忘れられない衝撃・・・物議を醸した問題作映画おすすめ15選
ある国では上映禁止に、とある映画館では失神者続出、またその映画が事件を誘発・・・今回ご紹介したいのは多くの物議を醸した、また政治や社会の様々な問題を扱った映画たち。その衝撃の問題作を、心してご覧ください。
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いろいろな意味で“大問題”な映画
世の中には様々な映画であふれていますが、中には“問題作”と言われるような衝撃の内容を取り扱った作品も。政治問題を痛烈に批判していたり、犯罪を引き起こすほどの影響力を持ってしまったり、また知らなくてはいけない社会の問題を切り取っていたり。今ではもう撮られることはないようなセンセーショナルな作品も存在するんです。
ただの娯楽映画ではない、重厚なメッセージがこめられた映画たちはきっと1度観たら2度と忘れられないはず。今回は1900年代前半の作品から近年の作品まで、映画史に残る“問題作”映画を15選ご紹介します。
1. 時計じかけのオレンジ (1971)
作品概要・あらすじ
『2001年宇宙の旅』や『フルメタル・ジャケット』を手がける鬼才、スタンリー・キューブリックがによる映画が『時計じかけのオレンジ』です。
舞台は近未来、人々が衣食住に困ることなく生活できるようになった世界。主人公の少年アレックスは今日もドラッグ入りのミルクを飲み、仲間と暴力に明け暮れています。ある日殺人事件をきっかけに仲間に裏切られ、捕まってしまうアレックス。服役中彼は、暴力描写に対して拒否反応を起こすようになる“ルドヴィコ療法”を受けさせられるのですが・・・
公開から40年以上経った今でもカルト的人気を誇る、キューブリック監督の代表作品です。
何十年も封印させられていた?
暴力と人間の欲望、そして人間を“時計じかけ”のようにしてしまう全体主義社会への風刺映画である『時計じかけのオレンジ』。しかし劇中での刺激の強いバイオレンス描写が、「暴力や犯罪を誘発する」との批判をうけ、イギリスやアイルランドではなんと30年近くもこの映画を観ることができなかったのだとか。また映画に酷似した事件がおこったことから論争が持ち上がり、キューブリック監督には脅迫状が多数寄せられてしまったそうです。
主演俳優が撮影中に怪我をしたり、描写の酷さに女優が降板したり。とにかく問題だらけな『時計じかけのオレンジ』。しかしそのファッショナブルで独特の小道具や映像、今観ても色あせないスタイリッシュさは多くのファンを魅了し続けています。観ればもしかしたら、あなたのオールタイムベスト映画に仲間入りするかもしれません。
公開 : 1972年4月20日
監督 : スタンリー・キューブリック
出演 : マルコム・マクダウェル、パトリック・マギー
2. マグダレンの祈り (2002)
作品概要・あらすじ
舞台は1964年、アイルランドのダブリン。マグダレン修道院に、3人の少女が収容されるところからこの物語は始まります。マーガレットは従兄弟に強姦をうけたこと、ローズは未婚のまま出産したこと、そして孤児のバーナデットはその美しさが少年たちを惹きつけてしまうからという理由が“罪”とみなされてしまうのです。
彼女たちを待っていたのは過酷な生活。厳しい労働に刑務所のように自由の無い生活、そして修道女や神父たちからの暴言や非人道的な行為・・・実在した“マグダレン精神病院(洗濯所)”を舞台に展開される衝撃作です。
愚かな人間の姿が浮き彫りになる作品
“性的に堕落した”と一方的にみなされた女性たち、年端も満たない少女たち、そして孤児たちが収容されていた当時の“修道院”。別名“洗濯所”ともいわれ、彼女たちは「罪を洗い流す」という名目のもとに過酷な洗濯労働を強いられていたのだとか。
罪とは思えない理由によって修道院に連れてこられ、非人道的な扱いを受ける少女たち。彼女たちに心ない罵声をあびせる修道女たちも、自分たちのしていることがすべて正しいと思っている所が最もおそろしい所です。彼らが崇拝している神の存在とは、信仰とは。人間の愚かしさをえぐりだした『マグダレンの祈り』、困難に立ち向かっていく女性たちの姿をぜひご覧ください。
公開 : 2003年10月11日
監督 : ピーター・マラン
出演 : アンヌ=マリー・ダフ、ノラ=ジェーン・ヌーン
3. KIDS/キッズ (1995)
作品概要・あらすじ
1990年代、薬物や快楽行動に溺れるストリートの若者たちの姿を撮り続けたアメリカの写真家、ラリー・クラーク。自身も銃の不法所持や覚せい剤の経験がある彼が初監督を務めた作品が『KIDS/キッズ』です。
ニューヨーク市内。処女の少女と関係を持つことだけを生きがいにしている少年テリーと、クレイジーな親友のキャスパー。今日もテリーは自慢話をキャスパーに聞かせ、街をぶらぶらしながら過ごす・・・テリーとキャスパー、そしてテリーと寝たことによってHIVに感染した少女ジェニーを中心としたドキュメンタリー風映画です。
HIVが蔓延する街で生きる、堕落した若者たちを描く
1990年代、HIVが流行しているニューヨーク市内。麻薬と堕落した性行為にふける若者たちを描いた『KIDS/キッズ』は、あまりにも赤裸々に若者たちの様子を映していることから公開当初「問題作」「衝撃作」と大きくとりあげられました。しかし写真集のページをめくっているような、ラリー・クラークのセンスあふれる芸術的な映像は高く評価され、今でもファンをひきつけてやまない作品です。
ジェニーを演じたのは、1990年代のファッションアイコンであり、今でも女優やデザイナーとして活躍し続けるクロエ・セヴィニー。お洒落で退廃的な映画『KIDS/キッズ』、ストリートカルチャーが好きな人には特におすすめしたい作品です。
公開 : 1995年7月28日
監督 : ラリー・クラーク
出演 : レオ・フィッツパトリック、ジャスティン・ピアーズ、クロエ・セヴィニー
4. 肉 (2013)
作品概要・あらすじ
この短いタイトルだけで、なんだか不穏な空気を感じてしまいますよね!
舞台はニューヨークの田舎町。美しい少女、アイリスとローズの姉妹は弟のロリー、厳しい父親のフランク、そして母親のエマとごく普通の生活を送っていました。しかしある日、母のエマが事故で亡くなったことをきっかけに、姉妹は一家に伝わる儀式を行うことになるのです・・・
そのショッキングな描写からカンヌ国際映画祭やサンダンス映画祭で大変な話題となり、1部では上映禁止になった『肉』。家族に隠された秘密とは、いったい何なのでしょうか?
気持ち悪いのに、お腹がすく?
『肉』というタイトルから、内容が想像つく・・・という方も少なくないと思います。とにかく猟奇的でおぞましく、ショッキング!不道徳な描写のオンパレードに冷や汗がとまらないこと間違いなし。しかし気持ち悪いのに、なぜか観終わったあとはお腹が空いてしまうかも?
恐ろしい内容ですが、この映画は主人公のアイリスとローズの姉妹の可憐な容姿も魅力。美少女たちがどんどん非人道的な行動に走っていく姿に思わず引き込まれてしまうこと間違いなし!彼女たちを待ち受ける結末とは、そしてどんな“肉”が登場してしまうのか。残酷描写が苦手な人は、予告編の閲覧も注意してくださいね。
公開 : 2014年5月10日
監督 : ジム・ミックル
出演 : アンビル・チルダーズ、ジュリア・ガーナー、ビル・セイジ
5. アンチクライスト (2009)
作品概要・あらすじ
『メランコリア』や『ニンフォマニアック』などを手がけ、自身も鬱を患いながら映画を作り続ける鬼才ラース・ファン・トリアー。そんな彼によるホラー・スリラー映画が『アンチクライスト』です。
ある雪の日、行為にふけっている最中に子供を転落死させてしまったとある夫婦。妻は罪悪感から病んでしまい、セラピストの夫は妻を治療するために“エデン”と呼ばれる森の奥に彼女を連れていきます。しかし、彼女の精神状態は悪くなる一方で・・・
プロローグとエンディング、そして4章の物語から構成される『アンチクライスト』。1度観たらもう2度と観たくない!そんなトラウマになりそうな衝撃作です。
カップルで“絶対に”観ちゃいけない作品
過激な性描写、そして妻を治療していくうちに明らかになっていく衝撃の真実。やがて待ち受ける狂気に満ちたおどろおどろしい結末・・・その目と耳を疑いたくなるような内容から、カンヌ国際映画祭の上映時には4人もの失神者が出たのだとか。
男と女、快楽と理性、そして美しくも不気味な自然。観た後に放心状態になってしまうこと間違いなしの『アンチクライスト』、カップルや夫婦では絶対に観ないことをおすすめします!しかしその映像美はラース・ファン・トリアー監督の才能を目の当たりにできるはず。観るときは心して、挑んでみてください。
公開 : 2011年2月26日
監督 : ラース・ファン・トリアー
出演 : ウィレム・デフォー、シャルロット・ゲンズブール
6. ナチュラル・ボーン・キラーズ (1994)
作品概要・あらすじ
『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』シリーズでおなじみのクエンティン・タランティーノ原案のバイオレンス映画が『ナチュラル・ボーン・キラーズ』です。
父親から性的虐待をうけて育った少女、マロニーと同じく悲惨な幼少時代を送った青年、ミッキー。運命的に出会った2人は、各地で殺戮劇を繰り広げながら逃亡を続けます。そんな2人をテレビが追いかけるうちに、人々は彼らを崇めるようになっていき・・・
血にまみれた愛の逃避行
恋人たちの逃避行・・・というと甘美な響きですが、この2人は連続殺人鬼。行く先々で殺人を犯しながら逃走するミッキーとマロニーを追いかけるテレビ局の人間たち。この『ナチュラル・ボーン・キラーズ』は殺人鬼たちをまるでヒーローのように描いているために物議を醸しました。またこのミッキーとマロニーをまねたカップルの事件が続出!犯罪を誘発したとして訴訟されてしまったそうです。
問題作ではあるものの、不遇な生い立ちに生まれた2人が惹かれあい、彼らなりの愛を育んでいくラブストーリーとしても楽しめる『ナチュラル・ボーン・キラーズ』。バイオレンスだけれどロマンチック?そんな世界観をお楽しみください!
公開 : 1995年2月4日
監督 : オリヴァー・ストーン
出演 : ウディ・ハレルソン、ジュリエット・ルイス
7. 最後の誘惑 (1998)
作品概要・あらすじ
『アビエイター』や『沈黙 サイレンス』など、数々の名作を世に出し続ける巨匠マーティン・スコセッシによる問題作が『最後の誘惑」です。
舞台は紀元前1世紀。十字架にかけられ、処刑されようとしていたイエス・キリストは死を目前にしてとある幻覚を見ることになります。キリストの“最後の誘惑とは、いったい何だったのでしょうか?
イエス・キリストを神の子としてではなく、1人の人間として描いた『最後の誘惑』。多くのキリスト教団体から上映禁止の声があがるなど、大問題になりました。
イエス・キリストも悩める男?
神の子として崇められているイエス・キリストが実は“マグダラのマリア”という女性と結婚し子供をもうけ、最後は普通の人間として死ぬ・・・という解釈から着想を得たという『最後の誘惑』。処女マリアが受胎し、“救世主”となった男ではなく、普通の家庭に生まれたのになぜか神の“代弁者”に選ばれてしまった。イエス・キリストをそんな1人の悩める男として描いている作品です。
実はこの映画にはローマ提督役として歌手のデヴィッド・ボウイも出演。キリスト教に対する知識がある方がより作品を理解できるのはもちろんですが、あまり詳しくなくとも「こんな解釈があるのか」と興味深く観ることのできる作品です。
公開 : 1989年1月28日
監督 : マーティン・スコセッシ
出演 : ウィレム・デフォー、バーバラ・ハーシー、ハーヴェイ・カイテル
8. ディア・ハンター (1978)
作品概要・あらすじ
1960年代におこったベトナム戦争。戦争で心身ともにトラウマをおった3人の帰還兵の姿を追った映画が『ディア・ハンター』です。
ベトナムに徴兵されたマイケル、ニック、スティーヴン。ごく普通の仲の良い友人同士であった彼らはベトナムに飛び、そこで戦争の悲惨さを目の当たりにし、やがて少しずつ正気を失っていく・・・彼らの住む故郷の町とベトナムのジャングルの風景の差が凄まじく、強烈なインパクトを与えます。
アカデミー賞作品賞、ニューヨーク映画批評家協会賞作品賞受賞など高い評価を受けたこの映画ですが、人種差別の描写があるとして物議を醸しました。
狂気をはらんだ彼らの結末とは・・・
『ディア・ハンター』で最も印象に残るシーン、それは捕虜の兵士たちがさせられるロシアン・ルーレットのシーン。それは拳銃に弾を1つだけこめ、捕虜たちが交互にこめかみに当てて打ち合うというもの。そのシーンの恐ろしさや迫力は尋常ではありません。マイケル、ニック、スティーヴンもそんなロシアン・ルーレットに参加させられることに・・・戦争の恐ろしさが胸にのしかかる、やるせない気持ちにさせられる作品です。
その残酷な描写や「ベトナム人を差別している」として問題になった今作ですが、愛や友情や兵士たちの人生を変えてしまう戦争をありのままに表現した反戦映画なのではないでしょうか。
公開 : 1979年3月17日
監督 : マイケル・チミノ
出演 : ロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、メリル・ストリープ
9. 意志の勝利 (1934)
作品概要・あらすじ
20世紀史上最大の問題作として、長らく封印され続けてきた映画があります。それがこの『意思の勝利』です。
ナチス・ドイツ政権下で製作されたこの映画。ナチスが1934年、ドイツ市内で一週間にわたりナチス党の力を民衆に知らせるために“意思の勝利”とした演説会を開催したことがありました。その記録をドキュメンタリーとして映しているのがこの作品です。当時の演説の様子を撮っているため、映画にはアドルフ・ヒトラー本人も映っているんです。
公開当初は半ば強制的にドイツ国民は観に行かされ、ドイツ史上最大規模となる観客数を動員したと言われているこの作品。しかしプロパガンダ映画として現在では、法律で視聴が禁止されているそうです。
監督をも呪い続けた作品
この映画を監督したのは、当時若くして才能を評価されていた女性監督レニ・リーフェンシュタールです。彼女はヒトラー自身から製作を依頼されたのだとか。ナチズムを推進させる内容ではありますが、
『意思の勝利』はその映像技術や美しさは高く評価されています。しかしナチスに協力したとして、彼女は戦後逮捕され、映画界からも黙殺されることになってしまいます。彼女はナチス党員ではなかったものの、生涯にわたって批判され続けたのです。
“呪われた映画”として知られる危険な作品『意思の勝利』。私たちに2度と悲劇を起こしてはならないと教えてくれ、平和の大切さを改めて確認させてくれる映画でもあります。
公開:1942年3月
監督 : レニー・リーフェンシュタール
出演 : アドルフ・ヒトラー、ルドルフ・ヘス
10. 眠れる美女 (2012)
作品概要・あらすじ
代表作『蝶の夢』など、精神分析的な作品や社会的、政治的な作品を得意とするイタリアの巨匠、マルコ・ベロッキオが近年手がけた映画がが『眠れる美女』です。
昏睡状態の女性の延命装置を止めることを許可した最高裁の認定をめぐって、全国的に議論が巻き起こっている2009年のイタリア。同じく昏睡状態にある娘をもつ女優、自殺願望のある女性と向き合う医師、かつて妻の延命をとめたことのある政治家・・・“尊厳死”をめぐる3組の人々を描いた物語です。
人間の生死をめぐる群像劇
『眠れる美女』というファンタジー作品のような響きの作品ですが、“尊厳死”という考えさせられるテーマをえぐりだしているこの作品。死をのぞんでいる人間。植物状態になってしまった人間の“生きる”とは、“死”とは。政治、医療、宗教3つの視点から尊厳死について、鋭く、そしてエモーショナルに描き出しています。
3つの立場でそれぞれ悩む登場人物たち。どんな行動をとることが正しいのか、何がしてはいけないのか・・・ぜひ彼らと一緒に映画を観ながら、深く重いそのテーマについて考えてみてくださいね。
公開 : 2013年10月19日
監督 : マルコ・ベロッキオ
出演 : アルバ・ロルヴァケル、イザベル・ユベール、トニ・セルヴィッロ
11. 華氏911 (2004)
作品概要・あらすじ
ドキュメンタリー作品を多く手がけている監督、マイケル・ムーアによる超話題作が『華氏911』です。この映画では9.11のテロ事件を軸とし、「なぜアメリカが標的となったか」「ブッシュ一族とオサマ・ヴィン・ラディン氏の間の癒着』などを描いています。
「ブッシュ大統領を再選させないためにために製作した」と語っているマイケル・ムーア監督。カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞するなど、ドキュメンタリー映画の枠を超えて高く評価されました。
コメディタッチの痛烈な風刺映画
当時のブッシュ政権を面白おかしく、実際の映像で迫力たっぷりに見せてくる前半。その編集の巧みさと、思わず笑いがこぼれてしまう情けない音楽と映像に一気に映画に引き込まれてしまいます。
実際に2004年のアメリカ合衆国大統領選挙の前に上映され、大きな話題となったこの映画。しかしこの映画は単なるブッシュ政権批判ではなく、9.11後のアメリカ全体が抱える問題について考えさせてくれます。ドキュメンタリーを今まであまり観たことがない・・・という人でも楽しんで観ることのできる『華氏911』、ぜひマイケル・ムーアの思想にがっつり触れてみてください。
公開 : 2004年8月11日
監督 : マイケル・ムーア
出演 : マイケル・ムーア、ジョージ・ブッシュ
12. ビリディアナ (1961)
作品概要・あらすじ
美しく貞淑な少女ビリディアナは、修道女になるために家を出ようとしています。彼女に魅せられている叔父のハイメは止めるためにとんだ嘘をつきますが、それでも家を出るビリディアナ。ショックをうけたハイメはその後自殺し、罪悪感にみまわれるビリディアナは罪の意識を追い払うために街の貧しい人たちの救済活動にはげみます。
しかしそんな彼女に、さらなる混沌とした事態が待ち受けていて・・・
“ビリディアナ事件”にもなった問題作
カンヌ国際映画祭で金賞パルム・ドールを受賞しながらも、その内容からバチカンからは「神への冒涜だ」とそれ、製作されたスペインでも上映禁止処分を受けてしまった『ビリディアナ』。手がけたルイス・ブニュエル監督は母国から追放処分を受けてしまったのだとか。そんな“ビリディアナ事件”として語り継がれる、伝説の問題作なんです。
人の内側に潜む天使と悪魔の部分をあぶりだし、女性の性について描き、そして観る人全てを裏切るようなストーリー。一貫して奇妙なエロティシズムにつつまれている『ビリディアナ』。今観ても色あせることのない秀作です。
公開 : 1964年10月1日
監督 : ルイス・ブニュエル
出演 : シルビア・ピナル、フェルナンド・レイ
13. モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン (1979)
作品概要・あらすじ
イギリスの人気コメディグループ“モンティ・パイソン”。哲学や同性愛など、なかなかきわどい話題を扱ったテレビ番組『空飛ぶモンティ・パイソン』などを手がける彼らによる映画が『ライフ・オブ・ブライアン』です。
舞台は西暦33年のエルサレム、イエス・キリストの隣の家で生まれた青年ブライアンの一生を描いたコメディです。モンティ・パイソン史上最大の問題作と言われている作品でもあります。
冒涜?それとも面白いだけ?
宗教的なパロディーが多く、冒涜的だとして物議を醸した『ライフ・オブ・ブライアン』。キリストが磔になっているシーンで皆が「人生の輝かしい面を見よう」という歌を合唱したり、聖書を面白おかしくかきたてていたり・・・しかし当時のイギリス社会に対する批判映画だとも、またコメディ映画として単純に楽しめる作品だとも言われています。
日本ではあまり“宗教論”はピンときませんが、しかし海外では想像する以上に多大な影響を及ぼしているようです。モンティ・パイソンなりの宗教観と笑いのセンスをつめこんだ『ライフ・オブ・ブライアン』。あなたはこの映画を、どう受け取りますか?
公開 : 1981年12月19日
監督 : テリー・ジョーンズ
出演 : グレアム・チャップマン、ジョン・クリーズ
14. パッション (2004)
作品概要・あらすじ
近年最も社会的反響を及ぼした作品といっても過言ではないのでしょうか。映画『パッション』は、イエス・キリストが捕らえられ、処刑までの12時間を描いた作品です。
手がけたのは『ブレイブハート』、『ハクソー・リッジ』の映画監督メル・ギブソン。彼はこの『パッッション』の構想に12年も費やし、そして私財もなげうったのだとか。当時のローマ教皇ヨハネ・パウロ2世もこの映画を観賞したそうです。
この“痛み”に耐えられるか
イエス・キリストが捕らえられるところから始まる『パッション』。その拷問シーンは目を覆いたくなるほど凄惨なもの。皮膚がとびちり、血が流れ落ち、釘が体に打ち込まれ、手足は折り曲げられる。そのあまりにも痛く、おそろしい残酷な描写にショック死する人もいたそうです。
終始やられっぱなしなイエス・キリストの描写、ユダヤ人の描写については批判もあった『パッション』。イエス・キリストが流す血の重みについて考えさせられ、終わった後には何も考えられなくなるほど胸に刻み込まれる作品です。ただ残酷なだけではない描写の奥にあるものを探しながら、ご覧ください。
公開 : 2004年5月1日
監督 : メル・ギブソン
出演 : ジム・カヴィーゼル、マヤ・モルゲンステルン
15. フリークス (1932)
作品概要・あらすじ
初公開のときのタイトルは『怪物團』。今では2度と製作されるようなことはない作品が『フリークス』です。
舞台は見世物小屋。美貌の軽業師クレオパトラに魅せられる小人の男、ハンス。しかしクレオパトラは怪力男のヘラクレスと実は通じていて・・・ストーリーは古典的な復讐劇ですが、この『フリークス』に出演している人々は実際に見世物小屋で芸人として働いている奇形者たち。今では考えられないような内容、そして今までに観たことがない世界に釘付けになってしまいます。
ハリウッドでは30年間上映禁止!
人権保護の法律も無かった昔、障害を持った人々が見世物小屋で働いていた時期がありました。監督のトッド・ブラウニングは幼少期、実際に見世物小屋で過ごしていた経験があるそうです。しかし『フリークス』はあまりにもセンセーショナルだとして、ハリウッドでは30年間も上映禁止とされていました。またトッド・ブラウニング監督はこの『フリークス』の後、事実上映画界から追放される形となってしまいました。
しかし決して重苦しいわけではない、女と男のもつれから生まれる悲喜劇を描いた『フリークス』。彼らが語る“掟”から、私たちが考えられることは多いはずです。
公開 : 1932年11月
監督 : トッド・ブラウニング
出演 : オグラ・バクラノヴァ、ジョニー・エック
“問題作”から考えられることとは?
政治的に、宗教的に、道徳的に。様々な問題や人の心の闇をあぶりだし、また公開後は物議を醸した“問題作”たち。刺激的で過激な描写、センセーショナルな内容に注目が集まるこれらの作品ですが、その奥に隠れる根本的なテーマから様々なことを学ぶことができます。観たら一生忘れない、人におすすめしていいか分からないけれど話したい!そんな問題作たち、ぜひご覧になってみてください。
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フリーライター。主に映画のことについて執筆中。