作曲家リストによる編曲の腕前がすごい!お勧めピアノ編曲5選
リストはシューベルトなど他の作曲家の作品をたくさんピアノ用に編曲しています。賛否両論ありますが、リストらしい超絶技巧の装飾とダイナミックさは現代のピアニストには広く受け入れられているようです。その中から5曲お届けします。
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アイキャッチ画像出典:c5.staticflickr.com
リストの性格と編曲
リストはピアノの名手ですが、実はリストの師は教則本を書いたツェルニー(ピアノの学習者は必ずといっていいほど使用します)で、その師はベートーベンなのです。つまり、リストの音楽はベートーベンとの共通点があることになります。更にリストの先にはワーグナーという流れがあり、音楽的な系統的な流れができているのです。実際に、ワーグナーはリストを尊敬しており、彼の娘コジマを妻にしています(コジマはリストの多情な性格を受け継ぎ、元夫ハンス・フォン・ビューローを捨ててワーグナーと再婚しました)。リストからワーグナーという流れの類似点は音楽だけではなく性格的な部分にもあるようです。リストの挑戦的で自己顕示欲が強い点や、音楽家としてだけではなく商業的な能力に長けているところも類似点であるかもしれません。ショパンは、晩年リストを皮肉って、「あの人は、自分の爪あとを残さないと気がすまない性格だ」と手紙に書いています。これは、ショパンのお気に入りの弟子に対して、リストが自分のピアノの弾き方を押し付けて台無しにしてしまったことを嘆いた手紙です。そして、ショパンが亡くなったときには、リストは真っ先に追悼の記事を音楽ジャーナル新聞に載せており、このことでしっかりと「ショパン亡き後のピアノ音楽の中心が自分にあること」を暗黙に世の中に知らしめたといえます。こういった抜け目のない才能はリスト音楽院というものの設置と、自らは修道院に入ることで万全の体制でじっくりと作曲と弟子の音楽教育をしていることからも伺えます。
リストの音楽は、コンポーザーピアニスト(作曲家兼ピアニスト)というものが基本にありますので、ピアノ曲が多いのはもちろんですが、特徴的なことではシューベルトやサンサーンスなど他の作曲家の作品を「ピアノ曲」に編曲していることです。これは、純粋にそのままを編曲しているわけではなく、「リスト色」にしっかりと技巧的に派手に脚色されています。これについては、シューマンは歓迎はしていなかったといわれ、自分の作品「献呈」の編曲に対して不快感を示したと記録にあります。しかしながら、現代人が聴くとダイナミックさに圧倒される良いものがありますので、数多い編曲の中の人気のある次の5曲をどうぞ聴いてみてください。
サンサーンス 「死の舞踏」
サンサーンスの有名な「死の舞踏」のリスト(ホロヴィッツ)編曲のものです。死の舞踏は、とても人気があり様々な楽器編成がなされ、演奏される機会が多い曲です。リストは、この曲を「超絶技巧」で装飾し、圧倒的な迫力で聴く人を魅了しました。元々のメロディは残しつつ、目にも留まらない速さで指が鍵盤を駆け抜けます。
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シューベルト 「糸を紡ぐグレートヒェン」
シューベルトの歌曲から編曲しています。リストはシューベルトの作品を好んで多く編曲していますが、この「糸を紡ぐグレートヒェン」は特に悲劇的な雰囲気が印象的な名曲に仕上がっているように思います。リストの過度の装飾と表現が、一部のシューベルト愛好家には否定されていたといわれますが、現代にこの編曲を聴いてあまり違和感は持ちません。
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シューベルト 「ウィーンの夜会」から7番
リストがたくさん編曲したシューベルトの中のひとつ、「ウィーンの夜会」は9曲ありますが、この曲は7番のものです。元気の良いウィンナーワルツの、踊りが見えてくるようです。中間部分にとても美しい、ちょっと悲しい雰囲気のメロディが聴こえてきますが、明るく上品に終始します。リストの珍しく「華美でない」エレガントな面が見える曲です。
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ショパン 「6つのポーランドの歌」より 「私のいとしい人」
ショパンが10代の時に書いた歌曲にリストが編曲したものです。生前は出版されなかったといわれていますが、リストらしい美しい装飾はショパンのメロディを汚してはいません。ショパンが純粋な愛情を表現した音楽は損なわれずに、リストによって世に残ったともいえる作品です。もうひとつ、同じ「6つのポーランドの歌」の中の「春に」は、ショパンの遺作であり肺病がひどくなり晩年はほとんど作曲の力も枯れてしまったことが物悲しく伝わってくるような曲で、題名の印象とは違い胸が詰まります。機会があればお聴きください。
ヴェルディ 「リゴレット・パラフレーズ」
最後は、よく演奏されている人気の曲です。ヴェルディのオペラを編曲していますが、リストにより技巧的なものになっています。ただ、リストらしい派手な演出はあるものの、聴いていてリズミカルな楽しい音楽は後々まで耳に残り印象の強い名曲です。演奏効果が高く、ピアニストに人気の作品だということがわかります。
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リストによる編曲は自身のオリジナル
いかがでしたでしょうか。リストによる編曲は、原曲を残しながら「リストらしい技巧の曲」に変化させられたものがほとんどです。シューベルトの歌曲を愛する人は「許せない」、というほど不評だったそうですが、仮に原曲を知らない人が聴くと「素晴らしいリストの曲」と感じます。ショパンは編曲ばかり書いていたリストに対して「自分のオリジナルをもっと書くべきだ」ということを手紙の中で他の人に宛てて書いていますが、リストにより重量級に編曲された作品は「リスト自身のオリジナル」のようなものかもしれません。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。