胸に焼きつく衝撃!1度は観ておきたいおすすめ戦争映画15選
私たちに悲惨な歴史を教えてくれる戦争映画。今を生きる私たちだからこそ、その歴史はしっかりと知っておかなければなりません。今回は第一次世界大戦から近年の戦争までを描いた名作戦争映画を15作品、厳選しました。
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今こそ観るべき、戦争映画
戦場の場面を再現した映画や、戦場に赴く父親とその家族を描いた物語。戦争によって引き裂かれた恋人たちの悲恋や、独裁者の目線から描いた作品。今までに数え切れないほど、戦争を取り扱った作品は世に送り出されてきました。重く衝撃的な余韻がのこる作品から涙がとまらないものまで、様々なジャンルの戦争映画をご紹介します。
1. プライベート・ライアン (1998)
作品概要・あらすじ
第二次世界大戦、アメリカ軍やイギリス軍をはじめとする連合軍が、ナチスが占領していたフランスを奪回するべくノルマンディー海岸から上陸した史上最大規模の作戦“ノルマンディー作戦”。『プライベート・ライアン』はそんなノルマンディー大作戦を舞台にした映画です。
1944年、ノルマンディー作戦後。ある日、アメリカ陸軍のミラー大尉に「ライアン二等兵を戦場から救出せよ」との指令がくだります。ライアンには3人の兄がいましたが、全員戦争で死亡。兄弟全員を死なせるわけにもいかないと判断したアメリカ軍上層部からの命令でした。ミラー大尉は7人の戦士を選び出し、ライアンの救出に臨むのですが・・・
ミラー大尉を演じるのは『フォレスト・ガンプ』や『グリーンマイル』など、名作に多数出演する俳優トム・ハンクス。物語の鍵を握るライアンを演じるのは『ボーン』シリーズでおなじみのマット・デイモンです。他にも『ワイルド・スピード』シリーズの顔である、ヴィン・ディーゼルも出演しています。
画面から伝わる戦場の残酷さ
冒頭から激しい戦いの場面で幕をあける『プライベート・ライアン』。手足がふきとんだり、血を流した兵士がごろごろと転がっていたり。最初から最後まで、ずっと戦いのシーンが続きます。その様子は目を背けたくなるほど凄惨なもの。しかし、戦争の恐ろしさを映画を通して知ることができます。第二次世界大戦のことを知る上で、欠かせない映画の1つです。アカデミー賞11部門にノミネートされた名作『プライベート・ライアン』、ぜひご覧ください。
公開 : 1998年9月26日
監督 : スティーヴン・スピルバーグ
出演 : トム・ハンクス、マット・デイモン、エドワード・バーンズ
2. 太陽の帝国 (1987)
作品概要・あらすじ
イギリスの作家、J・G・バラードが自身の体験に基づいて執筆した同名小説を映画化した作品が『太陽の帝国』です。
舞台は日中戦争最中の上海。イギリス人の少年のジムは、日本の戦闘機“零戦”に憧れていました。しかし、そんな日本軍が上海のイギリス租界を制圧したときにジムは両親とはぐれてしまいます。生き抜くために泥棒を働いたり、そして日本軍に捕らえられ、強制収容所にいれられたり・・・戦争の中、1人の少年が必死にもがきながら生き抜こうとする姿を描いた物語です。
主役のジムを演じるのは『バットマン』シリーズでおなじみ、今も俳優として活躍し続けるクリスチャン・ベール。子役時代の彼の演技を見ることができる作品でもあります。
日本人少年と育む友情、そして・・・
日本の戦闘機“零戦”に憧れながらも、皮肉なことに日本軍によって家族と引き離されてしまうジム。捕虜収容所や強制収容所にいれられても、彼はまわりの人々との交流によって少しずつ成長していきます。そんなある日、ジムは自分と同じく空に憧れを抱いている日本人の少年と親しくなるのです。『太陽の帝国』は、イギリスと日本の少年の友情の物語でもあります。
監督は『プライベート・ライアン』も手がけている巨匠、スティーヴン・スピルバーグ。たくましく明日へ進もうとする少年、ジムの物語はきっとあなたにとって忘れられないものになるでしょう。
公開 : 1993年4月10日
監督 : スティーヴン・スピルバーグ
出演 : クリスチャン・ベール、ベン・スティラー、片岡幸太郎
3. ジョニーは戦場へ行った (1971)
作品概要・あらすじ
物語の語り手は第一次世界大戦へ出征した青年、ジョー。彼は戦争で大怪我をおい、手足も失い、また触覚以外のすべての感覚を奪われていました。“意識ある肉の塊”となり、病院で人間扱いをしてもらえないジョー。戦争前の恋人との思い出、今は亡き父との思思い出にふけり、時には空想の世界に身を置き、そしてまた現実の意識へ引き戻される毎日。そしてある日、ジョーは自分に対して優しく接してくれる看護師と出会うのですが・・・
言葉にできない衝撃、戦争のむごさ
手足もない、目も見えない、耳も聞こえない。考えていることも伝えたいことも、周囲に何も伝えることはできない。あるのは触覚と意識だけ、そして自分に残されているのは果てしないほどの時間だけ。そんな絶望的な状況、想像できるでしょうか。
頭の中で過去の思い出や空想の世界に逃避しても、また現実の孤独と向き合わなくてはいけない。あまりにも衝撃的な内容に、言葉にできないほどの感情があふれてくる『ジョニーは戦場へ行った』。今を生きる私たちだからこそ、知らなくてはいけない戦争の恐ろしさを観ることができる作品です。
公開 : 1973年4月7日
監督 : ドルトン・トランボ
出演 : ティモシー・ボトムズ、マーシャ・ハント
4. レッド・バロン (2008)
作品概要・あらすじ
第一次世界大戦、“レッド・バロン(赤い悪魔)”の異名をもつドイツのパイロットがいました。彼の名前はマンフレート・フォン・リヒトホーフェン。『レッド・バロン』はそんなドイツのエースパイロットとして戦った、彼の人生を観ることができる伝記映画です。敵に最も恐れられたリヒトホーフェンの素顔を、パイロットたちの絆や看護師との恋と共に描かれています。
空に散っていく、青年パイロットたちの姿
どうしても第二次世界大戦下のナチス・ドイツを扱った戦争映画が多い中で、この第一次世界大戦下のドイツ人パイロットたちを描いた『レッド・バロン』はめずらしい作品かもしれません。「祖国のため」と戦い、若くして次々と空に散っていくパイロットたちの姿を丁寧に描いた『レッド・バロン』。
この映画はドイツ側からの視点で描かれていますが、同じ第一次世界大戦中のフランス・アメリカ側のパイロットたちを主人公にした作品が2006年の映画『フライボーイズ』です。この『フライボーイズ』にも、『レッド・バロン』のマンフレート・フォン・リヒトホーフェンが登場。2作品を合わせて観ると、第一次世界大戦のことをよりよく知ることができます。
公開 : 2011年5月21日
監督 : ニコライ・ミュラーション
出演 : マティアス・シュヴァイクフォアー、フォルカー・ブルッフ
5. ヒトラーのわすれもの (2015)
作品概要・あらすじ
舞台は1945年5月、ナチスドイツが降伏した後。占領から解放されたデンマークには、かつてナチスドイツがうめた地雷が多く残されていました。その地雷撤去のために、デンマークのドイツ人捕虜が動員されることになり・・・
歴史に忠実に制作されたこの『ヒトラーの忘れもの』は、アカデミー賞外国語映画賞にデンマーク代表として出品されました。
ヒトラーが残したものは、150万もの地雷だった
デンマークの美しい海岸にナチスドイツがうめたのは、なんと150万もの地雷でした。ヒトラーが残した地雷を撤去するために動員されたドイツ人捕虜たちは、ほとんどがまだあどけなさの残る10代の少年だったそうです。デンマーク人の軍曹は最初は捕虜たちにつらくあたりますが、やがて彼らと交流を深めるようになっていって・・・美しい海と反する恐ろしい地雷。叙情詩のような映像と、国境や年齢を超えた彼らの絆。健気に任務にあたり、仲間を思いやる少年たちの姿に目が熱くなってしまいます。淡々と静かに、平和の尊さを胸に訴えかけられるような作品です。
公開 : 2016年12月17日
監督 : マーチン・ピータ・サンフリト
出演 : ローラン・モラー、ミケル・ボー・フォロスゴー
6. 地獄の黙示録 (1979)
作品概要・あらすじ
1950年代から1970年代までベトナムで発生した大規模な戦争“ベトナム戦争”を舞台にしてつくられた映画が『地獄の黙示録』です。
主人公は妻と離婚してまでベトナム戦争に戻ってきたアメリカ陸軍将校、ウィラード大尉。戦地に戻ってきた彼にある任務が言いわたされます。それは元アメリカ陸軍特別部隊“グリーンベレー”の隊長でありながら、暴走してカンボジアのジャングルの中に自分の王国を築きあげているカーツ大佐を暗殺することでした。ウィラードは4人の部下とともに、哨戒艇でカーツ大佐の王国へと向かっていくのですが・・・
監督、フランシス・フォード・コッポラは自分の財産をなげうってまでこの映画に精力をそそいだそうです。『地獄の黙示録』はカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞、アカデミー賞には8部門にノミネート。戦争映画の金字塔的作品です。
ベトナム戦争を描いた叙情詩映画
カーツ大佐を暗殺するために、部下とともにジャングルを進んでいくウィラード大尉。途中で様々な恐ろしい光景を目にします。士官がいない状況で、暴走して戦うことをやめない兵士たち。麻薬におぼれる若い兵士たち。そんな中で次第にウィラード大尉の精神も均衡を保てなくなっていきます。戦争がもたらす狂気、今までに感じたことがないほどの恐怖を目の当たりにする2時間半。これは異常なのか、正常なのか?そのラストシーンはきっと観た人全員にとって、忘れられないものになるでしょう。
公開 : 1980年2月23日
監督 : フランシス・フォード・コッポラ
出演 : マーロン・ブロンド、マーティン・シーン、デニス・ホッパー
7. 戦争の犬たち (1980)
作品概要・あらすじ
舞台はアフリカの黒人独裁国。傭兵として活動する男、シャノンはイギリス政府からある依頼を受けます。それは黒人独裁国でクーデターを起こすことは可能かどうか調べてほしいというものでした。依頼者の男はイギリスの鉱山会社の代理人だったのです。シャノンは仲間とともに独裁国に侵入しますが、偵察者ということがばれてひどい拷問をうけてしまいます。命からがらアメリカに帰った彼は、恐怖政治の転覆のために再びその国へ戻ることを決めるのです。
クーデターの結末はいかに・・・
『戦争の犬たち』というタイトルですが、この映画で描かれているのは大規模な戦争ではなく、アフリカの小国でおこるクーデターです。このクーデターは1960年代におこったナイジェリアの内戦“ビアフラ戦争”や“コンゴ動乱”をモデルにしていると言われています。
主人公のシャノンや仲間たちは、自分の軍事力を金銭とひきかえて戦争に赴く“傭兵”。普段あまり馴染みがない言葉ですが、この傭兵という職業をよく知ることができる映画です。
アフリカの小国でのクーデターを描いているといっても、銃撃戦やアクションシーンは迫力そのもの。ハリウッドを代表する個性派俳優クリストファー・ウォーケンの熱演もポイントです。
公開 : 1981年3月28日
監督 : ジョン・アーヴィン
出演 : クリストファー・ウォーケン、トム・ベレンジャー
8. イングロリアス・バスターズ (2009)
作品概要・あらすじ
『パルプ・フィクション』や『キル・ビル』などを製作、自他ともに認める“映画オタク”なクエンティン・タランティーノ監督による異色の戦争映画が『イングロリアス・バスターズ』です。
5つの章で構成されているこの作品。舞台はナチスの占領下にあるフランスです。家族を皆殺しにされ、ただ1人生残りナチスへの復讐を誓う女性ショシャナ。ユダヤ系アメリカ人で結成された特殊部隊、ナチスの軍人をとらえては捕虜にせず処刑する“バスターズ”の隊長レイン中尉。この2人を中心に物語は展開されていきます。
レイン中尉を演じるのはブラット・ピット。『イングロリアス・バスターズ』はアカデミー賞では8部門にノミネートされ、戦争映画の新境地を築きあげました。
映画で戦争をぶっつぶせ!
フランス人、アメリカ人、イギリス人、ドイツ人。この作品には様々な人種が登場しますが、全てセリフはそのキャラクターたちの母国語で話されています。ブラット・ピット演じるナチスに恐れられる特殊部隊“バスターズ”の活動、ナチス・ドイツの残酷さ、そしてショシャナがもくろむ復讐。痛快アクションな見やすい作りではありますが、ところどころ挟み込まれるグロテスクで過激なシーンは戦争の恐ろしさをしっかりと物語っています。そして“映画の力で反戦を訴える”という、まさに映画が大好きなタランティーノ監督らしい作品なのです。
たくさんの登場人物たちの思惑が入り混じりながらすすむ物語は、いったいどこへ行き着くのでしょうか?その結末をぜひ見届けてみてください!
公開 : 2009年11月20日
監督 : クエンティン・タランティーノ
出演 : ブラット・ピット、マイケル・ファスペンダー、イーライ・ロス
9. 灼熱の魂 (2010)
作品概要・あらすじ
カナダに住む双子の姉弟、ジャンヌとシモン。2人の母親のナワルが突然息をひきとったと所から、物語ははじまります。長年ナワルを秘書として雇っていた公証人から、母の遺言を聞かされるジャンヌとシモン。その内容はまだ会ったこともない自分たちの父親と兄を探して、手紙を渡してほしいというものでした。2人は母の願いを叶えるべく、ナワルの生まれ故郷である中東に足を踏み入れるのです。
壮絶な人生を歩んできたある1人の女性の、“熱く焦げるような魂”を綴った物語です。
その結末に、きっと言葉を失う
ジャンヌとシモンが自分たちの母の知られざるルーツをたどる現在。ナワルの壮絶な若かりし頃を追った過去。交互に現在と過去の物語が展開されながら、ナワルにいったいなにがあったのか、そして家族の謎について解き明かされていきます。
レバノン内戦を舞台にしたこの『灼熱の魂』。虐殺の様子や恐ろしい拷問の様子、そして少年兵の姿・・・ナワルが生きてきた壮絶な社会に、言葉を失ってしまいます。今なお続く中東問題について知ることができる人間ドラマなのです。
ジャンヌとシモンの父親、兄とはいったい誰なのか。自分たちの母親はどのような人生を歩んできたのか。その結末は重く胸にのしかかること、間違いありません。
公開 : 2011年12月17日
監督 : ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演 : ルブナ・アザブル、マクシム・ゴーデット
10. 縞模様のパジャマの少年 (2009)
作品概要・あらすじ
ユダヤ人将校の父親をもつ8歳の少年ブルーノは、父親の仕事の都合でベルリンの郊外に家族で引っ越すことになります。前のように遊ぶ友達もいなければ辺鄙な田舎町で、寂しい思いをするブルーノ。そんなある日ブルーノは近くに不思議な施設を発見します。そしてそこに座り込んでいたのは、縞模様のパジャマを着たシュムエルという少年でした。次第に仲良くなっていく2人ですが、哀しい運命が彼らを待ち受けていたのです。
ドイツ人とユダヤ人少年の、悲劇と友情の物語
この“縞模様のパジャマ”というのはもちろん、ユダヤ人の強制収容所で着させられている服のこと。ユダヤ人を迫害するナチス・ドイツの軍人を父親にもつブルーノと、幼い体で懸命に日々の苦しい生活を乗り越えているシュムエル。2人の少年たちの間には国境や差別もありません。仲良くなっていく2人ですが、思いもよらない悲劇が待ち受けているのです。
少年たちが主人公の映画ですが、このラストシーンの衝撃と悲しみはきっと想像以上なのではないでしょうか。戦争の悲惨さを痛切に描き切った『縞模様のパジャマの少年』、涙なしには観られない作品です。
公開 : 2009年8月8日
監督 : マーク・ハーマン
出演 : エイサ・バターフィールド、ジャック・スキャンロン
11. マイ・ブラザー (2009)
作品概要・あらすじ
兵役にあたっている兄、サムは優しい人柄で誰にでも愛される人物。弟のトミーは兄とは対照的で、最近刑務所から出所したばかり。そんなサムはアフガニスタンに出征することになり、妻のグレースは子供達とともに夫の帰りを待っていました。ある日グレースのもとにサムの訃報が・・・悲しみにくれるグレースの心のよりどころとなったのは弟のトミー。そんな彼らのもとに、死んだはずのサムが突然帰ってきます。訃報は誤報で、サムは生きていたのです。しかしサムは戦場へ行く前とはガラリと人格が変わっていて・・・
サムを演じるのは元祖『スパイダーマン』シリーズでおなじみ、トビー・マグワイア。妻のグレースを演じるのは『レオン』『ブラック・スワン』のナタリー・ポートマン。弟のトミーを演じるのは『ミッション・8・ミニッツ』『複製された男』などに出演する演技派俳優、ジェイク・ギレンホールです。ハリウッドを代表する俳優たちの共演も大変話題となりました。
「戦争に終わりはない」
みなさんは“PTSD”という言葉をご存知でしょうか。強烈なショック体験や心外ストレスで、時間がたってからもそのことに対して強い恐怖を感じる病気です。アメリカでは戦争に赴いた兵士たちの多くが“PTSD”に悩まされており、自殺率もとても高いのです。このことは大きな社会問題になっています。
戦争から帰ってきたサム。以前の正義感にあふれた優しい夫、兄ではなく、その様子は完全に別人だった・・・1人の人間やその家族の人生を狂わせてしまう戦争。戦争から帰ってきても、決してそれは終わりではない。そんなメッセージがひしひしとしみる作品です。
公開 : 2010年6月4日
監督 : ジム・シェリダン
出演 : トビー・マグワイア、ナタリー・ポートマン、ジェイク・ギレンホール
12. 戦場でワルツを (2008)
作品概要・あらすじ
2006年冬。主人公アリ・フォルマンの友人は彼に「ひどい悪夢に悩まされている」と打ち明けます。友人はそれを1982年のレバノン侵攻の後遺症だというのですが、アリはその当時の出来事を全く思い出せませんでした。アリは自分の記憶を取り戻すため、心理学者や兵役時代の友人を訪ねて自分の過去に迫っていくのですが・・・
この映画の監督の名前もアリ・フォルマン。この『戦場でワルツを』は元兵士の監督による自伝的な作品なのです。アニメーション映像で兵士たちの心理や戦争のトラウマを綴ったこの作品はゴールデングローブ賞の外国語映画賞受賞、アカデミー賞にもノミネートされるなど高い評価を受けました。
詩的で斬新な戦争アニメーション
1970年代から1990年まで続いたレバノン内戦。キリスト教徒とアラブ人の衝突にシリアやイスラエルが絡み、多くの民間人も命を落とした中東の戦争です。『戦場でワルツを』で描かれているのはこのレバノン内戦に参加した兵士たちの声や心情。また独特のアニメーション映像が時に詩的に、時に残酷に戦争の様子を表しています。
現代まで続く戦争への皮肉と風刺がたっぷりとこめられた『戦場でワルツを』。監督自身でもある主人公の抜け落ちた記憶には、どんな真実が隠されているのでしょうか。胸に突き刺さるレバノン内戦の実態とその結末、ぜひ確かめてみてください。
公開 : 2009年11月28日
監督 : アリ・フォルマン
出演 : アリ・フォルマン、ミキ・レオン
13. ノー・マンズ・ランド (2001)
作品概要・あらすじ
1993年、ボスニア紛争。ボスニア軍の兵士たちは霧で迷い、敵であるセルビア軍の陣地に入り込んでしまいます。そうしているうちにセルビア軍の攻撃がはじまり、命からがら生き残ったチキとツェラはボスニア軍とセルビア軍の中間地帯“ノー・マンズ・ランド”に身を隠します。しかし、そこにセルビア軍の兵士がボスニア軍の偵察にやってきて・・・
アカデミー賞外国語映画賞受賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞など、全世界の観客を熱狂の渦に巻き込んだ反戦映画です。
ユーモアの先に待ち受けるものとは
無人地帯“ノー・マンズ・ランド”。そこで出会ったボスニア軍兵士と、セルビア軍兵士の青年。中間地点で出会った2人は言葉を交わしあいながら、じょじょに心の距離を縮めていきます。ユーモアに富んだ会話をする敵同士である彼ら。“笑い”や“ユーモア”があるからこそ、戦争の不毛さや絶望がより鈍く際立っている作品です。
いったい戦争とは誰が悪くて、何のためにあるのか。そんなことを深く考えさせられてしまう『ノー・マンズ・ランド』。あなたの心に深い余韻と痛烈なメッセージを焼き付ける傑作です。
公開 : 2002年5月25日
監督 : ダニス・タノヴィッチ
出演 : ブランコ・ジュリッチ、フィリプ・シュヴァゴビッチ
14. プラトーン (1986)
作品概要・あらすじ
先ほどご紹介した『地獄の黙示録』に続き、1980年代にベトナム戦争を題材に制作された映画がこの『プラトーン』です。
1967年、ベトナム戦争最中。白人青年のクリスは黒人や貧困層の同年代の若者ばかりが次々と軍に入隊することに憤りをおぼえ、両親の反対をおしきり大学も中退してアメリカ陸軍に志願します。クリスが出征することになったのは南ベトナムの最前線。しかしクリスを待ち受けていたのは、想像を絶する戦争の現実でした。
監督のオリバー・ストーン自身もベトナム戦争の帰還兵。自身の体験を基にして描いたこの『プラトーン』は、アカデミー賞作品賞を受賞しました。
戦争最前線の真実が、ここにある
タイトル『プラトーン』とは、軍隊の編成単位で“小隊”のこと。主人公、クリスが配属されたのはゲリラ戦に悩まされる戦争最前線。暑いジャングルの中でどこに潜んでいるか分からない敵と対峙し続ける、その過酷な環境にクリスは後悔することになります。
30年以上前の映画ですが、残酷な描写やまるでその密林の中にいるような臨場感、息をつかせない緊張感にぐいぐいと引き込まれてしまいます。じょじょに正気を保てなくなり、常軌を逸していく人間の姿が迫力たっぷりに描かれています。
戦争映画を語る上で外せない『プラトーン』。ぜひこの機会に手にとってみてはいかがでしょうか。
公開 : 1987年4月29日
監督 : オリバー・ストーン
出演 : チャーリー・シーン、ウィレム・デフォー
15. フルメタル・ジャケット (1987)
作品概要・あらすじ
最後にご紹介するのもベトナム戦争を題材にした映画『フルメタル・ジャケット』です。
物語は2部構成。前半ではアメリカ海兵隊に志願した若者たちが、鬼教官のもとで厳しい訓練を受ける姿を、後半では1人前の海兵隊となった彼らがベトナム戦争に出征していく姿を描いています。
監督は『シャイニング』や『時計じかけのオレンジ』、『2001年宇宙の旅』などホラーやSF作品まで幅広い作品を手がけた巨匠、スタンリー・キューブリック。他のどの戦争映画とも違った味わいの作品となっています。
ただ冷徹に、無情に、戦争を切り取る
まず前半でひときわインパクトが強いのが、海兵隊教官であるハートマン軍曹の鬼教官っぷり。次々とあびせられる暴言や罵声は、観ている私たちもつらくなってしまうほど。そしてこの『フルメタル・ジャケット』は、ベトナム戦争の現実をひどく淡々と冷徹に描いている所が特徴です。普通の青年であった海兵隊員たちが次第に狂気を帯びていく姿、それが無情に切り取られている映像に思わずぞっとさせられます。
戦争とは、とにかく恐ろしく、人が人でなくなってしまうもの。巨匠スタンリー・キューブリックの思いがつまった『フルメタル・ジャケット』。生涯忘れられない映画になること間違いありません。
公開 : 1988年3月19日
監督 : スタンリー・キューブリック
出演 : マシュー・モディーン、ヴィンセント・ドノフリオ
傑作戦争映画を今一度・・・
戦争の残酷さ、哀しさを壮大なスケールで描いた今回ご紹介した映画たち。思わず目を背けたくなってしまうようなグロテスクなシーンや、胸をしめつける衝撃の結末が待っている作品がほとんどですが、今こそしっかりと刻まれた歴史について知っておきたいものです。前に1度観たことがあるという方も、ぜひまた視点を変えてこれらの映画に触れてみてはいかがでしょうか?
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フリーライター。主に映画のことについて執筆中。