英文学専攻学生が選ぶ！イギリス文学の有名作家おすすめ19選

イギリス文学って？

イギリス文学は英語の祖先である古英語が成立した10世紀頃に始まります。当時書かれたテクストとして現存するのは聖書や叙事詩が主なものです。イングランドにノルマン人が侵略し11世紀後半にノルマン朝が成立したことをきっかけに文法が簡易化され、中英語へと発展しました。大陸からたくさんの語彙を輸入した英語は表現の幅を広げていきます。この時期に英語詩が多く誕生しました。イギリスにルネサンスが到来するとシェイクスピアを筆頭に戯曲が盛んになります。小説が誕生するのは18世紀になってからのことなんです。新古典主義、ロマン主義、モダニズムなど時代の変遷に伴い作風も大きく変わっていきます。幅広いジャンルの中から是非お気に入りの作品を見つけてみてください！

ジェフリー・チョーサー

来歴

ジェフリー・チョーサーは1343年頃ロンドンの裕福な商人家庭に生まれ、側近として当時の国王に仕えました。イタリアを訪問した際に知り合った人文主義の詩人ペトラルカと親交を深め、彼の影響を受けてソネット（14行詩）をイギリス文学に取り入れました。チョーサーは「英詩の父」と評されるほどの立派な詩人になりました。たくさんの詩を書いたものの、チョーサーの作品として一般的に知られているのは下記で詳しく説明する『カンタベリー物語』だけなのです。

カンタベリー物語

イタリアの詩人ボッカチオが書いた『デカメロン』の影響を受けて書いた未完の作品で、様々なジャンルの物語によって構成されています。（こういった作品構造は枠物語と呼ばれています。）チョーサーがカンタベリー大聖堂へ巡礼する途中に宿泊した宿に泊まる人が順番に話していくスタイルをとっています。つまり、ある話は騎士が語り、ある話は商人が語る、といったような具合です。この作品が有名なのは当時世俗的言語として認識され、文学を書く言語とは考えられていなかった「中英語」で作品を書いた点です。また、様々な語り手の特徴に合わせて修辞形式や文体を変化させている点が評価されています。

しかし、この作品は話の内容を楽しむというよりも、チョーサーが現在話されている英語の祖先である「中英語」の言語価値を文学によってあげたことを感じてもらうものです。従って、翻訳本を読むと言うよりは言語や詩に興味のある人に限り、原作を読むことをおすすめします。興味ない方は、この作品のおかげでシェイクスピアをはじめとしたイギリス文学が生まれたんだなと知っていただければ大丈夫です！

ウィリアム・シェイクスピア

来歴

1564年に生まれたイギリスの世界的に有名な劇作家、詩人のシェイクスピアは数多くのソネット(14行詩)と37編の戯曲を書きました。有名な四大悲劇の他に、『ロミオとジュリエット』や歴代王を主人公においた作品も有名です。また、英国ルネッサンス文学の最高峰と称され、彼の作った言い回しは現在まで親しまれています。たとえば、"Love is blind"(恋は盲目)は『ヴェニスの商人』に書かれた台詞であり、今でも有名です。他にも、現在では一般的な言葉になっている"hurry"(急ぎ)や"bloody"(血まみれの)はシェイクスピアが作った言葉です。

四大悲劇

外見と内容の食い違いに起因した人間の根本問題をテーマとした作品で、真実を得るために生じてしまった自己犠牲が描かれている点が四大悲劇の共通点です。ここでは、発表年代順に紹介します。

①『ハムレット』
　『デンマーク人の事績』を原話として書かれた四大悲劇の最初の作品です。叔父が父先王を毒殺して残された母を王妃としたことを知ったデンマーク王子ハムレットが叔父に復習を誓います。先王が亡霊として現れるオカルト的要素があり、また狂気を演じるハムレットと他の登場人物とのかみ合っていない会話はユーモア溢れるポイントがあります。有名な独白箇所以外にも楽しめるポイントがたくさん詰まった作品です。

②『オセロ』
　ムーア人の将軍オセロの部下イヤゴーは望んでいた副官の地位に就けなかったことを根に持ち、オセロと副官に任命されたキャシオを貶めようと策略を行います。

③『リア王』
　ブリテンの老王リアが自身の三人娘のうち腹黒い姉二人にだまされ、荒野をさまようことになってしまいます。財産欲しさにリアに媚びを売っていた姉二人に対し、非常に淡泊だった末娘コーディリアは、リアにこれを原因として勘当されてしまっていたが、リアの危機を救おうと必死に努力するのです。

④『マクベス』
　『スコットランド年代記』をベースに書かれた四大悲劇の中で最も短い作品です。将軍マクベスが主君のダンカン王を殺して王位を奪ってしまうが、自身の葛藤や周囲からの目に耐えられ無くなってしまうのです。物語の中核に存在する三人の魔女が世界観を作り出しているのにも注目してみてください。

夏の夜の夢

シェイクスピアの残した有名な喜劇の一つです。アテネ郊外の森に住む身分の異なった四人の食い違った恋愛関係が妖精パックの惚れ薬によりさらにもつれ、貴族階級、職人階級、妖精の三つの世界を結びつけながら、一つの劇世界を作り上げる物語です。

ジョン・ミルトン

来歴

ミルトンは1608年にロンドンのピューリタン一家に生まれ、当時シェイクスピアを筆頭に生じたイギリスのルネサンスとプロテスタントの勢力増大に影響をうけ、ピューリタン文学の確立に貢献しました。1642年から生じたイギリスの宗教戦争、ピューリタン革命ではイギリス国教会を非難し、独立派のメンバーとして活躍しました。革命が成功してチャールズ1世が処刑されると、ミルトンは共和政を支える中心人物として激務に追われ、両目が失明するまでになってしまいました。イギリスが王政復古した後は政治から退き、詩人活動に没頭し、著作『失楽園』を書き上げました。宗教と政治の癒着を非難していたミルトンは徹底した宗教改革や共和政の必要性を作品を通して最期まで主張しています。

失楽園

イギリス文学史上最大の叙事詩と呼ばれている作品で、ダンテの『神曲』とともにキリスト教文学の有名作品です。物語の冒頭は神への反乱に失敗したサタン達が地獄に落とされ、立ち直りを試みるところから始まります。そして、旧約聖書の中で有名なアダムとイブの楽園追放が描かれているため創世記に目を通してから読むことをおすすめします！発表年度はピューリタン革命が終結した7年後の1667年であり、当時のイギリスにおける宗教的背景を反映させています。

ダニエル・デフォー

来歴

ダニエル・デフォーはジャーナリスト出身でイギリス小説の先駆者として活躍しました。記者として培った事件を詳細に描写する技術を小説に持ち込み、読者がフィクションであるのかどうか判断ができないほどの精密な作品を書いています。教育が義務化されていなかった当時、かろうじて読み書きのできるほどで教養が不十分な人々がたくさんいた背景もあってのことと言われています。巡礼者、騎士、王族などといった特別な人に焦点を当てるのではなく、どこにでもいそうな人の日常を広げた物語が17世紀におけるイギリス小説の特色です。

ロビンソン・クルーソー

『ロビンソン・クルーソー』は無人島生活体験を持つ航海士の実話や多数の航海誌を元にして作られた「イギリス最初の小説」とも言われる作品です。表題にもなっている主人公の誕生から、彼の経験する無人島生活や航海を、あたかもロビンソン・クルーソーが記したかのようにして書かれています。児童文学として現在は一度は耳にしたことがある作品だとは思いますが、元来大人向けに書かれた作品なので、もう一度手に取ってみて、冒険心をくすぐられてみてはいかがですか？

ジョナサン・スウィフト

来歴

ジョナサン・スウィフトは作家活動をする以前は、18世紀イギリスの二大政党の一つトーリー党の政治活動に参加していました。しかし、トーリー政権の崩壊を機に、故郷のアイルランドへ戻りアイルランドの政治主張を本国イングランドに届けようと執筆活動を始めました。当時のアイルランドはイギリスの支配下にあり、厳しい生活を強いられていたため、スウィフトの存在はアイルランド紙幣に描かれるほど大きなものでした。そんな彼の政治経験が最も生かされている作品が次に紹介する『ガリバー旅行記』です。

ガリバー旅行記

日本では児童文学として有名な『ガリバー旅行記』ですが、子供版に書き換えられた多くの作品では含まれていない物語があります。原作には、小人の国と巨人の国の話以外に、空飛ぶ島と馬の国の話を合わせた四カ所の旅行記で構成されているのです。小説をジャンル分けすると、必ず風刺小説と言われる本作ですが、この後半二つの物語を読まないと、風刺要素がはっきりとは伝わらないかもしれません。イギリスの政治体制や当時のヨーロッパ国際関係、急速な近代科学技術の発展など様々な社会問題を背景にしている作品です。是非、この作品のどこが風刺になっているのか探してみてください！

ジェーン・オースティン

来歴

ジェーン・オースティンは1775年に生まれ、ヴィクトリア朝直前期に活躍した女性作家です。幼少期に小説のパロディーを書いたことがきっかけで創作活動を始めました。自由間接話法という、三人称を用いて登場人物の主観や独白を描く方法を多くの作品で用いられている点が当時の作品としては珍しい作風です。

高慢と偏見

ジェーン・オースティンの代表作『高慢と偏見』ではメイドと主といったほどの激しい身分差結婚を取り扱かってはいないものの、同じ階級の中でも大地主と商人の親戚を持つ家庭という身分差が十分にあります。田舎町に引っ越してきた資産家とその友人ダーシーがそこに住む五人姉妹と出会い、お互いがもつ偏見によって関係性がもつれていってしまう恋愛物語です。登場人物の個性を丁寧に描写し、三人称小説の要素を取り入れることでオースティンの皮肉が現れています。また、本作はオースティンの実体験に基づいて書いている作品と言われています。

ウィリアム・メイクピース・サッカレー

来歴

ウィリアム・メクピース・サッカレーはヴィクトリア朝に活躍した風刺の要素が強い作家です。イギリスの週刊風刺漫画雑誌「パンチ」に評論や小説などを書いた経験も持っています。彼は上層中流階級の出身であり、自らの階級に対する俗物主義や人間性の腐敗について痛烈に作品で批判しています。

虚栄の市

『虚栄の市』はイギリス1文学を代表する風刺小説として非常に有名な作品です。興味深い点はそのサブタイトルで“A novel without a hero” (主人公のいない小説)と書かれています。語り手が存在する三人称小説ではありますが、ベッキーという孤児故にお金に貪欲になり、お金を手に入れるためには手段を選ばない狡猾な女性が主人公のように思えます。しかし、主人公、ヒーローと聞いて思い浮かべるイメージとは違うようにも思えてきます。

ベッキーがお金持ちで社会的地位を持っている男性と結婚するために悪知恵を働かせる前半部分から始まります。家庭教師の身分でありながら、自慢の美貌と悪知恵を働かせて努力します。一方、学友で良家のお嬢様エミリーは結婚する直前に父親の事業が破産してしまい、婚約者とうまくいかなくなってしまいます。しかし世の中はナポレオンの時代。ナポレオン戦争に男性は召集されてしまいます…。

BBCでテレビドラマ化された作品はストーリーと時系列が異なっている部分がありながら原作に忠実に映像化されています。2004年には日本語版タイトル『悪女』としてアメリカで映画が公開されています。日本語の文庫版では6巻もある長い作品のため、映画で作品に触れることをオススメします！

チャールズ・ディケンズ

来歴

チャールズ・ディケンズはサッカレーと並んで活躍したヴィクトリア朝の作家ですが、チャールズとは異なり下層中流階級に焦点を当てた物語を多く書いています。最初から本に挿絵がついており、絵による登場人物のイメージを読者に植えつけています。また、登場人物の階級によって発音や話し方、使用単語を使い分けて書いている点も楽しめる作品が多くあります。また、作品の幅が広いためディケンズの作品の中で一つは必ずお気に入りの作品が見つかると思います！

オリバー・ツイスト

『オリバー・ツイスト』は当時イギリスで流行したニューゲート小説（ニューゲート監獄の発行した犯罪の記録を元に書かれた小説）の影響を強く受けた小説です。救貧院で育った孤児オリバーがそこを離れ、無意識に盗みに荷担してしまいます。ディケンズの得意とする下層階級の物語であるため、言葉遣いの書き分けや当時下層階級の中で反発を招いた新救貧法に対する批判を描いています。また、本作に登場するユダヤ人は悪人として描かれているが、読者から非難を受けて後の小説ではユダヤ人を善人として登場させています。どの小説にでているかも含めて、是非読んでみてください。

クリスマス・キャロル

ディズニーで映画化されたこともあって、『クリスマス・キャロル』は日本人が一番聞き覚えのあるディケンズの作品ではないでしょうか？日本語だと200ページ弱の中編小説で、家族中心的なクリスマスの伝統を築いた作品です。

クリスマスイブに情のかけらもない主人公スクルージのもとに、7年前に亡くなった共同経営者のマーレイが亡霊となって現れます。そして、マーレイは物欲にとりつかれた人間の悲惨な死後の運命をスクルージに警告します。スクルージの人生を変えるために三人の幽霊が現れ、それぞれが過去、現在、未来の様子を見せてくれます。幽霊と共に目にした光景によってスクルージの心は変わっていくのでしょうか？

シャーロット・ブロンテ

来歴

シャーロット・ブロンテは1816年に生まれたブロンテ三姉妹の長女で、幼少期から様々な物語を書いていました。「女性作家の作品」として偏見をもって評価されることを嫌い、性別の特定できないペンネームCurrer Bellと名乗って執筆していました。住み込み家庭教師の経験があり、これは代表作『ジェーン・エア』に生かされています。また、当時の有名な作家であるサッカレーやエリザベス・ぎゃすけるなどとも交流を持ったことで有名です。

ジェーン・エア

タイトルにもなっている孤児のジェーンは住み込みの家庭教師となり、雇い主であるロチェスターと恋に落ちます。しかし、結婚当日になって二人の結婚を阻む大きな問題が明らかになってしまいます。キリスト教の教えが抱える重婚の問題や二人の純粋な愛が赤裸々に描かれている物語です。

館で聞こえる精神病の女性の叫び声や、離ればなれになった二人の間で通じ合うメッセージはゴシック小説の要素が含まれていると言われますが、やはり王道の恋愛小説として非常に評価されています。また、従来は美男美女が結ばれる恋愛小説が流行していましたが、主人公のジェーンは決して美女ではなくロチェスターを必ず落としてみせるという強い心意気がある点で話題性を呼びました。

エミリー・ブロンテ

来歴

1818年に生まれたブロンテ三姉妹の二番目で、生涯に出版した長編小説は後に紹介する『嵐が丘』の一作だけです。シャーロットと同じく幼い頃から詩を自分で書いており、三姉妹で詩集を自費出版したが、評価されずに終わってしまいました。姉のシャーロットが発表した『ジェーン・エア』は出版後すぐに評価されたものの、エミリーの書いた『嵐が丘』は発表当初に評価されず死後になってようやく評価されました。

嵐が丘

『嵐が丘』はアーンショウ家とリントン家の三世代にわたる壮大な長編恋愛小説です。嵐が丘と呼ばれる家を訪ねた紳士ロックウッドが悪天候のために泊まることになってしまいます。夜ロックウッドが寝ているとキャサリンの名が窓に現れ、驚いて叫び声を上げたロックウッドの元にヒースクリフがやってきます。昼間は愛想の悪い様子しか見せていなかったヒースクリフが突然冷静さを失い、吹雪の中外に飛び出して行ってしまいます。そこで事のいきさつを知る女中エレンからロックウッドはヒースクリフの長い昔話を聞くことになります。作中の多くはロックウッドが一人称でナレーションをつとめ、時間軸が大きく動く複雑な作品です。世界的に代表的な作品で是非おすすめしたいですが、読書好きではないと手が出しにくいと思います。映画化もされているため、読書が苦手な方はそちらから挑戦してみるのもいいかもしれません！

ジョージ・エリオット

来歴

本名はメアリー・アン・エヴァンズですが、女流作家の評価が低かった当時の風潮を嫌い、完全な男性の名前ジョージ・エリオットをペンネームとして用いました。キリスト教の影響が強かった当時はタブーとされていた事実婚を二十年以上続けるなど、私生活において大胆な生活を送っていました。これに影響されたのか、未婚の母、赤子殺しなど大胆なテーマを扱った小説を書いています。

サイラス・マーナー

『サイラス・マーナー』はイングランドの機織り職人サイラス・マーナーを主人公とする非常に素朴な小説です。周りの人に裏切られたことを機にお金しか信じることのできなくなった彼がダンスタンにお金を奪われてしまった事をきっかけとして絶望を味わいます。ふとしたことでエピーという捨て子を育てることとなり、彼の生活も明るくなっていきます。しかし、ある日エピーの出自が明らかになってしまい、二人の中が引き裂かれそうになってしまいます…。

細かく丁寧な状況描写により、写実的でないもの含めて現実のものに感じさせるように書かれています。フランス文学で有名なヴィクトール・ユーゴーの『レ・ミゼラブル』に似たものを感じさせます。

ルイス・キャロル

来歴

本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンという1832年に生まれたイギリス作家で、代表作『不思議の国のアリス』以外にも発表していた詩や物語も成功を収めていました。ルイス・キャロルは写真の趣味を持っており、少女にコスプレをさせたりヌードを撮ったりすることもあり、幼女好きとの噂があります。作家として一躍有名になったキャロルですが、彼の元々の職業は数学教授でドジソンの名義で研究書籍も残しています。

不思議の国のアリス

『不思議の国のアリス』は幼い女の子アリスが懐中時計を片手に走る白ウサギを追いかけたことがきっかけで、不思議の国に迷い込んでしまう物語です。ディズニーでアニメーション化されてることもあり、概要を知っている方も多いと思います。文学的な観点でこの作品をみると、英文学史に与えた影響が大きい作品なのです。従来の児童文学は教訓的な要素を多く含んだ作品が多く、この典型例がグリム童話やイソップ物語です。例えば『赤ずきん』では知らない人の話を信用してはならないなどという教訓を示しています。しかし、子供が作品を楽しむことだけを意識して書かれた『アリス』にはたくさんの言葉遊びやパロディが詰まっており、新しい児童文学になっています。そして、現在に至るまで『アリス』のパロディは多く書かれており、とどまることを知りません。子供時代に一度は触れた作品でもう一度不思議の国を冒険しませんか？

アーサー・コナン・ドイル

来歴

コナン・ドイルは1859年にスコットランドのエディンバラに生まれ、大学卒業後開業医となるが暇をもてあまし、副業として執筆活動を始めました。シャーロック・ホームズシリーズの第一作である『緋色の研究』を発表し、複数の作品で成功を収めると執筆活動に専念しました。ドイルが雑誌に読み切りの短編小説の連載を始めると、大衆小説として人気を博しました。ホームズが作中で披露する推理や膨大な知識は庶民の知的好奇心をくすぐるものだったということもその理由の一つです。シャーロック・ホームズシリーズで著名な作家ですが、シリーズ終了後もＳＦ作品などを執筆しています。しかし、現在ではほとんど読まれていないというのが現状です。

シャーロック・ホームズ

シャーロック・ホームズ

コナン・ドイルが手がけた『シャーロック・ホームズ』シリーズはその名を知らない人はいないというくらい有名ですね。並外れた推理力を持つホームズが難事件をロンドン警察に協力する形で解決するストーリーです。

短編小説が多く非常に読みやすいこのシリーズは連載されていた物語でした。日本の明治文学にも新聞連載で著名になった作品がありますが、同じように中流階級中心に親しまれていました。当時はイギリスで初等教育が義務化され、識字率が上昇していた時代です。難すぎず、教養も高めることのできる推理小説は大衆小説としての地位を確立していきました。また、シリーズで使われた多くのトリックは現代推理小説トリックの基本となっているのです！

2010年からイギリスBBCで現代版にリメイクされた『シャーロック』が始まりました。原作の良さを残している面白い作品です！

Ｈ．Ｇ．ウェルズ

来歴

H.G.ウェルズは「SFの父」と称されるほど、様々なSF小説を執筆しその多くが現代まで読み継がれています。しかし、SF以外に多岐にわたるジャンルの作品を執筆し、当時の社会から着想を得た物語を書いています。SF以外の小説として有名な『アン・ヴェロニカの冒険』はエドワード時代にある世間の女性像に反した作品でした。また、SF小説の代表作の一つ『宇宙戦争』では大英帝国の凋落を予言するかのようなプロットであると同時に、労働者階級の粘り強さが描かれている読みやすい作品です。

タイムマシン

「時間旅行者」という科学者が四次元を移動できるタイムマシンを作成し、紀元802701年の未来に旅行します。そこで彼が出会ったのはその世界に存在する唯一の小柄な人種イーロイでした。一見平和な世界に思ったものの、実はイーロイは貴族階級が知性を失った形であり、虐げられていた労働者階級は夜にイーロイを襲う人食い人種モーロックへと進化してしまっていました。時間旅行者がその世界で何を目にし、何を考えたのでしょうか？そして彼は現代に戻ってくるのでしょうか？

Ｅ．Ｍ．フォースター

来歴

1879年にロンドンで生まれたE.M.フォースターはケンブリッジ大学で出会った学友と共にブルームズベリー・グループと呼ばれるイギリス芸術家および学者を中心とした文学者団体に参加していました。大学卒業後に、地中海世界への憧れからイタリアやギリシャを旅し、後にはエジプトやインド、中東も訪れました。こうした彼の旅行経験は作品制作に大きく影響しており、『眺めのいい部屋』はイタリアを、『インドへの道』はインドを舞台におきつつ、イギリスとの比較や関係性が描かれています。また、フォースターは同性愛者であり、これをテーマにおいた『モーリス』は生前に出版されませんでしたが、互いに惹かれ合っている男性が葛藤する姿に焦点を当てた作品です。

ハワーズ・エンド

『ハワーズ・エンド』はフォースターの代表作として知られている作品です。イギリス社会の現状を描く中で、人間関係と価値観の対立が表現されています。エピグラフ（書物の最初に記す言葉）はonly connectで、人間の持つつながりの儚さを暗示しています。

物語の舞台は20世紀初頭のイギリス。実利主義のウィルコックス家と知的、文化的価値観を持つシュレーゲル姉妹がハワーズ・エンドという屋敷を通して交流を持つようになります。価値観の違う両家の間に成立した結婚や、思いもよらない遺産譲渡がもたらす亀裂、さらにもう一つの家庭が加わってドロドロした恋愛が繰り広げられていきます…。

アガサ・クリスティー

来歴

アガサ・クリスティーは1890年に生まれた「ミステリーの女王」と称される世界的なベストセラー推理小説作家です。しかし、意外なことに正規の学校に通わず、父から文字を教わるなど変則的な教育を受けて幼少期を過ごしました。第一次世界大戦終結後に『スタイルズ荘の怪事件』で推理作家デビューを果たし、この作品は後に続くエルキュール・ポワロシリーズの第一作となりました。85歳でなくなるまでに248作を執筆しています。クリスティーの推理小説は今でも読み継がれている有名な作品が多くあり、後述の『オリエント急行殺人事件』の他に『ＡＢＣ殺人事件』、『そして誰もいなくなった』などが特に有名で、映画化やドラマ化、戯曲化などが多くなされています。

オリエント急行殺人事件

『オリエント急行殺人事件』はエルキュール・ポワロシリーズの第八作で、表題通りオリエント急行で発生した殺人事件にポワロが巻き込まれていくストーリーです。満席のオリエント急行に乗り合わせ、脅迫状を受け取ったとポワロに打ち明けたラチェット氏が雪で立ち往生した車内で殺害されてしまいます。大きな密室殺人であるため、必ず犯人が車内にいないはずがないとにらんだポワロがアリバイを調査するも、乗客全員のアリバイが成立してしまいます。そこでポワロが出した答えとは…？

2017年冬、シェイクスピア俳優として有名なケネス・ブラナーがポワロ役、ジョニー・デップがラチェット役を演じる映画が公開されます！そちらも併せて観てみてください。

J.R.R.トールキン

来歴

トールキンは1892年に南アフリカで生まれ、英文及び古代・中世英語の学者でありオックスフォード教授になりました。専門研究を生かして神話や伝説などを元にした叙事詩ファンタジーというジャンルを確立することに成功しました。この代表がかの有名な超大作『指輪物語』です。しかし、他にもホビットや妖精を登場人物としている児童文学を出版しています。

指輪物語

『指輪物語』はイギリス人に根強く人気であり、『旅の仲間』、『二つの塔』、『王の帰還』の三部作で構成された長編ファンタジーです。人類に近い小柄な種族、ホビット族のビルボが前作『ホビットの冒険』で手に入れた魔力を持った指輪をフロドに受け継ぐところから物語が始まります。魔法の指輪の力を正しく使うために魔法使いガンダルフらと共にフロドは冒険にでます。しかし、背後からは指輪を横取りし支配を強めようとする悪の勢力が忍び寄って来ます...。

ジョージ・オーウェル

来歴

ジョージ・オーウェルは1903年にイギリス植民地のインドで生まれた小説家です。本名はエリック・アーサー・ブレアですが、家族と出版社に迷惑をかけたくなかったためにペンネームにしたと言われています。イギリス有名私立学校イートン校で少年期を過ごしながらも、大学には通わずにインド警察につとめビルマで
生活をしていました。しかし、イギリス帝国主義に反感を抱いて五年でイギリスに帰国してしまいます。また、スペイン内戦に反フランコ側の国際義勇軍として参加するなど、国際情勢に積極的に関わっていました。スペイン内戦以後は執筆活動に重きを置き、スペイン内戦について描いた『カタロニア讃歌』や代表作『1984年』では社会民主主義をテーマに反ファシズム、反スターリニズムを描いています。

動物農場

『動物農場』は寓話物語というジャンルに分類される小説で、登場人物のほとんどが人間ではなく動物であり、20世紀前半にソ連で普及した全体主義やスターリン体制に対する批判を描いています。どの動物が誰を象徴しているのか、非常にわかりやすく描かれているのでモデルを創造しやすい作品です。

人間に支配されていることに気づいた農場に住む動物たちが、ある日反乱を起こして人間を農場から追い出してしまいます。農場に平和が訪れたかに思えましたが、反乱の中心になった豚たちが農場の主導権争いを始めます。争いに勝った豚のナポレオンは計画的な生産や重労働を他の動物たちに課すようになっていきます。しかし、これは支配者が人間から豚にかわっただけなのではないかと他の動物たちが感じ始めます。「4本足は良い、2本足は悪い」から豚が二足歩行をするように変わりできた新たなスローガン「4本足は良い、2本足はもっと良い」。動物たちがコミカルな作風を作り出していますが、読み終わると深く考えさせられる作品です。

カズオ・イシグロ

来歴

カズオ・イシグロは1954年に長崎で生まれ、五歳の頃に渡英した日系イギリス人です。英文学科卒業後、創作学科専攻で大学院に通い、ミュージシャンの夢から一転して創作活動を行うようになりました。後に紹介する代表作『日の名残り』以前に執筆した作品では日本人が登場しており、彼の文化的背景も感じさせています。しかし、「日本」を意識しているわけではなく、世界全体に発信できる作品を書いており、ノーベル文学賞の受賞時には「壮大な感情の力を持った小説を通し、世界と結びついているという、我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた」と評価を受けています。

日の名残り

『日の名残り』は刊行された1989年のブッカー賞という世界的に権威のあるイギリスおよびアイルランド著者による長編小説に与えられる賞を受賞しました。第二次世界大戦が終わりしばらくたった1956年、長年著名な貴族の屋敷につとめていた執事スティーブンスは新しい主人の勧めで旅行に出かけます。新しい主人はアメリカの富豪、ファラディ氏。主人が替わる際に多くの執事や女中が辞めていってしまったために深刻な人手不足に悩まされているなか届いた元女中ベン夫人からの手紙。スティーブンスは執事という仕事に誇りを持ち、完璧を追求していた先代の時代に気づかなかった自分自身の思いに気づいてしまいます。
イシグロ氏のノーベル賞受賞を機に一躍有名になった作品ですので話題性もあり非常におすすめです！

お気に入りの小説は…？

ここまでで20以上の作品を取り上げましたがいかがでしたか？イギリス文学は恋愛小説やSF小説、推理小説など多様なジャンルが名作として出そろっています！この機会に是非興味をもった作品から読んでみるのをおすすめします。