フォレスターは通過点!Eクラスの上を行くマツダ・アクセラの安全性能

2016年、国土交通省とJNCAPによる自動車アセスメント予防安全評価にて、マツダ・アクセラがスバルを抜いて1位になりました。マニア受けのイメージが強いマツダ車の意外な安全性能と、アイサイト越えを果たすまでの道のりをご紹介します。

motoiiwaki岩城基
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ロータリーエンジンで守り抜いた看板

出典:car-moby.jp

安全性の話の前に、マツダの歴史の話を少し…。マツダ、といえばロータリーエンジンなのですが、ロータリーエンジンとは何かご存じですか?1960年代、欧米の自動車メーカーに対抗すべく、当時の通産省が日本の自動車会社を大手3社に合併しようとしました。当時自動車市場に参入したばかりのマツダは独立を保つため、当時、世界の名だたる自動車会社の技術力を以てしてもなしえなかったロータリーエンジンの量産化を試み、成功しました。ロータリーエンジンはその燃費の悪さから、今は殆どの車に実装されなくなってしまいましたが、マツダの独立独歩の魂は今も逞しく受け継がれています。

そんなマツダも、バブル期の場当たり的な過剰投資が裏目に出て、一時フォードの傘下に入ったこともありました。でもこの危機もマツダは逞しく乗り越えました。フォードから効率的なモノづくりとセルフブランディングの重要性を学んだのです。マツダの常務執行役員の前田氏は、こう述べています。「100人のうち3人が『絶対にマツダでなくては嫌だ』と思う車を作り続ければ、シェアは低くても生き残ることができる」

マツダの世界シェアは現在約2%と言われています。この、決して高くはないシェアを伸ばそうと、かつては値下げ競争に走りましたが、今は違います。フォードとの合併から学んだ通り、独自の技術とブランドイメージを確立し、コアなファンを大切にすることで生き残りを図ろうとしています。

SKYACTIV TECHNOLOGYと魂動デザインで独自のブランドイメージを確立

出典:car.watch.impress.co.jp

フォードとの合併を経て一皮むけたマツダが2010年に提唱したのが、SKYACTIV TECHNOLOGYです。「すべての人に『走る歓び』と『優れた環境・安全性能』をお届けするため世界一の機能を最も効率的につくる」というコンセプトのもと、エンジン、トランスミッション、ボディとシャシーを同時開発することによって、全ての要素技術を最適化させました。それにより走行性能と環境性能を飛躍的に高めると同時に、車体全体の剛性感を約30%高めました。さらに、追突時の衝撃を骨格全体に分散させて高い衝突安全性を確立し、i-ACTIVSENSE機能を搭載して衝突回避を図るなど、高い安全性能をも誇っています。

評価されたのは性能だけではありません。前田常務執行役員により提唱された「魂動デザイン」はあまりにも有名です。獲物を狙って駆け抜けるチーターをイメージした、躍動感あふれるボディに表れる独自の世界観も評価されました。これらのことから、今ではマツダ・アクセラは欧州市場でハッチバック車としてはVWゴルフに並ぶ高い地位を得つつあります。

米国と欧州でもお墨付きの高い衝突安全性

出典:car-moby.jp

アクセラの衝突安全性が認められたのは、2016年のJNCAPによる自動車アセスメントが最初ではありません。実はその前にも、米国と欧州でのテストで高い評価を得ています。一つ目は、2013年11月、ユーロNCAPコンソーシアムより、総獲得点数107点で最高評価の5つ星を獲得しています。尚、総獲得点数100点を超えるのはかなり難しいとされており、かのベンツEクラスですら96点でした。

次は2014年12月、米国IIHS(道路安全保険協会)にて、マツダ車はアクセラを含むすべての車種に於いて衝突安全性が高い車として「2015トップセーフティピック+」に認定されました。トヨタやスバルも同様のテストを受けましたが、すべての車種で「トップセーフティピック+」の評価を得たのはマツダだけです。2016年の番狂わせ(?)は決してまぐれではなく、実力通りの当然の帰結だったのです。

アクセラは主に欧州市場向け、CX-5は北米市場を意識して開発された車ですが、欧州と北米では一口に「衝突安全性」といっても意味合いが違います。欧州では主に人間との衝突を意識してテストを行いますが、北米では人通りが殆どない広い道が多く、飲酒運転などによる対物のケースが多いため、テストの観点は欧州とは異なります。2つのタイプの安全性試験で優秀な成績を収めるマツダ車の安全性が、お分かり頂けましたでしょうか。

そもそも最初からぶつかりません!アクティブセイフティの雄・アクセラ

出典:car.watch.impress.co.jp

さて、アクセラが2016年度の自動車アセスメントで大きく躍進したのは、この年から追加された「歩行者対応自動ブレーキ」テストにて、フォレスターを超える高得点を叩き出したためであることはよく知られています。歩行者対応自動ブレーキ性能評価とは、今までは対物が中心だったプリクラッシュブレーキの性能評価を歩行者対象に行ったものです。日本では、2015年の死亡交通事故のうち歩行者が約37%と最も高い割合を占めており、海外の先進国と比較しても多い割合です。

マツダのアクティブセイフティ(衝突する前に避けること)技術、i-ACTIVSENSEの中の一つの機能にアドバンストSCBSがあります。SBCSとは、走行中に衝突の恐れがある場合自動でブレーキをかけてくれるシステムですが、従来、この機能が有効になるのは最大時速30㎞までであり、認識するのは車両のみでした。「アドバンスト」では最大時速80㎞まで有効で、しかも歩行者も検知してくれます。まさしく、時代が要求している機能そのものといえましょう。

マツダが日本初の高級ブランドになる日も近い!

出典:www.pakutaso.com

いかがでしたか?マツダの安全性能の飛躍的な向上の背景には、失敗にもめげずにマツダならではのこだわりを貫き続けた長い道のりがあります。では、そのマツダのこだわりとは何でしょう。それはきっと、「Be a Driver」「Zoom-Zoom(英語圏の幼児語で「ブーブー」という意味)」といったキャッチフレーズに代表されるように、車で走ることの純粋な楽しさを大切にしたい、ということではないでしょうか。高い安全性能は、それを実現するための大切な要素です。

この、マツダならではの純粋なこだわりが、オリジナルなものとしてグローバル市場に認知される日が来るのでしょうか。もし来たら、日本国内では「マニア受け」とされているマツダ車が確固たるコンセプトと技術に裏打ちされた、ベンツやBMWに負けないブランドとなるかも知れません。

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この記事のライター

岩城基

リライトとか編集とか、その辺の仕事を10年位手掛けています。得意分野はビジネス全般、政治経済、車、アート、文学。ちなみに、宣伝会議の編集ライター養成講座卒業しました。卒制は優秀賞でした。

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