珠玉のピアノトリオ(三重奏曲)のおすすめ名曲7選
今回はピアノトリオの名曲をご紹介します。ピアノ三重奏曲(トリオ)とは、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの三つの楽器による編成で成り立つ楽曲のことです。今回はそんなピアノトリオから、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、ブラームスなどの有名どころを集め、解説をしていきます。
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アイキャッチ画像出典:chiaki-violin.com
ピアノ三重奏
編成上の困難を持ち合わせるピアノ三重奏
ピアノ三重奏は、ヴィオリン1、チェロ1、ピアノ1の三つの楽器からなる室内楽曲です。対照的なピアノと弦楽器の音色の調和、3つの楽器のバランス、唯一低い音をだすチェロをどのように際立たせるかが非常に難しく、作曲家としては悩ましい編成なのです。
個々の楽器の幅を十分に堪能できる編成
その編成上の困難を乗り越えるために、ピアノトリオでは各楽器を広い音域において用いることが多いようです。そのために他の編成では味わうことのできないような個々の楽器の幅を一度に聞くことができ、豊かなテクスチュアを聞くことができます。
メンデルスゾーン ピアノトリオ
ピアノトリオで最も有名な曲といえば、このメンデルスゾーンのピアノトリオでしょうか。メンデルスゾーンのピアノトリオで知られているのは2曲ありますが、こちらは2番目の曲です。一曲目はメンデルスゾーンが11才と若い時に作曲されたものなので、作品番号がつけられておらず、この2番目のきょくが、メンデルスゾーンのピアノトリオ第一番として名前がつけられています。シューマンに「ベートーヴェン以来、最も偉大なピアノ三重奏曲」と言わせた名曲であり、メンデルスゾーンを「19世紀のモーツァルト、最も輝かしい音楽家」だと称えました。
構成は四楽章からなっており、第1楽章 アレグロ・モルト・アジタートニ短調、4分の3拍子、第2楽章 アンダンテ・コン・モート・トランクィロ変ロ長調、4分の4拍子、第3楽章 スケルツォ.レッジェーロ・エ・ヴィヴァーチェ、ニ長調、8分の6拍子、第4楽章 フィナーレ.アレグロ・アッサイ・アパッショナート、ニ短調~ニ長調、4分の4拍子と続いていきます。
ヴァイオリンをフルートに変えたフルートトリオ編成もあります。フルートの艶やかな音色がまたメンデルスゾーンの作風に合っています。
チャイコフスキー ピアノトリオ
チャイコフスキーのピアノトリオは1881年から1882年にかけて作曲された曲です。旧友ニコライ・ルビンシュタインへの追悼のために作られた音楽であるため、一貫として悲しく、荘厳な曲調です。副題には『偉大な芸術家の思い出に』とつけられています。特にピアノに高度な技術が要される曲であり、50分という長さに多くの表現が散りばめられています。
二楽章からなります。二楽章が変奏曲となっていて30分とかなり長い楽章になっています。第一楽章「悲歌的小品」、第二楽章「主題と変奏、最終変奏とコーダ」からなっています。第二楽章は12の変奏曲になっています。
ブラームス ピアノトリオ
ブラームスのピアノトリオは1854年に作曲された曲で、まだブラームスが弱冠20歳の時に作った曲です。初版は、若々しく情熱的な曲でしたが、その後その情熱性に弱点を感じたブラームス自身が改定をしています。改訂版は1891年に出版されています。全四楽章からなっていて、改訂版では、主題の書き換えと第三楽章以外の短縮が施されています。第一楽章Allegro con brio、第二楽章Scherzo、第三楽章Adagio、第四楽章Allegroと続きます。第一楽章の主題はピアノソロから始まり、ピアノとチェロにより美しくかつ爽やかに演奏されます。第二楽章はおどけるようなスケルツォ、第三楽章は悲哀を持ちながらもどことなく明るさが感じられるようにゆったりと演奏されます。第四楽章は一転、不安定な進行の元、切迫した勢いを持ちながら進んでいきます。
ラヴェル ピアノトリオ
ラヴェルのピアノトリオは1915年に作曲されたものです。第一次世界大戦中に書かれたものであり、徴兵に応じるために、「5ヶ月かかる仕事を5週間でやり遂げた」と語っています。ラヴェルのピアノトリオでは特に3つの楽器の音域が幅広く使われており、そのために高い技術を要しています。また、この曲はバスク地方の音楽に大きく影響を受けています。この時期にはこの曲と並行して、バスクの主題に基づくピアノ協奏曲『サスピアク=バット』の作曲もしていました。
この曲は4つの楽章からなっており、第1楽章Modéré、第2楽章Pantoum, Assez vif、第3楽章Passacaille, Très large、第4楽章Final, Animéと続きます。第一楽章はバスクの舞曲であるソルツィーコの描写がラヴェル自身の個性と調和しています。第二楽章はピアノの印象的な主題から始まり、おどけるように曲が続きます。第三楽章はバロック音楽風に、第四楽章は変拍子が用いられ華麗なコーダで終わりを告げます。
ショパン ピアノトリオ
ショパンのピアノ三重奏曲ト短調は、1828年に作曲された、ショパンの唯一のピアノトリオです。ショパンの室内楽曲はチェロに重みが置かれるのが特徴的であり、この曲もそのような特徴を持つ曲の一つになっています。重厚で初期ロマン派らしい曲になっています。全四楽章からなっていて、第一楽章Allegro con fuoco、第二楽章Scherzo-Vivace、第三楽章Adagio Sostenuto、第四楽章Allegrettoと続いていきます。個人的にはこの曲はピアノトリオとしては無理なくバランスが取れていて聴きやすい曲なのではないかと思います。ただし、その点、面白みも薄いのかもしれません。ショパンのピアノトリオはそのために演奏機会が少ないのでしょうか。
フォーレ ピアノトリオ
フォーレによるピアノ三重奏曲は、1923年に作曲されたものです。フォーレの最晩年の曲です。この曲を作曲した時期は、彼は創作力がかなり減退していました。多くの人に「曲を書く気力が生じないこと」を相談していたようです。そんな中、やっとの思いで完成させたのがこの曲。フォーレは当時78歳でした。初演はパリ音楽院を卒業したばかりの若い演奏家たちによってなされ、フォーレは自分の音楽が若い音楽家たちに理解されたのを相当に喜んだようです。全三楽章からなり、演奏時間は約20分とそれほど長くはありません。始めの二楽章は比較的穏やかで爽やかに演奏され、活気にあふれたスケルツォの三楽章で終結します。没年の三年のうちに作曲されたのはこのピアノ三重奏と未完成の弦楽四重奏だけとなっています。
ドヴォルザーク ピアノトリオ
ドヴォルザークはピアノ三重奏曲を全てで4曲完成させており、この4番がその中でも最も有名な一曲となっています。このピアノ三重奏曲は1890年に完成された曲で、副題には『ドゥムキー』とつけられています。『ドゥムキー』とは、ウクライナ民謡の形式の一つのことで、「瞑想」を意味します。ただし、ウクライナ民謡の「ドゥムカ」の形式を踏んでいないことから、単純に「瞑想」の連想による曲であるとの解釈もあります。
6つの楽章からなる作品で、
Lento maestoso - Allegro quasi doppio movimento - Lento - Allegro (ホ短調)
Poco adagio - Vivace non troppo - Poco adagio - Vivace (嬰ヘ短調)
Andante - Vivace non troppo - Andante (イ長調~イ短調~イ長調)
Andante moderato (Quasi tempo di Marcia) - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegretto scherzando - Meno mosso - Allegro - Meno mosso - Moderato (ニ短調)
Allegro - Meno mosso - In tempo -Meno mosso - Piu mosso (変ホ長調)
Lento maestoso - Vivace - Lento - Vivace (ハ短調~ハ長調)
と続いていきます。
各楽章にはあまり一貫性が見られず、どれも自由な形式で成り立っています。どちらかというと組曲のような曲です。しかしいかにもドヴォルザークらしい民族的な旋律が散りばめられており、スラブ的な哀愁を漂わせています。
各楽器の個性を生かしきった名曲たち
いかがでしたでしょうか。今回はピアノトリオの名曲をご紹介しました。ピアノトリオは編成が小さい楽曲ですので、バランスのとりづらい楽曲であるというのも有名ですが、各楽器の個性を十分に堪能することができます。是非この機会にピアノトリオの魅力を知って見てはいかがでしょうか。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。