ピアノ講師が選ぶおすすめのジャズピアニスト10人をおすすめのジャズピアノの名曲・名盤とともにご紹介
ジャズはピアノとの相性がとてもよく、何といってもカッコよく聴こえるのが魅力ではないでしょうか。独特のリズムと自由な旋律は、大人のための真の癒しの音楽といえるでしょう。今回はクラシックを聴きなれた人におすすめのジャズピアニスト10人をご紹介いたします。
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クラシックとジャズは対極的なものではない
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よく言われるのは、クラシック音楽とジャズがまったく相反する、対極的なものだということです。クラシック音楽は理論的で固く、理解することが難しいので近寄りがたいがジャズはまったく自由で制約がないので理解しやすいという人がいます。
そうでしょうか。クラシックだけを聴きなれた耳にはまったく逆に聴こえてしまうのです。自由すぎて取りとめがなく、どう聴いたらよいのか途方にくれるという人もいます。しかし、実はクラシックとジャズは対極にあると思わせながら、クラシック作曲家から熱いコールを送ってきた歴史がありました。
クラシックの作曲家であるモーリス・ラヴェルもピアノ協奏曲にジャズを取り入れているように、かなり以前からクラシック音楽家はジャズに興味を持っているのです。ジャズ演奏家もクラシック音楽をジャズスタイルに編曲して演奏するなど、その熱い誘いに答えてきました。つまりクラシックとジャズは相思相愛にあり対極的なものではないことがわかります。今回はクラシック愛好家におすすめのジャズをご紹介いたします。
ニコライ・カプースチン
ジャズピアニストとしてカプースチンをご紹介するというのは少し異論が出そうですが、クラシックファンにジャズのカッコよさを示してくれたニコライ・カプースチンをご紹介しないわけにはいきません。彼は1937年のロシア生まれで、クラシックの最高峰であるモスクワ音楽院を卒業しています。
すぐにジャズの演奏家、作曲家として活動しましたが、ロシア国内が多かったこともありなかなか西側諸国には名前を知られることはありませんでした。しかし、アムランなど著名なピアニストが彼の作品を演奏したことが世界中にファンを広める結果となったようです。
「クラシックとジャズの融合」という言葉が何よりもその作品を説明しています。一言でいうと、「とにかくカッコよい」という表現がピッタリでしょう。クラシックで培われた音楽の美しさと技術的に難易度が高いこともピアニストたちの血を熱くさせてしまう魅力に溢れています。現代最高のジャズピアニストの1人といって過言ではありません。
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ジョージ・ガーシュウィン
ジャズというものを早い時期に世に示したひとりであるジョージ・ガーシュウィンは、クラシック音楽家の中に含まれています。しかし、上でご紹介しましたカプースチンとは違い、ガーシュウィンはクラシック音楽に含めてしまうことには抵抗がある人もいるでしょう。
彼の作品は、クラシックとジャズが融合しているのではなく、ジャズそのものではないでしょうか。「ラプソディ・イン・ブルー」などのピアノ協奏曲のひとつとして、クラシックピアニストは好んでレパートリーに取り入れ演奏しています。その人気は、ロシア系アメリカ人でありながら「アメリカ的」な自由で新しい音楽であったことにありました。
また、ワクワクするようなエネルギーに溢れ、第二次大戦前のアメリカを象徴していたことも理由のひとつです。現代も、古き良き時代のアメリカの象徴として、また純粋に生き生きとしたリズムとメロディに魅了されて彼の人気は衰えることはありません。
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ジョルジュ・シフラ
ジョルジュ・シフラは1921年生まれのハンガリーのクラシックピアニストで、ヴィルトゥオーソ(名人)として世界中に名前を知られた人です。技巧の素晴しさは当時随一の腕前で、技巧的に難易度の高いリストの曲を楽々とこなしたことから「リスト弾き」として知られています。
旧ソ連に一時期投獄されるなど、波乱に満ちた経験が演奏に活かされたというよりも、技術の限りに鍵盤上を走り回る「重量級」の豪快な演奏で、現代でも技術力で同列に挙げられるピアニストは数少ないでしょう。彼は幼少の頃にすでにピアノで興行していた経験があり、それは即興の才能に結びつき、後年ジャズピアニストとして発揮されることとなりました。
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オスカー・ピーターソン
ジャズピアニストとしてオスカー・ピーターソンの名前を挙げないことはありえないでしょう。1925年カナダ生まれで、クラシック出身ではないもののピアノの音の美しさは定評があります。クラシックピアニストからも一目置かれる存在であり、上質で品の良いジャズピアノの演奏を聴くことができます。
「黒いオルフェ」「酒とバラの日々」などのスタンダードジャズの中に、クラシックファンはピーターソンの素晴しさを見出せるに違いありません。技巧的なピアニストであるからといって、技術をあからさまに見せ付けるのではなく、繊細な音楽の表現ができることが真のピアニストであるのではないでしょうか。その点で、ピーターソンはジャズピアニストの中では群を抜いています。
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オイゲン・キケロ
オイゲン・キケロは1940年ルーマニア出身のピアニストです。幼少時からクラシックピアノで基礎を学んだこともあり、ジャズ転向後も「クラシック音楽をジャズ化」した演奏で一躍有名になりました。現代は、クラシック音楽をテーマに編曲したものは珍しくありませんが、当時は確かなテクニックで粋な演奏はとても斬新に思われたことでしょう。
最初のアルバム「ロココ・ジャズ」を初めとし、バッハ、ショパンやリストなどの有名曲をジャズにアレンジしたものを発表しています。クラシックのジャズ編曲はカーメン・キャバレロのショパンのノクターンが有名ですが、オイゲン・キケロは彼よりも幅広く活躍していたようで、数多くの作品を残しています。
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アレクシス・ワイセンベルク
アレクシス・ワイセンベルクは1929年ブルガリア生まれのクラシックピアニストです。ニューヨークのジュリアード音楽院で学び、在学中からジャズにも興味を持ったようです。彼の音楽の主軸はクラシック音楽にあります。CDはクラシック主体に数多くあり、日本にも度々訪れるなど日本人には馴染みの深いピアニストです。ジャズでは、シャルル・トレネ作曲「四月のパリ」などの美しい編曲があり、自作の「ジャズソナタ」を発表しています。ワイセンベルクの曲は、現在アムランが演奏し新たに注目されてきました。
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マルカンドレ・アムラン
現在のピアニストの中で、マルカンドレ・アムラン(マルク・アンドレ・アムラン)はヴィルトオーソとして筆頭に名前が挙がるピアニストではないでしょうか。1961年カナダ生まれで、ピアノのテクニックは特別な才能にあふれ、一般的なクラシック音楽のみならず難解難曲であるソラブジの作品など難しいとされるものを中心に幅広く演奏しています。
特に、あまり世に知られていない作品をあえて演奏会でとりあげ、世界的に有名になったカプースチンなども含め、彼の功績は大きいといえます。主軸はクラシック音楽ですが、上でご紹介しましたワイセンベルクのジャズソナタの演奏など、ジャズ音楽や現代曲なども彼にとっては演奏不可能な曲はないようです。
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フリードリヒ・グルダ
フリードリヒ・グルダは1930年オーストリア生まれのクラシックピアニストです。古典からプロコフィエフなどの近代曲まで幅広いクラシック音楽の演奏の後に、ジャズに完全に転向しようとしたと伝えられます。かなり特殊な鬼才で、クラシックファンから奇異なピアニストとして捉えられることも多く、敬遠する人もいると思われます。
しかし、グルダのジャズピアノは他のクラシックピアニストの演奏よりも、「はるかにャズらしい」と感じるのではないでしょうか。彼の演奏の魅力は、音の美しさと遠慮のないはっきりとした切れ味のよいジャズです。
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アンドレ・プレヴィン
アンドレ・プレヴィンは、1929年ドイツ生まれのピアニストです。子供の頃アメリカに移住し、クラシックを学んだ後、指揮者として世界中の名高い交響楽団の数々の経歴があります。同時にジャズの演奏と、映画音楽の作曲などジャンルを越えて幅広く活躍した巨匠です。
このような、垣根を作らない音楽家は、肩肘を張らず温かく人間的な情緒あふれる演奏をする人が多いのですが、彼もそのひとりといえます。洗練されたジャズはクラシックを聴きなれた人におすすめです。
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デニス・マツーエフ
デニス・マツーエフは1975年ロシア生まれのクラシックピアニストです。モスクワ音楽学院出身で、1998年に三大ピアノコンクールであるチャイコフスキーコンクール優勝という快挙の後、世界的に活躍している若手ヴィルトオーソです。ロシアのピアニストは、彼のような重量級戦車のような圧倒的な技術で鍵盤の底から音を叩きだすタイプの人が多くいます。
マツーエフもそのタイプで、若いエネルギーをクラシック曲のみに注ぐよりも、即興要素の強いジャズにその能力を遺憾なく発揮することで生き生きと輝いているようです。190cmを越える体躯も演奏に迫力を感じさせ、現在「ノリに乗っている大型ピアニスト」「将来巨匠として成長を期待できる」ピアニストとして注目を集めています。
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クラシックピアニストのジャズは美しい
いかがでしたでしょうか。ご紹介しました10人は主にクラシック出身ですが、彼らのジャズは皆「音がとても美しい」のです。クラシックピアニストは「すでに作られた音楽を作曲家の意図に従い忠実に表現する」ことにあります。つまり作品を磨きあげ、美しい音で再現することが彼らの本領なのです。ですからクラシックで鍛え上げられた技術で演奏されるジャズは極上のものとなるのでしょう。ぜひ彼らの演奏をじっくり聴いていただけたらと思います。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。