ロシアのピアニスト大物現る!チャイコフスキーコンクール第十回から第十三回
チャイコフスキーコンクールの第十回は1994年に開催。1980年代は何となく不調であったロシア勢ですが、今回からは「大物」ピアニストといえる人材を連続で輩出したといえます。その第十回から第十三回までの入賞者を5人ご紹介します。
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時代が旧ソ連からロシアへ変わる
第十回はペレストロイカ後の初のコンクールであり、審査員も一新されました。旧ソ連からロシアに変わりチャイコフスキーコンクールはスポンサーが付くことになりました。新時代を迎え、コンクールは前回までロシア勢が多少不調だったところ、少し勢いを取り戻したような感じが見受けられます。
彼らは、現在世界的ピアニストとして知名度が高く、ちょうど「脂が乗った」ところであり、円熟した演奏を聴かせてくれるプロとなりました。では、早速5人の素晴らしいピアニストをご紹介したいと思います。
第十回 1位なし2位 ニコライ・ルガンスキー
第十回は1994年に開催されました。この回は残念ながら1位なしの2位にニコライ・ルガンスキーが受賞しています。彼は1972年ロシア出身で、モスクワ音楽院で名ピアニストであるタチアナ・ニコラエワに師事しています。
ルガンスキーは、ヴィルトオーソ(名人級)であり技巧的な曲が得意ということで、ロシアの作曲家を主にレパートリーとしていますが特にラフマニノフ、スクリャービン、プロコフィエフ、メトネルなどの演奏は圧巻です。
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第十一回 1位 デニス・マツーエフ
第十一回は、1998年に開催されました。1位に輝いたデニス・マツーエフは1975年ロシア出身です。家族が皆音楽家という恵まれた環境で育ち、神童として幼いときから国内で有名だったようです。モスクワ音楽院で学び、ロシアの期待も大きく久々の大物のピアニストといえます。
彼はロマン派を得意とし、テクニックと叙情的な表現に優れており世界で注目されているピアニストの1人です。特に注目したいことはジャズにも興味があるという話で、同じロシアの作曲家であるニコライ・カプースチンの演奏を聴く機会を楽しみに待ちたいと思います。
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第十一回 3位 フレディ・ケンプ
3位となったフレディ・ケンプは、1977年イギリス出身です。ケンプというとドイツの巨匠ピアニストのウィルヘルム・ケンプを思い浮かべる人も多いと思いますが、彼の話では「父方の遠縁ですが会ったことはありません」ということです。天才の遺伝子がちょっと離れてはいても血筋に表れたのかもしれません。
日本人の母親がピアノをたしなむことからピアノを弾くきっかけになったようですが、日本人にとっては応援したいと感じるピアニストのひとりでしょう。ヴィルトオーソの名がすでにつけられており、チャイコフスキーコンクール後は意欲的に世界で活躍している期待のピアニストです。
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第十二回 1位 上原 彩子
第十二回は2002年に開催されました。1位は日本の上原彩子です。チャイコフスキー初の女性優勝者でもあります。彼女は1980年の日本生まれで、モスクワ音楽院教授であるヴェラ・ゴルノスタエーヴァに幼少より師事しました。日本国内の音楽大学出身でないことが「枠にはまらない」大きなスケールの演奏と、世界的なピアニストになれた要因ではないかという気がします。
20年以上昔、NHKの「ピアノで名曲を」というテレビ番組においてゴルノスタエーヴァの公開レッスンに出演し、中学二年でリストの愛の夢を弾いていた姿は印象的でした。内声部の音を豊かに響かせる、よくコントロールされたピアノの音は、いとも簡単そうに感じさせるのです。
技巧の難しいショパンのエチュードを上半身を微動だにせず弾く姿は、「朝飯前」といった貫禄さえみせます。指さばきは、非常に無駄がない動きが特徴的で、女性の手の小さい欠点を合理的に処理しておりピアノ学習者のお手本といってよいでしょう。
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第十三回 1位なし2位 ミロスラフ・クルティシェフ
2007年開催の第十三回は1位なしの2位という結果になりましたが、最高位には1985年ロシア生まれのミロスラフ・クルティシェフが受賞しています。舌を噛みそうな名前ですが、彼は2010年ショパンコンクールにも出場し、10位以内という結果となりました。これは彼の実力からするとあまりふるわない成績であったことは残念です。
彼は幼少からピアノの才能があり、いわゆる神童タイプです。その演奏スタイルは、超絶技巧を好むヴィルトオーソでありダイナミックなものですが、体格があまり大きくはないのでその点は見た目の多少不利を感じます。
興味深いことは、同年のチャイコフスキーコンクールのヴァイオリン部門1位の神尾真由子と結婚しビッグカップルが誕生したことかもしれません。才能ある2人の遺伝子が楽しみです。
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勢いを取り戻したロシアのピアニスト
いかがでしたでしょうか。第十回からはルガンスキー、マツーエフ、ケンプという大物ピアニストを世界に送り出し、女性初日本初の1位の上原彩子がコンクールの歴史に名前を刻みました。彼らはすでにベテランピアニストとして世界中で活躍をしています。このまま、輝かしい活躍をし続けて欲しいと願うばかりです。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。