編曲の神様「ゴドフスキー」!美しくて最高に難しいピアノ編曲5選
ピアノの学習者であれば、いずれ耳にする「ゴドフスキー」の名前は「最高に難しい作曲家」として知られています。その難しさは「技術的に弾くことが難しい」ということであり、重量級です。近年、全ての作品に注目が集まっています。その中から5曲をお聴きください。
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ゴドフスキーという大ピアニスト
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レオポルド・ゴドフスキーは1870年にポーランドに生まれています。幼少の頃からすでにピアノの才能があり、ピアニストとして活動をしながらドイツやパリなどで研鑽を積んでいたようです。アメリカに渡り教育と演奏活動を行い、第一次大戦を挟みベルリン、ウィーン、ニューヨークと目まぐるしく拠点を移動しています。たいへんな技量のピアニストであり、「スーパー・ヴィルトゥオーソ」といってよいほどのテクニックの持ち主だったといわれています。それは作品が証明しており、他の作曲家の編曲の数は相当数ありますが、すべて最高クラスの難度です。リストの「超絶技巧練習曲」は難しいことで知られていますが、その比ではないといってよいでしょう。自作の曲もいくらかありますが、わずかです。
編曲の作品は芸術的に優れているかどうかは賛否が分かれるのですが、最高難易度のピアノ曲を弾きこなせるピアニストは限られており、マルク・アンドレ・アムランのような高い技術のピアニストが好んで演奏していることから人気が高まっています。ラフマニノフは、ゴドフスキーの友人として曲を献呈しています。今回ご紹介します曲は、技巧的なものというより芸術性の高いと思われるもの4曲と、超絶技巧の1曲です。
アルベニス作曲 「タンゴ」
アルベニスはスペインの作曲家です。彼の代表作といってよい「タンゴ」をゴドフスキーが編曲しています。技巧的な表現は極力抑えてあり、曲の持つ穏かでしみじみと訴える情緒的なイメージは破壊されることなく編曲されていますので安心して聴くことができます。シューラ・チェルカスキーの演奏は、古きよき時代の味のある素晴らしいものです。現代は失われている懐かしい演奏といえるでしょう。
サン・サーンス作曲 「白鳥」
サン・サーンスの「動物の謝肉祭」の中の「白鳥」の編曲です。「白鳥」というと、チャイコフスキーの悲劇的な「白鳥の湖」を思い浮かべる人も多いと思いますが、サン・サーンスの白鳥は暗いイメージはなく、優雅に白鳥が水辺でたわむれている平和な風景が描かれています。静かな音の粒は、そのまま水の粒のイメージとなり素早くなめらかなタッチで、メロディを邪魔することなく弾かなければなりません。演奏する側の高いテクニックが必要な作品ですが、心が洗われるようなとても素晴らしい編曲です。
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シューベルト作曲 「間奏曲」
シューベルトの有名な「間奏曲」の編曲ですが、民族的な雰囲気があり調子の良いリズムが楽しい作品です。ゴドフスキーの編曲は、重厚な和音の追加で拍子を刻んでいます。旋律はソプラノ部分ですが、アルト部分にもうひとつの「メロディ」が浮き出て、ゴドフスキーは立体感のある演奏をすることを期待しているようです。
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ジャワ組曲より ボイテンゾルグの植物園
ゴドフスキーがジャワ島に旅行に行った際にインスピレーションを得て作曲したと伝えられます。曲は全部で4巻ある曲集で、合計12曲あるのですが、あまり演奏される機会はなかったということです。近年、ゴドフスキーの作品全ての作品に注目が集まっており、「ジャワ組曲」も演奏される機会が多くなってきています。その中で、エキゾチックで何かミステリアスなけだるい雰囲気の「ボイテンゾルグの植物園」は、夢の園にいるかのようなイメージの曲で単独でよく演奏されています。
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ショパン作曲 エチュード 作品25の11 「木枯らし」
最後にご紹介します曲は、ショパンの有名な「木枯らしのエチュード」です。ショパンに限らず、エチュードと題された曲はほとんどが演奏会用といってよい「技術的に難易度が高い曲」のもので、ゴドフスキーは更に「最高難易度」の曲にしています。
ゴドフスキーは、ショパンのエチュードのほとんどを編曲していますが今回はこの「木枯らしのエチュード」をご紹介します。原曲では、左手が主旋律を担当し右手は木枯らしの風をイメージするように鍵盤を高温から「急降下」しますが、編曲では左右が逆になり更に「とんでもないほどの」和音が荒れ狂っていくのです。「木枯らし」ではなく「大型の台風」のような、圧倒される編曲をどうぞお聴きください。
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すべてが予想外の迫力ある作品
いかがでしたでしょうか。最後のショパンのエチュードは、他の編曲も聴いてみますと原曲の数倍の難しさとなっていて予想外の迫力ある作品となっています。挑戦する人がどれほどの数いるのか、演奏することで何が得られるのか、は別にして近年になって注目を浴びていることから楽譜は売れているそうです。見慣れた原曲楽譜がどんなにすごいことになっているのか「怖いもの見たさ」での購入だろうと推察します。ゴドフスキーの作品の演奏は、一部の「凄腕のピアニスト」にお任せした方が良さそうです。ご興味がある方は、どうぞ全作品を聴いてみてください。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。