室内楽・アンサンブルのおすすめの名曲30選
今回は室内楽・アンサンブルの名曲をご紹介いたします。クラシックの奏法とは長年を費やし日々の精進によって磨き上げていく大変息の長い世界です。ソロとオーケストラで奏でるコンチェルトなど様々なジャンルがありますが、音楽の流れやそれぞれの楽器の歌い方を合わせて織りなす室内楽もまた大きな一つのクラシックのジャンルです。
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室内楽とは?
クラシックの奏法とは長年を費やし日々の精進によって磨き上げていく大変息の長い世界です。ソロとオーケストラで奏でるコンチェルト、大規模編成のオーケストラが奏でるシンフォニーなど様々なジャンルがありますが、音楽の流れやそれぞれの楽器の歌い方を合わせて織りなす室内楽もまた大きな一つのクラシックのジャンルです。その様な演奏家目線とはまた別に、ただ癒やされたく聴いてみるという時にもうってつけの素晴らしい室内楽の名曲が多くあります。日常を美しく彩り落ち着きをもたらす室内楽はクラシック初心者にも大変おすすめのジャンルです。
演奏形態の種類
■ピアノトリオ
・メンデルスゾーン:ピアノトリオ
・チャイコフスキー:ピアノトリオ
・ブラームス:ピアノトリオ
・ラヴェル:ピアノトリオ
・ショパン:ピアノトリオ
・フォーレ:ピアノトリオ
・ドヴォルザーク:ピアノトリオ
■ピアノ五重奏
・フォーレ:ピアノ五重奏曲第2番
・フランク:ピアノ五重奏曲
・ブラームス:ピアノ五重奏曲
・ショスタコービチ:ピアノ五重奏曲
・ドヴォルザーク:ピアノ五重奏曲第2番
■弦楽トリオ
・ベートーヴェン:弦楽三重奏
・ボロディン:弦楽三重奏
・モーツァルト:弦楽三重奏のためのディベルティメント
■弦楽四重奏
・ドヴォルザーク:弦楽四重奏「アメリカ」
・ラヴェル:弦楽四重奏
・ベートーヴェン:弦楽四重奏第7番「ラズモフスキー第1番」
・シューベルト:弦楽四重奏「死と乙女」
・ドビュッシー:弦楽四重奏
■弦楽五重奏
・ブラームス:弦楽五重奏
・シューベルト:弦楽五重奏
■木管五重奏
・イベール:木管五重奏曲のための3つの小品
・ニールセン:木管五重奏曲
・ラヴェル:クープランの墓
・フランセ:木管五重奏曲
・ファルカシュ:17世紀のハンガリー古典舞曲集
・リゲティ:6つのバガテル
・ミヨー:ルネ王の暖炉
・ヒンデミット:5つの管楽器のための「小室内楽曲」
ピアノトリオの名曲
ピアノ三重奏は、ヴィオリン1、チェロ1、ピアノ1の三つの楽器からなる室内楽曲です。対照的なピアノと弦楽器の音色の調和、3つの楽器のバランス、唯一低い音をだすチェロをどのように際立たせるかが非常に難しく、作曲家としては悩ましい編成でもあります。
メンデルスゾーン ピアノトリオ
ピアノトリオで最も有名な曲といえば、このメンデルスゾーンのピアノトリオでしょうか。メンデルスゾーンのピアノトリオで知られているのは2曲ありますが、こちらは2番目の曲です。一曲目はメンデルスゾーンが11才と若い時に作曲されたものなので、作品番号がつけられておらず、この2番目のきょくが、メンデルスゾーンのピアノトリオ第一番として名前がつけられています。シューマンに「ベートーヴェン以来、最も偉大なピアノ三重奏曲」と言わせた名曲であり、メンデルスゾーンを「19世紀のモーツァルト、最も輝かしい音楽家」だと称えました。
構成は四楽章からなっており、第1楽章 アレグロ・モルト・アジタートニ短調、4分の3拍子、第2楽章 アンダンテ・コン・モート・トランクィロ変ロ長調、4分の4拍子、第3楽章 スケルツォ.レッジェーロ・エ・ヴィヴァーチェ、ニ長調、8分の6拍子、第4楽章 フィナーレ.アレグロ・アッサイ・アパッショナート、ニ短調~ニ長調、4分の4拍子と続いていきます。
ヴァイオリンをフルートに変えたフルートトリオ編成もあります。フルートの艶やかな音色がまたメンデルスゾーンの作風に合っています。
チャイコフスキー ピアノトリオ
チャイコフスキーのピアノトリオは1881年から1882年にかけて作曲された曲です。旧友ニコライ・ルビンシュタインへの追悼のために作られた音楽であるため、一貫として悲しく、荘厳な曲調です。副題には『偉大な芸術家の思い出に』とつけられています。特にピアノに高度な技術が要される曲であり、50分という長さに多くの表現が散りばめられています。二楽章からなります。二楽章が変奏曲となっていて30分とかなり長い楽章になっています。第一楽章「悲歌的小品」、第二楽章「主題と変奏、最終変奏とコーダ」からなっています。第二楽章は12の変奏曲になっています。
ブラームス ピアノトリオ
ブラームスのピアノトリオは1854年に作曲された曲で、まだブラームスが弱冠20歳の時に作った曲です。初版は、若々しく情熱的な曲でしたが、その後その情熱性に弱点を感じたブラームス自身が改定をしています。改訂版は1891年に出版されています。全四楽章からなっていて、改訂版では、主題の書き換えと第三楽章以外の短縮が施されています。第一楽章Allegro con brio、第二楽章Scherzo、第三楽章Adagio、第四楽章Allegroと続きます。第一楽章の主題はピアノソロから始まり、ピアノとチェロにより美しくかつ爽やかに演奏されます。第二楽章はおどけるようなスケルツォ、第三楽章は悲哀を持ちながらもどことなく明るさが感じられるようにゆったりと演奏されます。第四楽章は一転、不安定な進行の元、切迫した勢いを持ちながら進んでいきます。
ラヴェル ピアノトリオ
ラヴェルのピアノトリオは1915年に作曲されたものです。第一次世界大戦中に書かれたものであり、徴兵に応じるために、「5ヶ月かかる仕事を5週間でやり遂げた」と語っています。ラヴェルのピアノトリオでは特に3つの楽器の音域が幅広く使われており、そのために高い技術を要しています。また、この曲はバスク地方の音楽に大きく影響を受けています。この時期にはこの曲と並行して、バスクの主題に基づくピアノ協奏曲『サスピアク=バット』の作曲もしていました。
ショパン ピアノトリオ
ショパンのピアノ三重奏曲ト短調は、1828年に作曲された、ショパンの唯一のピアノトリオです。ショパンの室内楽曲はチェロに重みが置かれるのが特徴的であり、この曲もそのような特徴を持つ曲の一つになっています。重厚で初期ロマン派らしい曲になっています。全四楽章からなっていて、第一楽章Allegro con fuoco、第二楽章Scherzo-Vivace、第三楽章Adagio Sostenuto、第四楽章Allegrettoと続いていきます。個人的にはこの曲はピアノトリオとしては無理なくバランスが取れていて聴きやすい曲なのではないかと思います。ただし、その点、面白みも薄いのかもしれません。ショパンのピアノトリオはそのために演奏機会が少ないのでしょうか。
フォーレ ピアノトリオ
フォーレによるピアノ三重奏曲は、1923年に作曲されたものです。フォーレの最晩年の曲です。この曲を作曲した時期は、彼は創作力がかなり減退していました。多くの人に「曲を書く気力が生じないこと」を相談していたようです。そんな中、やっとの思いで完成させたのがこの曲。フォーレは当時78歳でした。初演はパリ音楽院を卒業したばかりの若い演奏家たちによってなされ、フォーレは自分の音楽が若い音楽家たちに理解されたのを相当に喜んだようです。全三楽章からなり、演奏時間は約20分とそれほど長くはありません。始めの二楽章は比較的穏やかで爽やかに演奏され、活気にあふれたスケルツォの三楽章で終結します。没年の三年のうちに作曲されたのはこのピアノ三重奏と未完成の弦楽四重奏だけとなっています。
ドヴォルザーク ピアノトリオ
ドヴォルザークはピアノ三重奏曲を全てで4曲完成させており、この4番がその中でも最も有名な一曲となっています。このピアノ三重奏曲は1890年に完成された曲で、副題には『ドゥムキー』とつけられています。『ドゥムキー』とは、ウクライナ民謡の形式の一つのことで、「瞑想」を意味します。ただし、ウクライナ民謡の「ドゥムカ」の形式を踏んでいないことから、単純に「瞑想」の連想による曲であるとの解釈もあります。
6つの楽章からなる作品で、
Lento maestoso - Allegro quasi doppio movimento - Lento - Allegro (ホ短調)
Poco adagio - Vivace non troppo - Poco adagio - Vivace (嬰ヘ短調)
Andante - Vivace non troppo - Andante (イ長調~イ短調~イ長調)
Andante moderato (Quasi tempo di Marcia) - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegro - Meno mosso - Moderato (ニ短調)
Allegro - Meno mosso - In tempo -Meno mosso - Piu mosso (変ホ長調)
Lento maestoso - Vivace - Lento - Vivace (ハ短調~ハ長調)
と続いていきます。
各楽章にはあまり一貫性が見られず、どれも自由な形式で成り立っています。どちらかというと組曲のような曲です。しかしいかにもドヴォルザークらしい民族的な旋律が散りばめられており、スラブ的な哀愁を漂わせています
ピアノ五重奏の名曲
出典:vokka.jp
ピアノ五重奏曲とは、弦楽器4本とピアノ一台という編成からなりたつ室内楽曲です。ピアノ五重奏曲の名曲として一般的に知られているのはシューベルト、フォーレ、フランク、ブラームス、ショスタコービチ、ドヴォルザークの六人の作曲家によってかかれたものです。
弦楽器4本に対してピアノが1台という編成上、どうしても弦楽器の表現の幅の方が大きく、5つの楽器によるバランスをとるのが難しいといわれています。20世紀前半フランスで活躍した作曲家の集団である、フランス6人組の一人であるネオゲルが「弦楽四重奏やらピアノ五重奏などという形態はそのうち無くなる」といった要因の一つにはそのようなことがあるのでしょうか。しかしながら、ピアノ五重奏曲にはそのような絶妙なバランスからなりたつのが原因なのかは定かではありませんが、複雑で豊かな音楽性が感じられます。
ピアノ五重奏曲「ます」シューベルト
「ます」はシューベルトがまだ弱冠22歳の頃に作曲された曲です。第四楽章が、歌曲である『鱒』の旋律が利用された変奏曲であることから『鱒』という副題がつけられています。通常のピアノ五重奏曲の編成は、ヴァイオリン2、チェロ1、ビオラ1にピアノというものですが、このピアノ五重奏曲の編成には、コントラバスが加えられており、代わりにヴァイオリンが1減っています。
作品は5つの楽章からなっており、第1楽章アレグロ・ヴィヴァーチェ、第2楽章アンダンテ、第3楽章スケルツォ - プレスト、第4楽章アンダンティーノ - アレグレット、第5楽章アレグロ・ジュストで構成されています。
ピアノ五重奏曲 第二番 フォーレ
ピアノ五重奏曲第2番は、近代フランスの作曲家ガブリエル・フォーレが1921年に作曲したピアノと弦楽四重奏のための室内楽曲です。弦楽四重奏のため、とある通り、先ほどの「ます」とは異なり、ヴァイオリン2、ビオラ1、チェロ1、ピアノ1の編成になっています。ピアノ五重奏曲第1番の発表の15年後に発表されていますが、どちらもほぼ同時期から構想をされており、この第二番はフォーレの頭の中で長く眠っていた楽曲であると言われています。このピアノ五重奏曲第2番はフォーレの作曲した器楽曲の中では最も優れた曲であると評価されており、ピアノ五重奏曲の傑作のうちの一つとして数えられています。
作品は4つの楽章からなっており、第一楽章アレグロ・モデラート 、第二楽章アレグロ・ヴィヴォ、第三楽章アンダンテ・モデラート、第四楽章アレグロ・モルト で構成されています。
フランク ピアノ五重奏曲
このピアノ五重奏曲は、セザール・フランクが1878年から1879年にかけて作曲した楽曲です。同じく編成はヴァイオリン2、ビオラ1、チェロ1、ピアノ一台からなっています。フランクの作曲は初期、中期、後期に分けられますが、この楽曲は後期に書かれたものです。初期に室内楽曲をよく手がけていあたフランクですが中期にはほとんど書かなくなり、30年以上も室内楽を書かなくなります。しかしながら、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』という楽劇に刺激され、再び室内楽曲に手をつけ始めます。この時期に書かれたのが、このピアノ五重奏曲です。フランクは循環形式と呼ばれる主題が楽章を超えて繰り返し登場する都いう形式を好んで使いますが、このピアノ五重奏曲にもその形式が如実に表れています。
また、この作品は3つの楽章からなっており、第一楽章モルト・モデラート・クアジ・レント 、第二楽章レント・コン・モルト・センティメント第三楽章アレグロ・ノン・トロッポ・マ・コン・フォーコで構成されています。
ピアノ五重奏曲 ブラームス
ブラームスによるピアノ五重奏曲は1864年に作曲された曲です。当初ではヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2の弦楽五重奏曲として作曲されましたが、ブラームス自身がこの曲を破棄し、1864年に二台のピアノのためのソナタとして書き換えました。その後、同年にピアノ五重奏曲として書き直され、現在のピアノ五重奏曲として成立しました。また、この曲はアリア・アンナに献呈されています。
楽器編成としては一般的なピアノ五重奏であり、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロとピアノにより構成されています。楽章は4つからなっていて、第一楽章アレグロ・ノン・トロッポ、第二楽章アンダンテ、ウン・ポコ・アダージョ、第三楽章スケルツォ、第四楽章ポコ・ソステヌート~アレグロ・ノン・トロッポ~プレスト、ノン・トロッポからなっています。
ピアノ五重奏曲 ショスタコービチ
ショスタコーヴィチによるピアノ五重奏曲は、1940年に完成されたもので、ショスタコーヴィチの作曲した室内楽曲の中では、最も有名なものの一つです。1941年にスターリン賞を受賞しています。ショスタコーヴィチの作風としては重苦しく深刻なものが多いですが、この曲に関しては非常に叙情的で、聴きやすく感動的です。スターリン賞を受賞したことから「社会主義リアリズム」に迎合したと解釈される場合もあります。この時期のソ連では「内容において社会主義的、形式において民族主義的」のスローガンのもと社会主義国家に役立つ音楽づくりが目指されており、ショスタコーヴィチは幾度となくそのスローガンに反しているとして批判されていました。そのような中「プラウダ批判」と呼ばれる批判によりショスタコーヴィチは作風を大きく変更し、批判を免れるようになります。このピアノ五重奏はその転換期に作曲された曲なのです。個人的には、批判云々にしろ聞く価値がある曲であり、美しく心に響く曲であると思います。
ピアノ五重奏曲第二番 ドヴォルザーク
ドヴォルザークによるピアノ五重奏曲第2番は1887年に作曲されたものです。ドヴォルザークが作曲家として円熟期にあった時期に作曲されたものであり、すでにスラブ民族的な音楽家としての名を確立していました。このピアノ五重奏にもその色は垣間見ることができ、第二楽章には「ドゥムカ」、第三楽章には「フリアント」という名前がつけられていますが、この名称はウクライナの民族舞曲からつけられています。ドヴォルザークはピアノ五重奏を第1番、第2番のに曲を作曲していますが、ドヴォルザークのピアノ五重奏といえば、この第二番を一般的には指します。
弦楽三重奏曲の名曲
弦楽三重奏とは、通常ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが一本ずつの編成で演奏される室内楽の形態です。弦楽三重奏というとあまり演奏機会は多くありません。プロの演奏団体でも、もともと弦楽四重奏団があって、そこからヴァイオリン奏者が一人抜けて結成される、ということがほとんどです。というのもそもそも残っているレパートリーが少ないということがあります。そんなマイナーな弦楽三重奏から、知る人ぞ知る名曲をご紹介します。
ベートーヴェン:弦楽三重奏
ベートーヴェンは1798年にこの弦楽三重奏第一番を含む三曲の弦楽三重奏曲を作曲しました。ベートーヴェンは1796年にストレスから難聴を発症したとされています。一時期、難聴という事実を受け入れられず、作曲を中断したようですが、音楽家にとって致命的である耳疾という事実を、なんとか受け入れこの曲を作曲しました。この弦楽三重奏は第一楽章に序奏を持たせたソナタ形式になっています。各楽章が一つにうまくまとまっており、流麗で、全体的に女性らしいという印象をうける曲になっていますね。
シューベルト:弦楽三重奏曲第2番
シューベルトは弦楽三重奏曲を2曲作曲していますが、弦楽三重奏曲第一番に関しては、完全な形で残されていないため、実質的には、この弦楽三重奏曲第2番がシューベルトの唯一の弦楽三重奏曲です。第一番に関しては、未完成のまま途中で作曲を放棄してしまったようです。第二番は、1817年に作曲され、初演はシューベルトの没後1869年に演奏されました。マイナーな曲のため、録音もあまり多くはありません。
モーツァルト:弦楽三重奏のためのディベルティメント
ディベルティメントとは、明るく快活で軽い音楽のことをさします。貴族の食卓や社交の場などで演奏され、楽器編成などには特に指定はありません。イタリア語で楽しい、面白いという意味の『divertire』から来ています。
この曲はモーツァルトのフリーメイソンの仲間であるプーフベルクから作曲を依頼され、作られました。この曲は、変ホ長調で作曲されていますが、この変ホ長調という調性はモーツァルトがフリーメイソンに所属していたことを象徴すると言われています。というのも、フリーメイソンにとって重要な数字は「3」だそうですが、変ホ長調はふらっと3つであるからです。そしてこの曲は「三重奏曲」として3人で演奏されます。
弦楽四重奏の名曲
弦楽四重奏とは2本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロで構成される楽曲です。オーケストラほどの迫力や豊かな表現性はありませんが奏者一人一人のテクニックやアンサンブルをじっくりと味わうことができます。”弦楽四重奏が好き!”と聞けばなんとなく控えめで上品な印象をおぼえますね。
ドヴォルザーク:弦楽四重奏「アメリカ」
アントニン・ドヴォルザーク作曲、弦楽四重奏曲第12番作品96「アメリカ」。ドヴォルザークといえば交響曲第9番「新世界より」ですが、この曲にも「新世界」と同じように民謡風のフレーズがいたるところに散りばめられています。最初のヴィオラによるフレーズなどはまさにそれですね。なんとなく、懐かしい響きが感じられます。明るく温かく優しい曲となっています。
ラヴェル:弦楽四重奏
モーリス・ラヴェル作曲、弦楽四重奏曲ヘ長調。この曲はドビュッシー作曲の弦楽四重奏曲に大きな影響を受けています。ドビュッシーの弦楽四重奏曲の作曲後十年で作られた楽曲です。まさに印象派!と言った音楽。ドビュッシーに影響を受けているだけあって、第二楽章には特徴的なピッチカートが使われていますね。和音の使い方もとても素晴らしいものです。ドビュッシーの弦楽四重奏と一緒に聞くとより深く味わえるかもしれませんね。
ベートーヴェン:弦楽四重奏第7番「ラズモフスキー第1番」
ベートーヴェン作曲弦楽四重奏曲第7番「ラズモフスキー第1番」。この”ラズモフスキー”という副題はベートーヴェンがラズモフスキー伯爵にこの曲を献呈したことから名付けられています。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第7番から第9番まではどれもラズモフスキー伯爵に献呈されていて、それぞれ「ラズモフスキー第1番」「ラズモフスキー第2番」「ラズモフスキー第3番」などと副題がついているんですね。快楽から哀愁まで様々な色彩を持った楽曲となっています。
シューベルト:弦楽四重奏「死と乙女」
フランツ・シューベルト作曲、弦楽四重奏曲第14番「死と乙女」。「死と乙女」という副題はシューベルト自身が作曲した歌曲「死と乙女」からきています。第二楽章のテーマがこの歌曲から引用されていることからこう名付けられました。マティアス・クラディウスの詩がついた歌曲であり、病に悩まされる乙女と死神との対話を描いたものです。力強い短調の響きと物悲しさが見事に対照的に光る楽曲です。
ドビュッシー:弦楽四重奏
クロード・ドビュッシー作曲弦楽四重奏曲ト短調作品10。ドビュッシーが唯一完成させた弦楽四重奏曲です。ドビュッシーはこの曲を作る以前にも弦楽四重奏曲を作ろうと尽力していましたが、途中で構想がまとまらずに断念してしまいました。そのためこの曲がドビュッシーの唯一の弦楽四重奏曲となっています。
この曲はドビュッシーの作曲理念を明確に反映しているといえます。決して技巧的に過ぎることなく、絶妙な和音を使用しています。重々しい主旋律の裏で奏でられるピッチカートはとても印象的ですね。
弦楽五重奏の名曲
ブラームス:弦楽五重奏第2番
この曲はブラームスが作曲した一番最後の曲です。ブラームスはこの曲を作曲した際に出版社のジムロックに次のような手紙を書きました。
『この手紙とともに私の音楽に別れを告げてもらいたい――やめる時が来たのは確かなのだから・・・・・』
しかも、このブラームスの弦楽五重奏曲第二番はもともと交響曲第5番として構想されていました。ブラームスは交響曲第5番を作曲する際に非常に悩み、結局その構想をこちらの弦楽五重奏に還元したようです。自分の創作能力の衰えや時代から取り残されてしまったという失望を感じてしまったのかもしれません。
シューベルト:弦楽五重奏
シューベルトの弦楽五重奏も、ブラームスの弦楽五重奏局第二番と同様に、シューベルトの最晩年に作曲された遺作です。シューベルトの死の二ヶ月前に作曲されました。弦楽五重奏曲というと、ヴァイオリン2本ヴィオラ2本チェロ1本の編成が通常ですが、この曲はヴァイオリン2ヴィオラ1チェロ2の独特な編成で構成されています。特に第二楽章は様々は場面で使用されています。アルトゥール・ルービンシュタインは、自らの葬儀にこの楽章を流すように要望したそうです。
木管五重奏の名曲
木管五重奏とは、フルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、クラリネットの5つの楽器からなる楽曲です。この編成は19世紀に確立されました。木管五重奏のみの演奏会というのもなかなかマイナーではありますが、最近では世界で最も活躍するフルート奏者であるパユなどがメンバーとなっている「レ・ヴァン・フランセ」が来日して多くの観客をわかせていますね。木管ならではのやわらかい音色や軽く弾むようなリズムが特徴です。
イベール 木管五重奏曲のための3つの小品
ジャックイベールはフランスの作曲家。この木管五重奏のための3つの小品は木管五重奏曲の中でも最も有名な作品の一つです。弾むような第1楽章、フルートとクラリネットの掛け合いが印象的な第2楽章、遊ぶようなクラリネットの旋律がおしゃれな第3楽章と続きます。イベールの作品は軽妙さ、洒脱さが特徴です。
ニールセン:木管五重奏曲
ニールセンがコペンハーゲン管楽五重奏団のために書いた木管五重奏曲。ニールセンはこの曲の初演で感動し、この団員全員のために協奏曲を書き上げるという計画を立てました。フルート協奏曲とクラリネット協奏曲を書き上げましたが、その後、体調を悪化させ、計画を遂行することはできませんでした。この時期に、彼は交響曲5番を作曲していますが、その情熱的な交響曲とは対照的に穏やかで、親しみやすい曲調になっています。近代音楽らしい調整の曲ですが、主題などがはっきりとしており、聴きやすい曲です。
ラヴェル:クープランの墓
もともとはピアノ組曲である「クープランの墓」を編曲した曲。メイソン・ジョーンズが編曲しています。もともとの組曲は6つの曲からなっていますが、この木管五重奏曲は4曲からなっています様々な編曲版があり、管弦楽版が有名です。もともとのピアノ組曲よりも有名になっているくらいであり、木管五重奏編にしても管弦楽編にしても最初のオーボエの旋律などが印象的ですね。
フランセ:木管五重奏
フランセはフランスの新古典主義音楽の作曲家兼ピアニストです。幼少期にラヴェルにその音楽への才能と感受性を見初められています。軽快な音楽はフランセに特有のものです。新古典主義の音楽はドイツロマン派音楽に対抗して生まれた音楽です。下でも挙げられているようなミヨーやプーランクなどの「フランス6人組」の作曲家によって推し進められてきました。フランセは彼ら6人ほど有名な作曲家にはなり得ませんでしたが、精力的に作曲をし、ピアニストとしてはだけでなく作曲家としても活躍しました。
ファルカシュ:17世紀のハンガリー古典舞曲集
ファルカシュはハンガリーの作曲家です。17世紀のハンガリー舞曲という副題がついている通り、5つの舞曲からなっている曲です。ハンガリーの民族音楽などをうまく取り入れています。舞踏会が思い浮かぶような編成になっており、一曲目の序曲は舞踏会の始まりのような印象を受ける華々しさのある曲。二曲目は踊りと踊りの間の休息のような穏やかな曲、と交互に穏やかな曲と楽しげな曲が並べられています。上の動画は最後の曲である「跳躍の踊り」。その名の通り、跳ねるような音使いが印象的です。フルートのめまぐるしい細かい動きが踊り狂うものたちを彷彿とさせますね。
リゲティ 6つのバガテル
バガテルは「ちょっとしたもの」という意味。聞いているだけで、リゲティ遊んでいるなあ、という印象を受けますね。一番目の曲は可愛いらしく遊んでいるようなアンサンブルを重視している曲ですが、二番目の曲は一転、ソリスティックな曲。このようにアンサンブル重視とソリスティックな曲を交互に並べているところからも彼がユニークな着想を持って作曲したことが伺えます。
ミヨー:ルネ王の暖炉
ミヨーは現代フランスの作曲家であり、彼はピアニストや作曲家としても活躍しました。元々は映画音楽である曲を編曲して、7つの組曲にしたもの。ロマン派音楽や印象主義音楽とは一線を画した、新古典主義音楽を推し進めた「フランス6人組」の一人でもあります。木管五重奏曲の中では演奏機会の多い曲です。ルネ王は15世紀に生きた「善良王」の異名を持つフランスの貴族であり、一時ナポリを治めていました。ミヨーの故郷には、冬の間もよく日が当たって風が当たらず暖かい場所があり、ルネ王はそこへ毎日のように出かけたそうです。これが、曲のタイトルでもある「ルネ王の暖炉」であり、それをモチーフに曲が作られています。
ヒンデミット 5つの管楽器のための「小室内楽曲」
このヒンデミットという作曲家もロマン派や印象主義音楽からの逸脱を試みた人物です。木管五重奏という編成が新しいというわけではありませんが、現代の曲ばかりが現在に演奏されているというのはこのクラシック音楽の世界では不思議なものです。ヒンデミットは第一次世界大戦後ごろから活躍した新即物主義の作曲家です。元々は美術における動きだったものが音楽にも影響を及ぼしました。木管五重奏曲はフランスの曲が多いですがこの曲はドイツ人であるヒンデミットが書いていることもあり、ドイツ音楽らしい音楽になっています。
魅力的な室内楽の世界
いかがでしたでしょうか。今回は室内楽の代表曲を30曲ご紹介いたしました。オーケストラなど、大規模な音楽とはまた一味異なる室内楽の深い世界をご堪能ください。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。