高い順にソプラノ、メゾソプラノ、アルトまたはコントラルトに分類されます。
ソプラノ:ソプラノはアンナネトレプコを代表する女声高音。動きの早い旋律を楽々と歌います。お姫様や若く美しい女主人公の役など、才気煥発な女性の役柄を演じることが多いです。
メゾソプラノ:ワルトラウト・マイヤーに代表されるメゾソプラノはソプラノよりも豊かで深みのある,女性の声域。深い愛情表現をする母親や年配の女性か、ソプラノの敵役であったり、企てをもった妖艶(ようえん)な女性や個性的な女性の役柄が多くなります。また青年や、若殿などの男役を演じることもあり、これを「ズボン役」といいます。
コントラルト: ナタリー・シュトゥッツマンに代表される女性が歌う最も低い音域です。本当の意味でアルトを歌える人、オペラの役それ自体も非常に少ない音域です。メゾソプラノと同じような役柄です。
男性歌手(男声)は声域が高い順にテノール、バリトン、バスといいます。
バリトンやバスは重厚な人や人間味溢れる人柄の役が多いです。カウンターテナーという言葉ありますが、これは裏声(ファルセット)や頭声を使い、女声パート(アルト、メゾソプラノ、ソプラノ)の音域を変声を過ぎた男性が歌うことです。
テノール: スティーヴン・コステロに代表されるテノールは、ソプラノと同じ特色を持つ男声。軽く,叙情的で劇的な特徴を持つ。若くハンサムな主人公の役が多く、おもに恋人役か主役を演じます。ソプラノの声域のほぼ1オクターブ下にあたります。
出典:operanut.net
バリトン: ネイサン・ガンに代表される音域はバリトンは、テノールとバスの中間の音域。兄弟,父親,ライバルなど,脇役を演じます。男性が歌う中間音の声域です。重厚な人や人間味溢れる人柄の役が多いです。テノールの恋敵、親友などの役から、二枚目、父親、機知に富んだ切れ者の役など、役の幅はかなり広いです。
バス: アーウィン・シュロットに代表されるバスは、男性の最低音域の声です。ブリリアント,カンタンテ,プロフンドの三つがあります」。ブリリアントは才気煥発な人,カンタンテは感情豊かな人,プロフンドは激しい感情を表わす人が適役です。男性が歌う最も低い声域です。オペラではもっとも低い声を歌うため、賢人や悪魔の役も歌います。バス歌手がバリトンの役を、バリトン歌手がバスの役を歌うこともあります。
オペラのオーケストラ
オペラでは、オーケストラは、一段低い「オーケストラ・ピット」の中にはいっているため、視覚(しかく)的には主役にはなれません。また歌手が気持ち良く歌えるために、その場に合わせて(指揮者の指示)合奏できることも求められます。しかし開演直後の序曲や間奏曲などは、作曲家がオペラの内容を伝え、お客様をひき付けるために書いた曲が多く、演奏力を存分に発揮することができます。オーケストラ・ピットは狭く、暗い中で指揮者や歌手を立てなくてはならないので、コンサートオーケストラとは異なる性格が求められます。
オペラの合唱
合唱には男女混声、男声のみ、女声のみ、また児童合唱などさまざまな形態があります。声域はそれぞれ独唱歌手の人たちと同じように分かれていて、群集役などを受け持ち、音楽的にはクライマックスを作り上げる重要な役目を担っています。
オペラ鑑賞に出かけよう
エチケット
オペラ鑑賞の際には、観客は沈黙を守らねばなりません、これはオペラだけではなく、他のショーにも共通することです。開園時間前に着席する、大声で話さない、非常時以外は立ち上がらない等、他の観客に迷惑をかけなければ、特別な心構えは必要ありません。
スタンディングオベーションをするか、拍手のタイミング、「ブラボー」と叫ぶかどうかなど、細かいことがいろいろ気になるでしょうが、自分の感情に身を任せ、感動したら体で表現すればいいだけです。後は公演後に、舞台上で歌手が一人ひとり挨拶するときに、お気に入りの歌手に拍手で感謝を表しましょう。
服装は
服装は、正装する必要は特にありませんが、男性はジャケット、女性はちょっとしたワンピースなどが良いでしょう。劇場は空調が効いていること、座って鑑賞することを考慮して、体を締め付けない服と靴が適切でしょう。
上演時間
オペラの上演時間は1,2回の休憩を挟んで2時間くらいかかります。実際にオペラの演奏が始まるのは、開演時間です。この開演時間の5分前までには、着席していなければなりません。もし着席する前に開演が始まってしまうと、後ろの方で立ち見となるか、劇場内に入れないこともあります。
初めてオペラを観るなら、この作品がおすすめ
椿姫
『椿姫』は、ジュゼッペ・ヴェルディが1853年に発表したオペラです。原題は『堕落した女』を意味するLa traviata(ラ・トラヴィアータ)。日本では原作小説『椿姫』と同じ「椿姫」のタイトルで上演されることが多いです。
オーソドックスな演出で上演されれば、間違いなくオペラの醍醐味を味わえるはずです。『椿姫』は、パリの社交界を舞台にしていて、第1幕では、タキシードを着た男性と、イブニングドレスを着た女性が華やかに舞台を彩り、オペラらしい舞台を見ることができます。加えて、そういった華やかさとは裏腹に、第3幕では、ヒロインであるヴィオレッタが歌う切ない歌に、涙を誘われることと思います。
トスカ
『トスカ』は、プッチーニが作曲したオペラです。プッチーニの音楽はロマンティックで、私たち日本人にとても人気があります。例えば、テノールが歌う第1幕のアリア「妙なる調和」や、第3幕のアリア「星は光りぬ」など、きっと感動できると思います。また、オペラの本場イタリアが舞台となっていて、教会やお城といった場所で物語が展開します。
歌に生き 恋に生き
トスカは「歌に生き 恋に生き」「星はきらめき」のアリアで大ヒットしたプッチーニ(Giacomo Puccini 1858-1924)のオペラが有名ですが、オリジナルは1887年にビクトリアン・サルドゥ( Victorien Sardou 1830-1908)がサラ・ベルナール(Sarah Bernhardt 1844-1923)のために書き下ろした戯曲です。
オペラはサラが何度も演じて好評だった芝居をもとにプッチーニが3年をかけて作曲し1900年に発表されました。
「悲劇」よりも「喜劇」の方が好みなら
モーツァルトの名作「フィガロの結婚」
フランスの劇作家ボーマルシェが1784年に書いた風刺的な戯曲、ならびに同戯曲をもとにヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1786年に作曲したオペラ作品です。
オペラ作品の台本は、原作である18世紀半ばのスペイン・セビリアを舞台としたボーマルシェの戯曲に基づき、イタリア人台本作家ロレンツォ・ダ・ポンテがイタリア語で書きました。
日本での上演機会が多く、特に『フィガロの結婚』に関しては、音楽雑誌などで少し探してみれば、すぐに見つけることができると思います。
『フィガロの結婚』の一番の魅力は、モーツァルトの音楽でしょうか。まずクラシックを、まずオペラを聴くならば、モーツァルトの音楽は欠かせません。『フィガロの結婚』の生き生きとしたストーリーに、モーツァルトの音楽がとてもよくフィットしています。初めて観る人でも、どこかで耳にしたことのある旋律を持つ有名なアリアがあります。
ただし、一つだけ注意すべきは、『フィガロの結婚』は多くの個性的な登場人物が、錯綜して舞台の上に現れます。そういった目まぐるしい展開が、このオペラの楽しさの一つなのですが、混乱しないためにも、あらすじには一度目を通しておくことをおすすめします。
セビリアの理髪師
戯曲は1775年に書かれ、喜劇『フィガロの結婚』(第2部 1786年/モーツァルトがオペラ化、同年初演)、正劇『罪ある母(英語版)』(第3部 1792年)とともに3部作と言われています。ロッシーニのオペラの中で最も速い2週間で作曲され、現在でもフィガロの結婚と同じく頻繁に上演されます。悲劇が好まれるイタリアオペラとしては、ドニゼッティの『愛の妙薬』などとともに、明朗喜劇として、明るく軽快なメロディーと物語が人気を博しています。
『セヴィリャの理髪師』は、どちらかと言えばお話の筋は単純です。何の準備をすることなく、気軽に楽しめるでしょう。
また、『セヴィリャの理髪師』の主な登場人物は、『フィガロの結婚』にも現れます。実は『セヴィリャの理髪師』の「その後」を描いたのが『フィガロの結婚』なのです。もしどちらかのオペラを観る機会があったなら、ぜひもう一方のオペラも観てみることをおすすめします。
チケットの発売日をチェック
オペラは、いつでもどこでも好きなものがやっているわけではありません。たとえ運良く近くの日にやっているのを見つけたとしても、チケットが完売していたり、または、はしっこなのに値段の高い席しか残っていなかったりします。
便利な電話とネット
発売日が確認できたら、いよいよチケット取りです。発売日当日に販売所に並んで買う方法もあるのですが、おすすめなのは電話での購入と、インターネットでの購入です。
オペラは、他の人気のあるポップスのコンサートと違って、発売開始数分で完売ということはあまりないのですが、それでも安いチケットはすぐに売り切れてしまいます。
新国立劇場のオペラを例に見てみますと、演目と曜日によってかなり差はありますが、30分くらいで安い価格帯の席が売り切れることがあります。最初の5分間くらいはまだみんなの出足が遅いので、確実に午前10時の発売開始から電話したいです。
それから、最近はインターネットでチケットを取ることができるようになりました。「チケットぴあ」、「e+(イープラス)」といったサイトがあります。これらのサイトを利用するには、まず事前登録をすることが必要です。
インターネットでも、電話と同じように、午前10時の発売開始からチケット購入のページにアクセスする必要があります。事前にログインをすませておくことをおすすめします。売り切れになれば、画面にすぐ表示されるので、どちらかというと電話よりスピーディです。
このほかに、各オペラ団体には、会員制度によって年会費を払うと、優先的にチケットの申込みができるような仕組みもあります。継続的にオペラを観に行こうとされる方には、こちらもおすすめできます。
クラシック音楽の情報誌
オペラのチケットの発売情報を手に入れるには、まず音楽雑誌を見るのが一番です。『音楽の友』(毎月18日発売、998円、音楽之友社)や、『モーストリー・クラシック』(毎月20日発売、1,030円、扶桑社)には、発売中のチケット情報が一覧になって載っています。その中で、「何月何日に発売」というのを探しましょう。小さく掲載されていることも多いので、注意深く見ていくのがコツです。
それから、これらの雑誌には各オペラ団体の広告が載っています。すでに発売中のオペラ公演の宣伝が多いのですが、毎月チェックしていると、チケット発売前の広告を見つけることもできます。
『音楽の友』や『モーストリー・クラシック』は、少し大きな書店に行けば、購入することができます。
無料の情報もあるのです
また、『ぶらあぼ』(毎月18日発行、東京MDE)という無料の雑誌(フリーペーパー)も存在します。この『ぶらあぼ』は、書店ではなくて、チケットぴあ、コンサートホール、CDショップなど、クラシック音楽に関係する場所に置いてあります(有料で定期購読も可能)。無料とはいえ、公演情報を手に入れるには十分で、満足できる内容となっています。
国内のオペラ公演
新国立劇場
出典:twitter.com
東京の初台にある「新国立劇場」は、1997年にオープンしました。今では、年に10タイトル(1タイトルにつき4~7日)を公演しています(2005/2006シーズンの例)。新国立劇場では、主役級の役に、世界で活躍する外国人歌手を多く起用しているので、世界で活躍する指揮者、演出家、歌手を、安価な値段で見ることができます。
オペラグラスの貸出を行なっています。借りるにあたり、本人確認ができる「写真付き身分証明書」の提示による、利用者登録(The Atre会員の方はカード提示)が必要です。
「専属のオーケストラがない」「演出が平凡である」など、多くの批判が寄せられていますが、それも期待が大きいことのあらわれ。新国立劇場のオペラは、世界レベルの歌手を聴くことができ、また、演出もわかりやすいものが多いので、オペラ鑑賞が初めてという人に最もおすすめできる公演だと思います。
新国立劇場のオフィシャルサイトです。新国立劇場では、オペラ、バレエ、ダンス、演劇など最高水準の現代舞台芸術を発信し続けます。
民間のオペラ団体
民間のオペラ団体は大きな団体には、「二期会」と「藤原歌劇団」があります。いずれも、日本人歌手が中心のオペラ団体です。
二期会
出典:opera.jp.net
二期会(にきかい)は、1952年に結成された声楽家の任意団体である。2005年9月に「財団法人二期会オペラ振興会」へ包含されました。
現在の「二期会」とは「公益財団法人東京二期会」声楽会員組織を指し、「財団法人二期会オペラ振興会」は1977年に設立されて2005年10月に「財団法人東京二期会」へ名称変更し、2010年11月18日に公益財団法人認定されて現在は「公益財団法人東京二期会」となります。
ドイツ・オペラを中心に公演しています。
各オペラ公演の配役は、A組、B組というように、キャストが2組に分かれていて、片方はベテラン組、もう片方は有望な若手の組となっています。
藤原歌劇団
1932年にヨーロッパで活躍していたテノール歌手の藤原義江が帰国すると、藤原歌劇団の前身となる「東京オペラ・カムパニー」を設立し、『ラ・ボエーム』、『リゴレット』、『トスカ』などの本格的公演を行う。1939年には「藤原歌劇団」となり、1942年には『ローエングリン』を上演しました。
1981年(昭和56年)、日本オペラ協会と合併統合して財団法人日本オペラ振興会となる。「藤原歌劇団」の名称は西洋オペラの公演事業名としてのみ残されています。
2009年(平成21年)に創立75年を迎えた日本最古かつ本格的な国産オペラ団体として、日本初演を含む80作品近くのオペラを上演し、現在まで盛んに活動を続けています。初代総監督・藤原義江は38年間同歌劇団を統率しました。
「藤原歌劇団」は、イタリア・オペラを中心に、年に3タイトル(1タイトルにつき3~4日)を公演しています。
二期会と同様に、2組のキャストに分かれていますが、片方の組の主役に、超一流の実力を持つ外国人を招聘しています。毎年1月には恒例として、ヴェルディのオペラ『椿姫』を公演していました。
二期会と藤原歌劇団は、長年、日本のオペラ界を支えてきました。現在でも、意欲的な舞台を創造し、評価を確固たるものにしています。
引っ越し公演
出典:facta.co.jp
次は、海外オペラハウスの引っ越し公演について紹介します。引っ越し公演とは何かというと、世界の有名オペラハウスで上演されたオペラを、そっくりそのまま舞台ごと日本に持ってきてしまうというものです。とてつもなく大きなスケールの企画となっています。
大道具や小道具に始まり、オーケストラと合唱団、それに裏方で働く人たちまで、舞台ごとみんな持ってきてしまいます。もちろん、いつもそのオペラハウスで活躍している歌手もいっしょに来日することになるので、日本に居ながらにして世界の超一流のオペラを楽しめるということになります。
この大がかりな移動のため、その分、チケット料金も非常に高額です。
海外旅行に行くことを考えれば、安いと言えるでしょうか。なかなか手が届かない値段ですよね。しかも末席のチケットはすぐに売り切れてしまいます。もし観に行くことができれば、そこは世界の有名オペラハウスですので、その超一流の実力を披露してくれるはずです。
上記のような世界の超一流オペラハウスではないにせよ、オペラの盛んな国のオペラハウスが、日本にやって来ることも多くあります。このようなオペラハウスの引っ越し公演には、有名オペラ歌手が出演していないことも多いのですが、チケット料金は、その分、お手頃となっています。