ロシアの名ピアニストが独占!チャイコフスキーコンクール第四回から第六回
チャイコフスキーコンクールは1958年に始まり、三回が終了したうちの二回は1位にロシアのピアニストが受賞という成績です。今回ご紹介する第四回から第六回も1位は開催国のロシアが占める結果となりましたが、現在も活躍する有名ピアニストたちです。その5人をご紹介いたします。
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ロシアの面目躍如
出典:pixabay.com
チャイコフスキーコンクールは1958年の第一回にアメリカのヴァン・クライバーンが1位になり、開催国のロシアとしては面目がつぶれてしまう結果となりました。第二回にはロシアのアシュケナージが堂々の1位、第三回も同じくロシアのグレゴリー・ソコロフが1位と順調に進みます。
さて、第四回から第六回までの入賞者をご紹介しますがいずれの1位もロシア人で、この頃のピアニストたちはそれぞれその後世界的なピアニストとして活躍しています。中でも第五回は、上位入賞者たちは精鋭が競い合っており見所だったようです。
その第四回から第六回までの入賞者たちの中から5人をご紹介いたします。
第四回 1位 ウラジミール・クライネフ
第一回は1970年に開催されました。同年にショパンコンクールの第八回が開催されましたが、ロシアのピアニストたちはあまり出場していないので、チャイコフスキーコンクールで手一杯だったのかもしれません。1位のクライネフは1944年ロシア出身です。いわゆる神童で、幼いころから国内では注目されていたようです。モスクワ音楽院で重鎮のネイガウス親子に師事しています。
ネイガウス・クラスからはあらゆる名ピアニストが巣立っていますが、クライネフもそのひとりです。彼は、1位をジョン・リルと分かち合いましたが、技量は素晴らしく、バランスの良い音、どんな難しい曲も弾きこなす名ピアニストです。彼はとても小柄な人で、ダイナミックな演奏をするというタイプではないので、そういった面では見栄えがしないということがあったかもしれません。
1位受賞の後、主に東側諸国で活躍していましたが、徐々に世界的なピアニストとして知名度があがりました。ピアニストだけではなく、後進の教育にも力を注ぎ、「クライネフ青少年国際ピアノコンクール」を設立しています。
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第四回 1位 ジョン・リル
ジョン・リルは1970年イギリス生まれです。クライネフ同様、幼いときから神童として知名度があったということです。大きな体格と大きな手に恵まれ、楽々と弾きこなしているような安定感があります。得意なベートーベンのソナタなど古典派の演奏や録音が多くみられます。
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第五回 1位 アンドレイ・ガブリーロフ
第五回は1974年に開催されました。1位のアンドレイ・ガブリーロフは1955年ロシア生まれです。モスクワ音楽院の名ピアニスト、ゲンリヒ・ネイガウスについて学んだという母親の血を引いたのでしょうか、栄光の1位を手にしました。ラフマニノフやプロコフィエフなどのロシアの作曲家の難曲をこなすヴィルトオーソ(名人級)といわれるピアニストのひとりです。
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第五回 4位 アンドラーシュ・シフ
4位入賞のアンドラーシュ・シフは1953年生まれのハンガリー出身です。ピアニストとしては控えめな方に入るようで、派手な演奏ではなく落ち着いた雰囲気で生真面目なスタイルは、古典、バロックを得意としていることと付随します。コンクールの後は、現在はいろいろな音楽学校の客員教授などをしているということですので、後に続くピアニストの育成にも力を入れていることがうかがえます。
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第六回 1位 ミハイル・プレトニヨフ
第六回は1978年に開催されました。1位のプレトニヨフは1957年ロシア出身です。若いときから母国で名前が知られている神童であり、将来を期待されていたということです。モスクワ音楽院の名ピアニストであり優秀な教師のヤコフ・フリエールに師事しています。ガブリーロフ同様ヴィルトオーソでありますが同時に作曲も手がけていて、プロコフィエフの「シンデレラ」「くるみ割り人形」などをピアノ用に編曲しています。
これらは他のピアニストからも人気の高い曲です。彼は「人前であがったという記憶がない」と言ったという逸話があります。クールで多少冷たい感じの風貌ですが、技巧的な部分の速いテンポと情感あふれるゆるやかなテンポ部分などを分け、メリハリある演奏をしています。しかし、ショパンのような内面性を表現する音楽よりも、プロコフィエフのような難曲に向いているピアニストと感じます。
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ロシアのピアニストの実力は底知れない
チャイコフスキーコンクールはロシアで開催されており、審査員もモスクワ音楽院の教授たちなどで構成されていますから、自分の教え子に多少甘い点をつけたとしても不思議はありません。しかし、ピアニストは実力の世界ですから、誰の目にもわかるようなピアニストに1位をつけることは有り得ません。
この第四回から第六回までの1位も、底知れない実力を持ったヴィルトオーソたちであり、その演奏には文句の付けようもないほど技術は完璧です。現在中堅の円熟した名ピアニストとなり大活躍している人たちですが、ロシアにはまだまだ未来の彼らのような予備軍がたくさんいるといわれています。「恐るべし、ロシアのピアニストの卵たち」です。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。