洗練されたフランス音楽を代表するクラシックピアノの名曲5選
「芸術の都、パリ」の名の通り、フランスという国は美術家だけではなく音楽家に対しても、寛容に個性を尊重してきた伝統があります。その結果、フランス音楽の洗練された音楽のセンスは独自の発展を遂げました。ドビュッシー、ラヴェル、フォーレ以外のフランスを代表する音楽家のピアノ曲を5つご紹介します。
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たくさんの音楽家が育った19世紀のパリ
19世紀、世界中の音楽家はフランス パリに集まったと言っても過言ではありません。1800年代のフランスは、自由に芸術を受け入れてくれるクラシック音楽家にとってまさに聖地のような存在でした。歴史に名を刻む作曲家であるショパンもパリを愛した作曲家です。ショパンはウィーンにて音楽活動を行っていましたが、ウィーンでは新しい音楽や外国人に対して冷淡であったため、ウィーンを離れその後は生涯をパリで活動することとなりました。ショパンやリストなど著名な作曲家を始め、多くの数え切れない程の音楽家がパリを愛し、パリで育っています。今回ご紹介しますサン・サーンス、ミヨー、シャブリエ、マスネー、ビゼーは、フランスの音楽界の全盛期に活躍した人たちです。それぞれ個性的で洗練された一流の音楽を書いています。どうぞお聴きください。
サン・サーンス作曲 リスト、ホロヴィッツ編曲 「死の舞踏」
サンサーンスの「死の舞踏」はピアノ曲ではなく、管弦楽曲として書かれています。たいへん有名になったため、いろいろな楽器編成で編曲されました。「死の舞踏」とは、当時ヨーロッパで猛威をふるったペストによる「死」の恐怖から、狂乱するほど踊ることで死を逃れるという迷信によるものです。当時は、死の舞踏を題材とした美術が魔除けとして大流行したという記録があります。ピアノ編曲としては、この「リスト編曲」のものが有名ですが技巧的な難易度は最高レベルのため、腕に自信のあるピアニストの実力の見せ所といえます。
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ミヨー 「スカラムーシュ」
ミヨーは、1892年にフランスで生まれました。20世紀の前半を代表するフランスの音楽家6人組のひとりですが、後の第二次世界大戦の際にはユダヤ人であったためにアメリカへの移住を余儀なくされたようです。81歳で没するまで交響曲、室内楽曲、ピアノ曲、歌曲などありとあらゆる作品を残す一方で、映画音楽なども手がけました。膨大な数の作品がある中で、この「スカラムーシュ」は底抜けに明るく大衆受けがよいため演奏する機会が多い曲です。
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シャブリエ 「スケルツォ・ヴァルス」
シャブリエは、1841年にフランスに生まれました。幼少期からピアノの腕と音楽の才能にあふれていたようですが、音楽家として世に出るまでの経緯はチャイコフスキーとの共通点があります。最初は法律を学び官僚として勤めていたのですが、音楽家への道を諦め切れなかったようです。39歳で本格的に作曲を始めています。作風は前半の人生からの影響なのでしょうか、明るくウィットに富むものが多く、後のプーランクやサティへと続くのです。この「スケルツォ・ヴァルス」とは、「おどけたワルツ」という意味であり、軽くはずんだリズムとふざけるようなメロディで楽しい気分になります。
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ビゼー 「演奏会用半音階的変奏曲」
ビゼーは、1834年にパリで生まれています。両親共に音楽家であったため才能と環境に恵まれていたようです。ピアノの腕前はリストを唸らせるほどと言われていますが、残念ながらピアノ曲は多くはありません。この「演奏会用半音階的変奏曲」は、「カルメン」「アルルの女」などの代表曲と比較して、かなり異なる印象を持ちます。伝説的なピアニストである「グレングールド」の演奏で有名になったことが理由かどうかは不明ですが、映画などでも時々使用されています。
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マスネー 「エレジー」 作品10の5
マスネーは1842年にフランスで生まれ、オペラやバレエ曲、管弦楽曲などの作品を残しました。その中でも、何といっても代表作は「タイスの瞑想曲」です。ゆったりした小川の流れを連想するような名曲でマスネーの名前を不動のものにしたといって良いでしょう。ピアノ曲に関しては、残念ながらほとんどありません。この「エレジー」はピアノの練習曲用に自作の歌曲から編曲したものですが、マスネーらしいたいへん美しいメロディーです。
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世紀末芸術の退廃的な雰囲気が感じられる19世紀のフランス音楽
1800年代の芸術は、世紀末になると退廃的で「馬鹿騒ぎ」するような雰囲気に影響されるようになります。ヨーロッパは第一次世界大戦、そして世の中の景気が徐々に悪くなり「世界大恐慌」へと進んでいきますが、芸術はそれらを予感するかのように、何か「開き直り」のような「浮かれた」ものを感じるものとなります。「底抜けの明るさ」は当時のフランスの芸術が最高の時期にあったことを証明しているのかもしれません。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。