日本が誇る古き良き銘アニメ映画おすすめ10選
日本には素晴らしいアニメが沢山あります。王立宇宙軍オネアミスの翼、アキラ、ゴースト・イン・ザ・シェル、パーフェクトブルー、東京ゴッドファーザーズ、イノセンス、鉄コン筋クリート、パプリカ、イブの時間、スカイクロラを紹介します。
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アイキャッチ画像出典:www.flickr.com
ジブリだけじゃない、良作アニメ映画
日本のアニメは世界でも高い評価を得ています。ジブリ作品、新海誠作品、ドラゴンボール、ナルト、ワンピースなどなど。でもそれだけじゃありません。今回はそれらを除いたひと昔前のサイバーパンク、スチームパンクや、鬼才今敏がその名を世界に轟かせた作品、自分とは何か・生きるとは何かについて考えさせられる作品など、10作品を選びました。
・王立宇宙軍 オネアミスの翼(1987年、山賀博之監督作品)
・AKIRA(1988年、大友克洋監督作品)
・GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995年、押井守監督作品)
・パーフェクトブルー(1998年、今敏監督作品)
・東京ゴッドファーザーズ(2003年、今敏監督作品)
・イノセンス(2004年、押井守監督作品)
・鉄コン筋クリート(2006年、マイケル・アリアス監督作品)
・パプリカ(2007年、今敏監督作品)
・イブの時間(2008年、吉浦康裕監督作品)
・スカイクロラ(2008年、押井守監督作品)
王立宇宙軍 オネアミスの翼(1987)
地球に似た星にある一国「オネアミス王国」が舞台です。何もしない落第部隊、と世間から見下されている王立宇宙軍に所属する主人公シロツグ・ラーダット。彼は戦闘機乗りに憧れていましたが、仕方なく宇宙軍に入隊し、つまらない日常を過ごしていました。彼はある日、同僚たちと歓楽街で飲み歩いていたところ、布教活動中のリイクニ・ノンデライコに出会います。争うことを嫌う彼女に「何もしない部隊」である宇宙軍に所属していることを褒められて調子に乗ったシロツグは、人類初の有人人工衛星打ち上げ計画に志願します。「お前にはできっこない」と言われながらも、訓練や人間関係などの様々な障壁を乗り越え、シロツグは成長していきます。
当時の製作スタッフの平均年齢は23歳、そこには苦労が
当時のスタッフは新世紀エヴァンゲリオンの貞本義行と庵野秀明と摩砂雪、超時空要塞マクロスの飯田史雄と山賀博之、ルパン三世や銀河鉄道999の森山雄治などなど、現在ではアニメ製作の第一線で活躍する超精鋭スタッフが勢揃いでした。しかし全員が若く経験も浅かったためために、総製作費8億円、音楽に坂本龍一を起用したビッグプロジェクトを任せるには荷が重すぎると、「お前らにはできっこない」と社内で言われていたそうです。
さらに、映画が完成する前に予算が底をつくという大問題も起きたようで、公開が危ぶまれたこともあったようです。それでもなんとか障壁を乗り越えて映画を完成させることに成功したスタッフには、作中のシロツグ・ラーダットと似た境遇を連想させられます。
庵野秀明が見せた神業
ファンの間で伝説となっているロケット発射のシーンです。機体から剥がれ落ちる氷の欠片はすべて人力によるもので、3秒のシーンで1カットあたり作画枚数250枚です。とても人間業とは思えません。
公開後、NHKのトップランナーに出演した庵野は「オネアミスの翼のときの自分がアニメーターとしてのピークでした」と語るほど、その力の入れ様は凄まじいものがあったようです。
「俺まだやるぞ!死んでも、上がってみせる」
出典:response.jp
いよいよ有人人工衛星打ち上げ計画の当日、基地のまわりは戦火に包まれ計画実行は危険というアナウンスがシロツグに入ります。
「ここで辞めたら俺たち何だ?ただのバカじゃないか。ここまで作ったものを全部捨てちまうつもりかよ。今日の今日までやってきたことだぞ。くだらないなんて悲しいこと言うなよ。立派だよ。みんな歴史の教科書に載るくらい立派だよ。俺まだやるぞ!死んでも、上がってみせる。嫌になった奴は帰れよ!俺はまだやるんだ!十分!立派に!元気にやるんだ!」
シロツグの言葉に諦めかけたメンバーは協力して打ち上げを試み、成功します。
日常に閉塞感や倦怠感を覚えながらも、何か言い訳を見つけては一歩踏み出すのを躊躇してしまうとことは誰にでもありますよね。失敗や変化が怖いのは人の性ですから仕方のないことです。でも、やらなきゃ何も始まらない。成功しなくても次につながる何かが見つかるかもしれない。そんな至極単純だけれど忘れがちな生き方を、作品とその製作秘話が教えてくれます。
AKIRA(1988)
1982年、日本に新型爆弾が投下され第三次世界大戦が勃発し、世界は荒廃します。大戦が終結したのち東京湾に新都市ネオ東京が建設されました。
時は経ち2019年、主人公である金田正太郎は自身が率いる暴走族と共に旧東京を走っていたところ、仲間である島鉄雄が何者かと接触事故を起こし、鉄雄は政府に捕われ隔離病棟に収容されます。そこで不思議な力に目覚めた鉄雄は、コンプレックスを募らせていた金田に復讐を考え脱走。再び鉄雄と再会した金田は彼の力が何なのか真相を探ります。その最中で度々登場する単語「アキラ」とは一体何なのでしょうか。
音楽
アキラの世界観を演出するのに一役買っているのが音楽です。ガムランやケチャといった民族楽器、コーラスを多用した楽曲は、アジア的・宗教的な雰囲気を感じさせます。アキラは海外から絶大な評価を得ていますが、これはそういった音楽から醸し出される異文化的な要素に魅せられる人が多いからではないでしょうか。制作を担当した「芸能山城組」は民族音楽をルーツに持つパフォーマンス集団で、アキラでの成功を機にグローバルな活動を展開しています。
注目すべきはスケールの大きさ
ストーリーはもちろんのこと、この作品の見どころは精巧な作り込みです。
総制作費10億円、総セル画枚数15万枚、総カット枚数2200枚であるアキラは、当時のアニメ映画ではスタジオジブリを除けば考えられない規模でした。
アフレコ(アニメーションが完成してから台詞のレコーディング)ではなくプリレコ(台詞をレコーディングしてから口の動きを描画する)を採用しており、口の動きの種類は母音の数と同じ5種類のパターンで描かれました。
作画の細かさも凄まじいものがあります。監督である大友克洋の要求するレベルが高すぎて、業界の精鋭スタッフを集めたはずなのに作業がスムーズに進まない、ということがしばしば。
以下は当時の美術スタッフによるものです。相当苦労したことが伺えます。
「普通なら、ガラスの光った感じで誤魔化してしまうようなビルの窓一つでも、照明とか、机の上に乗っている小物まで克明に描いてあるんです。しかも、普段は中景からロングっていうのはボカして見せるんですけど、大友さんの場合、手前に大きなビルがあって、その後ろに何千階という高層ビル群がある。そういう奥行きを出すのが難しかったですね。手前のビルの窓を3ミリぐらいで描くと、遠くの方は0.5ミリぐらい、さらにその奥にビルがあると、もうどうしていいのか…」 (『AKIRA』劇場用パンフレットより)
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊(1995)
舞台は企業のネットが星を被い電子や光が駆け巡っても国家や民族が消えてなくなるほど情報化されていない近未来。主人公の草薙素子は、他人の脳にハッキングし人形のように操るハッカー、「人形使い」を追っていますが、容疑者はいづれもハッキングされた「人形」で、彼本人の実態を掴むことが出来ずにいます。
素子の所属する公安9課は捜査の途中、ある義体メーカーから逃走した女性型義体を確保します。補助電脳のみで自律行動する義体にはゴーストのようなものが宿っており、更に捜査を進めるとその義体が人形使いであることが判明します。
これぞ日本の近未来
出典:collider.com
人形使いが自身を一生命体であると主張するシーンがありますが、これが重要な意味を持っています。
作品が提起する問題は「人と機械の境界はどこか?」ということです。舞台は科学が高度に発展した日本で、全身義体をはじめとする様々な技術が登場します。電脳化が可能になった舞台において、人も機械も形は違えど、果たす役割に大きな差はありません。むしろ生身の人にやらせるより効率の良い作業サイボーグやAIだっていますし、自意識を持った機械、人形使いの登場によって人と機械の線引きがよく分からなくなります。
これは私たちが生きる現実にも当てはまる話で、近い将来に実現しうる科学技術を倫理的な観点でコントロールしよう、という主張に通じます。作品は舞台、技術、思想において日本の近未来を実に的確に、また風刺的に描かれています。
川井憲次と西田社中が演出する世界観
アキラの項でも書きましたが、ここでもやはり音楽が肝。担当は日本の映画音楽業界の重鎮、川井憲次です。後で紹介する作品、イノセンス、スカイクロラの音楽も彼が担当しています。女性民謡グループの石田社中をコーラスに起用し、さらに太鼓や鈴を多用することでアジア的で独特な雰囲気を演出することに成功しています。百聞は一見に如かず、聴いてみてください。
ハリウッドで実写化されたゴースト・イン・ザ・シェル
2017年には実写版がハリウッドで制作されました。
草薙素子役にスカーレット・ヨハンソン、公安9課課長の荒巻大輔役に北野武が出演しています。
内容は異なり、ハリウッドが本家をどう解釈して、どう作ったのかが見どころです。
パーフェクトブルー(1998)
主人公、霧越未麻は女優へ転身するためアイドルグループを脱退します。アイドル時代のイメージを払拭するために大胆な役に挑戦しますが、周りの人間はアイドル時代の彼女では考えられない行動に、「これは彼女が自ら望んだ選択なのだろうか?」と疑問を抱き、未麻本人もそう考え始めます。ある時、アイドル時代の彼女の幻影が現れ、実りのない生活に皮肉を吐き捨てます。やがてストーカーと思しき何者かにスタッフが殺される事件が発生。彼女は肉体的にも精神的にも追い込まれていきます。
本当の自分はどこ?
女優に転身したばかりの未麻に「あなた、誰なの?」というセリフが与えられます。一言だからといって手抜きは許されません。彼女はそのセリフだけをひたすら練習します。これが最大の伏線であり、テーマです。
ストーカーによる未麻の偽ブログでは、自分ならば書くであろう内容があまりに忠実に綴られていたために、本当の自分は誰なのか?と自問します。さらにアイドル時代の自分の幻影が現れたときにも、女優である自分は偽物で、アイドルの自分が本物なのではないか?と自問します。
関係者が次々殺され、女優業にも価値を見出せず、混沌とした状況で彼女が最終的に出した結論とは…。
東京ゴッドファーザーズ(2003)
主人公はオカマのハナ、自称元競輪選手のギン、家出少女のミユキで、全員ホームレスです。12月24日の夜、クリスマスプレゼントなるものを探しにゴミ捨て場に来た3人は、捨て子を発見。赤ちゃんに清子と名付け育てると言い張るハナですが、充実した生活を送ることは無理だと説得され、実の両親を探すことに。
ユーモラスなキャラクター
左から銀、中央上がミユキ、中央下が清子、右がハナ
彼氏と死別したことで生きる気力を失ったハナ、ギャンブルで借金を背負い家族を捨てたギン、ひょんなことがきっかけて口論になった父親を刺したミユキ。主人公たちはそれぞれ複雑な過去を持っています。しかし、なんとかして過去を乗り越えんとする力強さが作中で散見されます。とても人間的ですよね。
清子の実親を探す中で3人が見出すもの
清子の両親を探す中で3人の過去にふれる場面があります。ハナは疎遠になっていたスナックのママにすべてを話し、ギンは入院中に看護婦である娘に、ミユキは捨て子事件を担当していた警官である父に再会します。そこで各々は、目を背け続けた過去にしっかりと向き合いこれからの糧にしようとします。
東京ゴッドファーザーズは捨て子の両親を探すだけの物語ではなく、主人公たちの生き方を探す物語でもあるのです。
イノセンス(2005)
GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊の続編で、人形使い事件で草薙素子が失踪してから3年後の物語です。ロクス・ソルス社製少女型愛玩ガイノイドが所有者を殺害する事件が各所で発生しますが、当局と遺族の示談・和解が不審なほど滞らず成立していること、政界や公安の人間が関与していることから公安9課のバトーとトグサは捜査を始めます。
人間と機械の狭間で葛藤するバトーのドラマ
バトーは脳以外を義体化したサイボーグです。事件の捜査を進める過程で彼自身が人間側なのか、それとも機械側なのかを思い悩む描写が散見されます。その比較対象として登場するのが、相棒のトグサです。トグサは義体化を施していない生身の人間で、妻と娘がいます。家庭や愛といったものを第一に考えるトグサと、並大抵のことでは死なないバトーのすれ違いが人間と機械(バトー自身こちら側に寄っていると思っています)の違いを浮き彫りにしています。
前作ゴースト・イン・ザ・シェルよりも実写的になったヴィジュアル
イノセンスの作画監督には、黄瀬和哉、西尾鉄也、沖浦啓之の一流アニメーターを迎えています。しかし監督押井守の要求レベルが高すぎるために延々と作業の終わらない日が続いたようです。バトーが食料品でハッキングされるシーンは、「3次元の箱庭を作ってデジタル撮影したらどうなるか?」というコンセプトで作られました。作業はやはり難航し、このシーンの製作だけに1年を要しました。
そんな日本を代表するアニメ職人たちが準備期間2年、実制作期間3年をかけて完成したイノセンスは誰も見たことのない超絶的なクオリティに仕上がりました。
鉄コン筋クリート(2006)
義理と人情、善と悪が蔓延する街、宝町が舞台のこの作品。主人公のクロとシロは、超人的な身体能力で悪戯をする日々を送っていましたが、子供の城建設プロジェクトという奇妙な計画が始まるとともに、その日常は崩れます。プロジェクトに反発するシロとクロは殺し屋に追われ、その最中で2人は別れます。何をするにも一緒だった彼らは何を思うのか。
世界観
舞台は都市開発が遅れたレトロな雰囲気漂う街、宝町。宗教的な造形の建物がびっしりと立ち並び、日本というよりは東南アジア、インドの景観に近いような気がしますが、コインランドリーや銭湯とかも出てきます。ちなみに公式サイトでは作品に登場する街並みがまとめられています。
http://www.tekkon.net/
音楽はPlaidが担当
楽曲提供はエレクトロニカの大御所、ワープレコーズ所属のPlaid(プラッド)です。上で述べたようにアジアテイストな映画の音楽にエレクトロニカ?と思うかもしれませんが、完璧に作品とシンクロしています。オープニングで流れる"This City"ではプラッドの武器でもあるアンビエントなグルーヴが見る側を物語の世界に一気に引き込みます。
ちなみにエンディングだけはASIAN KUNG-FU GENERATIONの「或る街の群青」が起用されました。
二人一緒じゃないと見つからない
シロはもともと独りでしたがクロに出会ってから行動を共にするようになりました。宝町に長年住む源六は、クロに助けられなかったらシロはこの街でとっくに野垂れ死んでいた、と言います。それからはクロがシロの面倒を見るのが当たり前になっており、若干苛立ちを覚えることもあったクロ。しかし、子供の城建設プロジェクトが発端で別れて以来、彼らの心境に変化が現れます。
シロはクロの心に欠けた部分を自分が持っていて、クロは自分の心の穴を埋めてくれるのはシロであると。そこで初めてお互いが補完し合っていたことに気づきます。物語終盤でプロジェクトが中止になり、二人は再び行動を共にします。エンディング間際、海辺に家を建てる夢を叶えるべく二人が奔走するシーンでは、キャッチコピーである「二人一緒じゃないと見つからない」の意味が明示されていると言えます。
パプリカ(2007)
千葉敦子は自身が研究・開発したDCミニなる機械を用いて他人と夢を共有し、精神治療を行うセラピストです。ある日、DCミニが盗まれたと研究所に招集される彼女とその同僚ですが、そこで所長が発狂。検査してみると、DCミニを使った何者かによって精神を汚染されたためであると判明。装置がテロに悪用される事態を避けるべく、千葉は犯人の捜査に乗り出します。
圧倒的な彩色美と目まぐるしい展開
人の夢や精神状態を映像化することは極めて困難です。それらが実写的であるとは限りませんし、何よりぶっ飛んでいることが多いからです。この課題を監督、今敏はカラフルな色使いと展開の多さで表現しました。
物語の後半で夢の中を練り歩くシーンがあります。パレードと言った方が正しいかもしれません。そのカオスっぷりは10年前に映画館で観た筆者の脳裏にしっかりと焼き付いています。
際限なく広がる人の精神状態を、アニメーションがもつ武器を活かして具現化に成功したこのシーンは海外でも高い評価を得ています。アメリカでの公開当時、ネット上では「何が何だか分からない」、「頭がおかしくなりそうだ」等のコメントが散見されましたが、悪い意味ではありません。というのも、パプリカが米国で興収1億円を突破したのは「ハウルの動く城」以来だったそうで、その人気は数字に裏打ちされていると言えるからです。
イブの時間(2008)
家庭向けのアンドロイド、ハウスロイドが普及した時代が舞台で、主人公である向坂リクオの家にはハウスロイドのサミィがいます。ある日、リクオはサミィに命令した覚えのない行動記録を発見します。その行動は家に誰もいない時間に繰り返されていました。彼女に搭載されているGPSを頼りに、リクオはサミィを尾行したところ、たどり着いたのは路地裏にある喫茶店「イブの時間」でした。イブの時間ではロボットと人間を区別しないという奇妙なルールがあり、ロボットは自分の意思で他の「客」と思い思いにコミュニケーションをとることが可能です。リクオはサミィが店内で振舞う様子を見て、ハウスロイドに対する考え方を少しずつ変えていくのでした。
ロボット倫理委員会が担う役割
作中ではロボットやハウスロイドに依存する人々に注意喚起を促すため「ロボット倫理委員会」なるものが設置されており、悪役のような立ち位置で登場します。これは私たちの実生活において機械による全自動化を良いものと捉えない流れに対する皮肉だと思います。一般と逆の視点に立って主張を展開する、これが作品の面白いところです。
AI(人工知能)は人工物であれ知能であるがゆえに理性を持ち、人間を思いやることだってしますし、恋だってする設定になっています。しかし人間はAIを「こころ」はなく、手段としての道具であるとして認識しています。果たして必ずしもそうだと言えるでしょうか?
この作品は、今より科学技術が発展したときに出てくるであろうこの疑問を、ロボット倫理委員会という媒体を通して私たちに投げかけています。
スカイクロラ (2008)
舞台は平和であることを世間に認識させる手段として、企業同士で戦争が繰り返される世界。企業は不老不死の少年少女、キルドレを戦闘機のパイロットとして戦争に投入し、勝利することで利潤を得ています。このビジネス戦争に組み込まれたキルドレが物語の焦点です。
キルドレは外的要因で死亡しても、輪廻転生する
出典:koryamata.jp
「君は生きろ。何かが変わるまで」
キルドレは戦死しても、その魂が別の肉体に宿って転生します。そして企業に雇われてパイロットなり、永遠に戦争に参加し続けなければなりません。
主人公、函南ユウヒチの上司、草薙水素はそのことを知っていると同時に絶望しています。函南の前任者である栗田ジンロウは草薙と愛し合っていましたが、その運命を呪った彼女が彼を射殺しました。後任の函南は栗田の生まれ変わりで、やはり草薙と恋に落ちます。ふとしたことがきっかけでキルドレの輪廻転生を確信した函南は、心中を図ろうとする草薙に「君は生きろ。何かが変わるまで」言い、その運命に抗おうとします。
運命を背負っているのは他ならぬ自分であること
作品の主題は「社会構造に組み込まれることなく、主体的に生きることの重要性」だと思います。
企業の利潤追求のためにパイロットとして戦争に参加することが社会構造に組み込まれることの比喩です。
その構造に呑まれ、死んでも転生することに絶望し現実から目を背けていては何も生まれません。
だからこそ「何かが変わるまで」強く生きることが大事なのです。なぜなら、運命を背負っているのは他ならぬ自分だからです。
原作のスカイ・クロラシリーズ
森博嗣の小説スカイ・クロラシリーズの一作目が原作です。2作目以降は草薙の過去についてなど、映画では語られない部分が沢山あります。映画が面白いと思った方はハマると思うので読んでみてください。
1.スカイ・クロラ(The Sky Crawlers)
2.ナ・バ・テア(None But Air)
3.ダウン・ツ・ヘヴン(Down to Heaven)
4.フラッタ・リンツ・ライフ(Flutter into Life)
5.クレィドゥ・ザ・スカイ(Cradle the Sky)
6.スカイ・イクリプス(Sky Eclipse)
おわりに
いかがでしたか?ほっこりするものから、やや難しい題材を扱ったものまで紹介しました。その中で何かひとつでも興味をもっていただけたら幸いです。取り上げた作品監督の別作品でもまだまだ面白い作品はたくさんありますので、そちらもチェックしてみてください。