ラグジュアリーブランドが続々開始したSee now Buy nowとは？

ファッションショーの目的や意義が変わりつつある

パリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンの世界四大ファッション都市で毎年数回行われる最新のファッションショー。
通常は、各国の販売店のバイヤーや雑誌編集者、メディアなど業界関係者向けに行われ、約半年先の次のシーズンの洋服などを発表します。メディアは、いち早くそれらを取り上げたり撮影をしたり、次シーズンのトレンドを分析し、消費者へ伝え、バイヤーはショー後の展示会で、実際に商品を手に取りブランドと商談し、どのアイテムを何点買い付けるか、といったことを話し、それを基に実際に商品を生産していきます。
それゆえコレクションや展示会で見て、気に入ったアイテムも実際にお店や自身の手に渡るまで、半年ほどのタイムラグがあります。
それが新しい兆候として、ファッションショーを終えた直後から、自社のお店やウェブサイトで商品を販売するSee now Buy now (今見て、今買う)スタイルのブランドが出てきました。

See now Buy now の筆頭ブランドはBurberry(バーバリー)とTom Ford(トムフォード)

9月といえば、上記4大ファッション都市でレディースの次シーズンの春夏コレクションが発表される時期でしたがBurberry(バーバリー)とTom Ford(トムフォード)に関してはレディースとメンズを統合したショーを行いまた次シーズンの春夏物でなく今季秋冬物の洋服を発表しました。
大半のブランドが半年前に終えている秋冬のコレクションを、リアルタイムに発表し、また同時に販売も始めるこの手法は、実際市場での鮮度と言う意味では、半年前に終えているコレクションよりもフレッシュに映り、すぐ買えるという消費者の購買欲や衝動を、上手く汲み取ったビジネスだと思います。

創業150年を超えるも常に新しい道を突き進むBurberry(バーバリー)

Burberry (バーバリー)は、1856年設立のイギリスを代表するファッションブランドで、特にトレンチコートや、オリジナルのチェックパターンで有名です。その一方で、老舗ブランドながら近年は、最新テクノロジーを使った、プロモーションにも力を入れており、今では当たり前になってきたファッションショーのストリーミングライブ配信などもいち早く行っております。

デザインのみならずブランディングにもたけた希代のビジネスマン Tom Ford(トムフォード)

かたやトムフォードといえば、デザイナーという洋服をデザインする職業を、クリエイティブディレクターというデザインからプロモーション、マーケティングといったビジネス的な側面にも、積極的に関与する職業を確立した第一人者といえます。アメリカテキサス州オースティン生まれのフォードは、ニューヨークにあるファッションの名門・パーソンズスクールオブデザインを卒業後、ペリーエリスなど幾つかのブランドでデザインに携わった後、1990年代半ば当時窮地にあったイタリアの老舗ブランドグッチへ入社し、以後10年でブランドを見事再生します。(2000年から2004年までイヴサンローランのクリエイティブディレクターも兼任)
その後グッチ時代のビジネスパートナーであったドメニコデソーレととも独立し、2005年に自身の名前を冠にした、トムフォードブランドをスタート。香水や化粧品、アイウェアなどから展開を始め、2006年からメンズ、レディースの洋服の販売を本格的にスタートし、瞬く間にトップラグジュアリーブランドになりました。
2社はブランドの背景こそ違いますが、世界的にみてもトップクラスのラグジュアリーブランドであることや、服作りだけでなく、テクノロジーを駆使したセールスプロモーションにも力を入れている点など共通点も多いです。

新しい流通形態の登場の裏には業界の問題点も

こうした新しい販売手法が生まれた背景には、近年商品のデザインから製造、そして店頭に並ぶまで2週間から4週間足らずで行ってしまう、SPA(製造小売り)と呼ばれる流通形態が、低価格衣料品を中心に増えてしまったことがあります。結果そうしたブランドが、Burberry(バーバリー)やTom Ford(トムフォード)のようなラグジュアリーブランドが発表した最新のコレクションを模倣し、本家ブランドが実際に店頭で販売する半年後までに、類似デザインのものを先に市場で販売している現状(トレンドの逆転現象)があるのです。
Burberry(バーバリー)やTom Ford(トムフォード)を中心とするSee now Buy nowの取り組みは、そうしたSPAブランドのデザインの模倣や、自社がデザインしたものの市場での展開を守る意味合いも含んでいると思われます。

他ブランドも続々こうした取り組みを開始

メンズでは、上記の2社がメインですが、レディースでは既にラルフローレンやトミーヒルフィガーなど、See now Buy now販売を始めており、今後メンズ商品の展開にも期待がかかります。

消費者にとってはフレッシュな洋服がその時買えるのは喜ばしい事

現在はまだ一部分のブランドがこういった取り組みを始めたばかりで、その成果などはこれから見えてくるでしょう。数シーズンの間に、もう少しこういった取り組みをするブランドが増えると予想され、消費者にとっては、最新のコレクションで発表したばかりの洋服や小物がすぐ手に入るというライブ感を味わえるのは魅力的です。