原曲より素晴らしい？生まれ変わったピアノ用編曲の名作5曲

ピアノは管弦楽曲でも編曲できる

クラシックの巨匠の原曲を編曲したもので有名なものは、「バッハのシャコンヌ」「ショパンの主題による」「コレルリ」「パガニーニ」の主題によるものなど、挙げるとキリがないほど存在します。原曲は、歌曲、管弦楽曲、チェロなどのものですが、ピアノという楽器はすべての楽器の音域があり、オーケストラ同様のダイナミックな表現ができる「楽器の王様」といわれます。そういう意味で、原曲がオーケストラ曲であっても同様の効果が得られるのです。今回は編曲したものが原曲同様に輝きを放ち、優れた作品といわれているものを5つご紹介します。

グリンカ作曲　グラズノフ編曲「ワルツ　ファンタジー」 　

この曲は、ロシアの作曲家グリンカがまず「ピアノのため」に書いています。1度別の人が管弦楽曲用に編曲し、後に再度作曲家自身で管弦楽用に書いたと伝わりますが、優雅な宮廷の舞踏会が目に浮かぶようなエレガントな曲です。グラズノフがピアノ曲として編曲したものが今回ご紹介するものですが、ピアノの神童といわれたグラズノフの演奏技術が真に素晴らしかったことを証明しています。原曲の雰囲気を壊さず忠実な編曲で演奏効果が高く、隠れた名品といえそうです。

ガーシュイン作曲　ワイルド編曲　エチュード第三番　「私が愛した男」

アール・ワイルドはいろいろな巨匠たちの作品をピアノ曲に編曲しているピアニストです。この「The man I love」という曲はガーシュインの歌曲集の中にあり、単独でよく演奏されます。短いものですが、ジャズピアニストも好んでレパートリーに入れるなど、人気の曲です。他にはフランスのピアニストの「アレクサンドル・タロー」による編曲は素晴らしく、彼の代名詞のようなものになっています。ご興味ある方は、1度どうぞ聴いてみてください。

ガーシュイン:Great Pianists 98
価格　3,199円

ラフマニノフ作曲　ヴォロドス編曲　「チェロとピアノのためのソナタ」

ラフマニノフが作曲した「チェロとピアノのためのソナタ」は、ピアノ独奏曲の作曲が多いラフマニノフにとって、チェロとピアノのため作曲したという意味で珍しい曲です。ラフマニノフらしい甘く、ロシアの湿度が伝わってくるような名曲をロシアのヴィルトオーソ(名人)ピアニストのヴォロドスが、ピアノソロ曲として編曲しています。超絶技巧のピアニストによる編曲は、技術的には誰でも演奏可能とはいえない曲に仕上がっていますが、とても美しい装飾があちらこちらに施され今後も演奏され続けていくであろう名作です。

ラフマニノフ作曲　コチシュ編曲　「ヴォカリーズ」

ラフマニノフの歌曲の中で、もっとも知られた人気のものです。「ヴォカリーズ」とは、具体的な歌詞がなく「a」のような母音のみで歌う、純粋に人の声を楽器という認識で音楽を楽しむ歌曲です。あまりにも人気があるため、ヴァイオリンとピアノなどの組み合わせやいろいろな編曲がなされていますが、ピアノソロのものではコチシュによるものとワイルドによるものが有名です。コチシュの編曲では、最終部分にピアニスティックな響きの美しい見せ場があり、名編曲となっています。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番、ヴォカリーズ 他
価格　1,179円

バッハ作曲　フェインベルク編曲　「トリオソナタ　BWV529 ラルゴ」

フェインベルクは、ロシアの著名なピアニストです。得意なバッハの曲をピアノ用に編曲した、この「ラルゴ」はとても有名な作品です。静かでゆっくりと進むこの曲は、一見容易な技術のように思えますが、幅広い和音が弱音で演奏される中に主要旋律や副旋律を浮かび上がらせなくてはならないという技術が必要となります。腕の確かなピアニストにより生み出される立体的な演奏は、目の前に3Dの画像を見るような不思議で感動的な世界です。

Piano Transcriptions / Arcadi Volodos Import
価格　4,595円

大ピアニストによる編曲の名作

いかがでしたでしょうか。大作曲家の作品は、倫理的に誰もが気軽に編曲して発表できるものではないという気がしますが、大ピアニストによる編曲は技術と経験をすべて継ぎ込み、自信を持って演奏しているだけあって今後100年以上愛されるような素晴らしい作品となったものが多いのです。もしご興味があるのでしたら、他にも編曲ものをどうぞ聴いてみてください。