室内楽の魅力!木管五重奏曲の名曲ベスト10
木管五重奏曲の中でも最も演奏機会の多い10曲をまとめてみました。演奏機会が多いと言っても、フルート奏者である私でさえ、この曲以外が演奏されているコンサートはほとんどいったことがありません! この10曲さえ知っておけばほとんどの木管五重奏曲は網羅できたものと思ってよいでしょう。
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アイキャッチ画像出典:jp.yamaha.com
木管五重奏とは
木管五重奏とは、フルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、クラリネットの5つの楽器からなる楽曲です。この編成は19世紀に確立されました。木管五重奏のみの演奏会というのもなかなかマイナーではありますが、最近では世界で最も活躍するフルート奏者であるパユなどがメンバーとなっている「レ・ヴァン・フランセ」が来日して多くの観客をわかせていますね。木管ならではのやわらかい音色や軽く弾むようなリズムが特徴です。室内楽は弦楽四重奏だけではありませんよ!ぜひ、木管五重奏曲の世界を堪能してください。
イベール 木管五重奏曲のための3つの小品
ジャックイベールはフランスの作曲家。この木管五重奏のための3つの小品は木管五重奏曲の中でも最も有名な作品の一つです。弾むような第1楽章、フルートとクラリネットの掛け合いが印象的な第2楽章、遊ぶようなクラリネットの旋律がおしゃれな第3楽章と続きます。イベールの作品は軽妙さ、洒脱さが特徴です。
ニールセン:木管五重奏曲
ニールセンがコペンハーゲン管楽五重奏団のために書いた木管五重奏曲。ニールセンはこの曲の初演で感動し、この団員全員のために協奏曲を書き上げるという計画を立てました。フルート協奏曲とクラリネット協奏曲を書き上げましたが、その後、体調を悪化させ、計画を遂行することはできませんでした。この時期に、彼は交響曲5番を作曲していますが、その情熱的な交響曲とは対照的に穏やかで、親しみやすい曲調になっています。近代音楽らしい調整の曲ですが、主題などがはっきりとしており、聴きやすい曲です。
ラヴェル:クープランの墓
もともとはピアノ組曲である「クープランの墓」を編曲した曲。メイソン・ジョーンズが編曲しています。もともとの組曲は6つの曲からなっていますが、この木管五重奏曲は4曲からなっています様々な編曲版があり、管弦楽版が有名です。もともとのピアノ組曲よりも有名になっているくらいであり、木管五重奏編にしても管弦楽編にしても最初のオーボエの旋律などが印象的ですね。
フランセ:木管五重奏
フランセはフランスの新古典主義音楽の作曲家兼ピアニストです。幼少期にラヴェルにその音楽への才能と感受性を見初められています。軽快な音楽はフランセに特有のものです。新古典主義の音楽はドイツロマン派音楽に対抗して生まれた音楽です。下でも挙げられているようなミヨーやプーランクなどの「フランス6人組」の作曲家によって推し進められてきました。フランセは彼ら6人ほど有名な作曲家にはなり得ませんでしたが、精力的に作曲をし、ピアニストとしてはだけでなく作曲家としても活躍しました。
ファルカシュ:17世紀のハンガリー古典舞曲集
ファルカシュはハンガリーの作曲家です。17世紀のハンガリー舞曲という副題がついている通り、5つの舞曲からなっている曲です。ハンガリーの民族音楽などをうまく取り入れています。舞踏会が思い浮かぶような編成になっており、一曲目の序曲は舞踏会の始まりのような印象を受ける華々しさのある曲。二曲目は踊りと踊りの間の休息のような穏やかな曲、と交互に穏やかな曲と楽しげな曲が並べられています。上の動画は最後の曲である「跳躍の踊り」。その名の通り、跳ねるような音使いが印象的です。フルートのめまぐるしい細かい動きが踊り狂うものたちを彷彿とさせますね。
ダンツィ 木管五重奏
フランツ・ダンツィは19世紀前半の作曲家です。今日紹介する10曲の作曲家の中では最も古い作曲家です。ダンツィは作曲家としてはそれほど名が知れているわけではありません。今日では木管五重奏曲が最も演奏機会が多いでしょう。曲は決してテクニックが要求されるというわけではなく響きが良く穏やかな曲です。ベートーヴェンと同時代の作曲家であり、モーツァルトに敬意を抱いていました。
タファネル:木管五重奏
ポール・タファネルはフランスの作曲家です。作曲家であると同時にフルート奏者でもあり、フルート曲も多く作曲しています。この木管五重奏曲でも、フルートが大活躍しています。特に第三楽章では、ほとんどの主旋律をフルートが奏でていますが、フルートの出す事のできる音色、テクニックなどをよく活かしています。第三楽章はテクニックが目玉ではありますが、テクニックに偏りすぎているということはありません。これはポール・タファネルの演奏とも似ています。彼は超絶技巧の持ち主であるにもかかわらず、それをひけらかす事なく見せかけの演奏を嫌いました。そのような音楽への態度がこの曲にも表れているのでしょう。
ミヨー:ルネ王の暖炉
ミヨーは現代フランスの作曲家であり、彼はピアニストや作曲家としても活躍しました。元々は映画音楽である曲を編曲して、7つの組曲にしたもの。ロマン派音楽や印象主義音楽とは一線を画した、新古典主義音楽を推し進めた「フランス6人組」の一人でもあります。木管五重奏曲の中では演奏機会の多い曲です。ルネ王は15世紀に生きた「善良王」の異名を持つフランスの貴族であり、一時ナポリを治めていました。ミヨーの故郷には、冬の間もよく日が当たって風が当たらず暖かい場所があり、ルネ王はそこへ毎日のように出かけたそうです。これが、曲のタイトルでもある「ルネ王の暖炉」であり、それをモチーフに曲が作られています。
ヒンデミット 5つの管楽器のための「小室内楽曲」
このヒンデミットという作曲家もロマン派や印象主義音楽からの逸脱を試みた人物です。木管五重奏という編成が新しいというわけではありませんが、現代の曲ばかりが現在に演奏されているというのはこのクラシック音楽の世界では不思議なものです。ヒンデミットは第一次世界大戦後ごろから活躍した新即物主義の作曲家です。元々は美術における動きだったものが音楽にも影響を及ぼしました。木管五重奏曲はフランスの曲が多いですがこの曲はドイツ人であるヒンデミットが書いていることもあり、ドイツ音楽らしい音楽になっています。
リゲティ 6つのバガテル
バガテルは「ちょっとしたもの」という意味。聞いているだけで、リゲティ遊んでいるなあ、という印象を受けますね。一番目の曲は可愛いらしく遊んでいるようなアンサンブルを重視している曲ですが、二番目の曲は一転、ソリスティックな曲。このようにアンサンブル重視とソリスティックな曲を交互に並べているところからも彼がユニークな着想を持って作曲したことが伺えます。
木管五重奏に見る室内楽の魅力!
いかがでしたでしょうか。今回紹介したような室内楽の曲はオーケストラなどの大編成の曲と違った、軽さや艶やかさがあって楽しい曲が多いですね。逆に、情緒に訴えるような曲はあまり多くはないのではないでしょうか。弦楽器が奏でる感動的で壮大な曲も良いですが、このような軽くて遊ぶような曲もいいですよね。色々な曲を聴いてみて今の自分の気持ちにあった曲を探してみてくださいね。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。