驚きの1位!チャイコフスキーコンクールのピアノ部門第一回から第三回

チャイコフスキー国際コンクールはロシアで1958年に第一回が開催されました。ピアノでは「フレデリック・ショパン国際コンクール」「エリザベート王妃国際音楽コンクール」は三大コンクールと呼ばれピアニストたちが熱い火花を散らします。今回は第一回から第三回までのピアニストを5人ご紹介します。


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アイキャッチ画像出典:cdn.pixabay.com

チャイコフスキーコンクールの成り立ち

出典:www.flickr.com

チャイコフスキー国際コンクールは1958年に第一回が開催されました。ピアニストにとって世界的に有名なコンクールといえばショパンコンクールです。こちらは第一回が1927年に開催されていますので、チャイコフスキーコンクールは30年ほど遅れて作られたことになります。

もともとロシアでは「モスクワ音楽院」という権威ある音楽学校があり、その歴史は古く1886年に開校しています。この学校から数多く巨匠音楽家や名ピアニストたち、例えばラフマニノフやホロヴィッツなどが排出されました。

ポーランドが生んだ英雄、ショパンの名前を冠したコンクールは、やはりポーランド人のピアニストにより1位、2位など上位を「ロシアのピアニスト」と競合してきたのですが、開催を重ねるに連れその様相が「西側諸国」対「東側諸国」といった印象になっていきました。それは、アメリカと旧ソ連の「冷戦」と呼ばれる時代と重なっています。つまり、チャイコフスキーコンクールはショパンコンクールに対抗して作られた音楽コンクールといえます。


第一回 1位 ヴァン・クライバーン

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第一回は1958年に開催されました。ショパンコンクールでは、1955年にロシア出身のウラジミール・アシュケナージが2位になっています。この頃は1位、2位の上位をロシアとポーランドで分かち合っている状態が少し続いていたのですが、ロシアには国際ピアノコンクールのようなものがなく、ショパンコンクールでの審査が不利であると考えたのかもしれません。


チャイコフスキーコンクールの記念すべき第一回を自国のピアニストが栄光ある1位となると当然期待していたと想像されます。しかし、結果は1934年アメリカ出身のヴァン・クライバーンが覇者となりました。この結果には、アメリカ人が最も驚いたのではないでしょうか。国民的英雄となったクライバーンは、その後アメリカで「チャイコフスキーのピアノ協奏曲」のレコードが大ヒットするなど大変な人気となったようです。


彼の演奏は、かなり大きな手の持ち主でダイナミックで技巧的ですが、一時代前のピアニストの特徴のように細かい部分にはあまりこだわらないため多少音がずれることがあることと、曲に即興的な部分を入れることが特徴です。また、弾き方は鍵盤に指を密着させず、動きが大きいことと身体が酔っているかのようにフラフラと揺らしながら弾くなど、現代人から見ると多少違和感を感じる弾き方といえるかもしれません。


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第二回 1位 ウラディミール・アシュケナージ

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第二回は1962年に開催されました。1位にはアシュケナージとオグドンの2人が選ばれています。チャイコフスキーコンクールで初の優勝者となったアシュケナージですが、その後ロシアを去ることになったのは皮肉なことかもしれません。なぜなら、現在アシュケナージはピアニストとして指揮者としてクラシック音楽の世界で頂点に立っている存在だからです。

彼は、1955年のショパンコンクールで2位受賞しており、チャイコフスキーでも1位という成績を納め世界的なピアニストとしての地盤を築いており、そのまま勢いは絶えずに上昇し続けて現在に至った人です。その演奏は、ピアノを勉強する人とって模範となる素晴らしいものですが、アシュケナージはラフマニノフなどのロシアの作曲家に限らず、レパートリーは幅広く持っています。今世紀を代表する大ピアニストであることは間違いありません。

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第二回 1位 ジョン・オグドン

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オグドンは、アシュケナージと1位を分かち合っています。彼は1937年イギリス出身です。ピアノのスタイルは、体格と同様の重量級の戦車のような技術の持ち主であり、作曲なども多数していたようです。しかし、不幸にも精神疾患と身体的な病気の両方から徐々に作曲家としてもピアニストとしても衰退していったとされています。素晴らしいテクニックの持ち主でありながら、大成せず1989年に52歳でなくなりましたが、これは同じ1位のアシュケナージと比べて大変気の毒なことと残念に感じます。

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第三回 1位 グリゴリー・ソコロフ

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第三回は1966年に開催されました。1位のグレゴリー・ソコロフは1950年ロシア出身です。神童タイプで旧ソ連内では知名度があったようですが、チャイコフスキーコンクール優勝で世界に名前を知られることになりました。コンクール後、世界へ演奏巡業していますが日本へも来ており、まだスクリャービンの作品が知られていない時代にいち早く演奏プログラムに入れて広めたピアニストの1人です。

ソコロフのレパートリーは広く、チャイコフスキー、ラフマニノフ、スクリャービン、プロコフィエフなどロシアの作曲家の他に、バッハやラモーなどバロック、シューベルト、ベートーベンなど古典も得意としています。

第三回 6位 ペーター・レーゼル

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ペーター・レーゼルは1945年東ドイツ出身です。当時は東西に分かれており東ドイツは社会主義国であったため、なかなか西側諸国には名前が知られることはありません。モスクワ音楽院で、ショパンコンクール第一回の覇者であるレフ・オボーリンに師事し、チャイコフスキーコンクール第六位入賞という結果になりました。

その後世界中に演奏旅行をしながら知名度をあげており、現在もいろいろなコンクールの審査員をするなど、ピアニスト以外の活動もしています。
レパートリーはロシアの作曲家と、シューベルトやベートーベンといった古典派で、とりわけベートーベンには定評があるということです。

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大成するには運も必要

いかがでしたでしょうか。チャイコフスキーコンクールは、ショパンコンクールでロシア勢を多数入賞させてきましたが、自国で音楽コンクールがなかったことから開催する運びになったようです。栄えある第一回にロシア人以外を「正直」に優勝させたことは意外ですが、このコンクールの審査の正当性を証明することになりました。

また、同じ1位であっても人生は順風満帆ということにはならないという不条理はあります。アシュケナージとオグドンという対照的な人生をおくった2人のように、ピアニストとして大成するのには技術だけではなく、何か運のようなものも必要なのかもしれません。ふたりの演奏にどのような違いを感じるでしょうか。

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検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。

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