読んでおきたい芥川龍之介の代表作7選

無駄のない研ぎ澄まされた文章から滲み出る才知、漱石の最晩年の弟子、若くして自殺した天才的な作家、芥川賞に名を残す文豪芥川龍之介。そんな芥川龍之介の代表作7作をご紹介します。

vokkaVOKKA 編集部
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日本を代表する作家の一人芥川龍之介

出典:upload.wikimedia.org

芥川龍之介という名前からどのような印象を受けるでしょうか
無駄のない研ぎ澄まされた文章から滲み出る才知、漱石の最晩年の弟子、若くして自殺した天才的な作家、芥川賞に名を残す文豪というところでしょうか。
龍之介という名前が、辰年辰の日辰の刻に生まれたことから名づけられたということをご存知の方も多いでしょう。
そんな芥川龍之介の代表作7選をご紹介します。

『羅生門』 ~『今昔物語』の世界を近代の視点で捉えた作品~

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『羅生門』の発表は1915(大正4)年、芥川は23歳で東京帝国大学の学生でした。一人の下人が羅生門での出来事を通して、生きていくために悪人となることを決意するまでの心理を詳細に綴っています。
『今昔物語』に題材をとった短編で、芥川は他にも『今昔物語』から題材を得て短編を著しています。
現代の我々からは想像しにくいのですが、芥川が小説に使うまで『今昔物語』は忘れられた存在でした。芥川によって『今昔物語』は近代的な解釈を与えられ、再評価されることになったのです。

『鼻』 ~漱石が絶賛した作品~

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『羅生門』同様、『今昔物語』から題材を得た短編です。
身勝手な大衆心理と、他人の視線に振り回される人間心理の機微を描いた小説で、夏目漱石に激賞され、このような作品をこれからも書いていってほしいという激励の手紙を受け取ります。

『戯作三昧』 ~馬琴に投影した芥川の芸術至上主義の境地~

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『地獄変』 ~芥川会心の作品~

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『戯作三昧』同様に、芥川の芸術至上主義を表現した作品であり、芥川の最大の自信作です。
時の権力者・堀川の大殿に仕える老侍によって事件は語られますが、老侍は事実だけを語ってはいません。語られない真実があり、作者の芥川が語り手の老侍を操って真実を紡ぎ出すのです。
収録した『傀儡師』という作品集の題名にもその意図が見えます。
しかし、この手法は読み手に真実を委ねるため、作者本人が予想もしなかった真実が生まれてしまう諸刃の剣でした。

『藪の中』 ~「真相がわからないこと」の代名詞になった作品~

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藪の中で男の死体が発見されます。盗賊多襄丸、殺された男の妻、巫女を通した男の霊が事件について語りますが、話は三者三様で食い違います。それぞれが都合のいいように事実を曲げて話しているのです。
芥川は真相を提示しません。見る人、語る人によって真相は捻じ曲げられるという、人間に対する不信感が透けて見える小説です。
黒沢明がヴェニス国際映画祭で日本初のグランプリを受賞した『羅生門』の原作としても有名です。

『河童』 ~ファンタジックでユーモラスな河童の世界に芥川が見たものは?~

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29歳の中国旅行中に肋膜炎を患った芥川の健康は急激に衰え始め、次々と心身の病気を発症します。
1927(昭和2)年正月に義兄の家が焼失、放火の嫌疑を受けた義兄は鉄道自殺を遂げます。義兄には高利の借金があり、芥川はその整理に奔走します。
『河童』が発表されたのは同年3月。ふとしたことで河童の世界に紛れ込んでしまった主人公がそこでの生活を綴るという内容です。
晩年、河童の絵を好んで描いた芥川は、ユーモラスな河童の姿のオブラートに包んで内面の苦悩を表現したのです。

『歯車』 ~晩年の苦悩が伝わってくる作品~

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『歯車』は心身の病気や親戚の不幸といった中で執筆され、死後に発表されました。
とりとめのない文章の断片が脈絡もなく綴られているような作品です。
巨大な歯車が見え始め、そのあとに猛烈な頭痛に襲われたとあり、タイトルはそこから付けられました。
芥川本人も知らなかったようですが、大きな歯車が見えるように感じるのは偏頭痛の特徴的な症状のひとつです。
また、『地獄変』に関する記述もあります。皮肉なことに、芥川は自身の描いた真実とは別のものを見てしまうのです。
(『河童・或阿呆の一生』に収録)

35歳の若さで夭逝した芥川龍之介

1927年7月24日に芥川龍之介は、輝きと苦悩の35年の短い生涯を自ら閉じます。
命日は生前好んで描いた河童から「河童忌」と呼ばれます。
文藝春秋社を興した親友の菊池寛によって、その名を称えるため芥川賞が設立されました。
100歳の双子の姉妹として有名だった、きんさん・ぎんさんを覚えている方がいらっしゃると思いますが、芥川はきんさん・ぎんさんと同じ1892(明治25)年生まれです。

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