あなたは何冊読んだ?社会人なら最低限押さえておくべき日本の文豪作品7選
ビジネスマンが信頼を失うのは、意外にも、基礎的な教養がないことが露呈したときかもしれません。今回は、教養として社会人が最低限押さえておくべき日本の代表的小説を紹介します。
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日本近代文学の概略
日本近代文学の幕開けは坪内逍遥の『小説神髄』です。『南総里見八犬伝』に代表される非人間的な人物や、勧善懲悪といった倫理性を排すると同時に、当時の西欧で盛んだった、人間的な苦悩や心情を描く自然主義こそが近代小説であるといわれています。さらに、言文一致も提唱されます。二葉亭四迷の『浮雲』や尾崎紅葉の『金色夜叉』、樋口一葉の『たけくらべ』などの作品が登場しますが、やや前時代的で表現も文語体に近いものでした。
1.『破戒』島崎藤村 ~日本自然主義文学の記念碑的作品~
時代の要請に応えるべく登場したのが『破戒』でした。
被差別部落の出身の事実を隠して小学校教員となった主人公は、様々な出来事に遭遇し、身分を偽る罪悪感に似た思いと己の保身との葛藤に苦しみ、身分を告白し、アメリカへ旅立つという作品です。
その後、己の心情を生々しく綴った田山花袋の『蒲団』が発表され、流れは作家自身の体験や心理を描く小説に向かいます。藤村もその後は実体験に基づいた小説を書き始めます。
現在に至るまで脈々と連なり、日本特有のジャンルである「私小説」の誕生です。
2.『こころ』夏目漱石 ~青年に宛てた遺書に書かれた先生の罪とは?~
英国へ留学し、西欧文学を肌で感じた漱石は、私小説とは一線を画した小説を発表します。
漱石の代表作と言われるのが『こころ』です。
友人を裏切って、愛する女性を妻に迎えた男性は、友人の自殺によって誰にも話せない深い罪悪感に苦しめられます。その心情を、自分を慕う一人の青年に宛てて綴ります。
最終部の「先生と遺書」が主題と考えられていますが、じっくり読むと様々なテーマが盛り込まれた作品です。
3.『高瀬舟』森鷗外 ~高瀬舟の上で語られた罪人の告白~

出典:ihj.jp
ドイツに留学し、漱石同様に西欧文学に触れた作家が鷗外です。『舞姫』のように文語体の小説もありますが、私小説とは異なる独自の文学を切り開きました。
『高瀬舟』は現代ですら答えが見つかっていない安楽死を題材にした短編です。時代を超越した普遍的テーマを扱った先見性は眼を見張るべきものがあります。
4.『地獄変』芥川龍之介 ~娘を犠牲にしてまで地獄絵を描いた絵師のその後は?~
漱石に師事し、『今昔物語』などに近代的解釈を与え、独自の世界を展開したのが芥川で、その代表作が『地獄変』です。
当代随一の絵師ながら、なぜか評判が悪い良秀は、時の権力者・堀川の大殿に地獄変の絵を描くように命じられます。本物の地獄を見ないと描けないという良秀に、大殿は良秀の愛娘を牛車に閉じ込め火を放ちます。良秀は見事な絵を完成させますが、翌日自殺します。
『地獄変』は芥川の芸術至上主義を端的に表した作品と言われています。
5.『暗夜行路』志賀直哉 ~「小説の神様」の最大の長編小説~
大正文壇の中心にいたのが武者小路実篤に代表される「白樺派」と呼ばれる作家集団です。
その中の一人、志賀は円熟した技法を用いた小説を次々と発表し、後年「小説の神様」と呼ばれました。その志賀が28年の歳月をかけて完成させたのが『暗夜行路』です。
不義の子として生まれ苦悩した主人公が、結婚後には妻の不義に苦しめられながらも、次第に安定していく心理を綴った大作で、近代小説を代表する作品です。
6.『痴人の愛』谷崎潤一郎 ~自分の好みの女性に育てようとした男の思惑は?~
谷崎は明治末から戦後の昭和に至るまでの長い作家生活を送り、独自の境地を拓きました。代表作の一つが『痴人の愛』です。
主人公が、ナオミという少女を自分の好みに育てようと引き取りますが、成熟したナオミは奔放な性生活を送り、ついには主人公も嬉々として従っていくというストーリーです。
谷崎文学は欧米で盛んに訳書が出版され、日本よりも外国で評価が高い作家です。あと一、二年死期が遅ければ、日本で最初のノーベル文学賞は谷崎だったと言われています。
そのノーベル文学賞を日本で初めて受賞したのが川端です。
『雪国』は日本的な抒情性を底流に、雪国に暮らす芸者の駒子と、彼女に魅かれながらも愛情を表現できない男の悲しみを映し出した作品です。
同時代の横光利一らとともに新感覚派と呼ばれますが、横光にはない抒情性が特徴です。
お気に入りの作家を見つけよう
日本の文豪と呼ばれる作家7人の代表作をあげてみました。気になった作家、作品はあったでしょうか。それぞれを読むもよし、一人の作家に注目してみるのもよし、いろいろな楽しみ方があります。お気に入りの作家や作品があることは、心を豊かにしてくれることのひとつです。
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