ジャズとクラシックから生まれたカッコいいピアノの世界
カプースチンという作曲家をご存知でしょうか。モスクワ音楽院でクラシックピアノを学び、その後「ジャズ」の世界で活躍してきましたが、この10年の間で世界的な人気が出ています。その作品は「クラシックとジャズの融合」と評され、熱い視線を浴びています。
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ニコライ・カプースチンとは
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ニコライ・カプースチンは、1937年ロシア生まれです。幼い頃からピアノに親しみ、ロシア随一の名門であるモスクワ音楽院でクラシックピアノを学んでいます。旧ソビエト連邦の時代でも、アメリカのラジオ放送は聞くことができたようです。ラジオから流れるジャズに興味を持つようになり、卒業後はソ連でも当時有名であったジャズバンドに入っています。
ピアニスト兼作曲家として84年までを過ごした後、本格的な作曲を始めるようになります。その作品は、元々の専門である「クラシックピアノ」の原点に戻り、同時にジャズに彩られた自由な音の動きが特徴といえます。誰もが初めて彼の曲を聴き、「ジャズとクラシックの融合」という言葉を頭に浮かべるほど、「カッコいい」のです。これは全く新しい音楽の世界といえるでしょう。カプースチンの音楽は、ロシアの時代になり、「東側」の芸術も「西側」諸国に自由に出てくることで、瞬く間に世界中に広まったのですね。
カプースチンの曲 お勧め5選
カプースチンのお勧めの曲を5つ選びました。カプースチンのピアノ曲は、どれも超絶技巧といえるようなもので、ピアノの初心者が弾けるものはほとんどありません。ですが、1度聴くと忘れられなくなり、虜になってしまうのです。例えるなら、「地中海の青い海と空を見ながら、断崖絶壁をスポーツカーで走り抜けるようなスリリングな感覚」と言うと、想像ができるかもしれません。
1. 8つの演奏会用エチュード
「8つの演奏会用エチュード 作品40」ですが、ピアノの曲には「エチュード」といわれる曲集があります。ショパンも、ドビュッシーも他の作曲家も多数作っています。「エチュード」は、日本語にすると「練習曲」なのですが、はっきり言って「練習するための曲」という意味ではありません。ピアニストが自分の技巧を披露するための曲、というのがふさわしい気がします。
そういう意味で、この曲集はカプースチンの技巧の難しさと素晴らしさを表していると言えるでしょう。
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2.24のプレリュード
「24のプレリュード 作品53」です。「プレリュード」は「前奏曲」という意味ですが、何か主体となる曲の前に演奏する、という意味ではありません。まず、バッハが「平均律曲集」を書いています。ハ長調やト長調など24の調、それぞれ短い曲1つずつで構成されています。ショパンの「24の前奏曲」は彼の代表作であり、「雨だれ」などは特に有名ですね。これらは、全体をまとめて演奏する事で小品のひとつひとつが際立ち、音楽として完成されるようになっています。
カプースチンの作品も1曲は短く、技術も比較的やさしいものが多いので人気となっています。ただ、やはりすべてを一度に演奏することで高い演奏効果が得られるということに変わりはないようです。
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3.ピアノソナタ第1番 ファンタジア
ピアノソナタ第一番 ファンタジア 作品39です。ソナタというのは形式のことで、古典派が好んで用いた手法です。ベートーベンやモーツァルトといった古い時代の作曲家から、ロマン派のショパンや近代のプロコフィエフなどたくさんの人たちも好んで書いています。形式といっても、細かい規則にしばられているわけではありません。主題となるメロディーが、次々に変化していってまとまった「物語」となります。ソナタが好まれる理由は、音楽を一つの「小説」のように感じさせることができるから、でしょうか。
そして、作曲家はソナタをたくさん作り「ソナタ集」として出して力量を示すことができます。また、すべてを「まとめて」演奏することにピアニストは達成感、裁量発揮のチャンスを得られるのです。
カプースチンのソナタ第一番は、彼を有名にした曲でもあります。
価格: 2,700円
4.ピアノソナタ第6番
カプースチンのピアノソナタ第6番 作品62は、日本でのアムランによる初演がとても好評でした。ソナタというのは、通常はだいたい3部構成となっています。つまり1楽章から3楽章までありますが、この第6番ソナタは1楽章がとても印象的です。1度聴くと忘れられないようなメロディーに魅了される人も多いのではないでしょうか。
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5.ソナティナ
Ilya Petrov plays Nikolai Kapustin Sonatina Op.100
ソナティナは、「小さなソナタ」という意味です。ピアノの学習者の比較的初心者が「ソナチネ」という曲集を与えられます。ただ、カプースチンのソナティナ 作品100は、とても初心者向きといえるほど技術的に易しくはありません。しかし、発表会ではとても人気のある曲です。カプースチンらしく、猛スピードで演奏することで効果が上がります。調子がよく、気楽に聴くことができる4分ほどの短い曲ですのでお勧めです。
クラシックの枠にとらわれない世界観
いかがでしたでしょうか。クラシックにジャズを取り入れる人は実は過去にもいました。ラベルやガーシュインがそうです。ですが、カプースチンのように「カッコいい」音楽を感じさせる作曲家はいなかったと感じますが、どうでしょうか。カプースチンのスピード感のある音楽は生命力に溢れて、聴く人の魂を生き返らせてくれる気がします。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。