英文学専攻学生が選ぶ!イギリス文学が原作の映画おすすめ10選
一般教養として知っていて損はないイギリス文学。でもどこか難しそうなイメージを持っていませんか?実は皆さんが思っている以上に手の届きやすい作品が多いのです。本を手に取って読むのは構えてしまう方も、映画を通じてイギリス文学の世界観を楽しんでみてください!
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イギリス文学
まず、イギリス文学と聞いて思いつく作品はありますか?かの有名なシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を挙げる人は多いかと思います。実は意外と皆さんが聞き覚えのある作品も多いんです!例えばディズニーで有名な『不思議の国のアリス』はルイス・キャロルというイギリス作家の作品ですし、『シャーロック・ホームズ』のシリーズもコナン・ドイルが書いています。そして、こうした大衆文学が流行する前に広がった小説こそが手の届きにくいいわゆる「イギリス文学」です。
本では難しそうなイギリス文学も映画で楽しんでみませんか?
そんなイギリス文学原作の映画を原作発表順に10作紹介していきます。
そして、10作の他に原作にアレンジが加えられている作品も紹介するので合わせてチェックしてみてください。
ハムレット(1996)
あらすじ
原作はThe Tragedy of Hamlet, Prince of Denmark(邦題:『ハムレット』)
17世紀初頭にシェイクスピアが書いた四大悲劇の一つ。
デンマーク王子のハムレットが父である先代の王の急死と母の早い再婚に落ち込んでいると、父の亡霊が現れ、父が叔父に毒殺されたという真実を知りました。復讐を誓ったハムレットは気が狂った素振りを見せ、復讐を気づかれないように行動するも、周囲には身分差による宰相ポローニアスの愛娘オフィーリアとの叶わぬ恋が原因だと誤解されます。ハムレットの狂気は吉と出るのでしょうか凶と出るのでしょうか、そして復讐は無事に果たせるのでしょうか?
みどころ
なんといっても、この作品は映画では珍しい4時間超の大作です。監督、脚本、主演の三役を務めたケネス・ブラナーが原作にあるすべての台詞を忠実に盛り込もうとしたためです。一般的な文学作品の映画化では、原作が長すぎるために省略されるシーンや台詞が多いのですが、『ハムレット』の世界観を殆どそのまま知ることができるという点が非常におすすめのポイントです。原作と異なる点としては、時代設定を19世紀に変えているという点です。
有名なハムレットの独白を是非堪能してみてください。
プライドと偏見(2005)
あらすじ
原作はPride and Prejudice(邦題:『高慢と偏見』など)
19世紀初頭にジェーン・オースティンが書いた長編小説。
舞台は18世紀末から19世紀初頭のイギリス。田舎町ロンボーンに住む五人姉妹ベネット家の近所に金持ちの独身青年ビングリーが別荘を借りて引っ越してくる。男子にしか相続権がない当時、裕福な青年を婿養子にしたいベネット夫人はここぞとばかりビングリーと娘たちを引き合せようとする。五人姉妹は舞踏会に参加するも、ビングリーの親友ダーシーが姉妹のことを侮辱するのを耳にしてしまう。彼の「高慢」な態度に彼女たちが抱いた反感と姉妹がダーシーに対して持った「偏見」が絡まりあうラブストーリー。
みどころ
日本人が慣れ親しんでいる少女漫画の世界に近いため、ラブストーリーが好きな方には必見です。同時に、五人姉妹がそれぞれ成長していくという点で『若草物語』にも通ずるところがあります。日本版と英語版でエンディングが違うので、両方のバージョンも楽しんでみてください。また、BBCドラマ版よりは時代考証の意識が薄いですが、その分現代の人になじみやすいようなキャラクターに描かれています。
「イギリス人にとって無くてはならない本一位」にランクインするほど、イギリス人に親しまれている物語で、その証に『ブリジット・ジョーンズの日記』に強く影響を与えています。まだ見ていない方は、併せてこの映画もチェックしてみてください。
オリバー!(1968)
あらすじ
原作はOliver Twist(邦題:『オリバー・ツイスト』)
『クリスマス・キャロル』などで有名な19世紀イギリス作家チャールズ・ディケンズによる長編小説。
時は19世紀。ロンドンの孤児院で暮らす主人公のオリバーは他の孤児院に住む子供たちと共に十分な食事を与えられない中強制労働を強いられる生活を送っていました。ある日、耐えかねた子供たちを代表してオリバーが食事を増やす交渉に行ったところ、葬儀屋に売り飛ばされてしまいます。葬儀屋から脱走したオリバーは田舎に迷い込み、馬車に乗り込むとロンドンの大都会にたどり着きます。そこで年の近い少年ドジャーと男フェイギンに出会います。彼らとの出会いがオリバーの手を黒く染めていくのです…。
みどころ
ミュージカルを映画化したため歌とダンスが多く、舞台好きにおすすめな作品です。最近では『ララランド』もミュージカル要素を含んだ映画として有名ですが、昔から実はあったんです。下層階級にスポットを当てたストーリーのため、訛りがあります。訛りはイギリス階級社会をわかりやすく示す材料の一つで、話し方によって身分がはっきりとしめされれてしまいます。ここにも是非注目してみてください!
ジェイン・エア(1996)
あらすじ
原作はJane Eyre(邦題:『ジェイン・エア』)
19世紀半ばにブロンテ三姉妹の長女シャーロット・ブロンテが書いた長編小説。
孤児となった主人公ジェイン・エアは伯父のリード家に引き取られた後、寄宿学校に預けられます。卒業後、住み込みの家庭教師としてソーンフィールド屋敷に住む養女アデルに勉強を教え始めます。屋敷での生活に慣れてくるも、唯一不安なのは一室から聞こえてくる奇妙な笑い声。屋敷の主ロチェスターと出会って以降、ジェインの生活が変わっていきます…。ゴシック要素を含んだ愛が赤裸々に描かれる身分違いのラブストーリー。
みどころ
『プライドと偏見』に続く王道身分差恋愛物語ですが、身分差がより一層大きくなっています。今回は孤児から家庭教師になったジェインと屋敷を抱える主人ロチェスターです。さらには離婚が禁止されているキリスト教社会の中で既婚者と恋愛するというのは、離婚届を出すだけで離婚できる現代社会以上に厳しいものでした。家庭教師と主人のラブストーリーが最後にどう変化していくのか最後まで見逃せないストーリーです。
嵐が丘(1939)
あらすじ
原作はWuthering Heights(邦題:『嵐が丘』)
19世紀半ばに書かれたブロンテ三姉妹の次女エミリー・ブロンテによる唯一の長編小説であり「世界の三大悲劇」にも挙げられるゴシック小説。
舞台は19世紀初め、吹雪の中路頭に迷ったロックウッドがヒースクリフとその妻イザベラが住む「嵐が丘」という館に辿り着き、一晩泊まらせてもらいます。その晩、ロックウッドが寝ている部屋の窓が割れ、雨戸を閉めに窓辺に近づくとヒースクリフの名を呼ぶ女の声が聞こえました。驚いたロックウッドのあげた叫び声に駆けつけたヒースクリフは猛吹雪の中「キャシー」と叫び家を飛び出すのです。幽霊話など信じそうにないヒースクリフの言動にロックウッドが呆気にとられていると、館の家政婦エレンが「嵐が丘」で起こった40年前の悲劇を話し始めました。ヒースクリフとキャシーの間を引き裂いた叶わぬ恋物語を。
原作との違い
まず、原作が非常に長い作品のため、映画化にあたりヒースクリフやキャサリンの子供世代が描かれた内容はすべてカットされています。しかし、ヒースクリフ世代の物語だけでも原作に含まれているメッセージは十分伝わってきます。物語が家政婦エレンによって語られていく構造は当時の他の小説にはあまりみられない形式で、恋物語を俯瞰してきたエレンの視点に立って視聴するのも面白いかもしれません。
サイラス・マーナー(1985)
あらすじ
原作はSilas Marner(邦題:『サイラス・マーナー』)
19世紀半ばに活躍したジョージ・エリオットの代表作をBBCがドラマ化した作品。
19世紀初頭、機織り職人のサイラス・マーナーは住んでいた田舎町で起こった事件の濡れ衣を着せられてしまいます。事件以降、サイラスは人にも神にも見捨てられたと絶望し他の町へ引っ越します。お金しか信じられるものがなくなったサイラスは仕事に没頭しお金を貯めていましたが、そのお金までも地主の次男ダンスタンに奪われてしまいます。ある冬のこと、サイラスは幼い女の子が横たわっているのを見つけ、その子をエピーと名づけ育てることを決心します。しかし本当の親子ではないためにサイラスとエピーが引き裂かれようとしていしまうのです。地主一家の恋愛事情も複雑に絡み、サイラスは幸せを取り戻すことができるのでしょうか?
みどころ
日本語字幕がないためあまり知られていない映画作品のため、英語にある程度自信がある方におすすめです。主演のベン・キングズレーの演技は現地の人から非常に好評で、彼の演技が作品の世界観にひきこんでくれます。是非彼の演技に注目してみてください!
宇宙戦争(2005)
あらすじ
原作はThe War of The Worlds(邦題:『宇宙戦争』)
19世紀末に「SFの父」H・G・ウェルズが発表したSF小説。
ある日、レイ・フェリエが奇妙な稲妻が町に落ちるのを目撃、各地で停電が発生しました。レイが落雷地点に向かうと宇宙船が人類に攻撃を始めます。慌てて息子ロビーと娘レイチェルを連れて避難するレイ。簡単には太刀打ち出来ない恐ろしい宇宙船トライポッドからレイ達家族は助かるのでしょうか?
原作との違い
原作だけでなくラジオドラマ版や1953年の映画版を取り入れつつ、アメリカ全土に衝撃を与えた9.11のを連想させる墜落したジャンボ旅客機や人捜しの張り紙を描いており、新しい『宇宙戦争』になっています。『E.T.』の監督を務めたスティーブン・スピルバーグがメガホンをとり、主演がトム・クルーズとあって、迫力満点です。原作は「私」視点の語りであるのに対し、レイ・フェリエという一人の登場人物の視点になっています。
眺めのいい部屋(1986)
あらすじ
原作はA Room With A View(邦題:『眺めのいい部屋』)
20世紀初頭に地中海世界への憧れを持つE.M.フォースターが書いた小説。
良家の娘ルーシーがシャーロットを付き添いにイタリア旅行へ行った際、運悪く景色の悪い部屋をあてがわれます。ルーシーが文句を言っているのを同じ宿に泊まるエマソン氏とその息子ジョージが耳にし、部屋の交換を申し出ます。イギリス社会の常識からはみ出るエマソン氏の申し出に二人は戸惑いつつも、知り合いの牧師に仲介され引き受けることにしたのです。ルーシーが一人で街中を観光していた際に遭遇した事件にジョージが居合わせルーシーを介抱してくれます。これを機に二人はお互いを意識するようになりましたが、二人の恋に気づいたシャーロットが二人を引き離そうとするのです。自分の気持ちに素直になれないルーシーと悩める青年ジョージが繰り広げる不器用な恋物語。
みどころ
タイトルに「眺め」と入っているだけあって、イギリスと地中海の美しい景色が見所の一つです。また、豪華なキャスティングにも注目です。『ハリー・ポッター』シリーズで登場した二人の女優がルーシーとシャーロット役で出演しています。誰だか覚えていますか?ルーシーは悪役ベラトリックス・レストレンジで、シャーロットはマクゴナガル教授です。『ハリー・ポッター』シリーズでは見られなかった二人の違った側面にも注目してみてください。
マイ・フェア・レディ(1964)
あらすじ
原作はPygmalion(邦題:『ピグマリオン』)
20世紀初頭にジョージ・バーナード・ショーが書いた戯曲
これを舞台化したミュージカルMy Fair Lady(邦題:『マイ・フェア・レディ』)を映画化した作品
言語学者のヒギンズ教授がたまたま出会った下品な言葉遣いをする下町娘のイライザに驚き、自分なら半年で社交界デビューさせられると宣言します。より良い生活を夢見たイライザは教授のトレーニングに苦労するも教授との階級差を強く感じ始めるのです。イギリスにおける上流階級と下層階級の差を突きつけられる中でイライザが半年後に何を感じどう変化するのでしょうか…。
原作との違い
原作『ピグマリオン』との最大の違いはエンディングです。どちらが好きかは人それぞれですが、『マイ・フェア・レディ』のエンディングも良さがあります。舞台版もつとめている男性俳優陣の歌声に是非注目してみてください。
動物農場(2008)
あらすじ
原作はAnimal Farm(邦題:『動物農場』)
20世紀半ばジョージ・オーウェルが書いた風刺小説。
農場に住む動物たちは人間に虐げられていることに気づき、スノーボールとナポレオンという二匹の豚を中心に農場で革命を起こします。動物たちを支配してきた人間を農場から追放し、平和がもたらされ「動物農場」となったが、その平和もつかの間のものに過ぎなかったのです。スノーボールとナポレオンの意見の相違から対立が生じ、勝利したナポレオンは動物たちのリーダーとして権力を持ち出します。他の動物たちは生活が悪化し、新たな革命が動き出します。支配者が人間から豚へと変わっただけの農場はどうなってしまうのでしょうか…。
現代版にアレンジされた作品
ここからは、大幅にアレンジされている作品を二作紹介します。原作の要素を残しつつ、新しい魅力がたくさんつまった作品です。上で紹介した作品が取っつきにくいなと感じた方は是非こちらからイギリス文学を楽しんでみてください!
シャーロック(2010~)
あらすじ
原作はシャーロック・ホームズシリーズの長編小説A Study in Scarlet(邦題:『緋色の研究』)をはじめとする作品。
19世紀後半にコナン・ドイルが書いた推理小説を元に制作されたドラマシリーズ。
シーズン1最初のエピソード『ピンク色の研究』をここでは紹介します。
ロンドンで発生した謎の三連続服毒事件。ロンドン警察は捜査結果を自殺として発表しましたたが、探偵ホームズがこれを否定するメールを警察及び記者に送ります。そして、ワトソンは同僚からルームシェアの相手としてホームズを紹介されます。出会ってわずかな時間でワトソンの個人情報を数々言い当てたホームズに興味を持ったワトソン。ベーカー街221Bへと下見にワトソンがやってきたところで第四の服毒事件の発生の知らせが入り、ワトソンは成り行きでホームズと共に現場に向かうことに。現代版シャーロック・ホームズがここに誕生します!
みどころ
シャーロック・ホームズといって欠かせないベーカー街221Bを中心とした設定や主要登場人物の名前には一切手を加えないながらも、携帯電話やパソコンが操作ツールに溶け込んでいます。一つ一つのエピソードに明確な原作の物語があるので、どのように現代風にアレンジされているのかを比較してみるのも楽しいと思います。
アリス・イン・ワンダーランド(2010)
あらすじ
原作は『不思議の国のアリス』と『鏡の国のアリス』
ルイス・キャロルが書いた上記二作を元にその続編として制作されました。
19歳に成長したアリスはパーティーで親から決められた婚約者に突然プロポーズされます。戸惑ったアリスはその場を逃げ出すと、白うさぎが懐中時計を持って走っているのを見かけるのです。白うさぎを追ってアリスがたどり着いたのはワンダーランド。そこは赤の女王の支配に怯えており、「預言の書」に書かれた救世主を待ち望んでいる世界でした。そして、アリスこそが救世主とだというのです。ワンダーランドが赤の女王の支配から解放され、平和を取り戻すためにアリスはマッドハンターたちと共に赤の女王との戦いに挑んでいきます。
みどころ
なんといっても目を引くのはキャラクターの個性です。非常に派手なメイクに始まり、アンバランスな大きさも目立ちます。きれいな映像により個性が引き立っており、一番目立っているジョニー・デップ演じるマッドハンター以外にも是非注目してみてください。
イギリス文学は映画から入りましょう!
いかがでしたでしょうか?
紹介した映画の中で一つでも見てみたいと思っていただけたら嬉しいです。どれも有名な文学作品なので、興味を持った人は是非押さえておきたいです。気に入った映画は原作本を手に取ってみるのもおすすめです。
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この記事のライター
英文学科の女子大生です。専攻の英文学のほかに、映画やグルメでプライベートを充実させています。よろしくお願いします。