ブラームスのおすすめ名曲13選を彼の生涯や逸話とあわせてご紹介

ブラームスはバッハ、ベートーヴェンと並び、ドイツ音楽の「3大B」と称される作曲家です。作風は主にロマン派音楽ですが、古典主義的な形式美を尊重する傾向もあります。ドイツ音楽といえばアウフタクトの強い音楽が特徴ですが、バッハ、ベートーヴェンよりもかなりその色彩が濃く、その点においては、ロマン派音楽の作曲家らしいと言えます。

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アイキャッチ画像出典:bushoojapan.com

ヨハネス・ブラームスの歩んだ生涯

幼少から音楽を学んだブラームス

出典:bushoojapan.com

ブラームスは1833年にハンブルクで生まれました。父親はコントラバス奏者で、幼少から父親から音楽を学んでいました。7才からピアノを始め、彼の才能は花を開いていきます。オットー・フリードリヒ・ヴィリバルト・コッセルにピアノを学び、高度な音楽教育を受けていきますが、ブラームスは貧しかったため、13才のうちからレストランなどでピアノを演奏してお金を稼ぎなんとか家計を支えていました。

ピアニストとしては地味だったブラームス

幼少のうちからピアニストとしての才能を開花させていきますが、同時代のピアニストたちと比べると地味な存在であったようです。そのために、次第にピアニストとしての活動を減らして作曲にシフトしていくようになり、演奏活動からは離れていくようになります。

作曲家としてのブラームス

作曲に専念するようになったブラームスは様々な音楽家たちと親交を持つようになります。20代のはじめにフランツ・リストと出会ったもののあまりうまくはいきませんでしたが、シューマンとの出会いは、ブラームスにとってかなり大きなものとなります。シューマンはブラームスの音楽と演奏に感銘を受け、ブラームスの作品の普及に大きな影響を及ぼします。また、シューマンの妻クララとも生涯にわたって親しく交流を続けることになりました。

クララ・シューマンとの親交

出典:matsumoto-music.com

ブラームスと親交の深かったクララ・シューマン

シューマンとブラームスの親交が深まるこの頃にはシューマンは既に精神疾患を患っており、1854年には自殺未遂を起こして療養施設に収容されてしまいます。シューマン一家を助けようと駆けつけたブラームスとクララの距離は近づきますが、恋愛関係にはなかったと推察されています。ブラームスはシューマンに対して深い敬意を表しており、実際に、シューマンの死後もクララと結婚することはありませんでした。

精力的に作曲に挑んだ1870~1890年代

ブラームスは短い期間に交響曲を4曲書きました。1876年に交響曲第一番を、1877年には第二番を、そして1885年までに第三番、第四番の両曲を作曲しました。この交響曲の作曲に精力を持って挑んていた時期には、イタリアを8度も訪問し、集中できる場所を探しながら作曲をして行きました。1889年には「ハンガリー舞曲第一番」を蓄音機に録音しましたが、この録音は世界初のレコーディングだとされています。しかしこの翌年の1890年、作曲意欲の衰えたブラームスは作曲を断念し、遺書を書いてこの世をさろうと考えました。

ブラームスの晩年

遺書を書き、作曲をやめようと決意したブラームスでしたが、結局は作曲活動を再開することとなります。1891年にクラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトの演奏に触発されて創作意欲を取り戻したのでした。ブラームスは晩年、室内楽曲を多く作曲し、『7つの幻想曲』『4つの小品』『4つの厳粛な歌』などの名曲を生み出します。しかしながら1896年にクララが死去すると、それを追いかけるように、ブラームスも急死してしまうのでした。

ブラームスのピアノ曲

ピアノソナタ第3番

この曲はブラームスが20歳の時に完成されたものです。1853年にシューマンの住むデュッセドルフで書き上げられ、同年にシューマンに講評を求めて譜面を送っています。しかしながら結局、この曲がブラームスが発表した中では最後のピアノソナタとなっています。ブラームスはこの曲の作曲に力を入れていたようで、5つの楽章からなっており、演奏時間には40分を要します。力強く、情熱の感じられる楽曲になっており、ブラームスの若さ溢れる情熱が表出されています。

ピアノソナタ第1番

この曲はベートーヴェンのピアノソナタ第29番を模範として作曲したとされています。ベートーヴェンのピアノソナタの第一楽章第一主題のモチーフが全楽章に散りばめられているところからもそれをうかがい知ることができます。1852年の春に作曲に着手しましたが、途中で中断し、1853年に完成しました。作曲には苦労したようですが、この曲にブラームスは自信を持っており、リストやシューマンなどに講評を求めたようです。シューマンはこの曲を聴いて「新しい道」と題する論文でブラームスの才能を世の中に紹介し、絶賛しました。

6つのピアノ小品

ブラームスの最晩年の曲の一つ。ドイツの音楽家らしく、アウフタクトを強調するような強い主張の音楽が比較的有名なブラームスですが、この曲はかなり穏やかで美しい曲となっています。上の動画にあげた第二曲は6曲ある6つのピアノ小品の中で最も単独で演奏される機会の多い曲であり、メランコリックな曲調が印象的です。

愛のワルツ

ピアノ連弾曲集「16のワルツ」の15番目の曲。16のワルツの中には、スラブ的な民族音楽をモチーフにしたもの、ハンガリーをモチーフにしたもの、子守唄的なものなど様々な色彩を持つワルツが集められています。この曲も『のだめカンタービレ』やCMなどに使われています。

ブラームスの室内楽曲

ピアノトリオ

ブラームスのピアノトリオは1854年に作曲された曲で、まだブラームスが弱冠20歳の時に作った曲です。初版は、若々しく情熱的な曲でしたが、その後その情熱性に弱点を感じたブラームス自身が改定をしています。改訂版は1891年に出版されています。全四楽章からなっていて、改訂版では、主題の書き換えと第三楽章以外の短縮が施されています。第一楽章Allegro con brio、第二楽章Scherzo、第三楽章Adagio、第四楽章Allegroと続きます。第一楽章の主題はピアノソロから始まり、ピアノとチェロにより美しくかつ爽やかに演奏されます。第二楽章はおどけるようなスケルツォ、第三楽章は悲哀を持ちながらもどことなく明るさが感じられるようにゆったりと演奏されます。第四楽章は一転、不安定な進行の元、切迫した勢いを持ちながら進んでいきます。

ピアノ五重奏曲

ブラームスによるピアノ五重奏曲は1864年に作曲された曲です。当初ではヴァイオリン2、ヴィオラ1、チェロ2の弦楽五重奏曲として作曲されましたが、ブラームス自身がこの曲を破棄し、1864年に二台のピアノのためのソナタとして書き換えました。その後、同年にピアノ五重奏曲として書き直され、現在のピアノ五重奏曲として成立しました。また、この曲はアリア・アンナに献呈されています。

楽器編成としては一般的なピアノ五重奏であり、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロとピアノにより構成されています。楽章は4つからなっていて、第一楽章アレグロ・ノン・トロッポ、第二楽章アンダンテ、ウン・ポコ・アダージョ、第三楽章スケルツォ、第四楽章ポコ・ソステヌート~アレグロ・ノン・トロッポ~プレスト、ノン・トロッポからなっています。

弦楽五重奏曲第2番

この曲はブラームスが作曲した一番最後の曲です。ブラームスはこの曲を作曲した際に出版社のジムロックに次のような手紙を書きました。
『この手紙とともに私の音楽に別れを告げてもらいたい――やめる時が来たのは確かなのだから・・・・・』

しかも、このブラームスの弦楽五重奏曲第二番はもともと交響曲第5番として構想されていました。ブラームスは交響曲第5番を作曲する際に非常に悩み、結局その構想をこちらの弦楽五重奏に還元したようです。自分の創作能力の衰えや時代から取り残されてしまったという失望を感じてしまったのかもしれません。

ブラームスのオーケストラ曲

ブラームス:大学祝典序曲

大学祝典序曲は、ブラームスの二つある演奏会用序曲のうちの一つで、悲壮感のある『悲劇的序曲』とは対照的な明るく陽気な曲となっています。学生歌を引用して作られているのが特徴で、自作主題と効果的に繋がれています。また、この音楽にはブラームスのブラックユーモアが多分に含まれています。ブラームス自身はこの曲を、「学生歌」をガサツに繋いだメドレーと評しており、「学生の酔いどれ歌のひどくガサツなメドレー」を『大学祝典序曲』と名付けるという皮肉性を含ませています。しかしながら、この作品自体は構成が洗練された完成度の高い作品であり、現在も演奏機会の多い演奏会用序曲の傑作とも言えるものになっています。

悲劇的序曲

先ほどもご説明したように、この曲は「大学祝典序曲」と並行して作曲されました。ブラームスはこの2曲の作曲に当たって友人に手紙を書いており「『笑う序曲』と対になる『泣く序曲』を書こうと考えている」と話したそうです。ブラームスは「大学祝典序曲」を名誉博士号をもらったお礼に書いていますが、上で説明したブラックユーモアからもわかるとおり、あまり気乗りせず作曲したようです。どちらかといえば、こちらの悲劇的序曲の方が「ブラームスらしい」曲であり、本来自分の書きたいものはこのような曲であるということをアピールしたかったのかもしれません。

ハンガリー舞曲第5番

ハンガリー舞曲は、ロマの民族音楽であるジプシー音楽を編曲して作られたものであり、伝統的音楽からかなり影響を受けています。ブラームスはこのハンガリー舞曲でかなりの成功を収め、ドヴォルザークにスラブ舞曲を作曲することを勧めたほどです。

ピアノ協奏曲第二番

ブラームスのピアノ協奏曲第二番は第一番が書かれた後22年後にかかれました。ピアノ協奏曲第一番よりもこの第二番の方が人気が高く、ブラームスの作品の中でも、交響曲第2番やヴァイオリン協奏曲と並んで有名な曲の一つです。ブラームスの曲は比較的暗い曲が多いですが、このピアノ協奏曲第二番は明るい基調で書かれています。協奏曲といえば、独奏部分であるカデンツァが目玉であったりもしますが、この曲にはそのようなカデンツァ的な部分はなく、ソリストの超絶技巧に焦点をおいたような曲ではありません。それにもかかわらず、この作品自体が難しい技巧をかなり要しており、ピアノ協奏曲というジャンルの中でもかなりの難曲として知られています。

第一楽章:Allegro non troppo、変ロ長調、ソナタ形式
第二楽章:Allegro appassionato(スケルツォ)、ニ短調、複合三部形式
第三楽章:Andante、変ロ長調、複合三部形式
第四楽章:Allegretto grazioso、変ロ長調、ロンド形式

ヴァイオリン協奏曲

ブラームスのヴァイオリン協奏曲はブラームスが45歳の時に作曲されました。ブラームスはピアノよりも先にヴァイオリンを学んでいたため、その奏法についてはかなりの理解があったと推察できますが、ヴァイオリン協奏曲自体はこの曲しか書き上げられていません。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲とメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と並んで、三大ヴァイオリン協奏曲として知られています。この作品は様々な作曲家にも影響を与えており、シベリウスは、この曲を聞いて自らのヴァイオリン協奏曲を改定したと言われています。

交響曲第1番

4曲あるブラームスの交響曲の中で最も有名な「交響曲第1番」。
ベートーヴェンを尊敬してやまないブラームスはベートーヴェンを超える交響曲を書こうと奮闘し、「ベートーヴェンの10番目の交響曲」と言われるほどの大曲を作曲することに成功しました。この曲の最初の短調の主題はなんだか「運命」と歩調が似ていますが、実は第一楽章の終盤では先ほどの「運命の動機」が使われています。本当にベートーヴェンを強く意識して作曲されている曲なのですね。

第1楽章 Un poco sostenuto - Allegro
第2楽章 Andante sostenuto
第3楽章 Un poco allegretto e grazioso
第4楽章 Adagio - Più andante - Allegro non troppo, ma con brio - Più allegro

ドイツ音楽の巨匠、ブラームス

この記事ではドイツ音楽の巨匠で三大Bの一人ブラームスについてご紹介しました。交響曲一番は「ベートヴェンの交響曲第十番のようだ」と評されるなど、ベートーヴェンを尊敬する一面もあり、シューマンの妻クララ・シューマンとの親交を深めていた一面もあり、クラシック音楽界でも特に面白い人物でした。ぜひ、ブラームスの音楽からもお気に入りの一曲を見つけてみてください。

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クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。

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