蕎麦の歴史、老舗の系譜・のれん、効能、マナー・正しい食べ方を徹底解説
日本の伝統的な和食である蕎麦。その歴史は古く、江戸時代に誕生した「御三家」は現在まで受け継がれています。さらにわさびの付け方や音を立ててすするといったマナー、蕎麦に含まれる栄養素、気になるダイエット効果まで意外と知らない蕎麦にまつわる豆知識をまとめました。これを読めば普段食べているお蕎麦がより美味しく感じるかも!
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アイキャッチ画像出典:iki-toki.jp
蕎麦の由来・歴史
蕎麦の由来
蕎麦とは、蕎麦粉を原料とした麺料理のことです。この蕎麦粉に対するつなぎ(主に小麦粉)の比率により名称が変化するという特徴があります。よく知られているものに十割蕎麦、ニ八蕎麦などがあります。そもそも蕎麦粉のそばとは「とがったもの」という意味であり、蕎麦の実が三角形であることからその名で呼ばれたことが由来といわれているんです。
蕎麦の歴史
蕎麦の歴史は日本料理の中でもかなり古く、奈良時代以前までさかのぼるといわれます。ただしその頃は、上流階級というよりはむしろ農民が飢饉の際に食べる程度の食事であり、麺にするというよりは練り物や焼き物のように食べられていました。それが16世紀になり現在の食べ方である麺にする「蕎麦切り」という形態が生まれ、寺院や茶席などで振舞われるようになりました。
蕎麦の種類
蕎麦は蕎麦粉の用いる種類により大きく分けて3つに分類されます。
・更科蕎麦
蕎麦の実を挽いたときの最初の白い一番粉を用いた蕎麦。東京では大体これです。
・田舎蕎麦
蕎麦殻の黒い粉を用いた蕎麦。長野などはこの蕎麦がメインです。
・藪蕎麦
蕎麦の実の緑色の皮を挽いた蕎麦。藪蕎麦系列はこれです。
また、上記以外に旬の蕎麦を特別に新蕎麦といいます。
・新蕎麦
秋に収穫した蕎麦の実を使用した旬の蕎麦のことです。
蕎麦の食べ方
・ざる蕎麦
具材を特段つけず麺つゆで食べる蕎麦であり、最もスタンダードな形態。もともと竹ざるで食べることがスタートにあり、それが名前の由来となっています。
・盛り蕎麦
盛り蕎麦はざる蕎麦と同じ意味で使われる場合もあります。ざる蕎麦と盛り蕎麦を両方出しているお店の場合、海苔がかかっているものが盛り蕎麦と呼ばれます。
・かけ蕎麦
かけ蕎麦は蕎麦を熱いつゆで食べるものをいいます。
名店の系譜・のれん
そばには御三家と呼ばれる系統があるのをご存知でしょうか?江戸時代に誕生した「藪」「更科」「砂場」からなる御三家は、どの系統も1軒のそば屋から始まっています。よく似た屋号の店があちこちにあるのは、その1軒から兄弟や親戚、弟子などが暖簾分けをして広がっていったためなんです。
下町の粋なそば「藪」
藪系は、幕末の頃、東京・根津の団子坂にあった「蔦屋」が発祥と伝えられています。「蔦屋」は藪に囲まれていたことから、通称「藪そば」とよばれていました。それがいつしか店名になったのです。
下町生まれの藪そばの特徴は、そばの実の外側にある甘皮を適度に挽き込むこと。そのため味も濃く、それに合わせてつゆも濃い目の味付けになるんだとか。辛さは御三家随一とも言われています。
藪系では海老のかき揚げを名物とする店が多く、かつては江戸前の芝海老が使われていたそう。
長野がルーツ「更科」
更科のルーツは信州の布屋です。そば打ちの腕前に長けていた信州出身の堀井清右衛門は、領主・保科家にそば屋への転身を勧められます。そこで彼が江戸に「信州更科蕎麦所 布屋太兵衛」の看板を掲げたことが、更科の始まりとされています。更科の文字は、そばの産地信州更級の「更」と領主であった保科家の「科」を合わせたことに由来しているそう。四代目の時に将軍御用達となったことから別名「御前そば」とも呼ばれています。
更科そばの特徴は、そばの実の中心の粉を使用すること。そのため茹で上がったそばは純白の輝きを放ち、透明感があります。繊細な喉ごしを楽しむため、つゆは淡く甘めの味付けです。
大阪生まれの江戸育ち「砂場」
砂場系の発祥は大阪です。「砂場」というのは通称で、大阪城築城の際の資材置き場であった砂場の近くに店があったことに由来すると伝えられています。大阪の砂場の正確な創立年代はわかっておらず、諸説ありますが、1730年に出版された文献に「和泉屋」という麺屋の店頭風景が掲載されており、遅くともこの年までに成立していると考えられています。
砂場そばの特徴は甘くて濃いめのそばつゆです。元々出前が主であった砂場そばは、運んでいる間に水分が引いていってしまします。そこで考案されたのが甘めのつゆでした。極力辛みを抑えたつゆであれば、水気の少ないそばを浸して食べても美味しく味わうことができます。こうした先人の知恵が現在まで受け継がれているんですね。砂場系はお店によって個性を出しているので、さまざまな違いを楽しめますよ。
蕎麦の効能
蕎麦に含まれる栄養素には「ビタミンB1」、「ビタミンB2」、「ミネラル」、「タンパク質」、「食物繊維」があります。それぞれに効果があり、日本人には必要不可欠なものとなっています。
「ビタミンB1」と「ビタミンB2」は疲労回復に最も優れていて蕎麦にはこれが豊富に含まれています。茹で汁にも栄養素が溶け出していますので、捨ててしまうのはもったいないですよ。
蕎麦に含まれる「ミネラル」はカリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛のこと。女性や忙しい人に不足しがちなのが鉄が摂取できるのは嬉しいですね。「タンパク質」をつくってくれるのが亜鉛です。美肌や健康的な髪の毛を維持します。
「食物繊維」も豊富に含まれています。便秘予防につながったり肥満予防につながったり糖尿病の予防にも最適です。
「ルチン」に注目
蕎麦の粉に含まれるルチンは抗酸化作用のあるポリフェノールとよく似た働きを持っています。毛細血管を強くしたり、血圧を下げる効果だったり、血液の流れを改善することから肩こりや冷え性の方に最もオススメです。また、しみやしわやそばかすといった見た目の変化の予防にも役立ち、老化の原因になる活性酸素を取り除く働きもあり美容効果も優れています。
ここで注意しておきたいのが、ルチンは水溶性であって水に溶け出す性質があること。ですから蕎麦を茹でると茹で汁に栄養素が移りますので最後の締めに茹で汁を飲む事を忘れずに。
〆の蕎麦は健康に良い?
お酒を飲むと自然と最後に欲しくなるのは締めの麺類です。どうせ選ぶなら、健康に良いとされているお蕎麦が最適です。アルコールの飲み過ぎで肝硬変になるという話を耳にしたことはないでしょうか?肝硬変の前兆でもある脂肪肝は肝臓に中性脂肪が溜まる状態ですが、お酒を過剰摂取するとそのような状態になることがあります。これに効くのがそばの栄養素の一つである「コリン」です、肝臓の機能を強化し、脂肪肝になるのを防ぐ働きがあります。また自律神経の副交感神経を活発にする働きもあります。寝ている間に活発に動く副交感神経を上手く利用していつまでも健康な体を維持したいですね。
ダイエットにも効果的
炭水化物の中でも太りにくいと言われている「蕎麦」。そのカロリーは100gあたり274カロリーで、かけそばの一食でだいたい350カロリーです。白米やうどん、パスタと比べてGI値が低く血糖値の上がり方が緩やかなことから、脂肪として貯蓄されにくい糖質の一つとして人気のメニューです。
ダイエット中や筋トレ中にも安心していただける嬉しい食べ物なんですよ。
蕎麦のマナー
最初の一口は、つゆをつけない
出典:hirox2.com
蕎麦本来の味を楽しむためにも、まず最初の一口はつゆにつけずに食べることをお勧めします。最初からつゆにつけてしまうと、つゆの絡みや濃さで蕎麦本来の風味が損なわれてしまうからです。出来ればそのまま何をつけずに食べるのが一番風味を感じられますが、慣れないうちは味気なく感じてしまうかもしれません。そんな時には、わさびや塩をつけていただきましょう。どちらも蕎麦の旨味や風味を引き出すスパイスとして活躍してくれます。
通ぶっていると思われるかもしれませんが、実はこれが本当に美味しい食べ方なんですよ。
つゆをつけるのは3分の1から3分の2まで
つゆをつけずに蕎麦本来の風味を味わったら、いつも通りつゆと一緒に楽しみましょう。とはいえ、蕎麦を全部つゆにたっぷりと浸していただくのは、あまりオススメできません。例えば江戸前鮨も、ネタやシャリに醤油をたっぷりとつけていると、せっかくのお寿司も台無しに。蕎麦も同様で、江戸前の蕎麦つゆはもともと辛口で濃いめに作られているため、たっぷりと浸してしまってはとても塩辛くなってしまうのです。
蕎麦の風味を楽しみながら、なおかつこだわりのつゆの味もしっかりと堪能するためには、麺の3分の1〜2程度をつけるのがベスト。一度に多くの本数を取ろうとせず、少量を箸で掴んで先端だけを軽くつけるイメージです。こうすると、最初に口に入るのはつゆが付いていないお蕎麦。蕎麦の風味を楽しんだ後に、つゆが絡んだ濃厚なお蕎麦を味わうことができます。
わさびは蕎麦に直接つける
蕎麦の旨味と風味を引き出すために欠かせない薬味が「わさび」。たいていの蕎麦メニューには必ずついてきますよね。このわさび、つゆに溶いて食べてはいませんか?わさびはつゆに溶かず、蕎麦に直接つけていただくのが粋な食べ方です。例えば高級和食店で刺身が出てきたら、わさびは醤油にとかずに刺身に直接つけますよね?醤油やつゆにわさびを溶く行為は、つゆの味を変えてしまうのでお店の方にも失礼な行為となってしまうんです。好みの量を蕎麦に直接つけ、つゆに溶けないよう注意しながらいただいてくださいね。
音を立ててすする
海外の方に驚かれる日本食のマナーの一つが、蕎麦の食べ方です。海外では食事中に音を立てるのはタブーですよね。しかし、蕎麦はあえて音をたててすすりながら食べるのが粋な食べ方です。逆に言えば、ゆっくりと口に入れて、すすらないよう蕎麦を噛み切る方がマナー違反。しっかりと勢いよくすすることで、口いっぱいに蕎麦の風味が広がるのです。もちろん、つゆが飛ばないように配慮は必要。そのためにも一口は大きくとりすぎず、程よい具合に調節してくださいね。
蕎麦をもっと美味しく!
これまで、蕎麦にまつわる様々な知識をご紹介しました。普段何気なく食べている蕎麦ですが、その裏側には長い歴史や健康面でのメリット、食べ方のマナーなどが隠されているんですね。美味しいお蕎麦をより一層美味しくいただくために、ぜひこれらの知識を参考にしてみてくださいね。
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この記事のライター
都内在住。コーヒーとサンドイッチが大好きで1日1カフェ生活を送っている。夏の定番はレモネード、冬の定番はホットチョコレート。オシャレやヘルシーという言葉に敏感なミーハー系女子。