邦画は伊達じゃない!おすすめできるヒューマンドラマムービー10選
昨今の邦画は漫画などの原作を借りたものが多く、正直ちょっとイマイチなものが増えたと感じる人もいるでしょう。ですが、2016年には「シン・ゴジラ」など邦画ならではの面白い作品が多く作られており、思っている以上に良作があります。今回は、ヒューマンドラマムービーにスポットを当てて邦画をご紹介します。
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まだ観ていないならばぜひチェックいただきたい邦画たち!
最近の日本映画をイマイチだと感じていると人は、「邦画」というだけで敬遠している人もいるかと思います。ですが、邦画の中にも面白い作品はもちろんあります。ここでは、邦画のヒューマンドラマに絞っておすすめしたい作品についてご紹介します。
みなさん、さようなら
渡会悟(濱田岳)は、小学生まで無遅刻無欠席の優等生。しかし、13歳のときから生まれ育った団地から出ずに生活することを決意しました。彼は義務教育である中学校にも通わず、16歳には団地内にあるケーキ店に就職して過ごすことになります。仕事だけでなく団地内を警備したり、体力作りと筋トレを日課として「団地の人は自分が守る」という正義感に燃えた男性です。こうした変わりものですが、なぜか小学校の同級生からは慕われており、彼の住む団地で成人式のお祝いが開かれるほど。彼が団地に住むようになった理由と、その傷をいやすヒューマンドラマです。
久保寺健彦の同名小説を映像化したものであり、「アヒルと鴨のコインロッカー」の監督である中村義洋と、彼が監督する映画にて主演を務めることが多い濱田岳のタッグが再び実現しています。この作品で濱田岳は、13歳から30歳までの渡会悟すべてを演じるという離れ業を成しており、その演技力も見どころの1つ。物語は、彼が団地内で過ごすことを決意する過程と共に、その彼を見守る周りの大人たちや人間との触れ合いが丁寧に描かれている1作となっています。昔はたくさんあった「団地」ならではのネタを上手く使いながら、成長や卒業することの大事さを教えてくれること間違いありません。
WOOD JOB!~神去なあなあ日常~
平野勇気(染谷将太)は、高校卒業後の進路を全く決めていなかったイマドキの高校生。友達と卒業記念でカラオケをした後の帰り道、道に置いてあるマガジンラックにて就職関連の雑誌を手に取ります。その表紙に石井直紀(長澤まさみ)が写っており、彼女に会いたいという気持ちだけで神去村にある林業関連の職に就くことを決意します。携帯の電話も届かない田舎町にて林業をやることになるのですが、都会しか知らない彼にとって村の生活はカルチャーショックのオンパレードだったのです。
三浦しをんの「神去なあなあ日常」という小説を「ウォーターボーイズ」の矢口監督が映像化。主演には演技派として注目が集まる染谷将太を添えて、林業の先輩である与喜は伊藤英明が担当しているのも注目すべきところです。都会で育ち、大人ともあまり触れ合ったことのない少年が、職場の先輩や同僚と触れ合うことで1人の青年となるまでを描いています。はじめは林業に関して偏ったイメージしか持っていなかった勇気が、与喜と一緒に仕事をすることで価値観が変わり、「林業を研究するため見学したい」と遊ぶ半分で来た学生を追い返すシーンは必見。
殿、利息でござる
時代は1766年。各藩には物資をやり取りする人たちの休憩所のような場所である宿場というものがあり、仙台藩にも吉岡宿というものがありました。宿場にて輸送を行うのは伝馬役と呼ばれ、これを運営するための助成金は藩から支給されています。しかし、吉岡宿は藩直属の宿場ではないため、すべて町の税金によって負担しており、町人は重い税に困窮を極めていました。その町の中心人物である酒屋の穀田屋十三郎(阿部サダヲ)は重い税にて住人が減ることに頭を悩ませていましたが、その中で京都に出ていた菅原屋篤平治(瑛太)が帰ってきました。彼は知恵者として知られており、町の悩みを解決するための策はないかと十三郎が相談します。そこで出た案が、お金を藩主に貸して、その利息を使って伝馬役のお金を賄うという方法でした。
2016年に上映された映画で、「無私の日本人」がモチーフとなって生まれた作品。阿部サダヲを主演に迎え、それ以外にも瑛太や妻夫木聡、松田龍平、山崎努など日本を代表する役者がそろった映画でもあります。町の困窮した状況を見かねた人がそこから脱出するため、一丸となって問題を解決しようとする姿が描かれているのが特徴です。夢や思想という概念ではなく、現実的な問題に対して知恵を以て解決を試みる姿はリアリティがあり、現代にも通ずる問題に言及している映画でもあります。また、お金の価値観やありがたみについて考えさせられるものになっており、自分のお金の使い方を見直さざるを得ないなと思わされるほどです。
ピンクとグレー
同級生の河田大貴と鈴木慎吾は、仲のいい同級生。同じマンションで過ごしていた石川紗里も含め、彼らは常に一緒に過ごしていました。それは高校になっても変わらず、渋谷で河田と鈴木が遊んでいたときに芸能プロダクションにスカウトされるのも一緒でした。彼らは芸能に芸能界に飛び込みますが、鈴木慎吾は徐々に役者としての才能を開花していきます。
「世界の中心で、愛をさけぶ」で知られる行定勲監督によって撮影された作品。この映画のキャッチコピーには「62分後に仕掛けられたトリック」というものがあり、映画がはじまって62分まではカラーですが、その後はずっとモノクロで語られていきます。実は、カラー部分は映画の中の映画であり、現実はモノクロとして表現されているのです。河島大貴(中島裕翔)は劇中劇の中で鈴木慎吾を演じるのですが、彼が死んでしまったのは本当の話。河島は友人の死まで利用して芸能界で生き残ることを選び、その事実に苦悩するところが見どころです。映像をモノクロとカラーで対比することで、フェイクの世界と現実の世界の対比を上手く表現しており、自分の周りの世界観について再確認させられる映画です。
パレード
都心のとある部屋でルームシェアをしている伊原直輝(藤原竜也)、相馬未来(香里奈)、大河内琴美(貫地谷しほり)、杉本良介(小出恵介)の4人。彼らは自分たちのプライベートにはそこまで干渉しないように過ごしており、同じ空間に人がいるという感覚にて生活しています。彼らはそれぞれ自分の悩みを抱えて生活していますが、その中で小窪サトル(林遣都)という人物も一緒に生活するようになります。彼が加わることで、彼らの生活に微妙な変化が生まれていきます。
芥川賞受賞経験のある吉田修一の同名作品を映画化。監督は行定勲となっており、第60回ベルリン国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した作品でもあります。それぞれの主人公が抱える悩みにフォーカスしながら、そこに各住人がどのように関わってくるのかが見どころの作品。また、それぞれの同居人によって見せる顔や本音が違い、人間の「本性」という言葉がいかに脆いのか見せ付けられます。ラストに伊原が同居人たちから白い目線で見つめられるまま終わる演出は秀逸。
容疑者Xの献身
ホストとして生活していた花岡靖子(松雪泰子)は、夢のお弁当店を開業して1人で娘を育てているシングルマザー。その彼女の元に元夫がお金を無心しにやってくるが、間が指して元夫を殺害。その騒動を隣で聞いていた石神哲哉(堤真一)は、花岡の家にやってきて殺害を指摘してしまう。隠しきれないと思った花岡は部屋の中に招いて自首をすると言い放ちます。しかし、石神は自身の持つ論理的思考に基づいて、警察に絶対にばれない死体処理を行ってしまうのです。
東野圭吾の同名原作を映画化したものです。元々は「ガリレオ」シリーズとしてドラマ放送されており、主演の湯川には福山雅治が当てられていました。しかし、「」容疑者Xの献身」における主人公は石神を務める堤真一と、花岡役を務める松雪泰子です。石神は高校の数学教師をしていますが、湯川が認めるほど天才的な数学の才能を持つ人物。彼は過去に自殺を試みたことがありますが、隣に引越してきた花岡に助けられます。その命の恩人のために、犯罪に加担する石神の姿がいとおしくも、悲しい結末となってしまうまでの過程が描かれています。石神演じる堤真一の演技が光る作品で、ラストに泣き崩れるシーンは映画史に残ると言っても過言ではありません。
重力ピエロ
奥野泉水(加瀬亮)には弟の春(岡田将生)がいますが、彼はレイプされた母親から生まれた子供です。それでも父である正志(小日向文世)の意向により、自分の子供としてひとつ屋根の下で生活していました。そんな彼らが生活する街にて連続放火事件が発生し、その犯行現場には必ずグラフィティアートが書かれています。「グラフィティアートには何かメッセージがある」と言い出した春は、兄である泉水を誘って事件の解決に挑むことになります。
伊坂幸太郎の同名小説を森淳一が映像化したものになります。レイプされて生まれた子供と一緒に生活するという厳しい道を選んだ家族と、連続放火事件がどのように絡まるのかが見どころの1本。犯行現場に残るグラフィティアートを解き進めることで遺伝子にまつわるキーワードが浮かび上がり、次第に家族の問題にぶつかっていく流れは圧巻です。遺伝子は人間の血のつながりを証明しますが、それ以上に家族として生きてきた「時間」が人同士をつなげると共に、人間を作り上げるものだと「重力ピエロ」が証明してくれます。ラストに春が正志の子供だと思わされるシーンは感涙ものです。
東京家族
平山周吉(橋爪功)と平山とみこ(吉行和子)は、東京に住む子供たちに会うため瀬戸内海の島から上京します。しかし、開業医の平山幸一(西村雅彦)、金井滋子(中嶋朋子)、平山昌次(妻夫木聡)の3人の子供は誰も2人を東京駅に迎えに行くことができません。結局はタクシーを使って幸一の家にやってきた周吉ととみこですが、それぞれの子供たちの様子を見るための東京旅行がはじまります。
山田洋二が小津安二郎の「東京物語」をリメイクした作品。日本で活躍する豪華出演陣が話題を呼んだと共に、名監督の作品をリメイクするということでも注目を集めました。成長した子供と年配になった家族の関わり合い方がリアルで、各息子や娘たちが泊める場所を確保できずにホテルに泊めてしまうシーンは何とも言えない哀愁が漂います。また、妻夫木聡演じる昌次と周吉が分かり合おうとする過程は、この映画独自の魅力となっています。
キサラギ
とあるビルのペントハウスに、パソコンで知り合った家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、
スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅)、いちご娘。(香川照之)が集結することになっています。彼らが集結したのは、1年前に死んでしまったD級アイドルの如月ミキ(酒井香奈子)の1周忌を行うため。はじめて顔を合わせる5人だったのですが、彼らはそれぞれ如月ミキと何らかの関係を持っている人物だったのです。彼らの素性が明かされると共に、如月ミキの死因についても明かされています。
完全オリジナルの脚本である本作。舞台はペントハウスの中だけとなっており、登場人物5人の回想を挟みつつ物語が進行していくといった舞台劇のような物語が魅力。5人それぞれが如月ミキと何らかの関係を持っているのですが、その正体と共にばらし方がお見事の一言。とてもネットで知り合った人たちとは思えない台詞のやり取りや、1人のアイドルのために人間同士が分かり合える過程をユーモラスに描き切った作品です。
キツツキと雨
2年前に妻を亡くし、息子と2人で暮らしている木こりの岸克彦(役所広司)。何も変化することがない単調な生活を送っていたが、ある日職場近くで田辺幸一(小栗旬)率いる映画スタッフがゾンビ映画を撮影し始めます。しかし、田辺はまだまだキャリアのなり映画監督で、出演陣やスタッフに追われるばかりで撮影は全然進みません。そんな時、岸は田辺の撮影する映画にゾンビ役のエキストラとして参加することになります。
2012年に上映された映画ですが、第8回ドバイ国際映画祭にて最優秀脚本賞と最優秀編集賞を受賞し、主演の役所広司は最優秀男優賞を受賞した作品です。物語のベースは「若者とベテラン」となっており、気弱でゾンビ映画を撮影することに前向きでない田辺が、映画について何も知らない岸によってどんどん後押しされていく姿が見どころ。しまいには岸が映画にはまってしまい、街中を巻き込んで派手なゾンビ集団のエキストラシーンを取ることになる過程はクスリと笑わせられます。また、自分の作る映画によって自信を付けていく田辺や、息子との距離の取り方に悩んでいた岸の変化など人間模様も丁寧に描かれています。
伊達じゃない邦画で極上の2時間を体感!
邦画の中でもヒューマンドラマに分類される作品についてご紹介しました。邦画の中にも感動できる作品はたくさんあり、映画を観ることで人間関係などの悩みが救われることだってあります。ぜひ、笑ったり泣いたりしたいときには、今回紹介した作品を手に取っていただければ幸いです。